鈴木結生のレビュー一覧
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文学研究者を”過去に書かれた言葉を聖典のように扱い研究する職業”として捉え、未だ書かれていない言葉、自らの言葉を獲得するに至る葛藤を描く。
研究者の「原典に当たる」という日常の動作、職業倫理は今なお重要であるとは、研究者の端くれである自分としてもひしひし感じはするものの、書かれていることしか言えなくなってしまうのも問題だ。
また、研究者でなくとも多かれ少なかれ、誰が何を言ったかに囚われてしまうこともあるだろう。過去や権威の軛を脱して、先人の言葉/叡智を借りながらも、その先にどう新しい言葉を紡ぎ出していけるのか。これは文学論でもあるだろう。統一の妻がいそしむガーデニングに連なって”いかに自分 -
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前作『ゲーテはすべてを言った』にあった博覧強記のエンタメ性とは違って、今作は天真爛漫な文学の雰囲気があって微笑ましく読みました。基本的に別々である書き手と作品の距離を近くして語られることもままある面倒なこの頃、なら殆ど重なるような自伝やその体裁をとった小説であれば書きやすそう、と読む側でしかない私は思ったりしていたのだけれど、実際素材として揃っているものは自分の生きてきた大切な時間や記憶なのだから、どこを使うのか捨てるのかの選択は創作よりも難しいだろうし、伝えることが考えの押し付けにならないようするのも慎重に期す部分が多くて寧ろ書きにくいものなのかなと考えが改まりました。主人公の舟暮按(アンネ
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「愛はすべてを混淆せず、渾然となす」
ゲーテ研究の第一人者である博把統一は、あるレストランで偶然この言葉と出会った。出会ってしまった。
ゲーテはこの言葉を本当に言ったのか?博把がその真実を探す物語。最終的にはその探究の中で、「本当に言ったのか?」とは違う観点の結論に至ります。
アカデミックな文体のためか、途中は少々退屈に感じました。純文学なので展開が少ないのはそんなものと言えばそんなものかもしれません。あるいは丁寧な描き方とも言えるでしょうか。
個人的には最後の締め方は良く、読んで良かったなと思います。哲学的なことに興味がある方には特にオススメの作品です!
設定 2.5
読みやすさ -
Posted by ブクログ
ゲーテはすべてを言った
ティーカップに書かれていたある言葉の出典がゲーテだが、ゲーテ学者はそれを知らず、出典を探す話
ドイツ人の中で「ゲーテ曰く...」というジョークがあるというのがまず面白かった。日本で言うと。「... みつを」みたいな感じか。
そして、言ったか言ってないか論争についてはハッとさせられた。
本になったり、訳されたりした時点で確かに原文から変わってくる訳で、厳密にそのことを言ったかどうかって証明は難しい。
ゲーテが好きになった理由が、シャーマンキングに出てくるファウストのセリフ『時の止まれ。お前は美しい。』を気に入ったことが始まりだったけど、このように翻訳されているのは -
Posted by ブクログ
学者や戯曲、格言の引用が沢山出てくるので、哲学の知識がほぼない私にはかなり難しかった。でも、その前提知識があればもっと面白く読めるんだろうなと思いながら読み進めた。
ティーバッグのタグに書かれた「ゲーテの言葉」とされる一文の出どころを追う、という軸がありつつ、実際には「誰もが自分の中に “ゲーテ像” を作り上げ、その視点によって語る真実が変わる」という、すごくモダニズム的な物語になっているのが印象的。
そして何より、同世代の人が書いたとは思えないほどアカデミックで、素直に尊敬した。恥ずかしながら、私自身も文系だけど「文系の研究って、例えば教授たちは何をそんなに深掘りしてるんだろう?どこに“