あらすじ
普遍的であるはずの「論理」と「合理性」.それは文化によって大きく異なり「価値観」とつながる.「文化の多様性」という言葉に逃げ込まず,それぞれ4つの原理を代表する日本・アメリカ・フランス・イランの思考表現スタイルから4タイプの論理と合理性を明らかにする.ポスト近代を生き抜く知恵となる比較文化論の集大成.
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Posted by ブクログ
前に読んだエマニュエル・トッド「世界の多様性」に引き続き、世界には本当にいろんな国があるもんだなぁという本。
この本はYouTubeの「ゆる言語学ラジオ」で知りました。
「結論から先に言いなさい」と教えられてきましたが、これはある限られた国で採用された表現形式であって世界共通というわけではないらしい。
論理というのは普遍的な推論方法ではなく、文化や社会の枠組みのなかで形づくられるものであるというのが本書の主張です。
そして、著者はこの文化的な枠組みを理解する鍵として「教育の在り方」に着目します。
子供たちへの教育原理はその国が重んじる価値観そのものと言えます。
本書ではこの教育原理を大きく4つの型に分類して議論を進めます。
Posted by ブクログ
アメリカやフランスは何となく想像つくけれど、イランは完全に初見だったので興味深かった。
各国でこれらの思考方法に子供の頃から馴染んできたら、大人になってビジネスをするときも全く違ったアプローチになると強く思わされた
Posted by ブクログ
過度に具体例に当てはめてしまう危険性を孕みつつ、ここまで素晴らしい抽象化と類型を分かりやすく文章にしてくれてありがとうございますという気持ちです。
思考スタイルが違う、しかしそれは文化的に規定されている可能性があるという視座はコミュニケーションギャップを個人が克己する一つのきっかけになり得ると思いました
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ面白かった。いままでに読んだ社会学、人文学系の本の内容がいろいろと蘇り、コネクティングザドッツの連続だった。学術書なので普通に難しかったが最近新書も出たらしいので周りにはそちらを薦めたい
Posted by ブクログ
「論理的思考」は人流共通の絶対的な思考の方法である。それは本当だろうか?この様な絶対的な価値観であると確信しているものを実は相対的なものに過ぎないと軽々しく書き換えてくれる。現代社会において必須になっている論理的な思考を極めて理知的な区分によって4つに区分し、われわれの価値観をひっくり返す名著。
Posted by ブクログ
合理性を、形式的/実質的、主観的/客観的の四象限に分けて相対化し、それぞれを代表する各国(アメリカ、フランス、イラン、日本)の教育文化を比較研究した本。とんでもなく面白かった。
個人的には、ビジネスで必要となる論理思考と、日本の教育にズレがあるのを常々感じていたのだけど、この本でその理由がかなりクリアになった。
ビジネス上の論理思考は、本書によるとアメリカに代表される「経済原理」の思考で、目的達成に直接結びつく効率的な行為が合理的な行動とされる。アメリカではこの原理に基づいた教育がなされており、エッセイという作文の教育を通じて、その論理思考が叩き込まれるのだという。
それに対して日本では、目的の達成よりも、目的(価値)に向かう正しい態度や意欲が重視される。(「社会原理」)そのために日本の教育は、他人の心を考えることと、それを自分の心とすり合わせて行くことに主眼を置いている。物語の登場人物の心情を問うたり、感想文を書かせることがその現れだと指摘されていて、興味深かった。
とはいえ、仕事をする上では、経済原理による論理思考は必須だし、フランスの「政治原理」として紹介される思考では、複数案を超克する論理思考が標準化されていて、これもビジネス上での応用ができる。イランの「法技術原理」は日本とは正反対なので、中々理解し難いが、自身の思考を客観視するには良い題材のように思える。各思考の優劣を論じるのではなく、さまざまな思考を使いこなすことは、総合的に豊かな社会生活につながりそうな希望が持てる。
という感じで、とても刺激的な読書体験だった。
ちなみに、本書はA5判で300ページ近くある。毎日寝る前に数節ずつチマチマ読んで1ヶ月近くかかったが、専門用語は序章に少し出てくるだけで、全体としては読みやすかった。値段も約5,000円とお高いのだが、その価値は十分にあった。
Posted by ブクログ
素晴らしい書籍でした。学術系の書籍は難解であることも多い中、非常にわかりやすくかつ平易に記述され、また論拠も納得できる内容でした。
企業の組織運営する際でも、日常のコミュニケーションの中でも、思考の違いを理解し、多様な考えを受け入れていくために大いに活用できると感じます。
Posted by ブクログ
一気読み。期待に違わず面白かった。高度なことをしてるのに読みやすくて、言語化の能力にも感嘆する。問いの立て方も研究方法への落とし方も実現する腕力も描かれる結果の面白さ壮大さも、全て本当に凄い。憧れなんて言えないくらいに尊敬。
Posted by ブクログ
250611
Xとゆる言語学ラジオで見て購入。
論理的な思考の道筋がそれぞれの文化圏で違うという見方は新鮮だった。改めて、自分は日本の文化圏の考え方が染み付いているなと思うと同時に、贔屓というか、日本の時系列で語るやり方が好きなのだと感じた。枝葉末節を落としたくないというか、出来るだけ多くの情報を取り込んでから、それを内包した答えを出したいというか。
Posted by ブクログ
岩波新書『論理的思考とは何か』の研究書版(というか、新書は本書のエッセンスを一般向けにまとめ直したもの)。学術的に書かれている分、著者の議論の特徴と問題点がより明確に出ていると感じる。
著者の主張のエッセンスは、学校教育で「何を・どのように書かせるか」ということ自体に、その国・地域の社会的・文化的な特性が反映されている、というもの。だが、その国・地域の最大の問題点は、「論理」を文化的・社会的に構築されたものと捉える着想は重要としても、それを検討するモデルとして学校教育の作文がほんとうに適切なのかはよくわからないところがある。各社会、各文化が求める作文の「型」が、それぞれの思考のスタイルを規定しているという仮説はたしかに分かりやすいが、作文の「型」がそこまで規定要因として重要と言えるかは疑問なしとしない。関連して、明示的に「型」の教育がなされているアメリカやフランスと、「型」が暗黙の要請として必ずしも明示されていない日本の感想文とを比較できるのかも気になる。
本書で議論されているのは、それぞれの国や地域が「どんな能力を育成しようとしているか」であって、「実際にどんな能力が育成されているか」ではない。よって、著者の「型」の分析は、教科書のメッセージを送り手側から見たものでしかない(教科書のメッセージには少なくともカリキュラムをふくむ教育政策や教育思想、実際の教員たちのハビトゥスや学校・教室文化の問題が介在するはずだ)。つまり、送り手側の「理念」「理想」がそのまま適用されているに過ぎない(日本の作文教育にかんする記述が典型的)。かりに「型」という仮説を認めるとしても、その「型」との交渉や葛藤こそが思考を析出する契機であるはずで、そう考えれば「型」とされるものではできないこと、それぞれの「型」の盲点にも関心を差し向ける必要があるのではないか。