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論理的思考法は世界共通ではない.思考する目的をまず明確にしてその目的に合った思考法を選ぶ技術が要る.論理学・レトリック・科学・哲学の推論の型とその目的を押さえ,価値に紐付けられた四つの思考法(経済・政治・法技術・社会)を使い分ける,多元的思考を説く.不確実なこの世界で主体的に考えるための一冊.
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Posted by ブクログ
論理や思考に関心ある人は必読の本。論理的思考と言えば、結論から書き、その後に理由を述べるなどと言われる。 確かにわかりやすい書き方だが、どこからこの書き方が来たのか疑問だった。 また、日本の感想文や作文の意味もわからなかった。(読書感想文に何を書けばいいのかいつも困惑していた) この本はこれらの長...続きを読む年の疑問を解決してくれ、論理的思考と作文と社会規範の関係を明快に教えてくれる。 冷戦後、アメリカの論理が世界を席捲したが、それぞれの文化や価値観を背景に思考パターンが異なることを知れたのはとても有益であった。 むしろ経済最優先のアメリカ思考は歴史的にかなり異質なものと思う。 著者は、日本の社会重視の論理について、道徳を養い社会秩序を維持するのに役立つと高く評価する。 各国の論理が異なることは、他国で生活するときに摩擦が激しくなる理由の一つだろう。 外国人が増えている中、日本での多くの人の生活にも役に立つ本である。
論理的思考力とは我々日本人から見れば物事を順序立てて順に説明していくことと思われがちだが、必ずしもそうではない、論理的思考力は不変ではなく、さまざまな形があるということを知った。 本書では四つの論理的思考力の形が紹介されていた。自分の主張を相手に正しいと認めさせるのに適したアメリカ型の経済領域の...続きを読む思考、多くの人の利害に関わり多くの人から受容されなければならないことを慎重に論証することに適したフランス型の政治領域の思考力、ある普遍の真理に向かって物事を論証するのに適したイラン型の法領域の思考力、相手の共感を誘い、多くの人に受容されるのに適した日本型の社会領域の思考力だ。 これらはどれが正しいというわけではなく、目的に応じて使い分けることによって論理的に物事を捉えることができるのだ。その選択肢を手段として持っておくことが今グローバルな時代を生きる上で大事なのではないかと思う。
リアル本にて。 ゆる言語学ラジオで紹介されていた、「論理的思考の文化的基盤」が面白そうだったが、難しそうだったので、同著者の新書版であるこちらを読んでみた。 国ごとに歴史的経緯から重要視する論理展開が異なり、それに合わせた作文教育を行ってきた結果、ある文章が論理的かどうかは読み手によって、もっといえ...続きを読むば読み手の国籍によって異なるという主張。 この主張も面白いのだが、個人的にはその主張に至る前段の説明である、序章「西洋の思考パターン」が面白かった。 西洋の思考パターンに、論理学、レトリック、科学、哲学があり、それぞれ目的と論理的とする条件が異なる。論理学は、真理を証明するために、ある法則から具体的な結論を得る演繹的推論を行う。レトリックは、一般常識と具体例を、話術を駆使して語ることで、一般大衆を説得することを目的とする。科学では物理的真理を見いだすために、アブダクションにより挙げた仮説の整合性を確認する。哲学は、一般的に自明でない概念を定義付けするために、弁証法(ある見方→反する見方→それらを総合する見方)を用いる。 普段なにげなく考えているが、言われてみるとたしかに、異なる思考法を用いている。 なお、日本文化的思考法は、小学生の感想文みたい、と揶揄されることが多いが、本書の中ではその価値を見出だし、むしろこれからはもっと必要になると述べている。その点も、好感がもてる。
手順の正しさが厳密かつ客観的に保証されている論理的思考は、論理学の形式論理だけである。しかし、日常生活で形式論理に基づいて会話や議論を行うことはほとんどなく、私たちは常識に基づく“大体正しい”蓋然的推論を用いている。 論理的思考は目的によって異なる形をとる。主な目的として、経済・政治・法技術・社会...続きを読むがあり、それぞれに「正しい」とされる文章の書き方がある。 アメリカでは経済を目的とした論理が主で、主張・根拠・結論を最短で無駄なく述べることが求められる。論文やビジネスでもスタンダードな形式であり、根拠は客観的な事実に基づく。 フランスでは政治を目的とした論理が使われ、弁証法をベースに、問題・テーゼ・アンチテーゼ・それらの矛盾を乗り越える解決という構成をとる。反対意見も論じ、網羅的に議論を行う点がアメリカ式と異なる。根拠は過去の例証(引用)によって示される。 イランでは法技術を目的とした論理が中心で、聖典をもとに第一原理から出発し、演繹的に問題の真偽を論じる。結びにはことわざや詩、神への感謝を置く。正しさはあらかじめ聖典に定められており、個人の意見が入る余地はない。 日本では社会を目的とした論理が主で、書き手の体験とその変化を述べ、他者の共感を得ることが重視される。 感想: これまで論理的と教えられ、自分も信じていたアメリカ式の論理が、複数の視点の中の一つに過ぎないことを知った。特に、馴染みのなかったフランス式の論理への理解が深まり、以前「冗長で引用が多く読みにくい」と感じていた文章の理由がわかった。 表を使った整理や簡潔な言い回しなど、著者の説明が非常にわかりやすい。著者の他の著作も読みたい。
