砂川文次のレビュー一覧
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★5 めっちゃ強烈な犯罪&暴力&冒険小説! 屈強な男が悪党たちを追い詰める復讐劇 #ブレイクダウン
■あらすじ
陸上自衛隊に勤務する市瀬のもとに、同業務隊の市瀬が訪れる。先日、市瀬は兄を交通事故で亡くしており、また同じ場所で佐川にとって大切な人物、倉田も亡くしていたのだ。佐川が言うには、市瀬の兄も倉田も、事故ではなく殺害されたらしい。二人はこの不可解な死を追うことになるのだが…
■きっと読みたくなるレビュー
★5 めっちゃ強烈な犯罪・暴力・冒険小説、よくもここまで激動な物語を書きましたね!
まず本の装画をみてくださいよ、屈強の男、入れ墨、銃、マシンガン、旭日章… もう、これだけで怖いっつ -
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北海道がロシアに侵攻される
しかしロシアが侵攻部隊を反乱分子として切り捨てたことによって、応戦した自衛隊は不法入国者に対する違法な攻撃とされてしまう
その後戦場となった北東部はロシア残存兵、あくまでも交戦した一部の自衛隊、取り残された市民、海外から密入国する者達からなる無法地帯に
日本政府も国民もこれらの人と地を穢れたものと切り捨て、自分たちの正常性を保とうとする
正常側にいた自衛隊員の主人公が操縦するヘリが作戦中に被弾し、無法地帯に取り残される
そこでは生きること自体の見方が180°違うほど異なる論理で物事が動いている
今まで見ていた世界は何だったのか?
体制の都合で容易に切り捨てられる人々 -
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ネタバレ序盤で、一つひとつの場面からサクマの不安とか焦りをすごく感じた。ものごとが完全にクリアに見えなくて不安で、将来が見通せなくて、でも変わらなきゃいけない。でも心の中でちゃんとしなくちゃと思っていても自分ではどうにもできない。そういう悩みが一部自分にも通ずるものがあって、その苦しみとかがひしひしと伝わってきてちょっと辛かった。それだけ文章が良かった。
それでもラストでサクマがその分からなさや不確かさっていうのはそれだけじゃなくって、明日への可能性でもあるから大丈夫だよ(若干ニュアンスが違うかもしれない)という答えを見つけてくれて、なんだか安心した。
沢山の人に読んでほしい一冊。 -
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Audibleにて。
前半は、「ケーキの切れない非行少年たち」を連想させる内容であった。「推し、燃ゆ」の少女もそうだが、生まれ持った何らかの苦手さがありそうだ。
しかしその特性に気づき、何らかの工夫を凝らせばこの特性を苦手さにしないことは可能なのだ。各種認知特性に対するユニバーサルデザイン、色覚に難を持つ人に対して作られた最近のゲーム(例えばぷよぷよ)のような合理的配慮が求められる。(倫理資本主義の観点から言っても、これは素晴らしい試みだと感じる)
必要なのは、コグトレなのか環境整備の方なのか。おそらく両方だが、個人的にはコスパ&タイパ的に、後者重視で良いんじゃないか?と思 -
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ネタバレ世の中にはリア充という言葉があるが、充実した生について考えてみたい。テレビを見ると、仕事終わりに、ビールを買って帰る男、女、(ビール会社のCM)から子供と遊ぶ妻を見て満足そうにうなずく男(住宅メーカーのCM)このように充実した人生は、売っているものなのだが、K(戦場のレビアタン)はそう思っていない。「我々は、よりよい生活とか未来、そうでなければ、貧困という仮想敵をイメージして生きている。」しかしこんな生き方は、p194「肥大化して動けなくなった豚のような生だ」という。
p181「仕事と知人と女と金、あるいは車の話....そうでないときは仕事してるだけの日々」こんなものが充実した人生といえるだろ -
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(4.6)
