渡邉雅子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
◾️読後の感想
個人的に、自分の思考はあまりにも乱雑で、まとまりに欠けると自認しているため手に取った本。
読んでまず印象に残ったのは、「論理的思考」とは一つの決まった思考法ではないということだった。
文化や社会、目的によって重視される価値が異なり、それに応じて論証の方法も変わる。
「論理的思考」と聞くと、私はロジカルシンキングをイメージし、結論を先に示して、根拠を積み上げながら立証していくような方法を思い浮かべていた。
しかし、本書はそのような一つの思考法を身につけるための本ではない。
重要なのは、複数の思考の型を知り、目的や状況に応じて「どのように考えるのか」そのものを選択できるようになること。
一つの論理だけですべてを判断するのではなく、より俯瞰的な視点から複数の論理を使い分ける。
本書は、そうした「多元的思考」を持つことの重要性を説いた本だと理解した。
■本の内容メモ
【西洋の思考の四つの論理】
・論理学
正しい推論を重視する。
前提から結論を導く「形式」が正しいかどうかを考える。
・レトリック
相手を説得することを重視する。
誰に、どのような状況で伝えるのかによって論証の方法も変わる。
・科学
仮説を立て、観察や実験によって検証する。
現象の原因と結果を説明することを重視する。
・哲学
対話や討論を通して、物事の本質や概念そのものを問い直す。
【文化・社会によって異なる四つの論理】
<経済の論理:アメリカ>
中心的価値:効率性と目的の達成
主導的観点:効率的か否か
推論:因果関係を重視
価値ある能力:分析・評価
目的を明確に設定し、その目的を達成するための効率的な方法を考える。
5パラグラフ・エッセイに代表されるように、主張と根拠を明確にして論証・説得する。
<政治の論理:フランス>
中心的価値:公共の利益
主導的観点:十分に審議されたか
推論:弁証法
価値ある能力:総合・構想
ディセルタシオンに代表される。
ある主張と、それに反する主張の双方を検討し、その矛盾を乗り越える新しい考えを構想する。
単純にどちらが正しいかを決めるのではなく、異なる立場を十分に議論すること自体を重視する。
<法技術の論理:イラン>
中心的価値:真理の保持と規範の遵守
主導的観点:真か偽か
推論:演繹
価値ある能力:知識・理解
規範や原則を基準として、個別の事柄が正しいか間違っているかを判断する。
<社会の論理:日本>
中心的価値:共感と哀れみ
主導的観点:共感できるか否か
推論:共感による推理
価値ある能力:共感
感想文や意見文に代表される。
他者の立場や経験を理解し、その人の気持ちや置かれた状況を想像することを重視する。
【どれか一つが「正しい論理」なのではない】
同じ問題でも、どの論理を使うかによって見えるものが変わる。
例えば、新しいシステムを導入すると考える。
経済の論理
→どれだけ業務を効率化できるか。
政治の論理
→利用者、管理者、経営者など異なる立場の意見をどう調整するか。
法技術の論理
→法律やセキュリティなどの規則に適合しているか。
社会の論理
→実際に使う人たちは、その変更をどう感じるのか。
どれか一つだけが正しいのではない。
一つの論理だけで考えてしまえば、別の重要な価値を見落とす可能性がある。
【多元的思考】
現実社会には、数学の問題のように一つの正解が存在するとは限らない。
効率を優先すれば人間関係を損なうかもしれない。
共感を優先すれば効率が落ちるかもしれない。
異なる価値が同時に存在し、ときには互いに矛盾する。
だからこそ、一つの論理や価値観ですべてを判断するのではなく、複数の論理を理解したうえで、目的や状況に応じて必要な思考を選択する。
「何が論理的か?」と考えるだけではなく、
「いま自分は、どの論理を使って考えているのか?」
「この問題には、どの論理が必要なのか?」
と、一段上から自分の思考そのものを捉える。
【この本から持ち帰りたいこと】
自分の中に一つの「正しい思考法」を作るのではなく、
・分析する
・反対側の立場から考える
・原則や規範に照らして考える
・他者の立場に立って共感する
といった複数の思考の選択肢を持つこと。
そして何かを考えるとき、「この問題は、どの論理から見るべきだろう?」と考える。
一つの論理に固執せず、複数の視点を持ったうえで、どのように考えるのかを自分で選ぶ。
それが本書から学んだ「多元的思考」である。 -
Posted by ブクログ
1冊の本を読み終えたとき、
読書記録を書こうと思って思ってペンを執る。
読書記録を書くとき、自分がその本を読んで何をどう感じたかを書きたくて、言語化って難しいな〜〜と思いながらも、そのとき思っていたこと考えていたことをなんとか言葉にして残そうとする。
【本の内容(簡単なあらすじ)】
↓
【本を読んで考えたこと】
【心動かされた一節】
【自分の体験に引きつけてみて】
