あらすじ
【第172回芥川賞受賞作】
高明なゲーテ学者、博把統一は、一家団欒のディナーで、彼の知らないゲーテの名言と出会う。
ティー・バッグのタグに書かれたその言葉を求めて、膨大な原典を読み漁り、長年の研究生活の記憶を辿るが……。
ひとつの言葉を巡る統一の旅は、創作とは何か、学問とは何か、という深遠な問いを投げかけながら、読者を思いがけない明るみへ誘う。
若き才能が描き出す、アカデミック冒険譚!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
仕事したくな〜い!一区切りついたし一日くらい休まして!と思って有給をとり、シーシャ吸いながら気になってた芥川賞を読破。おんもろかった〜!
語り口から読みづらい話かな〜と思ったけど、終盤の回収がとてもきれいで、尻上がりに面白くなっていく小説だった。
文体からして生真面目で血の通わない印象の主人公が揺らぎ、踊らされ、巻き込まれるうちに血の通った人になっていく過程を追うのが楽しかった。知というものの懐の深さ、ユーモラスさも散りばめられていて、恐れずに知る・探究する、ということへの肯定が愛を持って語られているのも良かった。
Posted by ブクログ
なるほど、この話は宮本輝の書くものとと似ているのかもしれない。
最後の最後でそう思った。
それまでは、うーん、面白くないことはないけど、という感じだったのにそこに気づいたために…
いや、面白かった。
Posted by ブクログ
この本ほど「教養小説」という言葉が似合う本はないだろう。
以前から、「教養小説」という言葉が気にかかっていた。ドイツ語でビルドゥングス・ロマン、本作のタイトルでもあるゲーテに由来する小説ジャンルで、Wikipediaによれば、主人公がさまざまな体験を通して内面的に成長する過程を描く物語とのことだ。
代表例にはゲーテの『ヴィルヘルム・マイスターの修行時代』、トーマス・マン『魔の山』、ヘッセ『デミアン』や日本なら漱石の『三四郎』なんかが挙げられている。
僕が気になったのは、「教養」という言葉の高踏的な響きとその内容のミスマッチ。教養小説と言われるとなんだか高尚でタメになる小説のような気がするが、実際にはこの手の小説で語られるのは主人公の恋愛や人間関係など生活全般のこと、必ずしも我々がイメージする「教養」を主人公が体得するわけではない。そもそも主人公が作中での体験を通して成長するというのはごくありふれた物語のパターンであって、わざわざ教養なんていう大それた名前をつける必要はないんじゃないか。おそらくは単に翻訳の問題なんだろうが、あまりセンスのいいネーミングとは言えないな。そんなことを考えていた。
前置きが長くなったが、この本は字義通りにも、その本来の意味からしても、文句のつけようのない「教養小説」だ。
この本は主人公・博把統一の成長物語でありながら、隅から隅まで教養に溢れている。物語の中で夥しく引用される学者や学術書、小説の名前はどれも知的好奇心を刺激するものばかりで、読みたい本リストに加えたくなる。読み終わる頃には、なんだか賢くなったような気さえしている。そういう本だ。
読んでいて飽きの来ないギミックや小ネタの多さもまた魅力。「済補」「浮き憂き」なんていう当て字もそうだし、「サウジアラビアの諺」のくだりは多分ドラマのリーガルハイが元ネタ。他にも拾えていないものがまだまだあるはず。
そして何より恐ろしいのが、架空の学術書の作り込み具合。「一冊の本を作るために何冊もの本を書くことがどれだけ難儀かわかるかい?」という作中のセリフは、そのまま著者が自分自身にかけた労いの言葉だろう。然紀典『神話力』なんかは、実在しないのが惜しいほどに読みたくなった。
Posted by ブクログ
言葉は未来に投げかけられた祈りである。言葉が自分の手から離れた途端にそこに常に付き纏う誤謬の可能性に打ちのめされそうになる、それでも、そうやって、どう言葉が変貌を遂げるのかは神のみぞ知るんだという感覚がある。あなたに言葉が届くことを願って祈り続ける。
Posted by ブクログ
読み進めて、あまりの博識さにこの人はたくさんの本を下地にこの本を書いたのだな、などと思っていたら同い年でひっくり返ってしまった!
