浜田文人のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
正統派極道・白岩光義シリーズの最新作で、今回は福岡が舞台。前作「北へ」が出たのが今年の2月だからわずか半年でまた続編が出るとは予想外の喜びだ。
大学時代の友人に誘われて九州の地に赴いたところで待ち受けていたのは、友人の農業法人に食い込もうとする地元暴力団組織と縁のある男。一成会若頭であり花房組組長である白岩を問題解決に利用しようとする友人に不快感も無いわけではないが、「昨日飲んだ酒はもう吐けない」と義理を優先して事件に関与してしまう。全く持って個人的な関与ではあるはずが、何故かそこに同門である一成会事務局長の影が見え隠れする、というのが本書のストーリー。
この小説は一般的には極道小説という括りに入るのだろうが、極道小説に付き物と短絡的に想像されるであろう抗争・暴力場面は殆ど出てこない。一触即発の緊張感はあるのだが、決して相手を片っ端からやっつけて一件落着というようなエンタテインメント的カタルシスはそこには無い。極道とは言え今の世の中、毎日暴力沙汰なんて有るわけではないと等身大のリアリズムが優先している。確かに、今や現実の暴力団抗争ですら暴力のエスカレートを抑制し、殆どが金銭的な決着を優先すると言われているので現実性がより増しているというものだ。
ではこの小説をどう読むのかと言われると実は困るのだが、個人的には正統派の人情物だと思っている。人情とか義理とかが普段の生活から消えてしまっている中で、義理と人情を現代社会を背景に描こうとすると余りにも現実感が消失してしまう恐れが大きい。つまり極道物の設定(または時代小説)が最も収まりが良いのかもしれない。普段は義理と人情とは最も縁遠いような生活態度なのになぜかこうした小説を好んで買うのは、無い物ねだりなんだろうか? -
Posted by ブクログ
前作「東へ、西へ」が出てから久しいなぁ、と思ったら実は未だ2年しか経っていないとはDBを見て気がついた。今作は文庫書き下ろし、と言えば聞こえは良いが単行本で出せないということだから折角の良い作品を書く作家も辛いし出版不況も大変そうだな。
極道物としてはちょっとばかり毛色の変わった物語で不思議な味わいがある。まずは主人公・白岩光義は大阪に本拠を置く花房組組長でかつ本家一成会の若頭補佐だが、前作・今作とも殆ど組関係の抗争シーンは出てこない。代わりに多くの場面を割いているのが花房組前組長の東京での闘病生活。
まあ当然ながらこれでは物語には成らないので極道間の衝突になりそうな場面はあるのだが、そこで白岩の片腕となり活躍するのが組の部下達ではなく高校時代からの同級生や元公安関係者がやっている敏腕調査会社!しかも調査会社経由で犯罪の証拠を警察に渡して相手を戦わずして勝利するというのだから何ともはやだ。
表面的には極道物語だが、その実は優れて人間物語なのだ。