鈴木結生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この本ほど「教養小説」という言葉が似合う本はないだろう。
以前から、「教養小説」という言葉が気にかかっていた。ドイツ語でビルドゥングス・ロマン、本作のタイトルでもあるゲーテに由来する小説ジャンルで、Wikipediaによれば、主人公がさまざまな体験を通して内面的に成長する過程を描く物語とのことだ。
代表例にはゲーテの『ヴィルヘルム・マイスターの修行時代』、トーマス・マン『魔の山』、ヘッセ『デミアン』や日本なら漱石の『三四郎』なんかが挙げられている。
僕が気になったのは、「教養」という言葉の高踏的な響きとその内容のミスマッチ。教養小説と言われるとなんだか高尚でタメになる小説のような気がするが -
Posted by ブクログ
芥川賞作家 鈴木結生氏の受賞後第一作。
英国に傾倒しているファンタジー作家・舟倉按が自叙傳を依頼される。この仕事に取り組む中で自身の記憶に向き合う。
ストーリー自体は分かりやすく、起伏も少ないので、固有名詞や表現が独特なところはあるが読みやすい部類。主人公自身の考えが科白として言う(考える)ので読めばわかる。過去の創作者(今作はディケンズ、前作はゲーテ)を題材に展開するものであり、前作と似ているなと感じる。
鈴木結生氏のBookishな面が非常に色濃くでており、読むだけで賢くなったような気分になれる。
作中で取り上げられている作品には、著者が創作した実在ではないものも多い。
今作は、少年漫画 -
Posted by ブクログ
たくさんの文学や思想家を日常の会話に盛り込む贅沢さは一度では消化できず、読み返す度に発見がありそう
【フレーズメモ帳】
「いや、確かに。また、考え直してきます」と言った。絶えざる自己批判―専門への知ったかぶりと専門外への知らん振りがマナーのような学問の世界にあって、これもまた彼の数多い美点の一つだった。
これらの本にであってからというもの、私は私の脳内に詰まっていた色と音を文字に変換するという作業を無意識的に行っていった。とどのつまり、それが文学ということであった。
『言語システムそのものが引用なんだ』って私が言ったわけ。『ボルヘスだってそう言ってる』と。そしたら、綴喜が、『議論において -
購入済み
意外と読みやすく面白い
2025年初めの芥川賞受賞作で、2作のどちらにしようかと迷って初めは登場人物の名前も難しそうでどうかと思ったが、読み始めるとすらすら読めた。1年に1000冊も読む読書家の作ということだし、いろいろな方面のことがよくわかって書かれているし、日常のことを描写するところも面白い。この本だけでなくURLに飛んでゲーテの言葉についての証言を読者自ら調べてみるというのも面白かった。色彩論は前から興味を持っていたし、多様と統合とは気になるテーマだった。最近は読書離れも感じられて自分もいままで大した読書もしなかったが、今後いろいろと関連するものからものへ、興味から興味へと読んでいきたいと思った。この若い新人に
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Posted by ブクログ
前半は学者をめぐる日常や感性をえがいた作品だと思いながら読んでいたものの、後半にストーリー重視(ミステリーまではいかないが、伏線回収の要素があるという意味)で構成されているのだと思った。
読み手の自分が歳をとったからなのか、ストーリーよりは描写を芥川賞に期待してしまうものの、それはこの作品の最初の方が柴田翔作『されどわれらが日々』の主人公を学者にしたバージョンを少し彷彿とさせたからなのかもしれない。
若い人からの共感を得るには難しい人物設定である一方、中年期から老年期の描き方としては解像度が低いように感じたので、この作品のメインとなる読者層が気になった。 -
Posted by ブクログ
ドイツには何か名言めいたことはゲーテが言ったことにすればいいというジョークがあるらしい(真偽は不明)。統一(とういち)はレストランのティーバッグに書かれた言葉がゲーテが言ったことになっていることに目を留めた。ゲーテを研究ししている統一は真偽を確かめるために奔走する。結末は書かないでおく。本作品では言葉の扱いが丁寧で、言葉遊びではない言葉の重さが伝わってくる。ティーバッグの言葉を確認する旅は、統一の周りの人々を巻き込み、混淆から渾然へと向かう。そして、本書を読み終えたら最初の端書きに戻ることをお勧めする。読み直した時、個人的にはこれが後書きのように読めた。