日下明のレビュー一覧
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「注文の多い料理店」・「風の又三郎」・「セロひきのゴーシュ」・「銀河鉄道の夜」・「雨ニモマケズ」など、宮沢賢治の代表作14話と詩3編を一冊に収録された童話集です。
価格は少々高額ですが、日下明さんの美しいカラー絵と巻末には注釈や各話の解説が掲載されており、子どもから大人まで繰り返し楽しめる贅沢な一冊だと思います。
宮沢賢治の作品は、子供の頃に読んだ記憶があっても忘れてしまっていたり、作品のタイトルは知っていても実際には読んだことがない、という人が多いのではないでしょうか。
私もその1人で、今回あらためて作品に触れて、宮沢賢治の描く世界に心が洗われる思いがしました。
例えば代表作の「銀河鉄道の夜」。現代小説ばかり読んでいる自分にとっては、ちょっと戸惑うくらいの幻想的で美しい世界が描かれていて、ジョバンニとカンパネルラが列車の旅を通じて、本当の幸せとは何かを問いかけます。最後は自己犠牲の悲しい場面もありますが、最も印象深い作品でした。
自己犠牲といえば「なめとこ山の熊」という作品。宿命的な命のやり取りが描かれていて、何とも切なくなる話でした。
そして「注文の多い料理店」。読んでいる途中で話のオチに気づきつつも、食べる側と食べられる側、人間の奢りと愚かさを面白おかしく風刺した作品でした。
人間の愚かさという点で、弱い者いじめについて描かれていたのが、「よだかの星」と「猫の事務所」。
宮沢賢治の童話は、子供のときに読んでいても、大人になって読むとまたさらに新しい發見があり、何度でも読み返して楽しめる作品だと思います。
この本の一番最後に収録されているのが、あまりにも有名な詩「雨ニモマケズ」で、例えば
「ミンナニ デクノボートヨバレ
ホメラレモセズ クニモサレズ
ソウイウモノニ ワタシハナリタイ」
と、ちょっと自虐的な表現ながら、自身の理想の生き方を綴った作品と思われて、結局最後までより良く幸せに生きることを願っていた宮沢賢治なのだなと思いました。 -
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この秋は熊の目撃情報が私の住む町で毎日報道されています。熊騒動のなか、賢治のなめとこ山の熊が浮かびました。本屋さんで賢治の童話集と出会い早速購入しました。昔は人間の都合で狩猟され皮と熊の胆を売られていた熊が今では生活のためではなく人間の暮らしを脅かす為に退治の対象になっています。今年の猛暑は野生動物をはじめとした大自然の中で生きるもの達に大きな打撃を与えてしまったようです。いつもなら冬眠する熊が人里で食べ物を探し彷徨う姿は可哀想に見えます。人間の都合で温暖化し自然の摂理が乱れている地球を賢治が見たらどんな想いを抱きどんな物語を書くのでしょう。
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「生と死を見つめ、"ほんとうの幸"を問いつづけた宮沢賢治。不朽の名作『銀河鉄道の夜』をはじめ、人間の心理を紡いだ多彩な童話を美しく幻想的な絵で贈ります」
とにかく挿絵の日下明さんの絵が素敵。
表紙はカラーだが、中の挿絵もカラーでぜひ見てみたい。
子どもの頃いくつか読んではいたが、それはただ読んで内容をわかった気でいただけ。大人になると宮沢賢治の伝えたかったこと、考えていたことが少しわかったような気がした。
貧困や病気、弱いものいじめ、戦争。
童話の中でもたくさんの問題が出てくる。現代にもある問題ばかり。だからこそ、現代人が読むべき本なのかもしれない。
「どうかにくむことのできない敵を殺さないでいいように早くこの世界がなりますように、そのためならば、わたくしのからだなどは、何べんひきさかれてもかまいません」
