渡邉雅子のレビュー一覧
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この本の重要性を説明したくなったので、まとめてみる。
まず現代社会の問題として、行き過ぎた多様性とその結果による各コミュニティ間での合意形成の難しさについては、昨今頻繁に言われている。
これに対して筆者は解決策を論理的にかつ例証までして提示している。
実はこれはすごいことで、世間にいまだにはびこっている多様性とは、他者性と接触しない自分の価値観を正当化するためのもので、つまり思考のモードは一つだけしか持たないものである。しかし全ての人が多様な思考のモードを同時に持つことができたら、多様性を持ちつつも普遍性も確保することができる。(これは哲学的課題である極端な普遍主義や相対主義のどちらにも陥ら -
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初めて読む渡邉雅子氏の著作だが、専門的な内容ながら論理展開が明晰で分かりやすく、具体例が豊富なので、素人にも読み通すことができた。日本とアメリカの小学校高学年対象に調査して、1)作文教育2)歴史教育3)クラス経営や評価の、3つの項目に通底する日米の相違点を分析解説している。少し前に話題になった『小学校〜それは小さな社会』(英題 The making of a Japanese)を彷彿とさせる、とても興味深い内容だった。日米比較した結果として価値判断をすることはなく、中立の立場で双方の長所と欠点を提示しながら、両国の国民性や行動様式の違いを指摘している。これを読むと、なぜアメリカでは起業が極めて
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本書は、「論理」がたった一つの「正しい」ものがあるのではないこと、目的によって適切な「論理」は変化することを明らかにする。そのうえで、「多元的思考」を打ち出し、複数ある「論理」を必要に応じて、選択的に用いることを推奨する。なぜなら、「多元的思考」は、私たちが多様な社会や文化の中で豊かに暮らすために必要な方法と視点となり得るからである。
本書を読んで、それぞれの国の社会、文化、歴史が、「論理」を作り上げていることを知った。「対話」の大切さが謳われる場面が多いが、意見を擦り合わせるためには、その意見を作り上げている「論理」の擦り合あせが必要となる。この意味で、「対話」とは、本当に大変な作業なのだ -
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ネタバレ本書は、日本とアメリカの小学校における作文指導や授業内容、教師の語り方、通知表の構成などを比較しながら、両国においてどのように「納得した」という感覚が形成されているのかを明らかにしている。
要点として、相手を納得させるための説明の場面では、日本では物語の枠組み、すなわち時系列に沿った説明が用いられるのに対し、アメリカでは要約や報告の枠組み、つまり因果律に基づく説明が重視されていることが挙げられる。
時系列に沿った説明では、出来事と次の出来事がどのようにつながるかによって因果関係が想起されるため、出来事を並べる順序が重要となる。この場合、原因と結果は語り手によって明確に特定されず、どの出来事 -
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現代のグローバルな社会において日本の調和を重んじた考え方に疑問が湧くことが多くある。例えば、何かを競うときも日本人は遠慮しすぎ、もっと自分を主張しろなどと言われる。しかし、それはあくまで一つの価値観にしかすぎないことがわかった。今それが求められているだけでこれからパラダイムシフトが起きて価値が逆転することもあるだろうし、あるいは場合によっては和が大事ということもあるだろう。よってこの不安定な時代にこそ求められるのは多元的思考だ。一つの価値観に縛られることなく目的や状況によって思考法を使い分けていく、これが色々な価値観が分立する現代社会で生き抜く最良の方法だと思う。それに伴って共感的利他主義を元
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論理や思考に関心ある人は必読の本。論理的思考と言えば、結論から書き、その後に理由を述べるなどと言われる。
確かにわかりやすい書き方だが、どこからこの書き方が来たのか疑問だった。
また、日本の感想文や作文の意味もわからなかった。(読書感想文に何を書けばいいのかいつも困惑していた)
この本はこれらの長年の疑問を解決してくれ、論理的思考と作文と社会規範の関係を明快に教えてくれる。
冷戦後、アメリカの論理が世界を席捲したが、それぞれの文化や価値観を背景に思考パターンが異なることを知れたのはとても有益であった。
むしろ経済最優先のアメリカ思考は歴史的にかなり異質なものと思う。
