チャイナ ミエヴィルのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この小説をSFという範疇で語るのは非常にもったいない。SF的なミステリであり、小説である。(昔風に言えばslip stream、伴流文学である)。
二つの都市国家が同じ地域を占めているという状況でも十分に特殊ではある。加えて、その二つの国家は『壁』という物理的なもので仕切られているわけではなく、お互いに相手を見ない(見えない)物として扱う事で並立させているというのだ。
このシチュエーションだけで相当な物である。
加えて、相手の国を侵犯してしまった(特殊な状況下なので頻繁に起る)場合、『ブリーチ』(漂白とでもいえばいいのか)というどちらの国にも属さない公権力が存在するという。さらに複雑な状況で -
Posted by ブクログ
言語学の教科書では、まず言語名称目録観の否定、なんてことが書いてある。言語は実際の事物の名前のカタログではないということである。言語と事物が一対一対応することはなく、言語は言語で独自のシステムを形成しており、言語と事物は恣意的に結びつけられている。〈林檎〉が「リンゴ」と呼ばれるのはまったく何の必然性もないということである。うんぬん。
つまり言語は記号であり象徴であるということなのだが、事物と一対一対応しているような言語があったらどうする、とミエヴィルは考えたのではないだろうか。
原題は『エンバシータウン』、強いて訳せば「大使町」。作品の舞台となる都市である。
宇宙のあちこちに人類が植 -
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都市と都市、ヨーロッパのはし、バルカン半島のあたりにあると思われる二つの都市国家、ベジェルとウル・コーマは「地理的にはほぼ同じ位置を占める」。ほぼ同じ場所を占めるという紹介文の記述がまずわからなかった。いったいどういうことか。
それは『アンランダン』の裏ロンドンのように同じ場所だが異次元、というようなSF的に現実離れした設定ではまったくなく、実現可能だが政治的に現実離れした設定なのである。二つの国の国境はいわば双方の国民の心の中に画定されている。ベジェルの側からみると、完全にベジェルの土地である〈コンプリート〉な場所、まったく異国、すなわちウル・コーマの領土である〈アルター〉な場所、両者が -
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Posted by ブクログ
凄かった。面白かった。チャイナ・ミエヴィルの作品を全て読みたくなった。
幻想的かつ暗澹としたニュー・クロブゾンの都市描写、魔術学と科学を掛け合わせたとんでもないけど興味深い統一場理論、リメイドをはじめとした悪趣味感たっぷりの登場キャラクター達。ファンタジー、SF、ホラーの境界を行き来する感じでカオス的。
今まで感じたことが無い驚異と不快さと面白さが混じり合った読書感。でも何か懐かしい感じもする。
文庫で1100ページ以上のボリュームとディティールまでこだわった文章で読むのに時間が掛かったが、読んでいる間はこの世界観に浸れて本当に幸せだった。
良い意味でやりたい放題にガジェットや伏線を盛 -
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す、すごいお話だった…!
上巻とはうってかわって凄まじいスピードで物語が展開していきます。
夢蛾(スレイク・モス)のなんとおぞましい事か。
否応なく食物連鎖に組み込まれた生き物は、「捕食」は避けては通れない。
でも、この蛾の捕食シーンは思わず嫌悪感をもよおすほど><
大蜘蛛のウィーヴァーが良い味出してます。
信用のならない気まぐれな協力者。何故か惹き付けられる。
ヒーローと呼ぶには、あまりにも冴えないアイザックと、
ヒロインと呼ぶには、あまりにも異質なリン。(何しろ昆虫…)
そして、特別な立ち位置にある鳥人ヤガレク。
このままでは終わって欲しくない!続編に期待です。 -
Posted by ブクログ
なんだか「凄い」ものを読んでいる!!
こんなに節操のない(褒めてます。笑)作品、読んだ事がない。
人間、翼の生えた鳥人、昆虫人間、、、挙句の果てには、
身体の大部分を改造された、もはや人間とは言えない生き物。
猥雑で、グロテスクで、何もかもが混沌とした世界がとても魅力。
「ブレードランナー」を彷彿とさせますが、それよりも遥かに歪な世界。
次々と溢れ出るアイデアの奔流に、時折呑みこまれそうになります^^;
最初はかろうじて付いていく感じだったのですが、
アイザックの謎の芋虫が目覚めてからは、一気に引き込まれました。
下巻を読むのが楽しみです。 -
Posted by ブクログ
東南ヨーロッパにある、架空の地域が舞台になっている。この地域二つの都市が存在し、それぞれ違う民族の居住地があるのだが、一部については重なっている。そこでは、相手側の人々や建物などを見てはいけないし、もちろん干渉してはいけないというルールがある。これを破ることは「ブリーチ」と呼ばれる。またブリーチを取り締まり、裁く人たちもブリーチと呼ばれる。事件の発端は、遺棄された女性の遺体を見つけたこと。身元がわからない結果、もう一つの都市の住人らしいということがわかり、二つの都市をまたいでの捜索が行われる。二つの都市が重なっているという設定が面白いのだけれど、もしかすると、ここまで極端ではなくても似たような
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Posted by ブクログ
2つの都市国家が同じ位置にありながら、互いに見えないものとして人々が暮らしている。生まれたときから見ないように訓練している。都市は完全にこちらに属する部分、重なる部分があり、重なる部分では見ないふりをしながらぶつからない様に避けねばならず、とややこしいファンタジー設定。
しかし、冒頭は殺人事件現場で始まり主人公は警部補という大筋ではミステリ小説である。
前半は都市の設定を飲み込みつつ読むのが難しかったが、主人公や脇キャラに馴染みだし、物語が展開するにつれ引き込まれて加速した。ハードボイルドの刑事もののような読み心地とSFらしい世界観の不思議さを感じて満足度の高い読書だった。ラストの切なさも良い -
Posted by ブクログ
人類はは辺境の星で、「アリエカ人」と呼ばれる異星人と共存していた。
彼らの言語は特殊で意思疎通をするための「大使」と呼ばれるクローンを生成し、人類は平和に過ごしていたはずだった。
ところが、新任の「大使」エズ/ラーが登場したことにより、そのバランスが崩れ始める。エズ/ラーの言葉はアリエカ人にとって、麻薬に等しく、エズ/ラーもまたその事を知っていた。
そして徐々に、平和だった星が混乱に巻き込まれていく。
ほぼ逐語しか理解できない「アリエカ人」が暗喩を含んだ言語を獲得していくのはとても感動します。
ただ、理解しやすい話とは言えず、そこに至るまで読み通すのがわりと大変ですが・・・
思 -
Posted by ブクログ
帯でなく表紙へ大書されているように
SF関係の賞だけでなく世界幻想文学大賞も受賞している本
中身は解説にもある通りハードボイルド調の警察もので
この前読んだ「愛おしい骨」と同様に
翻訳を透してそれだけで文化の違い(というより日本が島ということか)を
感じる風な小説だが
舞台設定が奇抜でそこがSF側のこれがSFだと推挙するところである
「都市と星」というより「不確定世界の探偵物語」みたいな感じかと読んでいたが
これを書いてしまうと未読のひとにいらぬ先入観を与えそうで嫌だが
書かずにいられないので書くと
「メンインブラック」にしか見えない
一度そう思うとコメディにしか見えない
というわけで読んでい