【宮沢賢治 童話集】
猫の事務所/なめとこ山の熊/いちょうの実/山男の四月/烏の北斗七星/銀河鉄道の夜/星めぐりの歌(詩) -
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宮沢賢治記念館に行く予定があり、予習の為に購入。文庫本で読んだことのあるものもあったが、今回は小学生の子どもでも読めるようにとこちらを購入。
挿絵もあり、字も大きくとても読みやすかった。
子どもの頃は正直よくわかっていなかった宮沢賢治。大人になっても読み返してみるととても深くて面白い。
よだかの星でちょっと泣きそうになった。
宮沢賢治の育った岩手の情景や匂いや色まで感じられそうな作品がたくさんで、とてもよかった。
記念館に行くのが待ち遠しい。
【宮沢賢治 童話集】
注文の多い料理店/どんぐりと山猫/オツベルト象/ツェねずみ/やまなし/よだかの星/水仙月の四日/雪わたり/虔十公園林/セロひきのゴーシュ -
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テーマに沿った書下ろしのアンソロジーを刊行する女性作家の集まり『アミの会(仮)』
今回のテーマは「ラスト・メッセージ」
一冊で多様な作風を楽しめるのがアンソロジーの楽しみ。同じテーマなのに、驚くほどテイストは違う。
「もうひとつある 鷹宮家四訓」 大崎梢
地元の大企業を経営する旧家『鷹宮家』に伝わる四つの 家訓。後から加えられた五つ目の存在を調べる先輩を連れ、末端の分家の娘『絵茉』は本家を訪れる。
謙虚・礼儀・努力・和、しごく基本的でまっとうな家訓に加えられた意外なものとは、「女・子どもにはあとを継がせるべからず」という差別的(現代ではアウトか)なもので、絵茉も憤るのだが…。実は妹を好きな人と結婚させるために考えられたもので。
1作目を飾るにふさわしい、明るく優しい話。
「孤独の谷」近藤史恵
大学講師で風土病を研究している『白柳』のもとに、思いつめた様子の女子学生が現れる。彼女の出身の村では、誰かが謎の死をとげると家族もバラバラになり別の土地で暮らすのだと言う。しかも言葉の通じない異国だと聞き気になった白柳は、ある予測に辿り着く。
言語コミュニケーションにより死ぬ家系。理解できない言語圏に身を置くしかない絶対的な孤独。
「扉を開けて」篠田真由美
寄り付いたものや人の願いを叶える不思議な骨董屋『銀猫堂』。
『銭天堂』を思い出すようなお話。どうせ残すなら、良い思い出にこしたことはない。
「猫への遺言」柴田よしき
コロナで突然亡くなった夫が残した、読ませる気のなかった妻への手紙と猫への遺言。
知らない方が良かったのか悪かったのか。どちらにしても深い愛が伝わってくるちょっぴり切ない話。
「キノコ煙突と港の絵」長嶋恵美
十五年前にロシアから届いた、曾祖母宛の手紙。「預かりもの」とは何なのか。
戦時下の樺太で心を通わせていた二人の日本人少女。戻るのも残るのも命がけ。計り知れない苦労はあったのだろうが、晩年は穏やかに暮らせたようなのが良かったなと思った。
「十年日記」新津きよみ
母が日記に残した心残りと、落とし物の指輪が繋ぐ縁。
そんな都合のいい話がと思うかもしれないが、実際に落とし主と拾い主が結婚した知人がいるので、結構あることなのかも。優しい世界でほっこりする話。
「そのハッカーの名は」福田和代
権力者の不正を暴く凄腕ハッカーと、それを追う女刑事。
テンポが良く気楽に読めるミステリー。実は一緒に追っている部下が当のハッカーで…気づいているのに知らんぷりをするラストがちょっとカッコいいかも。
「みきにはえりぬ」松尾由美
『菩提樹』の歌詞に秘められた娘への伝言。
暗号物は苦手だけれど、十代のころ、何にでも運命を見つけてしまうような初々しさよく表れていた。
「青い封筒」松村比呂美
