矢島暁子のレビュー一覧
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ネタバレ「アーモンド」、「三十の反撃」のソン・ウォンピョンさんの恋愛小説。四人の男女の心を繊細に描写している。イェジン、父親が子牛を売ったお金で買ってくれた大きなプレゼントボックスに入っていたピラミッドの形の三角プリズム、それを一番気に入っていた。光を虹にかえる魔法のおもちゃ。でも棚の上に置き忘れたそれを見つけて取るときに取り落とし、足の甲に落ちた時の痛さと脚についたひっかき傷。美しすぎるものはいつか傷を残すのか…。ランチタイムの休憩に外でコーヒーを飲んでいてよく見かける人がドウォンだった。ただそれだけだったのだが…。ドウォンの携帯にスミンのメッセージがもう九通目。返信がほしいというメッセージだ。ドウォンは映画の音響に関わる仕事をしている。毎日地下のスタジオに籠りきり。ようやく外に出て、いつもの場所でコーヒーを飲むことにしている。その時に出会ったのがイェジンだった。同じビルの玩具メーカーで働いているという…。ジェインのベーカリーで働いているホゲは、オフ会でイェジンと知り合った。偶然四人が出会った時、ドウォンとジェィンは十年ぶりに再会したのだった。四人の出会いでお互いの人間関係が変っていく。相手を思いながら、それでも知らずに相手を傷つけていく。それぞれの心が繊細に描かれていて、何故だか読む自分の心もちょっと痛い。
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4人の男女の季節と共にゆらめき移ろいゆく関係性を、繊細に、けれど明快に描き上げた作品です。
それぞれの持つ個性、抱えていた過去、今も持つ秘密。それらが、芽生えた恋情を後押ししたり、邪魔をしたり影響させていく。「とにかく好きだから」でなんとかなった(かもしれない)十代ではない彼らは、だからこその選択をして、それは新たな悲しみや傷も生んでしまう。
けれど、確実に未来へは進んでいく。
そのうちに、受けた傷もいつか未来の日向にかざせばプリズムのように美しく光る、自分の糧になるのかもしれないと、ささやかに思わせてくれる温かみのある物語でした。
簡潔だけれど柔らかな比喩や言い回しが巧い訳文が今回もとても響いてきて、この作者さんと訳者さんのコンビは絶妙だな、と思えました。 -
購入済み
「コンビニ人間」を想起させる
「共感能力の低い主人公」と「"普通"を理解しつつ、そうは振る舞えない社会不適合者」との交流は村田沙耶香著「コンビニ人間」を想起させる。作者のソンウォンピョンが「コンビニ人間」の作者と同世代の同性であることも興味を引く。
日本の「コンビニ人間」は、ああいった結末で芥川龍之介賞を受賞したわけだが、韓国の「アーモンド」はどういう結末を用意しているのか?
純文学と、エンタメ小説との違いがあるから、どちらがどうとは言えないが、私はコンビニ人間の終わり方が好きだった。ただ、この本のような終わり方を好む人も多いだろうなとは思う。 -
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本屋大賞の翻訳小説部門1位ということで、気になったため読みました。韓国の小説は初めて読んだけど、翻訳が素晴らしいのかすんなり読めた。
主人公の真っ直ぐな気持ちやセリフが良かった。ユンジェの周りに、温かい人たちがたくさん居てくれたことや、ゴニやドラと出会えて良かったなと思った。お母さんやおばあちゃんとの描写もとても好き。
最後、死んだのか?生きてるのか?が分からなくて気になって気になって、、。あまり深く考えなくて良いところなのかな?
