矢島暁子のレビュー一覧
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4人の男女の季節と共にゆらめき移ろいゆく関係性を、繊細に、けれど明快に描き上げた作品です。
それぞれの持つ個性、抱えていた過去、今も持つ秘密。それらが、芽生えた恋情を後押ししたり、邪魔をしたり影響させていく。「とにかく好きだから」でなんとかなった(かもしれない)十代ではない彼らは、だからこその選択をして、それは新たな悲しみや傷も生んでしまう。
けれど、確実に未来へは進んでいく。
そのうちに、受けた傷もいつか未来の日向にかざせばプリズムのように美しく光る、自分の糧になるのかもしれないと、ささやかに思わせてくれる温かみのある物語でした。
簡潔だけれど柔らかな比喩や言い回しが巧い訳文が今回もと -
購入済み
「コンビニ人間」を想起させる
「共感能力の低い主人公」と「"普通"を理解しつつ、そうは振る舞えない社会不適合者」との交流は村田沙耶香著「コンビニ人間」を想起させる。作者のソンウォンピョンが「コンビニ人間」の作者と同世代の同性であることも興味を引く。
日本の「コンビニ人間」は、ああいった結末で芥川龍之介賞を受賞したわけだが、韓国の「アーモンド」はどういう結末を用意しているのか?
純文学と、エンタメ小説との違いがあるから、どちらがどうとは言えないが、私はコンビニ人間の終わり方が好きだった。ただ、この本のような終わり方を好む人も多いだろうなとは思う。 -
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ネタバレ扁桃体(アーモンド)が人より小さく感情を感じることができない 16才の高校生ユンジェの喪失と再生、そして成長の物語。
感情を感じない主人公が周りの人々と関わりを持つなかで少しずつ感情らしきものが芽生える。特に、激しい感情を持つ少年ゴニとの出会いは、ユンジェの人生を大きく変えていく。残酷さの裏には愛がある…韓国文学特有なよい物語でした〜
「ばあちゃん、どうしてみんな僕のこと変だって言うの」
「人っていうのは、自分と違う人間が許せないもんなんだよ」
扁桃体(アーモンド)が人より小さく、怒りや恐怖を感じることができない十六歳の高校生、ユンジェ。
そんな彼は、十五歳の誕生日に、目の前で祖母と母が通 -
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ジェソンには存在感が無くなって人から見つけられない人を見つける能力がある。そんな風になってしまった人をビスケットと呼ぶ。誰からも自分の存在を気にされず、自分でも小さくなっていたら本当に姿が見えなくなってくるのだ。存在が時々薄くなっていく第一段階。時々そこにいたんだねと気付かれる状態だ。姿かたちが薄っすらとしてきて、気を付けないと見えない時がある第二段階。そして本当に誰からも見えなくなる第三段階。第二段階になった女の子を何とか元に戻そうとジェソンと幼稚園からの幼馴染のヒョジンとドクワンの三人組が活躍する。「見えない誰かがあなたの側で泣いている。」
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タイトルの“ビスケット”とは、なんぞや?と思ってページをめくると、次のように定義づけられていました。
「世の中には、自分を守る力を失ってほとんど他人に目に見えなくなってしまった人たちがいる。何らかの理由で存在感が消え、誰からも相手にされなくなった人」
主人公ジェソンは、男子高校生。聴覚過敏があります。何でもかんでも音を取り込んでしまうと、毎日がへとへとだと思います。そんな彼には特別な配慮が必要なのに、なぜか両親の対応は今ひとつ。家庭において寂しさを抱えています。
心に形があるなら、彼の心を取り出すと繊細なガラス細工のようで、ちょっと触れるとパリンと割れてしまいそう。
そんな彼が“ビスケ -
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ネタバレめっちゃよかったー!とは思わなかったけど面白かった。
3人組のバランスがとても良かった。こんな友達がいたら楽しいだろうなと思うし、この人たちがいたら、見つかったビスケットたちは安泰と言える。実際そうだったけど。
ビスケットかぁ。
存在感が消えちゃう時は、もしかすると誰にでもあるのかなぁ。
わたし自身にはその時間は必要だった。
自分の意識を徹底的に内向きにする時間。
だけど問題は、子供たちがそうなったとして、自力で出てくる強さを、育つ過程で身につけてもらえているかどうかなんだよな。
そのまま消えちゃう人も、大人でもいっぱいいそうな気がする。
途中から説明の部分はすっ飛ばしてしまった。
夢 -
Posted by ブクログ
主人公のユンジェは失感情症で、自分の感情を認知して言葉や表情で表すことができない。
どんな時も無表情な彼は、周りからも気味悪がられます。
自分の気持ちさえわからないから他人の気持ちも想像できないし、相手の気持ちを汲み取って適当な言葉をかけることもない。
『ばあちゃん、どうしてみんなは僕のこと変だって言うの?』
『人っていうのは、自分と違う人間が許せないものなんだよ。』
一般的に円滑に見える人間関係というのは、「共感」というコミュニケーションの上に成り立っているのだということに改めて気付かされます。
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