矢島暁子のレビュー一覧

  • プリズム

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    4人の男女の季節と共にゆらめき移ろいゆく関係性を、繊細に、けれど明快に描き上げた作品です。

    それぞれの持つ個性、抱えていた過去、今も持つ秘密。それらが、芽生えた恋情を後押ししたり、邪魔をしたり影響させていく。「とにかく好きだから」でなんとかなった(かもしれない)十代ではない彼らは、だからこその選択をして、それは新たな悲しみや傷も生んでしまう。

    けれど、確実に未来へは進んでいく。
    そのうちに、受けた傷もいつか未来の日向にかざせばプリズムのように美しく光る、自分の糧になるのかもしれないと、ささやかに思わせてくれる温かみのある物語でした。

    簡潔だけれど柔らかな比喩や言い回しが巧い訳文が今回もと

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    2022年12月29日
  • プリズム

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    ソウルで働く4人の男女の恋愛模様の1年間。夏から始まって次の夏までに、簡単に言ってしまえば出会いや別れ、愛と友情などの記録なのだが、その揺れ動く心の中をとてもよく表現されていて、うまくいくのかどうか結果も気になりつつ、うまくいってもそうでなくても面白かった。
    ただ、彼らが好きかと言うと、誰も好きではなかったのが、少し残念です。

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    2022年10月14日
  • プリズム

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    ネタバレ

    この4人の関係性こそ「プリズム」の象徴のように思いました。決してハッピーエンドではなく綺麗な恋愛の形ばかりではないけれど、それぞれが少しずつつながり合ううちに、影響を与え合っていく。前2作ほどの盛り上がりや出来事はありませんが、大人だけれどまだピュアな面を持つ男女の心の動きに、懐かしさのような気持ちを抱きました。

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    2022年08月04日
  • アーモンド

    購入済み

    「コンビニ人間」を想起させる

    「共感能力の低い主人公」と「"普通"を理解しつつ、そうは振る舞えない社会不適合者」との交流は村田沙耶香著「コンビニ人間」を想起させる。作者のソンウォンピョンが「コンビニ人間」の作者と同世代の同性であることも興味を引く。

     日本の「コンビニ人間」は、ああいった結末で芥川龍之介賞を受賞したわけだが、韓国の「アーモンド」はどういう結末を用意しているのか?

     純文学と、エンタメ小説との違いがあるから、どちらがどうとは言えないが、私はコンビニ人間の終わり方が好きだった。ただ、この本のような終わり方を好む人も多いだろうなとは思う。

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    2020年07月27日
  • アーモンド

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    ネタバレ

    生まれつき感情を持たないユンジェのことを悪く言うとき、人は「サイコパス」と言う。けれど、いわゆるフツーの人の罪とは言えない行動の中に「サイコパス」的な無関心さと残酷さを感じる。無実の級友を疑っておいて誰一人自分は悪くないと言ったクラスメイト、地球のどこかで起こっている戦争のニュースを聞き流す人、目の前でおきた事件を傍観する人。
    人の心の中にある無関心と非共感は、生まれつき扁桃体が小さくて特別なユンジュとなんら変わらないんだなと思った。

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    2025年12月14日
  • ビスケット

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    ビスケットとは、周りの人から無視され続け他人から見えなくなってしまった人の事。高校生のジェソンは聴覚過敏で入院を繰り返しているが、他人には見えていないビスケットの姿が見える。
    ジェソンの叔母さんの家の上の部屋には、ビスケットの子どもが隠されているらしい。それに気づいたジェソンは、幼なじみといっしょにビスケット救出作戦を実行する。

    ビスケットという存在が、突飛でありながらも、現実の世界にまったくないとは言えないところがミソかも。奇想天外でありながらも、ちょっと考えさせられてしまう。

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    2025年12月10日
  • アーモンド

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    扁桃体が小さい故に失感情症の青年が主人公の物語。
    一人称の心理描写がほとんどなく、感情移入・共感の余地なし。そこが良い。

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    2025年11月19日
  • アーモンド

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    ネタバレ

    扁桃体(アーモンド)が人より小さく感情を感じることができない 16才の高校生ユンジェの喪失と再生、そして成長の物語。
    感情を感じない主人公が周りの人々と関わりを持つなかで少しずつ感情らしきものが芽生える。特に、激しい感情を持つ少年ゴニとの出会いは、ユンジェの人生を大きく変えていく。残酷さの裏には愛がある…韓国文学特有なよい物語でした〜


    「ばあちゃん、どうしてみんな僕のこと変だって言うの」
    「人っていうのは、自分と違う人間が許せないもんなんだよ」
    扁桃体(アーモンド)が人より小さく、怒りや恐怖を感じることができない十六歳の高校生、ユンジェ。
    そんな彼は、十五歳の誕生日に、目の前で祖母と母が通

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    2025年10月17日
  • ビスケット

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    ジェソンには存在感が無くなって人から見つけられない人を見つける能力がある。そんな風になってしまった人をビスケットと呼ぶ。誰からも自分の存在を気にされず、自分でも小さくなっていたら本当に姿が見えなくなってくるのだ。存在が時々薄くなっていく第一段階。時々そこにいたんだねと気付かれる状態だ。姿かたちが薄っすらとしてきて、気を付けないと見えない時がある第二段階。そして本当に誰からも見えなくなる第三段階。第二段階になった女の子を何とか元に戻そうとジェソンと幼稚園からの幼馴染のヒョジンとドクワンの三人組が活躍する。「見えない誰かがあなたの側で泣いている。」