感情を持たない主人公の目線なので、淡々と語られてはいくけど、描かれ方によってその場の光景や雰囲気がよく分かってしまうようで不思議だった。 -
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ネタバレ生まれつき扁桃体が小さく、感情をうまく感じ取ることができない少年ユンジェが、母親や祖母、シム博士、そしてゴニやドラとの関わりを通じて、少しずつ人の感情を理解していく物語。
物語の最後には、友達を守るために自分を犠牲にして行動するところまで成長したのだと思う。人との関わりの中で少しずつ変化していくユンジェの姿は、この作品の大きな魅力だと思う。
ただ、私は「感情を理解すること」と「感情を感じること」の境界が少し曖昧に感じられ、そこに引っかかってしまった。
ユンジェは母親から感情について教えられてきたため、相手が「嬉しそう」「悲しそう」といった、相手の感情の状態を認識することはできる。しかし、それは「感情を理解している」ということなのだろうか。それとも、単に相手の状態を認識しているだけなのだろうか。
例えば、ゴニがユンジェの感情を引き出そうとして蝶を殺そうとする場面で、ユンジェは蝶が「苦しんでいる。やめろ」と言う。この時点でも、ユンジェはすでに他者の苦痛を認識し、それに対して「やめろ」と行動を起こしている。では、物語を通してユンジェが新たに獲得した「感情を理解する」とは、これと何が違うのだろうか。
相手の感情を認識すること、感情の意味を理解すること、そして自分自身の中にその感情が芽生えること。その違いがこの物語の中では私にはやや曖昧に感じられたため、ユンジェの成長を十分に実感できなかった。
これは私の読解の仕方によるものなのかもしれない。それでも、今回はどうしてもそこが気になってしまった。
機会があれば、再読してみたいと思う。 -
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「ビスケット」とは、主人公のジェソンが名付けた現象で、存在感をなくした人の状態。
聴覚が過敏で繊細なジェソン。誰も気づかないビスケットの気配を見つける事ができます。
自分を守れなくなって自分を消すしかなくなる。きっかけはいろいろだし誰にだってその可能性はあるけど、ツッコまれやすかったり気が弱かったり、「コイツは大事にしなくてもいい」と決めつけられてしまう人がなりがちなんだろうな。
ジェソンはビスケット状態の子たちに話しかけ、手助けしたり、ちょっとした復讐をしたりするのです。
そうなのか、そういう話なのか、ちょっと思ってたのと違ったかも…というところである事件が起こって、急にスリリングな展開に。
友達や頼れる大人たちとの立ち回りは面白くて一気に読んだし、ラストもよかったのですが、うーん。
うまく言えないけどピントがすこーし違う気がして、これはソン・ウォンピョンの「アーモンド」でも感じたんだけど、「韓国で共感の嵐!」のヤツは私にはちょっと違うのかな。 -
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2020年の本屋大賞・翻訳小説部門第1位。
脳の扁桃体の異常で、感情というものがわからない高校生の主人公・ユンジェ。
祖母と母親が通り魔に襲われた時も、ユンジェは恐怖や怒りを感じることはありませんでした。
そんな彼は当然、クラスメイトからも浮いた存在。フラットに目立たず学校生活を送ろうと努めます。
ある日、ユンジェの家(古本屋)にやって来た人物。彼の頼み事を引き受けることから、彼の生活が少しずつ動いていきます。
生い立ちから複雑でいろいろくぐり抜けてきた同級生・ゴニとの出会い。出会い方が特殊で、それによって厄介者のゴニの抱える憤りもさらに伝わってきます。
常にトゲトゲのゴニとクールなユンジェのやり取りの変化や、走るのが大好きな女の子・ドラの存在もよかった。
何かによって突き動かされていくユンジェ、感情じゃないとしたら何なんだ、というところ。
そこでポイントとなるのが母親・祖母の言葉。どれもユンジェへの想いが詰まっていて、それをユンジェがちゃんと理解しよう、大事にしようというところも熱い。
ラストはびっくりポイントがいくつもあり、とりあえず納得しましたが…うーん。帯の煽り文句も相まって少ーし興ざめ。そういうものなんかなぁ、いい話ではあるけどなぁ。 -
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ネタバレ読みやすい。自分の存在感や自尊心のなさ、独りよがりさに悩んだことがある人には高確率で刺さるお話だと思う。
聴覚過敏で生きづらさを感じていて、そのせいで起こるトラブルの経緯に両親や大人は耳を傾けてくれず諦めムードの主人公。でもその耳のおかげで、存在感が希薄で人に気づいてもらえない・見えなくなってしまうビスケットに気づき助けようとする。ただ同時にやり返したい感情が抑えられず、ビスケット化の原因に嫌がらせ的な事もする。実はそれは、自身がいない存在になることを恐れ、存在を示すためやっているんだと、ある作戦に協力してくれた掃除のおばちゃんの「自分だけが正しいと思っていると悪い人になってしまう」というひと言で気づく所にハッとさせられた。
自分の存在感を感じられるっていうのは、周りの人間を通して生まれるんじゃなくて、世の中に必要とされていると思えるかどうかなんだなと思った。
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Posted by ブクログ
ポケットのなかには
ビスケットがひとつ
ポケットをたたくと
ビスケットはふたつ♪
もひとつたたくと
ビスケットはみっつ
たたいてみるたび
ビスケットはふえる♪
ってあかんあかん!
