井筒俊彦のレビュー一覧
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イスラーム文化をイスラーム的にたらしめているものは何か
イスラーム文化の独自性に迫る名著!
イスラームというと、時局的な事件や歴史的背景の解説にとどまることが多いが、本書はその根本にあるイスラーム教そのものに光を当てている。
キリスト教や仏教と並ぶ世界三大宗教の一つでありながら、現代でもたびたび社会を揺るがすイスラーム。その力強さの背景には、単なる信仰を超えて人々を動員する強大な教義がある。私自身、イスラームの「強さ」を人口増加や「子供を産み育てる」という行動様式に感じていたが、本書を通じてその一端に触れられたように思う。
印象に残ったポイント
1. 絶対帰依の宗教である
イスラームを -
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これは分かり易い。
井筒先生のまるで息遣いが伝わってくるような気がする素晴らしい本。
時を置いてまた読み直してみたい。
「『コーラン』を読む」という本だが、単に読むのではない、そこには「一つの与えられた言語テクストに対して解約学的操作が加えられなければならない」という高度な知的作業を行うというものだ。
7世紀のアラビアの砂漠に生まれた『コーラン』。日本人である我々との間には想像を遥かに超えた距離がある。そんなことももろともせず『コーラン』の読み方を解説する井筒先生に敬服する。どうしてこんなこのができるのか。30言語に堪能な語学の鬼才、井筒先生しかできない偉業だ。
『コーラン』は神のコトバ、 -
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河合隼雄さんののオススメの一冊なので読むことにしたが、数年来、途中で文章が入ってこなくなり読書が頓挫した、さすがに3度目のチャレンジで挫折したときは自己嫌悪になった。
しかし、読む姿勢を変えて4度目で成功?した。
その姿勢とは、宇宙の法則、つまりは「神の意志」と「人間の理性」の科学的な相関性について説いた「神々の沈黙 ジュリアン・ジェインズ」を事前に読んだからなのだ。実はこの本も河合隼雄さんのオススメ本。
この本のおかげで、「意識と本質」の読者としての立ち位置を変えることができたので、やっと「意識と本質」を最後まで読むことができた。
要は、この本のタイトルは「宗教の解体新書」なのだ。「神はいる -
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ロシアの文学史概観。著名な文学者の特徴や立ち位置を、その著書をピックアップして例示しながら説き明かしていく感じが、文学部の授業そのもので懐かしくなった。それらの作品をちゃんと読んでいたらもっと理解も深まったろうし楽しいと思う。読んでいなくても分かりやすかった。高尚なことを考えていながら何一つ実行できない「無用人」=ゴンチャロフのオブローモフ的な人、が一時代のキーワードになってくるけれど、それって夏目漱石の高等遊民に似てる気がした。トゥルゲーネフをもっと読んでみたい。ゴーゴリは、世俗の俗悪さを描こうとして描いているわけではないのか。トルストイはもっとキリスト教的な人かと思ったら、どちらかというと
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いやぁ、これまた滅茶苦茶面白かった
スンニーとシーアとスーフィズムなんて、ろくな説明聞いたことなかったけども、凄くわかった
例えば、
スンニー派は、コーランに描かれる世界の後半期であるメディナ期の方向性に近く、感覚的で現実主義的なアラブ社会的感覚にのっとった考えで、イスラーム法を守ることを至上とし、いわゆる顕教的にコーランに対する。
シーア派は、コーランの前半期のメッカ期的な感覚が強く、ゾロアスター教をルーツにもつ幻想的で神話的な世界観を持つイラン的なものであって、密教的にコーランに対する。ただ、密教的解釈ができるのは歴史的に承認されたイマームだけ。
スーフィズムは、密教的だけど、シーア派 -
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井筒俊彦氏(1914~1993年)は、日本で最初の『コーラン』の原典訳を刊行した、イスラーム学者、言語学者、東洋思想研究者。アラビア語、ペルシャ語、サンスクリット語、ギリシャ語等30以上の言語を流暢に操る語学の天才と言われ、多くの著作が英文で書かれていることから、欧米での評価も高い。
本書は、1981年に著者が行った講演を基に同年に出版された作品を、1991年に岩波文庫から再刊したものである。
本書は、副題に「その根柢にあるもの」と付けられているが、その意図について著者は、「「根柢にあるもの」と申しますのは、教科書風、あるいは概説書風に、イスラーム文化の全体を万遍なくひととおりご説明するのでな -
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ネタバレ帰省時に改めて読み直した。大学入って最初に読んだ本。半年かけて1/3くらいしか読めんくてそこで断念した。
わかりやすいのに、1時間かけて数ページしか読み進められないっていう内容のその密度と伏線の張り具合に対して半年かけて戦ったおかげで、読書へのキャパシティが異常にあがった。そのおかげでそれ以降本読むこと自体のハードルが異様に下がった。
無意識を通した文化、宗教、言語が人の捉え方にどう影響するかっていう内容自体、全て自明のもんだと思ってた自分にとって全て新しくて、それからの人の思考過程に対する興味はこの本が原体験になって派生した。
東洋の思想が豊かだったっていう主張も、西洋が一番かっこいいし進化 -
Posted by ブクログ
ネタバレこれまでに10冊ぐらい読んできた様々なイスラム教/ムスリム文化の解説書の中では一番読みやすかった。文庫サイズでここまで理路整然と論を展開する本に出合えるとは思っていなくて、嬉しい喜び。
アラブのスンニ派とイラン人(ペルシア人)のシーア派は対照的な信仰体系を持ち、内的矛盾を抱えているものの、その矛盾も包括して全てを統一しているのが「コーラン」であること。
コーランは神の言葉であるがそれを解釈するのは人間的な営みであり、どう読むかは個人の自由に任されていること。それによりイスラムの多様性、多層性が生まれていること。
コーランにおいては聖俗の区別はなく、すべての営みがイスラームの範囲に入るため