自衛官としてあんまりのリアルさに息を呑んだ。用語や人間関係、風景全てが勤務の風景そのままであったがために、実際有事が起こった際はこうなるだろうと細胞レベルで感じた。
特に表題作である「小隊」これは今までにないほど感情移入して読むことができた。一般の方には分からないであろう感覚、感情がみるみるうちに湧いて出て震えた。自分自身の精神的にも肉体的にも、そしてこれからの勤務においても意識向上の手段として忘れないように、また読もうと思う。いい精神教育題材であると思う。
また、「市街戦」これは両親や友人、恋人に読んで欲しいと心から思える話だった。普段から行軍をするが毎回つらい。何がつらいという -
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本の題にもなっている『小隊』を含め、『戦場のレビヤタン』、『市街戦』と計3篇が収められている。各篇共に、文芸誌の1回の掲載分というような分量である。各篇毎にゆっくりと読んだ。
「5月30日」となっている「第4刷」の文庫本を入手したのだが、「第1刷」は「5月10日」である。これは少し「速い」感じの刷り方であると見受けられる。「話題」の作品であるということのようだ。
各篇は各々に綴られて、各々に発表されている。連作ということでもないようだ。が、通して3つの篇を読むと、各篇の主要視点人物が「実は同一人?」であって、『市街戦』、『小隊』、『戦場のレビヤタン』という順番に、数年間の時間軸で各篇の作中での -
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あるのかないのかはっきりしない「けり病」。専門家ははっきりと「ない」というが、中にはきちんとした肩書きを持つ人間が「ある」と言っているところもある。
過剰に反応した市民に合わせて、収束を求め「どうにかしなければ」という思いだけで作られた条例に首を絞められていく首都庁職員たち。
ここに書かれた構図は、コロナ禍を経験した私たちにとって、とても身近なものとして感じられるはずだが、これは実際に患者が出ている新型コロナとは少しだけ離れたところにある問題だ。
例えば、ステイホームを守るか否か、マスクをするか否か、ワクチンを接種するか否かーーこれらの二手に分かれる出来事において、自分とは異なる選択をする人 -
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実際に戦争状態になった際、戦場で自衛隊(陸自)がどのようになるのか、イメージを持つために購入。
原作の小説はウクライナ戦争前に書かれていることを注意する必要がありますが、例えば、トランシーバーでやりとりしてても、戦闘状態になりネットワークが混線し役立たなくなると、人が各陣地に直接行って状況確認せざるをえなくなるとか、リアルに描かれてます。陣地・塹壕も「こういう感じなのか」とイメージがつきます。
ウクライナ戦争において、各メディアで、Starlinkなど通信の重要性や私用スマホの危険性、ドローンの活躍などが報道されていることから、今後、戦闘の様子もマンガとは異なってくるかと思いますが、仮に「 -
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バイオレンス&アクション&復讐&ヤクザ&警察の闇──小説でした。
砂川さんといえば芥川賞作家のイメージなので、こんなアクション小説も書かれるんだ…と驚きました。
北海道のロシア(ソ連)領で行われる密漁…ベトナム戦争に極秘裏に参加させられる自衛隊員…等々、公にならない国家の犯罪が次々と明るみになる展開はスリリングでとても面白かったです。
国家間の政治の犠牲になる漁業、警察の腐敗など…巨大な組織の腐敗や身勝手さが描かれていて、その組織に使い捨てにされる「兵士」の悲惨さ虚しさが伝わってきます。その中で「戦士」として生きようとする男の苦難。
それにしても、ホントにここ日 -
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ネタバレ少しずつ純文学から移行してきたが、前作、今作で明確に冒険小説の作家宣言をされたようだ。