著者は、日本の社会重視の -
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論理的思考力とは我々日本人から見れば物事を順序立てて順に説明していくことと思われがちだが、必ずしもそうではない、論理的思考力は不変ではなく、さまざまな形があるということを知った。
本書では四つの論理的思考力の形が紹介されていた。自分の主張を相手に正しいと認めさせるのに適したアメリカ型の経済領域の思考、多くの人の利害に関わり多くの人から受容されなければならないことを慎重に論証することに適したフランス型の政治領域の思考力、ある普遍の真理に向かって物事を論証するのに適したイラン型の法領域の思考力、相手の共感を誘い、多くの人に受容されるのに適した日本型の社会領域の思考力だ。
これらはどれが正しい -
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リアル本にて。
ゆる言語学ラジオで紹介されていた、「論理的思考の文化的基盤」が面白そうだったが、難しそうだったので、同著者の新書版であるこちらを読んでみた。
国ごとに歴史的経緯から重要視する論理展開が異なり、それに合わせた作文教育を行ってきた結果、ある文章が論理的かどうかは読み手によって、もっといえば読み手の国籍によって異なるという主張。
この主張も面白いのだが、個人的にはその主張に至る前段の説明である、序章「西洋の思考パターン」が面白かった。
西洋の思考パターンに、論理学、レトリック、科学、哲学があり、それぞれ目的と論理的とする条件が異なる。論理学は、真理を証明するために、ある法則から具体的 -
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手順の正しさが厳密かつ客観的に保証されている論理的思考は、論理学の形式論理だけである。しかし、日常生活で形式論理に基づいて会話や議論を行うことはほとんどなく、私たちは常識に基づく“大体正しい”蓋然的推論を用いている。
論理的思考は目的によって異なる形をとる。主な目的として、経済・政治・法技術・社会があり、それぞれに「正しい」とされる文章の書き方がある。
アメリカでは経済を目的とした論理が主で、主張・根拠・結論を最短で無駄なく述べることが求められる。論文やビジネスでもスタンダードな形式であり、根拠は客観的な事実に基づく。
フランスでは政治を目的とした論理が使われ、弁証法をベースに、問題・テーゼ -
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感想文の構成が日本人に染み付いているというのは、言われてみれば確かにぶくろぐのレビューを読んでいても感じる。思ったことや本を手に取った背景よりもまず先に、あらすじを書いている方が多い。「学校の教育なんて意味あるのか」的な論争が数多くある中で、作文教育は無意識レベルで論理を使いこなすための、非常に意義のあるものを言えるだろう。
飛躍があるかもしれないが、これを読んで思ったのは、論理的思考は国よりもっと細かく、個々人それぞれあるのでは?ということだ。自分の理解では、それぞれの価値観がまず先にあって、それを支える論理を組み立てていくことで、その価値観固有の論理的思考が形成される(と読み取った)。
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論理的思考は、1つではない(目的に応じて形を変える)。そのために、多元的思考という視点を持ち、目的に合った思考法を選ぶ必要がある、というのが本書の主張。
論理的に考える基本的な思考のパターンは4つあり(演繹、蓋然的、アブダクション、弁証法)、それぞれ推論できること、できないこと、得意不得意などがある。目的に応じて最も適した思考法を選ぶこと、また他者がどの思考法で議論しているのかに目を向けることにより、より建設的な目的達成並びにコミュニケーションが期待できる。
論理的に考えるパターンが複数あるという提示は、私には目から鱗の体験。新たな視点が得られ大変嬉しい。一方、目的に応じて思考法を選択すること -
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前に読んだエマニュエル・トッド「世界の多様性」に引き続き、世界には本当にいろんな国があるもんだなぁという本。
この本はYouTubeの「ゆる言語学ラジオ」で知りました。
「結論から先に言いなさい」と教えられてきましたが、これはある限られた国で採用された表現形式であって世界共通というわけではないらしい。
論理というのは普遍的な推論方法ではなく、文化や社会の枠組みのなかで形づくられるものであるというのが本書の主張です。
そして、著者はこの文化的な枠組みを理解する鍵として「教育の在り方」に着目します。
子供たちへの教育原理はその国が重んじる価値観そのものと言えます。
本書ではこの教育原理を大き