増やしたらあかん!
粉々にしたらあかん!
存在感を失い、誰からも相手にされなくなった人を「ビスケット」という
ビスケットのように壊れやすいのが彼らの特徴だ
もろくて、すぐに欠け、小さな衝撃でも粉々に砕けてしまう
そうしてビスケットは目に見えない存在となり、自分だけの世界に孤立していく
ビスケットの状態は三段階に区分される
第一段階は半分に割れた状態
見えないわけではないが、存在感があまり感じられない
第二段階はバラバラになった状態
すぐ横にいても、10人中5人が気づかない
それだけ存在感が不安定で自分を守る力が弱い
第三段階は粉々になった状態
存在感を失って世の中から消える寸前の段階だ
なので、間違ってもポケットを叩いてビスケットを増やすという行為はやめてくれ!
今すぐ回覧板でご近所さんにも知らせてくれ!
それより、見えない誰かがあなたのそばで泣いているかもしれません
そんな悲しいビスケットがひとりでも減ることを願いたいです
そして、そっと手を差し伸べてあげれる人に私はなりたい -
Posted by ブクログ
ジェソンには存在感が無くなって人から見つけられない人を見つける能力がある。そんな風になってしまった人をビスケットと呼ぶ。誰からも自分の存在を気にされず、自分でも小さくなっていたら本当に姿が見えなくなってくるのだ。存在が時々薄くなっていく第一段階。時々そこにいたんだねと気付かれる状態だ。姿かたちが薄っすらとしてきて、気を付けないと見えない時がある第二段階。そして本当に誰からも見えなくなる第三段階。第二段階になった女の子を何とか元に戻そうとジェソンと幼稚園からの幼馴染のヒョジンとドクワンの三人組が活躍する。「見えない誰かがあなたの側で泣いている。」
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Posted by ブクログ
タイトルの“ビスケット”とは、なんぞや?と思ってページをめくると、次のように定義づけられていました。
「世の中には、自分を守る力を失ってほとんど他人に目に見えなくなってしまった人たちがいる。何らかの理由で存在感が消え、誰からも相手にされなくなった人」
主人公ジェソンは、男子高校生。聴覚過敏があります。何でもかんでも音を取り込んでしまうと、毎日がへとへとだと思います。そんな彼には特別な配慮が必要なのに、なぜか両親の対応は今ひとつ。家庭において寂しさを抱えています。
心に形があるなら、彼の心を取り出すと繊細なガラス細工のようで、ちょっと触れるとパリンと割れてしまいそう。
そんな彼が“ビスケット”を助けようと奮闘する姿が健気で、彼自身の心の叫びも感じられて辛かったです。自己肯定感を持てない少年が、何とか自分の存在意義を見出そうとしているようにも思えました。
学歴社会やいじめのことも、韓国と日本は似たりよったりだと感じます。小学校高学年から中学の間、“昨日の友達が、明日の敵”みたいなことがありました。女子の場合は特に、友達関係がほんの些細なことで変わるので、恐ろしい。
家庭が心安らぐ場所であるの一番だけれど、それが無理なときどうしたらいいか?学校は?地域は?
子どもであれ大人であれ、気持ちを許せる存在は必要で、それが人であるのが一番なのだけれど、物でも植物でも動物でも。
自分のことを最後の最後まで、見捨てずに生きていきたいと思います。そして周りの人の気持ちの変化に気づける、寄り添える自分でありたい。
思春期の子が本書を読めば、何かしら心に響くことは確かで、大人が読んでも、ふと立ち止まって自分のこと、周囲のことを見つめられるような気がしました。