シッダールタムカジーのレビュー一覧
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ガンを取り巻く様々な分野からの視点が面白い。
医療の中でも外科的治療や化学療法も一枚岩ではなかったこと。そして緩和医療の気高い精神。科学や技術の発展が密接にガン治療にも関わっているということ。疫学はより客観的にがん医療を知るために必要だったこと。
シドニー・ファーバーらががん医療の発展のために奔走しているところも見どころ。医療の分野を飛び出し政治家や俳優、スポーツ選手にも働きかけ、広告塔を作り上げ、がん研究の礎となる基金を設立した。がん患者を助けると言う目的のため様々な手段を用いている点で、アフガニスタンの灌漑用水路の建設を進めた医師の中村哲さんが連想される。
本書は一貫して著者の“がん患者と -
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生物学に対する根源的な知的好奇心がこれでもかというほど満たされて震えるほど面白かった。
遺伝は、生命現象の神秘さと自らを形作る最小単位という身近さを併せ持っている。本書は、遺伝の解明の歴史書であるが、単なる科学史ではなく人類が自分の起源を語ろうとする壮大な物語である。遺伝の解明は科学の発展とともに、人間とは何かという自己の追求であり高揚感が抑えられなかった。
メンデルやダーウィンから始まり、ゴールトンやモーガンやワトソンやクリック、フランクリン、サンガーなどの科学的な偉業だけでなく、背景や野心、失敗、迷いなど人間的な面も余さず書かれていて良かった。
遺伝学の発展は、病気の解明や治療など多大な恩 -
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人間とは、細胞という生命の単位が形作る生態系であるという。その、細胞の物語。
細胞の発見から、最新の細胞治療の研究成果に至るまで、実に興味深い内容が語られる。そこには、科学者、医師、そして患者の織りなす壮大な歴史が紡がれる。
また、本書を読むことによって、実に多彩な細胞の性質について理解することができる。特に自律や生殖、代謝といった観点から細胞(系)の仕組みが、その解明に至る物語とともに語られる。
そして、「私のよりよいバージョン」。病気(例えば極端な低身長や筋肉量の減少)からの解放と、人間の特質の強化(身長を伸ばしたり筋肉量を増やす)の境界線は曖昧になっているという。医療とエンハンスメン境界 -
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『遺伝子 親愛なる人類史』感想文
本書『遺伝子 親愛なる人類史』は、遺伝子をテーマに、人類の過去・現在・未来を縦断的に見通す壮大な一冊でした。前半で語られるダーウィンやメンデルの話は、これまでどこかで聞いたことのある内容で、新鮮味には欠けましたが、遺伝子研究の原点を再確認するという意味では意義深いものでした。
その後に展開される優生学の話は、重く、心がざわつくような内容でした。人間が「よりよい子ども」を望むという欲求の先に、歴史的には数多くの悲劇があったことを改めて思い知らされます。特に、現代においてもその欲求は形を変えて存在し続けており、技術の進歩によってそれが実現可能になりつつあるとい -
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ネタバレビル・ゲイツがオススメしてたので購入。
おいおい、めちゃくちゃ面白いじゃんよ…!
「細胞」という深遠なテーマを、いくつかの部に分けてその歴史とシステムを紹介していく本作。医師である筆者だからこそ描けるリアリティと、深い知識に裏打ちされたエピソードは読む人をキチンと引き付ける。上下巻と分量は多かったけど、わりとスラスラ読めたかも。
特に面白かったのは「腐敗」の話。
「私達はなぜ生きながらにして腐敗しないのだろうか?」という問いは考えたこともなかったが、言われてみると確かに不思議な話だ。
(これはもちろん腐敗を行う微生物を免疫が退治しているから)
まとめは下巻の方で。同じ作者の「がん‐400 -
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ネタバレ「すべての細胞は細胞から生じる」というラテン語の格言から、あらゆる細胞の機能について語った下巻。
単純な機能のはずである「細胞」が、まとまり集団になることで「生命」というものを作り上げる。「がん細胞」といったイレギュラーはあっても、それですぐ死ぬことはない。
つまり「生命」にはある程度の裕度が存在するのだろう。このシステムが終わるには本文にあるように「損傷のもたらす猛烈な摩耗が治癒のエクスタシーを凌駕」しなければならない、というわけだな。
後編は主にがん細胞がメインなのだけど、こういった難病だからこそ「自己」や「修復」といった機能に対して解明の糸口となる。戦争こそが科学の発展を助けたという -
