羽生飛鳥のレビュー一覧
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「蝶として死す」から11年、福原遷都と富士川の戦い大敗で揺れ動く清盛一門で起きた事件に異母弟・頼盛が再び挑む。
平家一門にとって不吉と思われる夢を見た青侍(身分が低い若侍)が逃亡、清盛から捕縛を命じられた頼盛。家人の報告で青侍が清盛邸に逃げ込んだことを知り、清盛に邸内探索の許可を得ようと乗り込むが、何故か清盛に碁を誘われたり清盛の息子たちによる富士川の戦い大敗の報告などで探索が出来ない。
吹雪により清盛邸に泊まり込んだ一同だが、その翌朝、清盛の枕元にあった小長刀が消え、さらに青侍が塀の外でバラバラ遺体となって発見される。
本を開くといきなり清盛邸の見取り図があり、わくわくする。
バラバラ遺体の周囲の雪に足跡がなかったり、密室状態の祈祷所で巫女が逆さ吊りにされたり、清盛の枕元から刀を盗まれたりと、本格ミステリーっぽい要素が満載。
一方で、不吉な夢や化鳥に天狗、神仏や死の穢れという当時ならではの背景もある。しかしそれもこの犯罪を形作る重要な要素となる。
特に死による穢れは興味深い。
邸内で五体満足の遺体があると30日、手足などの一部でも7日間は『物忌み』といって家に籠らなければならない。
また死体を門から出すと門が穢れて使えなくなるので、葬儀などで死体を家から出す場合は塀の一部を壊して出したり、塀に梯子を掛けて乗り越えて出したりしなければならない。
さらには自宅に穢れを生じさせないため、屍を路上や空き地に捨てていく習慣まであったというから恐ろしい。
当時の京都に死体が散乱していたというのは戦だけでなくてこういう習慣や考え方があったからかと思うと戦慄する。
前作から11年たったこの作品でも、頼盛は清盛やその息子たち(特に知盛・重衡)からは謀反を疑われている。
というのは、頼盛の母・池禅尼は源頼朝の助命嘆願をしているし、池禅尼の兄は牧の方の父・牧宗親(大河ドラマでは兄だが、父との説もあるらしい また池禅尼の兄との説もあるらしい)なのだ。その縁で頼朝の監視は池殿流平家(頼盛)と北条時政が担っている。
頼朝蜂起に頼盛が関わっているのではないかと疑われるのも無理はない。
そんな中で起こった殺人事件や小長刀盗難事件。知盛らの厳しい目に見つめられながらという厳しい状況で頼盛は自分や家の子郎党を守るために事件のなぞ解きに挑む。
事件の真相や動機は予想が出来た部分と驚かされた部分あって楽しめた。ネタバレになってしまうので詳しく書けないのが辛いが史実ともうまく絡めてあって面白かった。
タイトルである『揺籃』とはゆりかごのことらしい。
大河ドラマでもバタバタしていた感の福原遷都については興味深かった。
そして頼盛。実際の頼盛がどういう人だったのかは分からないが、ここに描かれる頼盛は相当の知恵者だ。清盛、知盛らの厳しい目をかいくぐり、いかに自分たちが生き残るかを必死に考えている。そして最後のシーン。
壇ノ浦後も唯一生き残ったという説も納得の周到さ。
一時頼朝を頼って鎌倉にいたこともあるらしいから、ドロドロの権力争い真っただ中の鎌倉で再び事件解決に挑むなんて姿も見てみたいが、さらなる続編はあるだろうか。 -
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ネタバレ鎌倉幕府第3代執権・北条泰時と連署で叔父の時房、文士で評定衆の三善康連が「御成敗式目」を作る中で、様々な過去の事件とその結末を描く連作集。
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の世界が甦るような、ドロドロしたものを感じた。
クローズド・サークルものや一見不可能な殺人事件など、ミステリーとして楽しめた。
探偵役が時房だったり泰時だったりというのも面白い。
だが真の謎解きは最終話にあった。
全編を通じて登場するある人物がキーになるのかと注目していたが、さてどうなるか。
『血みどろになっても戦い続けたのは、世の中をよくする善政を求めてのことだ』
人心はどこに付いていくのか、どこに集まるのか。
式目を作っても善政でもないという結論が印象的だった。
それを知って泰時と時房が絶望するのではなく、新たな決意をするのも興味深い。2人はどこまでも前向き。 -
