あらすじ
日本人の説明のわかりにくさは説明の「順番」にあった! 私たちは何を根拠に〈納得〉するのか.その謎を,独創的な作文実験と日米の作文・歴史教育から解き明かす.論理と合理性,能力が文化的に生成されることを実証した画期的な書がついに文庫化.これからの多元的な世界を生き抜くすべての人々に必読の書.
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Posted by ブクログ
本書は、日本とアメリカの小学校における作文指導や授業内容、教師の語り方、通知表の構成などを比較しながら、両国においてどのように「納得した」という感覚が形成されているのかを明らかにしている。
要点として、相手を納得させるための説明の場面では、日本では物語の枠組み、すなわち時系列に沿った説明が用いられるのに対し、アメリカでは要約や報告の枠組み、つまり因果律に基づく説明が重視されていることが挙げられる。
時系列に沿った説明では、出来事と次の出来事がどのようにつながるかによって因果関係が想起されるため、出来事を並べる順序が重要となる。この場合、原因と結果は語り手によって明確に特定されず、どの出来事が最も重要かという判断は聞き手に委ねられる。
一方、因果律による説明では、結果として特定された出来事が最も重要なものと位置づけられ、一連の出来事はその結果への寄与度によって序列化される。結果に直接関係しないと判断された出来事は、語り全体から省かれる。
特に伝え方を意識しない場合、日米ともに時系列による説明に寄りがちである。しかしアメリカでは、作文指導の中でさまざまな文章様式を「技術」として習得する訓練が行われており、その結果、因果律による納得の形成が社会的に普遍化している。一方、日本の作文指導では、多様な文章様式が一括して「作文」として扱われ、文章技術の習得よりも、共感や、作文を通して出来事に向き合うプロセスそのものが重視されている。
自分が特に意識することなく普遍的なものだと考えていた「納得の構造」に、社会的な価値規範の違いが反映されているという点が非常に興味深かった。また、説明のスタイルの違いを知ることで、自分の思考や表現を相対化するメタ的な視点を持てたことが、この本を読んだ一番の収穫だと感じた。