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    2025年10月14日
  • ビスケット

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    タイトルの“ビスケット”とは、なんぞや?と思ってページをめくると、次のように定義づけられていました。

    「世の中には、自分を守る力を失ってほとんど他人に目に見えなくなってしまった人たちがいる。何らかの理由で存在感が消え、誰からも相手にされなくなった人」

    主人公ジェソンは、男子高校生。聴覚過敏があります。何でもかんでも音を取り込んでしまうと、毎日がへとへとだと思います。そんな彼には特別な配慮が必要なのに、なぜか両親の対応は今ひとつ。家庭において寂しさを抱えています。

    心に形があるなら、彼の心を取り出すと繊細なガラス細工のようで、ちょっと触れるとパリンと割れてしまいそう。

    そんな彼が“ビスケ

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    2025年10月09日
  • ビスケット

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    ネタバレ

    めっちゃよかったー!とは思わなかったけど面白かった。
    3人組のバランスがとても良かった。こんな友達がいたら楽しいだろうなと思うし、この人たちがいたら、見つかったビスケットたちは安泰と言える。実際そうだったけど。

    ビスケットかぁ。
    存在感が消えちゃう時は、もしかすると誰にでもあるのかなぁ。
    わたし自身にはその時間は必要だった。
    自分の意識を徹底的に内向きにする時間。

    だけど問題は、子供たちがそうなったとして、自力で出てくる強さを、育つ過程で身につけてもらえているかどうかなんだよな。

    そのまま消えちゃう人も、大人でもいっぱいいそうな気がする。

    途中から説明の部分はすっ飛ばしてしまった。

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    2025年09月15日
  • ビスケット

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    いろんな理由から世界から消えかかっている脆くて壊れそうな人。ビスケット化現象。ビスケットが見える少年を主人公としたYA小説。ビスケットになりたくなる時もあるかもしれない。

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    2025年09月15日
  • アーモンド

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    主人公のユンジェは失感情症で、自分の感情を認知して言葉や表情で表すことができない。
    
    どんな時も無表情な彼は、周りからも気味悪がられます。
    
    自分の気持ちさえわからないから他人の気持ちも想像できないし、相手の気持ちを汲み取って適当な言葉をかけることもない。
    
    『ばあちゃん、どうしてみんなは僕のこと変だって言うの?』
    『人っていうのは、自分と違う人間が許せないものなんだよ。』
    
    一般的に円滑に見える人間関係というのは、「共感」というコミュニケーションの上に成り立っているのだということに改めて気付かされます。
    
    同じベクトルの

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    2025年09月07日
  • アーモンド

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    残虐なシーンはあるけれど、内容は大人向けというよりは中高生の時に読んだ方が響く本。とても読みやすいが、フェミニズムや若者の生きづらさが最近のトピックである韓国文学を期待して読むと少し物足りないかも。映画化に向いている小説。

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    2025年09月01日
  • ビスケット

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    誰しもあるんじゃないかなぁ

    存在感が薄いという言葉で流されていた時代もありましたが、今はそんな軽い言葉ではなくなってきているように感じますね

    誰からも相手にされず、存在感が消えて、目に見えなくなってしまった人たち…「ビスケット」

    少し力を入れると、ボロボロと簡単に崩れてしまう彼ら…

    そんなビスケットが見えるのは自分だけ?

    どうすれば、そこにビスケットがいるのを伝えられるのか…

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    2025年08月24日
  • アーモンド

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    海外小説は読みにくいと感じることが多かったけどこの本は非常に読みやすい。無駄な言葉や文がなく淡々と書かれているからかな。
    「ほとんどの人が、感じても行動せず、共感すると言いながら簡単に忘れる」 たしかに。蝶の場面のユンジェのように、共感してるようで実は自分事には捉えていない、自分と切り離して考えてて、それって共感なのか?っていうことあるよなぁ。

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    2025年08月13日
  • TUBE(チューブ)

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    ネタバレ

    一度にひとつだけのことをする。簡単そうで意外と難しい。感覚を研ぎ澄ますのも大切だな。おじさんは変われたのかな?ふりだしに戻ったように見えて、レベルアップしてるに違いない。と信じたい。

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    2025年08月12日
  • ビスケット

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    自分の年齢的にも、ビスケットを見つけられる目でありたいし、必要ならば手を差し伸べられるそんな大人でありたい。

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    2025年08月07日
  • TUBE(チューブ)

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    ネタバレ

    パク・シリョンの発する言葉が刺さる読書体験だった。

    そのまま感じること。
    一度にひとつのことだけする。
    なんでも手当たり次第つかんでみる。

    生きるうえで真理な気がした。
    スマホをみながら、そしてイヤフォンをつけながら歩いていたりすると、周囲の環境や美しいものに気づかず、鈍感になってしまっているんだろうなあ
    自分なりに物事を観察して、「感じること」を大切にしていきたいなあ

    Urban Tumbleweed思い出された

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    2025年06月18日
  • プリズム

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    それぞれ事情や秘密を抱える4人の男女の恋愛の物語。

    ハッピーでキラキラした恋愛ではなく、4人それぞれの人間性や恋愛へのスタンス、不安、コンプレックスがリアルに描かれている。
    全体的に曇り空のような、仄暗さをまとっているけれど、間違えながらも幸せを掴もうとする4人の姿が良かった。

    ☆3.0

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    2025年04月08日