大川裕弘のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
美しい写真とともに日本の美について綴られた随筆
すっかり明るい室内に慣れてしまった現代人からすると伝統ある寺社仏閣の薄暗さは不便であるように感じるが、そこに蟠る陰こそが障子越しの柔らかな光を、揺らめく灯火の明かりを、それに合わせて鈍く輝く螺鈿や波打つ金箔を、
奥行きのある美しさとして表現している。
特に金箔や螺鈿の美しさは、煌々と全てを照らす電灯の元では充分に発揮されないのだろうと気が付かされました。
文体は硬くなく、添えられた写真が綺麗なので引っかかることもなく読み進められます。
日本家屋に潜む闇は、野外の闇よりもザラザラとした手触りがる、そのような一文がありましたが、昔祖父母の家の片隅に蹲 -
Posted by ブクログ
昭和初期に書かれた、日本における光の意味を教えてくれる本。
ほどほどのあかりで、見るべきではないものはそのままに。
当時の光の増大に対する違和感は、現代で言うところの、情報量の増大と似ていると思った。
西洋人は闇を排除し隅々まで明るく照らし、光による闇の討伐を目指した。一方で、日本人は闇と共存し、ある意味、一体化していた。
しかし、日本人は、親しい闇を、西洋文明の流入により、追いやった。
見るべきではないものを突きつけられ、どう対処すべきか、悩まされる。実は、悩む必要などなく、対処すべき事でもない。それとは、ずっと前から無意識に共存してきたのである。
鎖国によって生じた文明の遅延に対する劣等感 -
Posted by ブクログ
ネタバレ大学生の時にロシアに10日ほど行ったことがあるんだけど、現地のロシア人学生に「とても興味深かったわ」と言われた思い出がある。当時はあまり読書に熱心でなく谷崎潤一郎も知らなかったので「へ、へえ~そうなんだ(愛想笑い)」としか返せなかった。ハチャメチャに悔やまれる。日本人がいかに闇の中で美を見いだして来たか。具体的な例をあげながら書かれているんだけど、ずっと納得しかなかった。なぜ畳の上に座っていると心安らぐのか。なぜタイル張りのトイレがちょっと落ち着かないのか。心のどこかで感じ取っていた美的感覚を全部言語化してくれていてとてもスッキリする。特に衝撃だったのが、私は今まで金の屏風や金閣や大阪城を見な