鈴木結生のレビュー一覧

  • ゲーテはすべてを言った

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    ゲーテ研究者が主人公で、テーマもアカデミック。筒井康隆さんの文学部只野教授を思い出すが、こちらの方が軽妙なタッチ。
    原型を留めず一緒くたに融け合った状態を「ジャム的」、個別の形や性質を保ったまま一つの全体をなす状態を「サラダ的」…
    この比喩がキャッチーだ。
    新宿の「どん底」をモチーフにした居酒屋「ごった煮」が出てくるあたりツボるし、人物名も特徴あって面白い。
    さして長い本ではないけれど、突っ込みどころが沢山あって、これを大学院生が書いたものとは到底思えなかった。ゲーテを読み込む高校時代を過ごしてみたかった気もする。

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    2026年07月31日
  • ゲーテはすべてを言った

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    言葉を探し求める話

    誰が何を言って、なぜそう言ったのか?
    記憶のなかで曖昧になり、伝承のなかで曖昧になり、解釈によってねじ曲げられ、都合よく継ぎ接ぎされ、言葉はつねに形を変えてしまう……。

    形を変えなくても、どう受けとるかによって言葉の「色合い」が変わってしまう。原色としての「言葉」は、読み手のほうで別の色がたしひきされて姿を変えてしまう……。変えられた姿のほうが輝いているときもあるほど!

    ただ変えられた姿形を見たあと改めて言葉に向き合っても、本来の色も形も分からない。場合によっては変えられたことに気づかない。だからこそ「愛好家」は、姿形を変えられたのではないかと疑ってかかり、本来の色や形を復元しようと試みる。

    歴史においては勝者の言葉が語り継がれ、文学においては語り継がれた言葉が勝者である…という格言風の感想を言いたいだけなのでした!

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    2026年07月28日
  • ゲーテはすべてを言った

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    何も知らずに読み始めたので、途中までノンフィクションだと思い込んでいた(恥ずかしい…)
    面白い形態だったけど、もっと自分に知識があればもっと楽しめたのだろうなと思う。悔やまれる。いろんな教養を身につけた上でもう一度読んだら、何倍も魅力的になるのだろう。
    細かいところで気になる点はいくつかあって、読み進めるのに少し引っ掛かりを感じたのでその点は少しマイナス。とはいえ雰囲気は憧れの世界だったし、ユーモアもあり、柔らかい混乱やどういうことなの?という面白みもあった。

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    2026年07月12日
  • ゲーテはすべてを言った

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    芥川賞作品とは知らずに手に取った。手に取ってから気づき躊躇したが、身構えるほどには難しい作品ではなかった。むしろ、読みやすい。面白おかしく読んだ。研究者の脳内を覗いているみたいで、とてもいい。

    主人公は、ゲーテの研究者だ。還暦間近である。あるクリスマスの日、家族と食事に出かけた際、紅茶のパックのタグに書かれた偉人の名言の引用に、ゲーテと書かれたものを見つける。しかしその名言には見覚えがない。原文だとなんと書くのだろうか?本当にゲーテの引用なのだろうか?出典探しに取り憑かれる主人公。

    全編にわたりずっと、そのフレーズが本当にゲーテのものなのかどうかを探し続ける主人公。その間に、研究者仲間の友人の不祥事があったり、娘の恋愛があったり、恩師でもある義父の衰えを目の当たりにしたりと、我々一般の人間も経験するような日常の中の出来事も起こる。研究者然としているトーンの中ににわかに普通の父親/男の顔が見え隠れするさまに、なぜかユーモアを覚える。

    最後はドイツにまで行く。冒頭のプロローグに出てくる作者の正体もわかる。あぁ、ファミリーヒストリー。

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    2026年06月27日
  • トーマス・マンはなぜ日本で愛されるのか

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    三人のバランスが良い。
    平野氏の広範な議論は難しかったが、鈴木氏のゲーテを通したマン像は分かりやすい。
    小黒氏の翻訳の話が特に面白かった。

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    2026年02月07日
  • 携帯遺産

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     芥川賞を受賞した鈴木結生氏の受賞後の最初の作品。次作を楽しみにしていたので、期待して読んだ。