感想文の構成が日本人に染み付いているというのは、言われてみれば確かにぶくろぐのレビューを読んでいても感じる。思ったことや本を手に取った背景よりもまず先に、あらすじを書いている方が多い。「学校の教育なんて意味あるのか」的な論争が数多くある中で、作文教育は無意識レベルで論理を使いこなすための、非常に意義...続きを読むのあるものを言えるだろう。 飛躍があるかもしれないが、これを読んで思ったのは、論理的思考は国よりもっと細かく、個々人それぞれあるのでは?ということだ。自分の理解では、それぞれの価値観がまず先にあって、それを支える論理を組み立てていくことで、その価値観固有の論理的思考が形成される(と読み取った)。 その論理的思考法(感想文、エッセイ等)は型があれど、グローバル化の影響もあってか、土台となる価値観は現代においては実に多様と言える。そして各々微妙に違う価値観に合わせて、無意識のうちに論理を使い分けているのかもしれない。 本書の内容が個人レベルでも適用可能なら、例えば「こいつと話は合わないな」と思ったとしても、その人にはその人の価値観と論理が備わっていると理解ができる。この理解を直感的にではなく、それこそ論理的にできるようになれば、他人と自分の価値観を相対的に(論理的思考を4象限で表したように)見られるだろう。自分が象限の原点にいないことに気づく事こそ、相互理解の第一歩なのかもしれない。
論理的思考は、1つではない(目的に応じて形を変える)。そのために、多元的思考という視点を持ち、目的に合った思考法を選ぶ必要がある、というのが本書の主張。 論理的に考える基本的な思考のパターンは4つあり(演繹、蓋然的、アブダクション、弁証法)、それぞれ推論できること、できないこと、得意不得意などがある...続きを読む。目的に応じて最も適した思考法を選ぶこと、また他者がどの思考法で議論しているのかに目を向けることにより、より建設的な目的達成並びにコミュニケーションが期待できる。 論理的に考えるパターンが複数あるという提示は、私には目から鱗の体験。新たな視点が得られ大変嬉しい。一方、目的に応じて思考法を選択することなどは、それぞれの思考のパターンをよく理解し、かつ使いこなすといった訓練も必要になるだろう。このあたりのことを学びたくなる。
ちょっと難しかったですが、とても面白かった! 文化、領域(経済、政治、法技術、社会)によって論理的思考の仕方がこんなにも違うということに驚いた。アメリカとフランスの違いにビックリ! 何が目的なのかを特定し、目的に応じて思考法を使い分けるとのこと。もっと若い時に知りたかった! 高校生、大学生に是非読ん...続きを読むで欲しい。
型があり、使い分けを推奨。 恐るべきはフランスのディセルタシオン。 ヘーゲルの弁証法を取り入れてる。 フランス、ドイツが現代哲学においても牽引しているのはそういうことなんだろうな。 日本の感想文もそんな効用があったのか!と目から鱗。如何にアメリカ式エッセイが優れていると表面的に受け取っていたか。 ...続きを読むイランのエンシャーについては、『「論理的思考」の文化的基盤』を読んだ方が暗唱の凄さが分かる。この辺りは司馬遼太郎『十六の話』に出てくる井筒俊彦の師匠の話を思い出した。
巷に溢れているいわゆる「ロジカルシンキング」を身につけるものではないです。 そもそも「論理的とは何か」という問いから始まり、論理的思考を4種類に分類し、それぞれの目的、優先するもの、得意不得意、を解説してくれています。 またそれがどのような文化から派生して、どのような領域で扱われるのかを分かりやすく...続きを読む書かれている。それがもう個人的には新しい視点で非常に勉強になりました。 ちょこっと論理学を齧ったのですが、その論理学の考え方が、全てが全ての場面で効果を発揮するかと言われれば、そうではないと実感しています。 相手が優先しているもの、目的としているものがぼんやりと違うからかなと思っていました。 ですが、この本を読んで異なる論理的思考をベースにしているからだと気づきました。 まずは自分がどの論理的思考をベースにしているのか、その次に相手、そしてどの論理的思考を使うべきかを考える。 常にロジカルシンキングで相手を説得することが目的ではないのだと胸に刺さりました。 この著者の他の本も読みたくなりました。
小さい時、アメリカは憧れだった。科学技術もコンテンツも日本の数歩先をいっている感覚だった。でも最近はその短絡的な行動にあきれつつある。トランプの支離滅裂さ然り、機関投資家の強欲さ然りだ。 この本は論理的思考は文化的背景によって異なることをアメリカ、フランス、イラン、日本の作文教育を比較しながら論じ...続きを読むる。アメリカの典型的なエッセイの型は経済領域に位置づけられ、何よりも効率が重要視される。そして真偽はともかく因果がもっともらしい論拠を元に自分の考えを主張することが求められる。この型への違和感が最近感じていたアメリカへのあきれの原因なんだと腑に落ちた。 言われてみれば、ロジカルシンキングで論を尖らせて主張を際立たせ、相手を説得することにも最近疲れてきている。そりゃ文化的背景が違うのにやみくもにアメリカ型の論理思考をしていたら当然だ。 なにもアメリカ型の論理思考が悪いわけではない。どの国も本書で挙げられている4つの領域を使い分けているとも書かれている。要はどういう型の論理思考があって、その文化的な背景や目的は何かを理解することが重要ということだ。郷に入れば郷に従うとは相手の論理的思考を理解しつつ対話することでもあるなと思う。
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論理的思考とは何か
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渡邉雅子
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「論理的思考」の社会的構築 フランスの思考表現スタイルと言葉の教育
「論理的思考」の文化的基盤 4つの思考表現スタイル
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