ゲーテも聖書も読んだばかりなのでギリギリだった、義子さんのようにファウストって面白いのね、と言えるよう、私も読んでみようと思う。
Posted by ブクログ
エセ座禅。
世の中は大半そんなもので成立している、のかもしれないし、それって言葉の進化ーとか言ってみてもいいけど、SNS拡散やハラスメントで成長不足が議論される昨今からすると、
人間そのものは進歩して、、、ない気に強烈にさせられました。
やっぱり西洋思想史は、死ぬまでに一度は学び直したいなと序盤では思いつつ。
スパコンか!な脳スペックの違いに絶句。
やっぱり私には小説止まり、なんてつくづく思わされました。
超難解な要約サイトみたい。
でも教授のぶつぶつが面白いので折に触れて再読します。
でも紙媒体だったら120%挫折してた。
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凄まじい構造の妙。珍しすぎる苗字で遊びつつ、媒介者語りで進むリアリティ。権威委託型フィクションと呼べるが、義父に読ませたら「これ僕じゃないやん」と言われた。みたいな一文を足されることにより、より深まるリアリティ。どこまで本当?と思っちゃった。読ませるために引き込んでるんやろうけど、恐ろしさすらあった。
Posted by ブクログ
少し前に小川哲『言語化するための小説思考』を読んで、「小説とは記述がすべて『伏線』でなければならない」ということを念頭に置いていたが、素晴らしい「伏線」の数々だった。
ゲーテの出典不明の「名言」を追い求めるという軸だけで物語をこうも動かせるのかと感動した。
本の半分くらいまでは「伏線」を撒きながら世界設定を丁寧に行い、後半で一気に回収するストーリーラインも見事だった。純文学ジャンルには珍しくハラハラする展開もあり、読後の満足感が大きかった。
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あらすじからさぞ難しい本なのだろうと思っていたのだが、とても読みやすく一気に読んだ。いろいろと繋がりすぎ、うまくいきすぎなところは否めないが、ラストは自分でもわけがわからないくらい感動してしまった。言葉は本当に難しい、厄介なものだけれど、本質的には祈りで、自分が信じられればそれでよいのかもしれない。「愛はすべてを混淆せず、渾然となす」、いい言葉、祈りだ。
そして端書きにあったサイトまでしっかり堪能しました。その作り込みにも拍手。
Posted by ブクログ
たくさんの文学や思想家を日常の会話に盛り込む贅沢さは一度では消化できず、読み返す度に発見がありそう
【フレーズメモ帳】
「いや、確かに。また、考え直してきます」と言った。絶えざる自己批判―専門への知ったかぶりと専門外への知らん振りがマナーのような学問の世界にあって、これもまた彼の数多い美点の一つだった。
これらの本にであってからというもの、私は私の脳内に詰まっていた色と音を文字に変換するという作業を無意識的に行っていった。とどのつまり、それが文学ということであった。
『言語システムそのものが引用なんだ』って私が言ったわけ。『ボルヘスだってそう言ってる』と。そしたら、綴喜が、『議論において権威を盾にする人は知力ではなく記憶力を用いているに過ぎない』と言ったの。『ダ・ヴィンチもそう言ってるよ』と。もう付き合うしかないよね。
彼が「トーイチ、教え子と結婚するのはいいぞ」としみじみ言うので、統一が「ゲーテが言ってた?」と尋ねると、彼は「いや、これは俺の人生の結論」とまたしみじみと言った。
意外と読みやすく面白い
2025年初めの芥川賞受賞作で、2作のどちらにしようかと迷って初めは登場人物の名前も難しそうでどうかと思ったが、読み始めるとすらすら読めた。1年に1000冊も読む読書家の作ということだし、いろいろな方面のことがよくわかって書かれているし、日常のことを描写するところも面白い。この本だけでなくURLに飛んでゲーテの言葉についての証言を読者自ら調べてみるというのも面白かった。色彩論は前から興味を持っていたし、多様と統合とは気になるテーマだった。最近は読書離れも感じられて自分もいままで大した読書もしなかったが、今後いろいろと関連するものからものへ、興味から興味へと読んでいきたいと思った。この若い新人に到底及ばないが影響されました。