…などなど考えながら書くわけだけど、
この思考の型そのものがいわゆる日本の論理というやつなのでは?!!と思ってしまった。
私にも自然に、そしてしっかりと、身についてるじゃん…と。
アメリカの思考の型で書くんだったら、
「この本は◯◯◯〜こういう本である」と、
その本がどういった本であるかを書くということになるんだろうか…?などなど色々考えてしまいました。
「論理って絶対的なものなんじゃないの?」なんて、なんとなく思っていた自分の常識を覆してくれました。
国が違えば思考の型も違う。
自国外の思考の型を学ぶなんて考えもしなかったけど、絶対面白いよなぁ。ものの見方が広がるよなぁ。
内容全てが理解出来た訳ではなく、
難しいよ〜と思いながら読んでましたが、
それでも面白いと感じました^^
自分がもっと賢かったらさらに面白く読めたんだろうな。また読み返してみたい本です。 -
Posted by ブクログ
面白かった。
まず「欧米」と一口に語りがちであるけれど、少なくともベースとしている考え方の観点では明らかに異なる思考方法を持っているのがよくわかる。
加えて「正反合」がフランスのディセルタシオンという弁証法から来ていることや、弱い反論から始めていくその手続きの型なども初めて目にして学びがあった。
小学校はその国の普遍的文化を子供たちに教える場なのだということを踏まえると、大人になっても途中から別の国の文化にスイッチしていこうとする試みの難しさは言語だけの話ではないのだという点もよく理解できてよかった。
日本について言えば、読書感想文が目指しているところについて当時知りたかったところ。あとは、なんとなく日本の文化については調査内容が、そんなものか〜と他の点に比べるとあまり目を瞠る部分がなかったような。
とは言え、全体を通して面白い書籍だった。合理性は文化によって異なる、ね。 -
Posted by ブクログ
「論理的思考力」=エッセイを書く時に使う能力だと思っていたので、エッセイの論立てができない人を「論理的思考力がない」と思っていた部分があった。
しかし、この本を読んで日本の作文的叙述を紐解き、それも1つの「論理的思考力」なのだと理解した。
「結論は?」という問いで、全てが上手くいくと思っていた部分があったが、それは状況に応じて変わることを理解した。しかし、日本的(社会的な考え方)というものが道徳的な議論をする時以外にはあまり効果を発揮できない気がしていて、改めて読み返すと共に、生活の中で意識して過ごすことで実践的に理解を深めていけたらと思う。 -
Posted by ブクログ
これまでの研究成果を社会に還元するという目的で書かれた本のようだ。
ベースとなるのは『納得の構造』や『論理的思考とは何か』で、複数の文化圏の「論理」がどのようなものかをモデル化してきた話。
それを現代の社会の中に位置づけ、今後の教育の在り方、作文教育の在り方の提言に結び付けていく。
西欧近代のシステムが行き詰まって、さてどうするか。
そこで日本で培われた社会性を大事にする教育や、ビジネスの中でさえ利他を重視する考え方(「共感的利他主義」と本書では呼ばれる)にも、今後のよりよいあり方を見つけるヒントがあるのではないか、と筆者は伝えている。
たしかに、筆者の言うように、過去のよいものを検討もせず捨ててしまうのはとてももったいない。
本書では、小学校から大学までの文章教育のグランドデザインも提示する。
小学校では物語により共感的利他性を育て、一方で観察により報告文を、中学校では意見文を通して論証の基礎を学び、高校では課題研究や小論文を通して仮説検証や抽象的思考を学ぶ…といった感じ。
西洋(というかアメリカ)的な、結論前出しの効率的なエッセイライティングは英語の中で学ぶことが提案されていた。
ただ、個人的には英語の授業の中だけで学ぶというよりは、日本語でもモードの書き分けができた方がよいのでは、という気もする。
AIで翻訳が簡単にできるようになってきたことを考えると、英米流エッセイなり、フランス流弁証法的エッセイなりのスタイルで日本語で表現し、それを翻訳すればよいのでは、と思われなくもない。
というのと、英語でエッセイを書けるところまで高校の英語教育で持っていくことができるのか、という疑問もあるし。
著者の先生には申し訳ないけれど、本書をちょっと雑に読んでしまった感があって、自分が本書に共感しているところと違和感を感じていることがまだしっかり言葉にできていない気がするが、とりあえず今はここまで。 -
Posted by ブクログ
昭和の学校教育の記憶を持ち出すのもどうかと思うのですが、国語の影は他の教科よりも薄かったです。それなのに、しかも週の何分の一しかコマ数がないのに、その中の作文教育が、日本を救うくらいの勢いで本書は書かれています。
作文教育のあり方は置かれた社会の影響を受けてのことと書いているのですが、逆に、作文教育のあり方が社会に影響を与えるのでしょうか。疑問は尽きないのですが、変えなければ変わらないのも事実でしょう。
