夫馬賢治のレビュー一覧
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ネタバレ<目次>
まえがき
第1章 顕在化した気候変動の猛威
第2章 迫りくる食料危機の実態
第3章 消える森林と食品・小売企業への影響
第4章 食卓から魚が消える日
第5章 水をめぐる社会紛争~日本は世界有数の水リスクにさらされている
第6章 感染症の未来~コロナの次のリスクはどこに
第7章 世界のパワーソフト~日米欧の中間層割合が5割から3割に激減
第8章 サプライチェーンのグルーバル化と人権問題
第9章 メガトレンドの理解度が勝敗を決する時代へ
<内容>
ESG投資とは、E=環境、S=社会、G=コーポレートガバナンスを指す。企業や機関投資家がESG投資を気にしたり、投資したりするのは、SDG'sを「トレンド」としているわけではなく、これをないがしろにすると実際に企業の経営にダメージが及ぶと理解しているからだ。その点で、日本の企業はやはり「ガラパゴス」で、それよりも近視眼的な「利益優先」と考えている気がする。それがさらに沈没の要因となっているようだ(本書でもユニクロ・ソニーなどは手を打っていると記載がある)。この本は、そうした視点から、環境や社会問題を8つの分野に分けて、データを駆使しながら説明している。大変役に立つ。 -
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夫馬賢治氏は、2004年東大教養学部卒、サンダーバード国際経営大学院MBA修了、ハーバード大学大学院(サステイナビリティ専攻)修士。サステナビリティ経営やESG投資に関するコンサルティング会社(株)ニューラルの創業者・代表取締役CEO。環境省ESGファイナンス・アワード選定委員や国際会議での有識者委員を歴任。各種メディアへの出演・寄稿等多数。
本書の内容は、題名の通り、様々なデータの分析に基づいて2030年に予想される地球のすがたを示したものであるが、一つの特徴は、サステナビリティを専門とした著者によるものであるという点だ。
サステナビリティという単語は、国連が2015年にSDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)という世界共通の2030年目標を公表したことにより、ここ数年広く知られるようになったが、そのSDGsでは具体的に、「貧困をなくそう」、「飢餓をゼロに」、「安産な水とトイレを世界中に」、「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、「人や国の不平等をなくそう」、「つくる責任 つかう責任」、「気候変動に具体的な対策を」、「海の豊かさを守ろう」、「陸の豊かさも守ろう」、「平和と公正をすべての人に」などの17のゴールが設定されている。(17色のカラフルなリング状のバッジを胸につけている人も多くなった)
そして、本書では、そのSDGsの中でも、特に危機感が強いとされる、①気候変動、②農業、③森林、④水産、➄水、⑥感染症、➆パワーシフト(世界の人口移動)⑧労働・人権の8つの分野を取り上げて、グローバルに共通認識になりつつあるデータを基に、現状と今後の見通しを俯瞰し、それぞれのテーマについて、
①国際機関の予測では海面が5m上昇し、東京も大阪も海に沈むリスクを抱える(2300年見通し)。
②既に主要国政府は食糧危機シミュレーションを始めている。
③森林を保護しなければ、そう遠くないうちにコーヒーもチョコレートも生産できなくなる。
④日本近海では水産魚種の半数以上が絶滅に近づいており、各家庭まで届かない事態が現実のものになる。
➄日本の豊かな生活は海外の水資源に依存しており、グローバルな水不足が影響する可能性がある。
⑥パンデミックリスクはますます増加する。
➆今後30年で日本市場の世界に占める割合は5分の1に激減する。
⑧日本のデパートに並んでいる商品も奴隷労働に関わっているものが少なくない。
というメッセージを出している。
具体的な内容は、これまでも様々な情報メディアで見るものが多く、さほど目新しさはないが、上記のような(敢えて)衝撃的かつわかりやすいメッセージを付加しつつ、コンパクトにまとめている点では、相応の意味のある一冊と思う。
(2020年9月了) -
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最初に提示されるフレームワークがすべて。オールド資本主義、脱資本主義といった、環境か利益か、を二項対立で捉える従来の考え方から、利益と環境が両立するニュー資本主義へ。
不況期こそESG思考の真価が問われる。コロナ対応でもリーマンショック時の短期的な雇用調整と自社株買い、貸し渋りとは異なる動きになっている。自社株買い禁止、休業補償、パートナー支援、医療機関への寄付、融資枠の拡大、リモートなどの転換。人類全体の問題であるパンデミックに対する戦いこれこそ長期的な視点では利益となる、という考え方
・オールド資本主義 利益至上主義 対 脱資本主義の対立構造から、環境社会への影響を考慮すると利益が増えるニュー資本主義、これがESG投資
・機関投資家の受託者責任の解釈の広がり
・リーマンショックが欧米の経営のサステナビリティやリスクに目を向けさせた
・不況期こそESG思考の真価が問われる。コロナ対応でもリーマンショック時の短期的な雇用調整と自社株買い、貸し渋りとは異なる動きになっている。自社株買い禁止、休業補償、パートナー支援、医療機関への寄付、融資枠の拡大、リモートなどの転換。人類全体の問題であるパンデミックに対する戦いこれこそ長期的な視点では利益となる、という考え方 -