そして今読了しました。とても面白かった。楽しかった。いろいろ自由に発言していいんだと気を軽くさせてくれた。
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ゲーテのファウストを読んだこともないので、わからないことも多かったけれど、楽しく読むことができた。
ゲーテの第一人者と日本で言われている大学教授が主人公。家族で行ったレストランにあったティーバッグのタグに書いてあったゲーテの言葉が、本当にゲーテの言葉なのか否か…このあらすじを読んで興味を持ちました。
とりあえず、ゲーテ「ファウスト」が読みたくなりました。
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前半は学者をめぐる日常や感性をえがいた作品だと思いながら読んでいたものの、後半にストーリー重視(ミステリーまではいかないが、伏線回収の要素があるという意味)で構成されているのだと思った。
読み手の自分が歳をとったからなのか、ストーリーよりは描写を芥川賞に期待してしまうものの、それはこの作品の最初の方が柴田翔作『されどわれらが日々』の主人公を学者にしたバージョンを少し彷彿とさせたからなのかもしれない。
若い人からの共感を得るには難しい人物設定である一方、中年期から老年期の描き方としては解像度が低いように感じたので、この作品のメインとなる読者層が気になった。
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ドイツには何か名言めいたことはゲーテが言ったことにすればいいというジョークがあるらしい(真偽は不明)。統一(とういち)はレストランのティーバッグに書かれた言葉がゲーテが言ったことになっていることに目を留めた。ゲーテを研究ししている統一は真偽を確かめるために奔走する。結末は書かないでおく。本作品では言葉の扱いが丁寧で、言葉遊びではない言葉の重さが伝わってくる。ティーバッグの言葉を確認する旅は、統一の周りの人々を巻き込み、混淆から渾然へと向かう。そして、本書を読み終えたら最初の端書きに戻ることをお勧めする。読み直した時、個人的にはこれが後書きのように読めた。
Posted by ブクログ
高名なゲーテ学者は、ゲーテが言ったとされる言葉を探しにアカデミックな旅に出る。
学者の犯した禁忌、などとあるからサスペンス感が強いのかと思いきや結構ハートフルな部分が多く、まさに愛を語るゲーテやプラトンのようであった。
なぜ頑なに済補(スマホ)なのかは気になった。
Posted by ブクログ
本の雑誌で2025上半期ベストで薦められていたので、手に取る。松岡正剛さんがゲーテは知の巨人だったという文も思い出すけど、昔の高校生のときに若きウェテルの悩みは読んだけど、という有様。
内容を説明してもしょうがないな。なんとも不思議な魅力がある。ゲーテ研究者の主人公には、義父、娘、同僚と文学の世界の住人に取り囲まれている。その会話の中に時折、知らない人名、単語が出てくる。パソコンを手元に置いて読んだ方が良かったかな。勿論、そうしなくてもいいんだけど。
ゲーテの言葉以外の過去の著名人の言葉も出てくるけれど、ビートルズの言葉もあったりで、ちょとクラクラする。
架空の小説について、映画「はつ恋の通り道」への言及があったのが不思議。「ニュー・シネマ・パラダイス」については納得するけれど。
済補にスマホとフリガナがある。芸亭(うんてい)の姓について、これはゲーテだろうとPCにあった。他の登場人物の名や他にも仕掛けがあるんだろうけれど、僕には判らない。誰かまとめて解説してくれないかな。
Posted by ブクログ
芥川賞受賞作品。
ゲーテはまったく読んだことがないので、大丈夫かなと思いつつ、
結果、なかなかおもしろかった。