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最近お気に入りの作家さん。
嬉しい続編だった。
平家一門の生き残り・平保盛と、父・俊成と共に勅撰和歌集の編纂をしている歌人の藤原定家、二人がバディとして都で起こる様々な事件を解決していく。
今回もまた、この時代なら穢れが~、鬼が~と恐れ慄きそうな残酷な事件が立て続けに起こる。
卒塔婆が突き刺さった状態で発見された遺体に、庭にばらまかれた夥しい遺体の手、空を飛ぶ遺体に、木の上に晒された上に手の指を全て切り取られた遺体…。そしてそれらの事件を画策したらしい『詠み人知らず』とは。
保盛は亡き父・頼盛に教わった検死の技で事件を紐解くヒントを差し出し、定家が事件の状況と共に読み解いて、事件の真相を明らかにするという構図が新鮮で面白い。
この時代、死に触れることはご法度。そのため検死と言っても直接触れることはせずに扇や懐紙を使ったり、事件現場に近づくために地に足を付けないために牛車で乗り入れたりという豆知識も知れて興味深い。
定家の和歌に対する思い入れの深さ、情熱は相変わらずで『弾指すべし~!』が前作同様何度も登場して笑ってしまう。
一方で、作中登場する有名な和歌の解説をしてくれるので、そういう様々な解釈があるのかと感心した。
和歌には全く詳しくない私でも楽しめた。
事件の構図は途中で幾度も変わって、中だるみなく読めた。最終的には途中で目星をつけていた人が黒幕ではあったが、どう決着を付けるのかと注目しながら読んだ。
定家らしい決着で良かった。
そして保盛も、最初は平家の生き残りが上手いこと世渡りをしていると思われるのが嫌で、目立たぬようにしていたのが、『生き永らえれば、大抵のことは挽回できる』というように腹が座ってきたのが頼もしい。 -
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平清盛の異母弟・平頼盛、歌人・藤原定家を探偵役として謎解きに挑む形式の作品が楽しくて読んできた作家さんだが、今回は趣向を変えて、足利兄弟を西園寺名子から見つめた歴史ものとなっている。
太平記は大河ドラマでも視聴したし、足利兄弟の話はいくつか小説でも読んだが、やはり足利尊氏という人間は掴みどころがない印象。
この作品での後醍醐天皇はまったく良いところなしといった感じで、周囲を振り回すだけ振り回したうえに、亡くなったあともまだ多くの人たちの人生に影響している。
今回初めて西園寺家について知ったのは収穫。
摂関家に次ぐ『清華家』という格の高い家柄であり、それだけに権力争いに深く関わり、特にこの作品の舞台である南北朝時代のように最高権力者である天皇がコロコロ変わることによって振り回された歴史を興味深く読んだ。
そして西園寺公宗(きんしゅう)の妻となった名子(なかこ)は、清華家より三階級も下の『名家』日野家の出ということで、何かと辛い立場になっている。
幸い、夫の公宗や姑や周囲の女性たちが優しく援助もしてくれる人なので助かっている。
いつの時代も人間関係が大事なのだなと感じる。とくに名子のような立場の者にとっては格と経済力のある人との繋がりは絶対だ。
ドラマや小説ではさらっと流されることの多い、公宗と北条泰家が起こした後醍醐天皇暗殺未遂事件がクローズアップされるのも興味深かった。
後醍醐天皇によって廃位させられる光厳天皇の典司であった名子だからこそ、夫が処刑されるのを目の当たりにしても、その後の西園寺家の主権争いにしても、実家である日野家の数々の災難にしても乗り切ることが出来たのだろう。
それにしてもこの政争の執念深さは凄まじい。
これまでの羽生さんの作品からして名子を探偵役に、様々な事件の謎解きが行われるのかと思っていたら歴史ドラマだった。
夫・公宗とその弟の公重との兄弟関係と足利兄弟を比較しながら二組の兄弟が辿った運命を見つめている。
だが史実では最後の最後に足利兄弟も残酷な仲違いをしている。そこにどんな真相があったのか。
これまでの羽生作品のようなテイストを期待すると肩透かしかも。
やがて日野家の子孫が8代将軍足利義満の妻となり、西園寺家の子孫が近代日本で内閣総理大臣となるのかと思うと感慨深い。 -
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最近お気に入りの作家さんの新刊。