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ESGが単なる流行りの概念やコスト要因として片手間に対応するような対象ではなく、大企業だけでなく中小企業も本腰を入れて取り組まないと選ばれなくなるような重要概念であることを再確認できた。
Z世代のエシカル志向の傾向や、投資家のESG配慮行動など、ビジネスをめぐる環境は大きく変わっており、企業活動が変わることで社会も世界も良くなるようになるべきだ。その圧力がESGであり、フリをするだけのウォッシュは最も忌避される行動である。
ESG機運の高まりをコストではなくチャンスと捉え、非財務情報の積極的な開示や、ESG目標の設定を通じて社会にアピールし、意識浸透や役員報酬連動などで取り組んでいくべきということ。 -
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夫馬賢治氏は、2004年東大教養学部卒、サンダーバード国際経営大学院MBA修了、ハーバード大学大学院(サステイナビリティ専攻)修士。サステナビリティ経営やESG投資に関するコンサルティング会社(株)ニューラルの創業者・代表取締役CEO。信州大学特任教授。環境省ESGファイナンス・アワード選定委員や国際会議での有識者委員を歴任。各種メディアへの出演・寄稿等多数。
私は以前から、世界的な諸問題(経済格差の拡大や気候・環境・食料問題に留まらす、ゲノムテクノロジーやAIの問題をも含む)の主たる原因の一つである行き過ぎた資本主義(≒新自由主義)に問題意識を持ち、ジョセフ・スティグリッツ、水野和夫、トマ・ピケティ、広井良典、斎藤幸平、セルジュ・ラトゥーシュらの著書や、経済思想史に関する本を読んできた。尚、SDGsを扱った夫馬氏の『データでわかる2030年 地球のすがた』も読んでいる。
本書は、2000年以降、プラネタリー・バウンダリーの観点から 資本主義が大きな変貌を遂げていることを示し、我々が今後どのような心構えを持って進むべきなのかを提言するものである。
◆「プラネタリー・バウンダリー」の考え方(気候変動他の9つの観点から、地球が持つ本来の環境処理能力と現状を分析したもの)は、人間社会が産業革命以降に環境破壊を引き起こしたことを示してはいるが、資本主義が嫌いな思想家たちが主張している「産業革命(=資本主義)が環境破壊を引き起こした」という因果関係は科学的に正しくない。その本当の原因は、(産業革命開始時から)6.7倍に増えた人口の増加と、食料の消費カロリーの増加、多様なエネルギー源の増加、鉱物資源消費量の増加等のライフサイクルの変化である。
◆世界の人口を人為的に減らすことができない以上、全体の資源消費量を減らすには、イノベーションにより一人当たりの資源消費量を大幅に削減するしかない。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学―政策プラットフォーム)の最新報告や、プラネタリー・バウンダリーを提唱したロックストローム博士の最近のシミュレーションによれば、イノベーションのほか、様々な社会変革を進めることによって、経済(指標)と環境(指標)を「デカップリング(=切り離すこと)」し、環境指標を環境限界値以下にすること(=絶対的デカップリング)は可能である。
◆1990年代までの資本主義は、環境・社会への影響を考慮することは「利益減少」につながり、それに「反対」するという考え方(オールド資本主義)だったが、2000年以降の資本主義は、環境・社会への影響を考慮することは「利益増加」につながり、それに「賛成」するという考え方(ニュー資本主義)に大きな変貌を遂げた。そして、「ニュー資本主義」を牽引するのは、サステナビリティ経営、ESG投資、CSV(共通価値創造)、長期志向経営を重視する、グローバル企業や機関投資家達である。そして、この2軸で分けると、「脱資本主義」は、環境・社会への影響を考慮することには「賛成」するが、それは「利益減少」につながるため、資本主義そのものから脱却するしかないとする考え方であり、「陰謀論」は、環境・社会への影響を考慮することには「利益増加」につながるかもしれないが、それは自分たちと関係がない他人の利益であり、従ってそれに「反対」するという考え方である。
◆上記の「ニュー資本主義」を推進するために、企業はイノベーションを発揮し、機関投資家や金融機関はカーボンニュートラルやネイチャーポジティブを希求し、メディアは正しい情報を伝えて社会を動かし、政府は長期的政策と短期的政策を上手く舵取りする必要がある。そして我々個人は、資本家として、有権者として、消費者として、多くの役割を果たさなければならない。
著者は、まさに私のような資本主義懐疑論者(「=社会主義者」ではない)の認識・理解不足を批判し、ポジティブな見通しを示しているわけだが、私にはやはり違和感が残る。というのは、イノベーションの効果は当然認めるにしても、資本主義の本質が「パイの拡大と取り合い」にあるのだとすれば、やはりどこかで限界に突き当たるし、限界に突き当たるまででも富の偏在は解消することはできない。また、仮に「拡大と取り合い」のルールを変えることができたとすれば(程度にもよるが)、それはもはや「資本主義」とは呼ばないはずだ。
著者は経済学者ではないため、そのあたりの説明に物足りなさが残るのだが、一つの主張を知ることができる一冊ではあった。
(2023年3月了)