難しいことはさておき、博把一家の雰囲気のよさがよかった。
統一さんはちょっとご不満ありのようだけれど、最後、いい感じになってほっこり。
みんなでTVを見ながら、統一の件の場面で「あー、言った!」とはしゃぐ徳歌がおもろかった。
『愛はすべてを混淆せず、渾然となす』
せっかくなので、『ファウスト』に挑戦してみようかなと思った。
でも、鈴木結生さんによると、『ファウスト』は『聖書』の知識がないと理解できない箇所が多く、
そうでないならお薦めしないと。ゲーテを最初に読むなら『ゲーテ格言集』がお薦めとのこと。
もしくは秘書のエッカーマンがゲーテの言葉をまとめた『ゲーテとの対話』がよいらしい。
ふむ。なかなかこの道は険しそうだな。
Posted by ブクログ
ゲーテ学者統一と家族との知的な会話が面白かった。名言をあれこれ引用しながらおしゃべりしていて、思考することを楽しんでいて素敵。
自分はちゃんと理解できていないし、背景知識も不足しているのを感じた。だからこそ、もっと本を読みたい、学びたいって思えた。
聖書の写しを日課にしている統一の師が出てくるけど、あんなふうに毎日少しずつ聖書を読んでいくのもいいな。
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主人公が大学教授であり、ゲーテを初めたくさんの文豪について多くが割かれ、アカデミックな展開。実際に、ゲーテもどんな人か良くわからない中ゲーテ論が展開されるため、始めはかなり難解に感じた。また。学問を探求することが当たり前の環境で織りなす議論は難しいと同時に現実味が薄く感じた。
読み終わった後、最終的にゲーテがこの物語にどう関係したか、人に説明できる気がしないものの家族の絆も含め、最後は何となく、まとまった作品だった。
Posted by ブクログ
すごく芥川賞、文学的な小説を読んだ気がする。選者に「ペダントリー」という表現があったけどその通り読む人を置いていくレベルの高い研究者の話ばかりでゲーテとか西洋文学の文学的研究がほんとにこんなものなのかは分からないけど文学に造形が深く学問を心から楽しんでいる父と娘の会話が言葉と知識が文章に根付いていると感じた。作者はまだ20代?
一方で、私はなんとなく文学って作者の生死観とか根源の欲望とかをメインに書くものな気がしてるのね。「空想上の文学者の日常」のお話をわざわざ書いて何のために何を表現したいんだ、と思う気がしなくもない。
Posted by ブクログ
2026 04/10
知らなかったことを知りたいと思い調べる。どんなに手間がかかっても、手に入れたい『知』があるって、凄く羨ましい。
前半は難しかったけど、途中から一気に物語が動いてページを捲る手が止まらなかった。停滞気味の前半の雰囲気からの変わりようにびっくりして、こんな展開になるとは想像していなかった裏切られた感がとても楽しかった。
言葉って生き物だなぁって思いました。
いつか『ファウスト』読んでみるっ!
Posted by ブクログ
⭐︎3.5
最初から中盤にかけては淡々とした学術的な探求が続き、正直少し退屈に感じてしまった。
しかし、後半に入ると散りばめられていたパズルのピースが見事にはまっていく展開になり、一気に面白さが加速した。
特に「娘の彼氏」のことや、然氏の仕掛けた「壮大な悪戯」のくだりは、小難しい雰囲気の中に人間臭さやユーモアが溢れていて非常に楽しめた。
序盤の助走が長かった分、全体としての評価はこのくらいに落ち着いたが、最後まで読んだときの着地や仕掛けの鮮やかさは間違いなく味わえる一冊だった。
Posted by ブクログ
YouTubeの一万円もらって書店で本を購入するコンテンツで知り、興味を持ったので読んでみました。
ゲーテや昔の偉人の話をふむふむと読んでいるなかに、東日本や能登の震災が出てきて、急に現代に引き戻されたり、現代的なんだけどゲーテの時代にも思いが馳せられる、静かだけど情熱的なお話。
やはり知識の海に身を浸すのは、幾つになっても楽しいんだよねぇ。好きなことなら特に!と思い、今年はたくさん本読もうと改めて思いました。