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本書を一読することで、遺伝学の歴史は人類の叡智による燦然たる科学の歩みであるとともに、人類史上とてつもなく大きな惨禍を伴ったものであることを理解することができる。そして、この科学の歩みは、既に私たちの仕様書の解読を終え、近い未来にアップデートさえしようとするところまで手が届いてることも理解することができる。そこには、遺伝学という科学的な問題だけでなく、深遠な哲学的かつ倫理学的な問いが突きつけられている。もし、自分の仕様書が解読できるなら、私はそれを望むのだろうか。子供がいたとして、子供の仕様書を解読するだろうか。解読したとしてその結果を子供に伝えるだろうか・・・。本書は、単なる遺伝学の歴史の概
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ネタバレ「遺伝子」なかなか難しい題材だが、科学的な部分と人類史との関わり合いの部分ととても分かりやすくてスムーズに読むことが出来た。科学的な部分では遺伝子・DNA・RNA・ゲノムなど、聞いたことはあるけど・・・な言葉もなんとなくイメージできどうそれが進歩してきたのかも興味深かった。また人類史との関わりについては遺伝子の研究が断種という考えからヒトラーにつながっていくところが衝撃的だったし科学者を理性的にさせるほど研究が恐ろしい結果につながりかねないということを知った。
遺伝情報の発現は必要性のためではなく、スイッチを何かが推すことによって起こる。多様性はバグではなく必要な進化の過程だと思えた。
下巻が -
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遺伝子はもともと得体のしれない科学であった。進化の研究が進むにつれて、遺伝子の存在が明らかになり、そこから遺伝子を利用した研究へと切り替わっていった。遺伝は父と母から半分ずつ受け取り、それが発現するかはわからない。時たまおきる突然変異が進化へと繋がっていく。遺伝子によってタンパク質が作られる。プラスミドに入れて、他の生物に注入できるようになって、遺伝子を改変することが可能になり、くすりなどかつくられるよになった。
遺伝を明らかにしたのはメンデルなどの細かい実験の賜物であった。遺伝子を完全に操ることは他のどの科学よりも生物の根源に関わってくるのだと感じた。 -
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現代に生きていて、"発がん性物質"という言葉を聞かずに一生を終えることは難しい。
『原因不明の不治の病を生じさせる』という空恐ろしい事実は、しかしその構造の不理解ゆえ、長らく見過ごされ、なんの対策もなされなかったどころか、明確な隠蔽にさえあった。
タバコのパッケージに警告文「喫煙は健康に害を及ぼします。」と記載されるようになったのはつい最近の出来事だと思いがちだが、ガンへの影響が初めて論文になったのが1761年、警告文の提案がなされたのは1964年、日本で記載されたのが2005年だ。
とはいえ、その因果関係を説明できないうえに、統計学すら発展途上であった時代の出来事とあって -
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「シクロホスファミド、シタラビン、プレドニゾン、アスパラギナーゼ、アドリアマイシン、チオグアニン、ビンクリスチン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート」
一つの薬につき一体どれだけの人々の命、生活、そして尊厳と正気が費やされたのだろう。
本書は単なるガンの歴史本ではなく、未知の病に対して人間がどう対処してきたのかを物語るルポルタージュだ。
存在自体は紀元前から記録されてきたが、人間の平均寿命が延びるにつれ、その特異性が顕在化されることとなったガン。
細胞が自発的な意志を獲得して分裂増殖する病的過形成への対策は、早期に完全に切除できなければ、
右耳は全く傷つけずに左耳だけを完全に再生不可能に -
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「ここ二十年間のあいだの驚くべきスパートのあいだに、科学者はすばらしい新世界 ― 悪性増殖を解き放つがん遺伝子やがん抑制遺伝子や、切れたり点座したりして遺伝子のキメラをつくる染色体や、細胞死を受けつけないシグナル経路からなる世界 ― のベールを取った。」
この後すぐに「しかし、がんの死亡率の減少につながった治療法の進歩はそうした新発見をまったく反映していなかった」と続くのだが、人間はがんとの闘いを着実に進めてきたは明白である。実際に、1990年から2005年にかけて、がんの死亡率は15%近く減少しているらしい。もちろん、その変化は、医学的治療の進歩だけではなく、ロビイングによる喫煙率の減少や -
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「がん」と、その治療に挑む医師・科学者と患者たちの間の長い物語。外科手術、化学療法、放射線療法、予防医療、など、「がん」から身体を守るための戦いの歴史が綴られる。医学的な探求だけでなく、黒胆汁がその原因とみなされていた古き時代の話から、政府やスポンサーから研究のためのサポートを引き出すためのロビイングの話も物語の中での重要なパーツとして描かれている。副題は"A Biography of Cancer"。まさしく、がんの「伝記」として成立している。著者はこの本のことを「真の意味での「伝記」であり、この不死の病の思考のなかに入り込んでその性質を理解し、その挙動を解明しようとする