もちろん冒険小説は大好きで原りょう、シミタツ、ディック•フランシスなどを今でも読んでいるのだが、砂川文次のいじけた主人公の内面描写が好きな者からすると筋立てを追うがためにその部分があっさりと通り過ぎてしまって物足りない思いがする。また、私が嫌いなスーパーマンが登場してくるのも気に入らない。不死身なヒーローが登場すると主人公のイジイジした描写ができなくなるじゃないか…
しかし芥川賞受賞作「ブラックボックス」で惚れこんだ砂川推しの私からは⭐️4を付けざるを得ない。 -
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元陸自幹部の著者がリアルな戦闘を描く。
1作目は表題作。
政治が混乱している合間を縫って、侵攻目的が不明なロシア軍旅団が北海道内に侵攻してくる。
長い待機の末に、主人公が所属する中隊も他部隊と共に防衛の戦線を開く。
主人公は自分の受け持つ小隊の小隊長として初めての戦闘指揮を執ることになるが。。
2作目は人生に倦んだ元自衛官が刺激を求めてPMCに参加し、バグダッドで対テロ警護任務に就く話。
3作目は幹部候補生時代の過酷な行軍中に白昼夢のように過去と現実が混じりあっていくある意味トランス状態のような話。
2作目と3作目は正直、微妙な印象だったが、1作目はよくここまでリアルに戦闘経過を描けた -
Posted by ブクログ
台湾有事の可能性が高まった今、戦争が起きたら、自衛隊の方々はどういう事をするのか、リアルに想像できる。さすが元自衛隊の方が作家さんなだけある。
普段聞きなれない言葉がとても多いので、スマホで調べながら読んだ。掩体とか、交通壕とか。
小隊とか大隊とか、分隊の定義は書いてほしかったな。
中国じゃなくて、ロシアが北海道から攻めてくる、てとこが、またあり得るなー、と思う。ウクライナに侵攻した事を考えると、なおさら。北方領土の問題もあるしね。
戦闘中であってもコーラが飲みたいとか、めんどくさいとか、感情の描写が人間くささを醸し出してる部分と、戦闘で人が死んだり、「肉片が〜」のような緊迫感 -
Posted by ブクログ
ネタバレ読楽コーナーに1冊表紙が真っ黒な本があり、吸い込まれるように本を手に取りました。本について検索してみたところ、第166回芥川賞受賞作でした。主人公は自転車配達の仕事をしており、毎日同じことの繰り返しに飽き飽きしていたがこの先どうすることも無い人生だと諦めていた。ある日、ちょっとした事で刑務所に入ることになるというお話です。タイトルにあるブラックボックスというのは「毎日同じことを繰り返す人生だとしても明日はどうか分からない。」また、人が心の内に秘めている善か悪かは分かりませんがそういったことを表しているのだと思いました。主人公の感情の変化や社会構造への苛立ちが感じ取れる作品でした。
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ネタバレ『小隊』
文藝春秋の砂川さんと小泉悠さんの対談で兼ねてより読んでみたいと思っていた作品。
2022年にウクライナで戦争が始まったことはひどくショッキングでありセンセーショナルであったので、日々戦況や惨状を割とニュース等で追っていたが、そこで戦っている人の様子はなかなか想像がつかなかった。この作品を読んで、戦場での個人の目線を一つ与えてもらえたように感じた。
死が紙一重に隣接する戦闘の中で、頭中沸騰しながらも訓練で培われた戦闘所作はオートマティックに体を動かし、そして時々私生活のあれこれが思考に去来する。何日も風呂に入れず痒い全身、体を締め付ける重い装備、散らばった肉片のディティールや、集団内に -
Posted by ブクログ
制度があったりルール強くある方が楽に生きる事ができそうだ。今風の会社で勤めることのトレンドとして自分の意思が会社の意思よりも反映されやすく、パワーバランスが昔と逆転している気がする。
(フレキシブルな働き方、週休3日、転職のハードルが低くなったり)
自由を求め、何にも縛られない生活が良いのかなぁと信じているのはムショに入る前のサクヤ。冒頭の
「信号なんかに足止めをくらいたくなかった。」
が分かりやすい。
自由であり、自分の意思で物事を決める事ができるようになった今の時代には、生活には溢れるように娯楽が転がっている(ネトフリ、YouTube、スマホゲーム等)。そのせいで、「このままじゃダメだ。」