そんでもって、後記の最後の一文が1番好きかも。こういうユーモア、好きです。
Posted by ブクログ
自分の頭への限界を感じることが、日々それなりにある。抽象的な言葉や概念を理解できないし、体系的に物事を考えたり、段取りを立てることも苦手。混沌とした話から主題を見つけることや、物事に対して持つべき視点のようなものがいつまでも分からない。この本の登場人物のように、日常の会話に瞬時に学問を持ち出すなんて到底できない。
学問への憧れがいつまで経っても止まないのは何故なんだろう。本を読んで、とある世界を知って、その度に、その世界に生きる人に憧れる。私も理解してみたいと思った、と同じような感想を毎回書き残す。
Posted by ブクログ
「作家や思想家っていうのはどこからか飛んできた木の葉の一枚から、自分の森を創り上げてしまう人間だろう」
小難しくて読むの大変だったが、後半は 名言探し が面白くなって来た。本作は 主人公の娘の夫が書く という形式になっており、書き手本人も登場している。が、どこまで事実か?然教授が仕掛けた「嘘」もあるから、考えていくと思考の渦に入り込む…
Posted by ブクログ
不思議な本だった。登場人物の生活描写は全てがハイソで全く親しみが湧かないし、ゲーテについての知識もこちらはないので、主人公の葛藤が今ひとつわからない。
それでも妙に読み心地は軽やかで、確かなストーリーがあり、その合間に夢想のようなものが詰まっている感じがした。
普段親しんでいる本とは全く違うのに、読んでいて明るい気分になる。
こんな本はあまりないような気がする。
Posted by ブクログ
「愛はすべてを混淆せず、渾然となす」
ゲーテ研究の第一人者である博把統一は、あるレストランで偶然この言葉と出会った。出会ってしまった。
ゲーテはこの言葉を本当に言ったのか?博把がその真実を探す物語。最終的にはその探究の中で、「本当に言ったのか?」とは違う観点の結論に至ります。
アカデミックな文体のためか、途中は少々退屈に感じました。純文学なので展開が少ないのはそんなものと言えばそんなものかもしれません。あるいは丁寧な描き方とも言えるでしょうか。
個人的には最後の締め方は良く、読んで良かったなと思います。哲学的なことに興味がある方には特にオススメの作品です!
設定 2.5
読みやすさ 2.5
表現力 3.0
統一感 3.5
読後感 4.5
★総合 3.0
Posted by ブクログ
芥川賞受賞作
ゲーテ学者の彼は、家族との団欒の際に、ティーバッグのタグに書かれた言葉に引き寄せられる
これは、ゲーテが紡いだ言葉なのか?
膨大な原典を読み漁り、周りの研究者へも助けを求めるが、分からず…
単なる文字の羅列に過ぎない言葉が、果てしない旅を導き、そして、さまざまな人との出会い、別れ、、、ひとつの真髄とは…
Posted by ブクログ
久しぶりに「言葉の羅列、言葉の濫立ばかりの小説」を読んだという感じだった。
読み始めた時は、哲学的な内容の小説かなと思ったが、途中から名言格言の根拠、発生源的なものを探究する内容となり、最後には登場人物が自分なりの解釈と納得で終わった感じだった。この小説、いったい何を描きたかったのだろうかと思ってしまう。
ただこの小説では、大事なことは「ゲーテはすべてを言った」と言うジョークではなく、出典も根拠も分からない「愛はすべてを混淆せず、渾然となす」と言う言葉だろう。
主人公の統一が妻や娘、義父、義母に抱く愛情、友人や同僚に思う友情、尊敬、弟子などにもかける
愛情。これらは確かに愛と言えるだろうし、そしてその愛は1つ1つ確立した感情つまり「サラダ的」なものではなく、1つの感情を主とし他の感情を従として、それらをかき混ぜ、練り上げた「ジャム的」なものかもしれない。
この小説は、主人公の淡々とした生活のなかで、主人公と関わる人たちに抱く渾然な愛を描いたのかもしれないと思った。むろん、無学、浅学な私には、よく分からないが。
でも「愛はすべてを渾然となす」と言う言葉は真実かもしれない。何しろ「ゲーテはすべてを言った」のだから。