山本七平のレビュー一覧
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確か適菜収氏の本で紹介されていて著者のことを知り、今回はじめて読むことが出来た。著者紹介のページを読むと山本書店を立ち上げ店主として主に聖書関係の出版物を刊行する傍ら評論家としても活動を続ける。とあって驚いた。まさに本書で紹介されている石田梅岩とそっくりではないか。梅岩は商家で番頭をしながら私塾を開いて後進を育てていった。それに対して著者は出版を通じて明晰な評論を世間に広く知らしめている。そのどちらもいわゆる市井の人として生きながら知り得た知識や考え方を惜しげもなく社会に還元している。この庶民の意識の高さが仕事を精神的行為として捉える「モーレツ」社員を生み出すのだろう。もちろん長所は同時に短所
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Posted by ブクログ
徳川家康観に新しい側面から光を当てた評論。
一般には腹黒いだの狸オヤジだの論評が定着している家康が、置かれた状況の中での彼の考え方のロジックが理解できれば、その評は間違っていることが分かるはずだと繰り返し説く。
家康は幼少の頃人質として扱われていたのは誰しも知っていることではあるが、「人質」は今のぼくらが感じるニュアンスとは少々異なり、むしろ安全な位置にいたのだとの指摘には、なるほどそういう見方もあったのかと軽く驚いた。(全面的に賛意するわけではないけど)
著者の見解の裏付けとなる当時の文書が縦横無尽に夥しく引用されている。少し古い文章を読む力がなければ幾分敷居が高いと感じられる本では -
Posted by ブクログ
高校生のころから読もうと思っていたのに毎回難しすぎて挫折していた本でしたが、やっとのことで読み終えました。山本氏の著書は全て現在の日本の社会状況にも敷衍して考察ができるものばかりなので好んで読んでいますが、昭和の歴史観・時代観への知識が深まることでさらに読みやすくなった気がします。
第7章の「芸」の絶対化と量については現代の企業社会にも多くあてはまるところで、「マクドナルド型」の経営を再度勉強してみたいと思う部分でもありました。また、11章の『不合理性と合理性』についても首肯する部分が多かったです。
西郷隆盛の例を出したあたりはあまりの十年一日振りに苦笑するばかりでした。良くも悪くも日本の歴史 -
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了雲は、その最後にあたって、梅岩に、自分が注を施した書をすべて与えよう、と言った。これは今でもたいへんに名誉なことであろうが、師からの伝授を何よりも重んじた徳川時代には、まさに絶対的で、いわば「了雲学派」の代表という位置を譲られることである。ところが、梅岩はきわめてそっけなく、いりませんと言った。了雲がなぜかと問うと梅岩は「われ事にあたらば新に述ぶるなり。」と答え、了雲もまた、この答えを喜んだと伝えられる。(…)最終的には、自ら考えて自らの思想を述べるのが、彼の目的であった。120
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小松氏にはゲリラとも話し合いができた。そして結局、ゲリラとの話し合いのできる人間だけが、対日協力者とも話し合いができ、相互に納得できる了解に達しうることができたわけである。147
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だれ一人として、「彼らには彼らの生き方・考え方がある。そしてそれは、この国の風土と歴史に根ざした、それなりの合理性があるのだから、まずそれを知って、われわれの生き方との共通項を探ってみようではないか」とは言わなかった。従って、一切の対話はなく、いわば「文化的無条件降伏」を強いたわけである。1