あらすじ
小雨降る4月の晩、作家・舟倉按は知己の編集者から『文学的自叙傳』の執筆を依頼される。実家の焼失、父の失踪、震災。巡る記憶の果て、その「マイ・ブック」はloueを語りうるのか? たくらみと愛にあふれる、芥川賞受賞第1作!
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Posted by ブクログ
芥川賞作家 鈴木結生氏の受賞後第一作。
英国に傾倒しているファンタジー作家・舟倉按が自叙傳を依頼される。この仕事に取り組む中で自身の記憶に向き合う。
ストーリー自体は分かりやすく、起伏も少ないので、固有名詞や表現が独特なところはあるが読みやすい部類。主人公自身の考えが科白として言う(考える)ので読めばわかる。過去の創作者(今作はディケンズ、前作はゲーテ)を題材に展開するものであり、前作と似ているなと感じる。
鈴木結生氏のBookishな面が非常に色濃くでており、読むだけで賢くなったような気分になれる。
作中で取り上げられている作品には、著者が創作した実在ではないものも多い。
今作は、少年漫画誌などの要素についても言及がある。
ここまでの2作で知識の引き出しはすごいというのを見せてくれたが、次はそれだけではない作品を読ませてほしい。
Posted by ブクログ
もう一度最初から読み返してしまった。なるほどと納得!ずいぶんと数多くの書籍名や人物名更に英文が出てきて戸惑うどころか笑ってしまった!この本英文でしたらいいかも。そんなことを考えながら読み終えた。
Posted by ブクログ
前作『ゲーテはすべてを言った』にあった博覧強記のエンタメ性とは違って、今作は天真爛漫な文学の雰囲気があって微笑ましく読みました。基本的に別々である書き手と作品の距離を近くして語られることもままある面倒なこの頃、なら殆ど重なるような自伝やその体裁をとった小説であれば書きやすそう、と読む側でしかない私は思ったりしていたのだけれど、実際素材として揃っているものは自分の生きてきた大切な時間や記憶なのだから、どこを使うのか捨てるのかの選択は創作よりも難しいだろうし、伝えることが考えの押し付けにならないようするのも慎重に期す部分が多くて寧ろ書きにくいものなのかなと考えが改まりました。主人公の舟暮按(アンネ・フランクのアナグラム!)が最後に自伝的小説を書き直す決意を示すのも、作品全体を大きな愛が緩やかに包んでいるのも良かったです。済補(スマホ)の次が来貨(クレカ)とは予想外でした。
Posted by ブクログ
英文学や聖書に詳しくない私にはなかなか手強い作品でした
主人公の甥が、空から降ってくるお話をつかまえようと手を叩いてるシーンが素敵で印象的
登場人物の名のアナグラム2人は分かったんですが、他の登場人物もアナグラムなのかなと思うと内容に集中できなかった
舟倉按(ANN FNEKRA)
→アンネ・フランク(Anne Frank)
アンネの日記の著者
台場有奈(だいばありな)
→ダイアナ・バリー
赤毛のアンの主人公の親友
アナグラムではないけど
蛇羽宇奥(じゃばうおく)
→ジャバウォック
『鏡の国のアリス』にある架空の生物
Posted by ブクログ
作家が自伝を描くことで、失踪した父親を求める気持ちが膨らんでいく。たくさんの古典の蘊蓄や創造した作品などが混然としてケムに巻かれたような面白さもあった。
Posted by ブクログ
ウィットに富み、格調が高い文体なのに、力みがない。言葉遊びも独特。難解な描写も、自由に想像して楽しむ。視覚でも楽しめる工夫(按が生笑に物語を語る場面)が為されており、読者への細やかな気配りと愛を感じた。
Posted by ブクログ
いやぁ〜、私にとって素晴らしい読書時間を満喫できました。ゲーテはすべてを言ったで芥川賞を受賞後、第一作目として注目の作品。前作同様アカデミックでありながら、一方で愛を感じるめちゃくちゃ良い話だった。衒学的ではあるものの作者の文学、歴史への深い造詣と作家に対するリスペクトと自分自身の作者であることへの矜持が伝わる。愛こそすべて…。
Posted by ブクログ
主人公のアンは、アンネ・フランクのアナグラム?前回の作品には、ニキ・ド・サンファルのタロット・ガーデンの本が出てきて、うぉっ!となったけど、今回はアドルフ・ヴェルフリが!鈴木さんの小説は、本当にいろんな楽しみ方ができて、毎回ワクワクする。いろいろなものが潜んでいるから、何度も読みたくなるし、古典文学にも興味が湧く。本を読みながら本を読みたくなる不思議な本!
Posted by ブクログ
忍耐強い読者(文中のあり(笑))として完読しました。
前作に引き続き、不思議な登場人物の命名、古典と英語がいっぱいの独特なストーリー、SFものではないのですが、異世界に連れ出されたようです。
けど、タイトルの「携帯遺産」がなんかるか・・・だけはなんとなくわかった気がします。それ以外はほとんど???ですけど(笑)
Posted by ブクログ
作家の舟暮按が、編輯(へんしゅう者)の台場有奈から文学的自叙傳(バイオグラフイア・リテラリア)を書くべきでは、と提案されることから物語が進んでいきました。
普段使わない漢字や読み方、英語が多く使われ、しかも古典から現代の文学まで網羅されていました。知識不足の私は、読むのがとても時間がかかってしまいました。しかも完全に理解できた自信はありません。
でも、舟暮按が、始めは渋っていた自叙伝をようやく完成させたものを抹殺し、新たなタイトルをつけたときに、私までなんだかほっとしました。両親の発言などから新たに生み出されたこの自叙伝が、これからどんなものになるのかとても気になりました。
最後の終わりかたは、今後の展望が期待される感じでした。最後の「パン」が何だかとてもいい終わりかただなと思いました。