     イギリスとC・ディケンズが好きなファンダージ作家の舟倉按が、自伝小説を書き進める中で、父や母のこと、自分を
    振り返る、自分の記録を探す物語。

     独特の表現、イギリスのgenntleman、loue、英語の振り仮名だったり、「携帯財産+X」などなど。さーっと読んだだけでは、ん・・・?と思ったりするし、作者の圧倒的な知識に、これはどういう意味なんだろうと考えながらページをめくった。作者の意図することは、理解できているとは思えないが、主人公の按の頑張る姿はつい応援したくなるし、独特の世界観はちょっと非現実的で、二次元の本なのに視覚的にも楽しめる、そんな世界に浸れるのは楽しい。

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    2025年12月21日
  • 携帯遺産

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    前作『ゲーテはすべてを言った』にあった博覧強記のエンタメ性とは違って、今作は天真爛漫な文学の雰囲気があって微笑ましく読みました。基本的に別々である書き手と作品の距離を近くして語られることもままある面倒なこの頃、なら殆ど重なるような自伝やその体裁をとった小説であれば書きやすそう、と読む側でしかない私は思ったりしていたのだけれど、実際素材として揃っているものは自分の生きてきた大切な時間や記憶なのだから、どこを使うのか捨てるのかの選択は創作よりも難しいだろうし、伝えることが考えの押し付けにならないようするのも慎重に期す部分が多くて寧ろ書きにくいものなのかなと考えが改まりました。主人公の舟暮按(アンネ・フランクのアナグラム!)が最後に自伝的小説を書き直す決意を示すのも、作品全体を大きな愛が緩やかに包んでいるのも良かったです。済補(スマホ)の次が来貨(クレカ)とは予想外でした。

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    2025年11月22日
  • 携帯遺産

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    わからないことも含めて楽しめました。小説を書くって、こういう作業を重ねていくってことなのかなあ、と思いました。

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    2025年11月06日
  • 携帯遺産

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    英文学や聖書に詳しくない私にはなかなか手強い作品でした
    主人公の甥が、空から降ってくるお話をつかまえようと手を叩いてるシーンが素敵で印象的

    登場人物の名のアナグラム2人は分かったんですが、他の登場人物もアナグラムなのかなと思うと内容に集中できなかった


    舟倉按(ANN FNEKRA)
    →アンネ・フランク(Anne Frank)
     アンネの日記の著者
    台場有奈(だいばありな)
    →ダイアナ・バリー
     赤毛のアンの主人公の親友

    アナグラムではないけど
    蛇羽宇奥(じゃばうおく)
    →ジャバウォック
     『鏡の国のアリス』にある架空の生物



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    2025年10月13日
  • 携帯遺産

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    作家が自伝を描くことで、失踪した父親を求める気持ちが膨らんでいく。たくさんの古典の蘊蓄や創造した作品などが混然としてケムに巻かれたような面白さもあった。

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    2025年09月03日
  • ゲーテはすべてを言った

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    ネタバレ

    ゲーテ研究の権威が知らないゲーテの名言に出会ってその出典を探す話。
    タイトルはジョークであるとともにゲーテの偉大さを示す言葉でもある。

    ゲーテの名言を軸に、言葉や文学をめぐる考察がアカデミックな世界で展開する。
    謎解き要素が物語を先へ進める原動力になっている。

    半日で読み終えるくらい面白かった一方、登場人物全員のエリートっぷりおよび知的(?)な文体に少々辟易した。22歳でもまだサンタからのクリスマスプレゼントがあり、レ・ミゼラブルの劇中歌を口ずさみ、ドライブ中にバッハをかける家族。げえ。何が「もう付き合うしかないよね」だ。語り手の娘は最初から最後まで鬱陶しくて好きになれなかった。嫉妬やない。文体も、外国語の引用の訳がなかったりスマホを「済補」と書いたり衒学的すぎやしないか。

    実家に出かけると一つ部屋で寝て寝る前に会話もするのに自宅に戻ると家族三人ばらばらになる、主人公の目にはいいと思えない義父の論文を娘が絶賛する、それらが何か隠された意味を持つのかと思ったけど違った。

    文学や研究への愛がテーマだと思うんだけど、こんな窮屈なアカデミズムの世界でしか語れないなら文学ってつまんねえな、と思ってしまった。男女のカップル、女や老人はテクノロジーに疎いみたいな人物造形は類型的。妻のテラリウムが象徴するように箱庭的な話。

