井筒俊彦のレビュー一覧
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井筒俊彦の文章が初めてわかりやすく感じて、何が書いてあるのか朧げに浮かび上がってきた。
若松英輔が新聞の文芸欄で井筒の偉業を解説して、柳田國男や折口信夫の巫女や神話の話、言語のもつ霊性、アラヤ識、大乗仏教や空海、禅や無の思想などのことを書いていたのが印象に残っていた。自分の読書体験のなかでも井筒の東洋哲学や思想がいろいろなところで目につき気になって仕方がなかった。そうした経緯で彼の著書『イスラーム思想史』が重要な必読書となっていた。しかし哲学と宗教の専門用語と彼一流の深い表現についていけず何度となく途中で読むのを諦めた。彼の思想は難しくて自分には理解するのは無理だと思い込んでいた。
なのに、 -
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イスラーム文化という壮大なテーマを、わずか1時間×3回に凝縮して語られた講演録である。書籍化するにあたって加筆修正もされているようであるが、もともと話し言葉で語られたものであるだけに、とてもわかりやすく、私は行間からいくつもの絵や図を想起した。
本書では、クルアーンやハディースなど聖典をめぐる問題、神と個人との関係から始まり、シャリーアといった法や倫理をめぐる問題、シーア派とスンニ派、イマームやスーフィズムに至るまで多岐にわたるテーマが出てくるが、それが紀元610年~622年のメッカ期と、622年~ムハンマドが亡くなる632年までのメディナ期という性格の異なる2つの時代にきれいに整理・収斂さ -
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六信。アッラー・天使・啓典・預言者・来世・予定を信じなさい。アッラー以外に神はなし(47:19)。ムハンマドはアッラーの使徒(48:29)。アッラーは全能(35:1)。神に並ぶものは存在しない(4:48)。
※ムハンマドは預言者・人間。神ではない。クルアーンの著者はあくまで神アッラー。アッラーが天使ジブリール(ガブリエル)を通じて、ムハンマドに伝えた内容。
※カリフは「ムハンマドの後継者」という意味。
※「アッラー」は固有名詞ではない。唯一神を意味する言葉。
※ラー・イラーハ・イッラッラー。ムハンマドゥッラスールッラー。
五行。信仰告白、礼拝、断食、喜捨、巡礼をしなさい。礼拝。決まった時間に -
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かなり興味深く面白いものの、井筒さんの知識量と引用範囲が広すぎて、時々著書の趣旨を見失いそうになる。後半の8、9、10あたりはかなり難解だった。
表層意識、深層意識。分節、無分節。などなど難しい言葉が結構出てくるものの、かなり丁寧に反復しながら言葉の説明をしてくれる印象。とにかく東洋思想の意識・本質の捉え方は、極めて多層的で反二元論的であることがわかった。サルトルの嘔吐、荘子の道など、読んでみたい本が多く出てきた。
普段自分がどのようにして事物を捉えているのか。言葉無くしてその物の存在を証明することは可能なのか。その物を表す言葉(名前)は何を持ってそれになるのか。つまり言葉には必ず本質が求 -
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意識とは何か?を知るに非常に勉強になりました。
著者はイスラム哲学、仏教、禅、老荘思想、儒学、ソクラテス、プラトンのイデア論などのあらゆる角度から意識の本質を説明します。
意識にも表層意識と深層意識があり、著者はこの深層意識に立ち現れてくる存在の実体と表層意識に現れる実体の違いなどを様々な思想をでかがりに、さまざまな角度から物の本質を媒介として意識の本質を説明します。
説明された内容はすでに概念化されているため、この概念化を脱した脱概念のむき出しの実在の本質について解き明かします。なかなか面白く手応えがある読み物ですが意識を知るに大変参考になりました。 -
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“言い換えますと、イスラーム法とは、神の意志に基づいて、人間が現世で生きていく上での行動の仕方、人間生活の正しいあり方を残りなく規定する一般規範の体系でありまして、それに正しく従って生きることがすなわち神の地上経綸に人間が参与することであり、それがまた同時に神に対する人間の信仰の具体的表現となるのでありまして、その意味でイスラーム法がすなわち宗教だといわれるのであります。“
例えば日本文化について3つのテーマから述べよ、と言われたら、仏教や神道などの宗教をテーマの一つに選ぶことはあるだろう。
しかし、法について、というのはどうだろう。
ちょっと思いつかない。
漠然とした「文化」なるものをどう -
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1981年、第2次石油ショック、イラン革命、イラン・イラク戦争の衝撃がおさらないなか、一般の人を対象とした講演を本にしたもの。
といっても時事的な話になるはずもなく、著者は、日本におけるイスラームがほとんど関心外であったことを指摘しつつ、その根源にあるイスラーム教の根本的な構造を明快に説明してくれる。
さすがに当時よりは、現在日本での一般的なイスラーム理解は進んだんだろうと思うのだが、それでも、知らなかったことをたくさんあった。
イスラーム文化というからには、やはりコーランが中心になって、それを絶対的な基準とするというところでの共通性がイスラーム社会にはあるのだが、その解釈の違いなどから -
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「イスラーム生誕」に続けて読んだ。これまたおもしろかった!
シャリーアに依拠するスンニー派(アラブ)と、ハキーカに基づくシーア派(イラン)、そしてハキーカそのものから発出する光の照射のうちに成立するスーフィズムの3つについて述べられている。
スンニー派とシーア派の違いについてよくわかった。かたや「外面への道」、かたや「内面への道」というまったく逆の道をたどるのだと。
スンニー派もシーア派も、現世を悪と考えるところまでは同じだが、シーア派は悪いスンニー派のように悪い現世を良くしようとはせず、現世に背を向ける。隠者、世捨て人として長い修行の道を行く。これが自己否定の道であり、これを突き詰めていくと