【感想・ネタバレ】日本語の文法を考えるのレビュー

あらすじ

国文法はつまらないと敬遠されることが多い。しかし、古来日本語には美しい秩序があり、日本人はそれを巧みに使い分けてきたと考える著者は、古典語・現代語を通じた新しい文法の体系を探求しようとする。文の基本的構造、名詞や代名詞の性格、動詞活用形の起源などを分析しながら、日本語の本質とは何かの解明に迫る。

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Posted by ブクログ

国語学者で学習院大学名誉教授の著者が、文や名詞、ハ・ガ・ノなどを取りあげながら、日本語について考え、大切だと思うことや、研究してきたことについて記したものです。

著者は、「未知」と「既知」という観点を用いながら、日本語の日本語らしい仕組みとは何であるかを明らかにしようと試みています。

既知(あるいは既知扱い)の下にハ、未知(あるいは未知扱い)の下にガが用いられるというところから、ハは題目を立てるので客観的・説明的、ガはより人物の動作が意識的・能動的である、これが漱石と鴎外の文体の分析にまで敷衍されるのは非常に面白く感じました。

小説を読むときにこのハとガの使い分けを考察できるほど精読できれば良いのですが、そこまで精読しようとすると時間も気力もいくらあっても足りないのが難点ですが。

さて、第一章において、文法は不幸な学問であると述べられています。

文法は断片的な知識ではなく、一貫した体系・組織であるため、一度はしっかりと根本から学ぶ必要がある一方で、
①教える人がわからないままで教壇に立つ
②日本語の文法の学問がまだ整っていない
③文法があまり好きではない先生は、そうした整理がどのような手続きを経るものか、整理された結果がどのような意味をもつかなどを考えずに、整理した結果だけを生徒に覚えさせようとし、文法が規則の暗記の学問になってしまう。
という状況があるためです。

これはわたし個人としても本当に耳の痛い話で、文法自体に苦手意識こそなかったものの、暗記科目なっていたのは否めず、教える立場に立った後も、基本体系を理解して教えることができていたかといえば、是と言い難い。

今でこそ文法の体系・組織の入口にあるエッセンスを知ることができているし当時より知識もあるでしょうが、それでもまだ人に教える資格があるかというと難しい。

当時本書と出会っていたとして、どこまで血肉にできていたかもわからないし、そこまで時間と気力に余裕があるかもわからない。

それでもなお、過去の自分に読んでほしい一冊として勧めたいものであることに相違ありません。

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2025年11月22日

Posted by ブクログ

いやぁ、これは面白い。目からウロコの連続。日本語のベースにウチとソトの区別があるとか、そもそも日本語はウチの内部でしか使われてこなかったため主語を省略するとか、抽象名詞が少なく日本人は抽象概念を理解するのが苦手とか、もはや日本語文法の範疇を超え日本文明論になっている。そりゃそうだよね、思考は母語を介してしかできないんだから。どんな規則にも理由がある、ということを思い出させてくれる良書。

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2021年12月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

日本語文法の本、好きです。大野先生は言わずと知れた日本語研究の大家ですが、文調は硬すぎず、するするっと読める本をたくさん出されてます。

面白かったポイントを挙げるとキリがないですが、いくつか列挙してみます。

・「は」と「が」は、その前後の情報が未知のものなのか、既知のものなのかによって自然と使い分けることができる。よく「は」は主格(俗に言う主語)を示すといわれるが、実際には主格にも目的格にも使える。ここを誤解すると日本語の「主格」の捉え方で混乱する。
・日本人は親しいか、疎遠化によってコソアドや相手の呼び方を変える。一人称を相手を呼ぶことに使う(子ども相手の「ぼく」や、関西弁の「自分」など)ことがあるが、これは相手が自分にとって利害相反する者ではなく、自分との隔たりが薄い者であると考えるためである。
・日本語の「できる」は「出て来る」ということで、「可能なこと」を獲得したのではなく、自然の成り行きで可能になったと考える。英語のCanは「知る」という意味のゲルマン語「kann」と同根で、獲得して可能になった、という意味を持つ。

上に挙げたもののうち、一つでも詳しく知りたいと思ったら、この本を手に取ってみるのをお勧めします。ただ、岩波のかなり古い版なので、見つけるのがちょっと大変かも…。

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2015年09月20日

Posted by ブクログ

大野先生の興味深く、分かりやすい文法の解説書。文法がどのように成立して来たのかを解明する過程は推理小説を読むかのようで、知的好奇心を掻き立てられます。

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2014年08月13日

Posted by ブクログ

日本語の文法にかんする著者の考えが比較的わかりやすく説明されている本です。

著者はまず、助詞の「は」と「が」のちがいという問題に取り組み、「既知」と「未知」という枠組みによって両者を区別するという意見を提出します。従来の研究では、「は」と「が」のそれぞれが一つの文のなかでどのような機能をもっているのかということに焦点があてられてきました。これに対して著者は、その文が置かれている文脈のみならず、話し手と聞き手のあいだに成立している了解といった状況をも含めて、それぞれのことばの機能が解明される必要があると主張します。

こうした著者の発想は、一般的に語用論においてあつかわれている内容を「文法」の研究に取り入れるものであり、ここだけ読むと議論がかぎりなく拡散していってしまうのではないかと心配してしまいますが、他方で著者は言語の歴史的形成過程についての議論によって上述のような主張を側面からサポートしており、恣意的な議論という印象はあまり受けず、おもしろく読みました。

「ウチ」と「ソト」の区別といった文化的な要素にかんする社会言語学的な議論から、日本語の文法を説明するというアプローチは、ややアクロバティックな議論のようにも思えますが、刺激的な内容の本であることはまちがいないと思います。

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2020年04月28日

Posted by ブクログ

「は」と「が」の違い。係り結びはなぜ発生して、また消滅したか。日本人は過去・現在・未来と直線的にはとらえていない。どうして活用形が発生したのか。などの興味のある話題が述べられている。

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2018年10月20日

Posted by ブクログ

いくつか納得のいかない説明はあるものの、ほとんどが目から鱗。日本語を勉強し始めて、インターネット検索に行き詰りを感じていたところだっただけに、今回の巡り合わせはおおいにありがたい。

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2018年02月14日

Posted by ブクログ

もともとが講演録だということで、とても読みやすい本です。

内容的にも、体系的にまとめられたものではなく、思ったことをトピック的に並べたもののようです。だから関心を持った部分だけを読めるようになっています。

印象深いのは最初の「未知と既知」「ウチとソト」の区別と日本語の文法との関係について述べられた部分です。ハとガの違いなどの考察を通して、日本人の心理構造にまで踏み込んで考察しています。まるで古代人の心にそのまま触れるようなスリリングな分析です。

日本語の素朴な疑問としてよく挙げられる問題が、実はそうした精神構造を土台にしたものであることが平易に解き明かされています。

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2012年06月02日

Posted by ブクログ

学生時代、古文は嫌いだった。でも、現代語と古文は別物ではなく、そこには日本語としての一貫した体系があった。よく考えるとあたりまえ。内容は学術的で難解だけれどおもしろい。

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2009年10月04日

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