これまで平清盛の異母弟・平頼盛、歌人・藤原定家を探偵役として謎解きに挑む形式の作品が続いてきたが、今回は趣向を変えてある。
主人公はかつて伝説の盗賊・小殿(ことの)と呼ばれ、今は検非違使の奉公人となった老人。
彼が盗賊時代のエピソードを客人である橘成季、明けの明星と呼ばれる訳ありの若き僧侶らに語りながら、謎かけをする。
貴族の家から身体検査を潜り抜けいかにして真珠を盗み出したのか。
刃物を持たぬ悪僧が、どうやって仲間の僧の喉を切り裂いたのか。
船の中で次々仲間たちを殺していくのは敵対する海賊なのか、それとも船の中にいる仲間の誰かなのか。
書庫に閉じ込められるという窮地に陥りながら、いかにして源氏物語全巻を盗み脱出したのか。
そして盗賊になるきっかけとなった叔父殺しはどのようにして成し遂げたのか。
聞き手が運慶、栄西、慈円、後鳥羽上皇に、かつての探偵役まで登場して楽しい。
ただ何となく明けの明星はあの人なのかな、と思いつつ読んでいたら、最後の話がまさしくあの歴史的事件を彷彿とさせる話だったのでやはりそうかと思ってしまった。
小殿はかつての自分の所業を深く悔やみ、武勇伝としてではなく悪行悪果として語っているのだが、周囲の人々、特に明けの明星にとってはそのようには受け止めてはいないようだ。
毎回謎かけを楽しみに聞いているし、結局は解けないのだけれどああでもないこうでもないと考えることを楽しんでいるようだ。
一人上皇はいくつかの考えを披露し、近いところまで行っているが真実を言い当てるところまでには行かない。
小殿がどのように自分の悪行を悔やみ、自ら検非違使の元に名乗り出ることにしたのかは明かされていない。
だがそれなりのきっかけがあったのだろうとは思われる。
通りすがりの女性が心配し優しくかけた言葉が小殿を盗賊にし、その悪行を悔やんで検非違使に名乗り出れば、罰せられることなく許され、検非違使の元で穏やかに暮らしている。
だがそのことで小殿は余計に苦しみ、そのエピソードを語ることで悪行が何かしらの善果になれば良いと願っている。
だが結局それは違う方向に行ってしまう。
何とも不思議な読後感の物語だった。
その中でもかつての探偵役が年を取ってもそのままのキャラクターでいてくれて、彼らしい罰を小殿に与えたのは少し救いだった。 -
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平清盛の異母弟・池大納言・頼盛を主人公としたミステリー・タッチの歴史小説は実にユニーク。平清盛の配下の若者の殺しの背景、高倉天皇の愛娼の死、源義仲の依頼による斉藤実盛の屍体の分別、源頼朝の娘・大姫の謎の行動の真相、北条時政の依頼による清盛の曾孫・六代の行方探索などの事件・課題に取り組んでいく。頼盛が名探偵としての活躍をするという物語は楽しく読めたが、どこまでが事実なのか?平家一門きっての知恵者は兄・平清盛から疎まれて、一門を裏切ったという前提そのものが、そうなのか?高倉天皇、義仲、頼朝、時政との会話の場面が実際にあったのだろうか?小説としては面白かった。
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『吾妻鏡』に記録された選りすぐりの人物50人を紹介。
それは、ツッコミどころ満載の個性と特異性溢れる者たち。
有名人の意外な一面・・・源頼朝、源義経、北条義時など。
一芸に秀でた人々・・・小山朝政、結城朝光、工藤祐経など。
超人枠・・・畠山重忠、三浦義明、佐々木盛綱、平経盛など。
枠にはまらない人々・・・熊谷直実、仁田忠常、北条朝時など。
参考文献有り。
『吾妻鏡』は鎌倉幕府の1180~1260年の事績を編年体で
記した、政権の記録である。しかも史料でもある・・・けれど、
鎌倉幕府に関わった人々の記録が何だか面白過ぎる。
チャラ男の真の素顔は、超絶有能な武士の、北条時房。
承久の乱終結後に後鳥羽上皇の院宣が読めた、藤田能国。
って、5000人の武士が読めなかったことを記録しちゃうのか・・・。
鼓を打てても敵を討てないへなちょこの工藤祐経と、
鼓名人で世渡りも名人過ぎる平知康の、差。
超人バトルコミックの登場人物の如し、和田一族と仲間たち。
ファンタジーの勇者?だが現実社会での最期は残念な、仁田忠常。
軽いノリとツッコミでサクサク読めます。
実際、『吾妻鏡』ではどう書かれているのかも気になります。
現代語訳、読んでみようかと思っちゃいました。