砂川文次のレビュー一覧
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◼️ 砂川文次「小隊」
ロシア軍が北海道に上陸・交戦。凄惨な戦闘に訓練しか知らない自衛官たちは・・
著者は元自衛隊員。「ブラックボックス」で3年前に芥川賞を受賞している。
冒頭の表題作ではすでにロシア軍が上陸して攻めてくる前提で、釧路付近で迎え撃つ自衛隊、その大卒中隊長が主人公。敵は地形が変わるほどの圧倒的火力で自衛隊の陣を攻撃し、砲撃や撃ち合いで大勢の兵士が死ぬ。初めての、訓練ではない戦闘、命のやりとりにさらされた隊員たちの姿と、その前夜の、まだ訓練の名残りがあるかのような雰囲気とのギャップが生々しい。
次の作品はイラクでの傭兵たち。こちらは自爆攻撃はあるものの本格的な戦闘はない。
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Posted by ブクログ
ネタバレ何かの紹介をざっと読んで、ロシアが北海道に突然攻め込んで来るという話を元自衛隊員の作者が描いたものという事で、戦時の戦略やら国家間の攻防、戦場のリアルな描写とかを勝手に期待して読み始めたが、そうではなかった。
舞台は、ロシアが攻め込んで10年程経過した北海道で、ロシア軍、自衛隊、機動隊、マフィア、民兵組織等が入り乱れたまさに混沌の世界。主人公イリキが副操縦士として乗る自衛隊ヘリが撃ち落とされてから、釧路、旭川、滝川、札幌と移動する中で関わる戦闘も、色々な立場によるものらしいが、どの立場がどの立場と何故戦っているのか、札幌での核爆破に至る背景、目的も分かり難く、480頁で改行少なく文字量絶大を読 -
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「小隊」
北海道に攻め込んできたロシアにボコボコにされる陸自の話。彼らが前線で酷い目に遭いながらも、ラジオからは音楽番組が流れてくる。住民に避難を勧めに行けば、こっちには生活があるんだとつれない返事が返ってくる。
現に戦争が始まったのだから、自衛隊以外の国民も戦争とは地続きになるはずなのだが、そんな実感は沸かないのがリアルな戦争なのだろう。物語の中で人が死んでいくのだが、悲しさとか敵への怒りみたいなものは湧いて来ず、なんというか、なんでこの人たちはこんなことをしなくちゃいけないんだろうという直観的な疑問が浮かんでくる。そりゃもちろん、敵が攻めてきたら戦わなきゃいけないのだから、疑問に思うこ -
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ネタバレ本の雑誌・年間ベスト。本作なんて、完全なエンタメ作だと思うんだけど、芥川賞作家なんですね。意外。とはいえ、特に導入部分の、改行や会話文が殆ど無い、びっしり埋め尽くされた字とか見ると、なるほど、文学だなって思えたりもする。舞台は、ロシアが進行し、無政府状態になった北海道。当然、ウクライナの被害が頭を掠めるんだけど、ひょっとしたらあり得たパラレルワールドを垣間見るみたいで、何とも不気味。最終、闘争の原因は核であることが判明し、なんと、その炸裂をもって物語が閉じられる。同部の描写は”はだしのゲン”そのもの。あな恐ろしや…。戦争反対。
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ネタバレ越境
著者:砂川文次
発行:2024年7月30日
文藝春秋
初出:「文學界」2023年1月号~2024年3月号
砂川文次の小説を読んだのは、芥川賞作品(2021年下期)「ブラックボックス」以来の2作目。その前年に「小隊」という戦争小説を出していて、それは読んでないけれど、ロシア軍が北海道に上陸、小隊を率いて任務についた自衛隊3慰の話だそうなので、この「越境」は続編的な意味があるのかもしれない。なお、今回は主人公が2慰なので出世していることになる。
文字のぎっしりつまった480ページ、長すぎる、無駄が多い、分かりにくい、正直言って描写がうまくない、という第一印象だった。芥川賞の選評でも、吉 -
Posted by ブクログ
ずっと前に買って積読してたもの。
前半はメッセンジャーについて詳細に書かれていて、ずっとその話なのかな?と思っていると、突然場面が変わりました。
うーん…サクマはけっこうメッセンジャーに向いている感じなのだけど、それで満足しているでもなく…
でも、キレて暴力に訴えるともうその時点で、やっぱりそれは駄目でしょう、と。
世の中は不公平で、お金持ち、成功者といっても運によるもの…もちろん個々の努力もあるでしょうが、それすら生まれ持った才能があったからこそで…
人は人!偉いも偉くないもないんだよ、と。好きなように生きれば良いんだよ、とサクマに誰か教えてあげればね、良かったよね、と思いました。
そういう -
Posted by ブクログ
ネタバレ⚫︎受け取ったメッセージ
わからないものに対する畏怖が
人々のパニックを作り出す
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
新型コロナ感染拡大の前に書かれた、新鋭による問題作。
鳥の不審死から始まった新型感染症流行の噂。
その渦中に首都庁に勤めるKは巻き込まれていく……。
組織の論理と不条理、怖れと善意の暴走を生々しく描く傑作。
組織の内部を描くという点で、物凄い洞察力を持った作家だ。
――亀山郁夫
コロナがこうなる前に書かれているというのに凄みを感じる。
――安藤礼二
まったく、なんだってあんな根拠のないものにそうすぐ振り回されてしまうのだろう。
それとも本当に、ただ自分のあずかり知らぬと