めっきり会話の減った高三の息子が気がかりな『真穂子』。倹約家の夫は止めろと言うが、週三回息子が連れてきた友人二人に夕飯を食べさせていた。
課題の礼状を息子が誰に宛てるのか、期待はするつもりがなくても母親としては気になるところだろう。だが以外にも不仲だと思っていた父親へ礼状を書いた息子。そして嫌われているのかと思っていた友人が自分宛てに感謝を綴ってくれた。心を温める食事同様に暖かい話。
「黄昏飛行 時の魔法編」光原百合
コミュニティFMで「黄昏飛行」のパーソナリティーを務める『麻尋』と冷静な上司で局長の会話。
言えなかった言葉…そりゃあ人間生きていれば逆に言わなきゃよかったも色々あるんじゃないかな。わかるようなわからないような話だったけど、メイン二人のキャラがいい具合に個性的で楽しく読めた。
「たからのちず」矢崎在美
可愛がってくれた祖母が自分に宛てて残した箱から出てきた家計簿。そこに挟まっていた「たからのちず」と書かれた地図の絵を見た瞬間に蘇る記憶。
たからのちずといちご水、謎を調べながら祖母との思い出を辿る。酸っぱみが勝るラズベリーのジュースは、亡き人との思い出のよう。
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ネタバレもうひとつある鷹宮家四訓/大崎梢
大切な人を思いやる気持ちが温かくて良い話だった。
孤独の谷/近藤史恵
言葉を使えば使うほど死に近づいていくなんて、なんと恐ろしい。。。本当に孤独で寂しい。ラストがちょっとホラーだった。
猫への遺言/柴田よしき
コロナで急逝した夫が隠していた秘密が、読まれるはずのなかった遺言書によって妻が知ることになってしまう。なんとも言えないが、夫に共感できるところはあるなぁ。
十年日記/新津きよみ
良い話。すごくホッコリした。真央さんにまんまとやられた。ってか勝手に勘違いした。
そのハッカーの名は/福田和代
ネタバラシの前に見抜けなかったのめっちゃ悔しい!
青い封筒/松村比呂美
手紙って良いよね。不器用な男子高校生の純朴な一面にほっこりする。父親ってのはほんといいかっこしぃだな。
久々に短編集読んだ。たまにはいいかも。 -
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アミの会(仮)のアンソロジー。書き下ろしが毎度のことながら嬉しい。
11人の11の話。きっとお好みがあるはず。
私のおすすめは、「猫への遺言」「十年日記」「青い封筒」。
「猫への遺言」は、亡くなった夫からの手紙。
知りたくなかった秘密が明かされて、胸が痛む。
それは妻の側からの痛みだが、一方で夫の心も少しわかる気がする。
夫の方の胸の痛みは、甘やかな痛みと、突き刺さるような痛みの2種類。
生きていれば、そういうこともあろうか、と思ってしまう。
最後に伝えられる愛の言葉は、明かされた秘密への悲しみを癒してくれるだろうか。
それとも、それはそれ、なのだろうか。
わたしは、それも含めて、やっぱり夫を愛している、という意味だと思いたい。
「十年日記」は、最後にひっくり返されて嬉しい驚きだった。
これは文章だからこそ、だなぁ…
そして、無くした指輪が収まるべきところへ収まったのは、実に胸熱。
初っ端からいきなり日記が途切れるのでどうなることかと思ったが、綺麗な着地で、こんな文が書いてみたい、そんな野望がむくむく。
「青い封筒」は、亭主関白な父親と、思春期真っ只中の息子と。
夕飯を食べていくのに睨め付ける流ような目で見る息子の友達。
これ、嫌な方向にいかないといいなぁ…とドキドキしていたが、涙あふれる展開。
あんまりにも感動して、寝ている子供を抱きしめたり撫でたりしていた。
嫌なこともいっぱいあるけれど、子供って良いなぁ、いい子に育っていてくれているなぁ、世界で一番可愛いなぁと胸がいっぱいになった早朝のこと。