どこかのエリアで(あるいは教育学部の附属学校で)実験的に10年くらいやってみてもらえないかなと思いました。面白い学校にお子さんを預けてみようとする親御さんがいることが前提になるんですが。 -
Posted by ブクログ
本書の主張は「論理的思考」とされているものは決して普遍的なものではなく、国家、言語、宗教、社会体制、そして学校教育によってパターン・型が形成されている、というもの。また、論理的思考は普遍的ではないことを認識したうえで、コミュニケーションの相手がどの論理に沿っている人間なのか、ということを意識することの重要性をといている。
著者は「教育発達科学研究科」という学問の大学教授であり、ご自身の長年の研究成果である日本・アメリカ・フランス・イランの教育方法の比較を、岩波新書として刊行したもの。あとがきでご本人いわく「高校生でも読めるように書いた」とのことだけれど、ガチガチのアカデミックな文体。ユーモアのかけらもない硬い文章なのだが、内容が興味深いためにスルスルと読める。
日本語の情緒的かつ説明的な文面、あるいは過剰なまでの注釈・ディスクレーマー文化は、戦前の「綴り方」教育と戦後の「読書感想文」教育に由来するという。
米国英語で多用されるの「結論」「理由①~③」「結論」という論理は、米国における教育の大衆化に伴う「採点の容易さ」が要請したものだという。
フランスの高校教育では哲学の授業がもっとも重要、という言説はあちこちで聞いたことがあったか、彼らがたたきこまれる「ディセルタシオン」という論理の「型」の解説は興味深い。「正-反-合」という型を完成させるためには、自らあえて矛盾を提起して問いを重ねていくいう。
イランの作文技法では、ことわざや詩を結びの言葉とすることが必須との由。
著者に期待したいのは、隣国である中国人と韓国人の「論理」がどのような構造をとっているか、中国と台湾、韓国と北朝鮮において、国家体制・教育の違いがどのように「論理」とされるものを変容させているか、という点についての研究。
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元同僚O先輩のおすすめで入手。 -
Posted by ブクログ
教育、すなわち未来を支える世代にどうあってほしいかを示すという、人類共通の課題に対し、わが国とアメリカ、フランス等との基本的な考え方の差異を分析的に示している部分はわかりやすい。「新書」の一読者としては、何となくの興味は持っていても、自らの力で集中的に考えたり論点を言語化した経験もない分野について、専門家が用いる視座と分析軸をあっさりと提供してもらえるという感覚があり、読む価値があったと感じた。
本書の主張で、最終的に、共感性や多元的思考の重要性を挙げていることには共感できる。
しかし、長すぎる序論で、「”近代”の行き詰まり」や、「資本主義で当たり前とされる価値観が世界を不幸にする」といった主張を延々と読まされるのは、あまりにも「岩波」の雰囲気をまとい過ぎ。団塊世代以降の、目下、営々と働いているマス層の読者(予備軍)にとっては、せっかく本編での学術的な説明があっても、本書全体の読後感を「あ、そっちがわのセンセイなのね」と敬遠してしまう結果になるだろう。 -
Posted by ブクログ
前著は作文教育から、各国の論理的思考の筋道を各国の文化、価値観と捉えていてめちゃくちゃ面白かった。
今作は日本の作文教育の価値観をかなり突っ込んで述べている。
今後訪れるであろうポスト近代の時代に対応する価値観育成に、批判的に捉えられがちな日本の共感的を促す指導が効果的だというのは、教育者の端くれとしても勇気づけられる思いであった。
かなりざっくばらんに言えば、日本の教育はこのままでよい、今後は人間も自然の一部とみなした利他的な価値観が基準となる!という内容。
共感に重きを置くということが、なぜか我々日本人にとって幼く思えていたのだが、そうではないというのが前著でも述べられていたことである。
冒頭では、ポスト近代について説明されていて、少しずつ現代の教育についての話になる。この辺りは、個人の能力よりも、コミュ力の高さや多様な他者との良好な関係性が築ける人間が重宝されたり、スクールカーストでも上位に位置したりと、現代的な感覚でも納得できるところであった。
その後、作文教育への提言が綴られる。この辺りの記述については、現行の指導要領と変わらない。だからこそ、現場の人間として、中高の教育への提言については、”全て”の学校では実現が難しいだろうとも思う。時間的リソースのなさ、現代の高校生の抽象的概念を捉える力の二極化を考えると、書くと言う活動に意味を持たせ、どれほど時間をかけられるのかと考えてしまう。
本書はもちろん、作文教育の効果を見直すことに成功しているし、日本的な教育を価値づけていると思う。が、本当に世界は協働方向に向かっているのか?というのは疑問で、保守的な考えが強い感覚も得た。自分は政治には無頓着なので、理解しきれていないところもある。