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    2026年07月29日
  • 携帯遺産

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    ウィットに富み、格調が高い文体なのに、力みがない。言葉遊びも独特。難解な描写も、自由に想像して楽しむ。視覚でも楽しめる工夫(按が生笑に物語を語る場面)が為されており、読者への細やかな気配りと愛を感じた。

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    2025年07月22日
  • 携帯遺産

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    いやぁ〜、私にとって素晴らしい読書時間を満喫できました。ゲーテはすべてを言ったで芥川賞を受賞後、第一作目として注目の作品。前作同様アカデミックでありながら、一方で愛を感じるめちゃくちゃ良い話だった。衒学的ではあるものの作者の文学、歴史への深い造詣と作家に対するリスペクトと自分自身の作者であることへの矜持が伝わる。愛こそすべて…。

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    2025年07月12日
  • 携帯遺産

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    作者の知識量がすごい。大半は知らない固有名詞で、書かれていることもわからないことが多いけれど、なんとなく雰囲気が好き。

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    2025年06月30日
  • 携帯遺産

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    主人公のアンは、アンネ・フランクのアナグラム?前回の作品には、ニキ・ド・サンファルのタロット・ガーデンの本が出てきて、うぉっ!となったけど、今回はアドルフ・ヴェルフリが!鈴木さんの小説は、本当にいろんな楽しみ方ができて、毎回ワクワクする。いろいろなものが潜んでいるから、何度も読みたくなるし、古典文学にも興味が湧く。本を読みながら本を読みたくなる不思議な本!

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    2025年06月15日
  • 人にはどれほどの本がいるか

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    ネタバレ

    私は表題作より『完壁な辞書』が大好きすぎました。誤字探し楽しそう。私も辞書読みたいと思ってます。どうせ読むなら極めて冷静に新明解国語辞典。ゆーりんちーですから。
    試合開始前に五十音食べるあたり、外で読んでたのに『まじかよ』って声が出ました。最高です。2人のキャラと、試合により深まる絆。枕投げのシーンとか最高でした。

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    2026年10月31日
  • 人にはどれほどの本がいるか

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    表題作は、面白いところもあったが、やっぱりどうしても本の知識と衒学的な感じが強いというか、自分の膨大な蔵書をどうするという老人の話なのだが、共感できそうでできないような、「蔵書の整理……ふーん、で?」という感覚がどうしてもあるような感じはした。
    「完壁な辞書」はプロットと遊び心があっておもしろかったが、やはり共感できる感じではない。
    3作目はあまり面白くなかったし、疲れた。小説自体を、メタに扱う感じのやり方になんか疲れる。

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    2026年10月30日
  • ゲーテはすべてを言った

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    読み始めは、あ、終わった。分かんない分野の話だ。と諦めかけたが、後半にかけて徐々にこの小説の言いたいことが掴めるようになってきた。ちゃんとは調べてないが、作中に出てくる数々のフレーズの引用ってもしかして…?

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    2026年10月23日
  • 人にはどれほどの本がいるか

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    鈴木さんの小説で語られる本が好きな人たちは堅物揃いなのだけれど、それゆえにどこかキュートでもあって深く愛さずにはいられない。本作ではデビュー作を大幅に改稿した「人にはどれほどの本がいるか」、辞書の誤謬を見付けるバトルを繰り広げる二人の教師「完壁な辞書」(“壁”の字は誤字ではない)を時々にやけながら特に面白く読みました。一方、残る「猫にバイブル」はそれらと比べるとかなり硬派な印象で、私には書かれている人間の顔があまり見えてきませんでした。とはいえ作者の豊富な知識に裏打ちされた物語には、好奇心を擽る強力な力が働いているのも確かで、読み終わったこの瞬間から、既に次作への期待は大きく膨らみ始めてもいます。

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    2026年10月13日
  • ゲーテはすべてを言った

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    読み終わって、すぐに最初の端書きが読みたくなり、読み返しました。最初は流していた諸々の文章がそういうことだったのか!と納得でき、流れも整理できたのでおすすめです。
    ゲーテや他にもたくさん出てくる著名人もあまり詳しくはなかったのですが、ストーリーも登場人物も魅力的でとても面白かったです。
    こんなに時が経ってもこういった作品やメフィストフェレスを題材にしたキャラクターが日々生まれているので、当時の人たちはどんなにゲーテの言葉、ストーリーに夢中になっただろうと想像してしまいました。

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    2026年10月02日