砂川文次のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
女性の書き手が綴る身体や性にまつわるエッセイ「私の身体を生きる」の、男性版。
女であり女であることに違和感なく生きてきた私にとっては、女性の書いたものの方が当然共感するところは多かったけれど、男性たちの綴る文章もとても興味深かった。
男女問わず、どんな属性の人だってそれぞれ尊重されるべきではあるけれど、同質である必要は全くないなと改めて思う。
女性と比べて、身体やジェンダー、性のことを直接的に書いている人がかなり少ない印象を受けた。
と同時に、男性が男性性を語ることの難しさとはこういうことかと納得させられる。社会において強い側とされる側が何をどう語るのか、語って良いのか、難しいのかもしれないけれど、もう少し踏み込んだ内容が読みたかったな、というのが正直な感想。
身体より社会、に意識が向いているように感じた。
その中でも田中慎弥さんの偏屈さが滲む文章がとても好きだった。好きだったとかも言われたくないのかなとか思っちゃう。なんだかいじらしい愛しさがある。
最後の最後で朝井リョウが‘やっている’。
両手を掴んでいたはずなのに、その手を掴んだまま大きく振り回されて、遠心力で吹っ飛ばされたような気持ちで本を閉じた。
-
Posted by ブクログ
「ブラックボックス」で第166回芥川賞を受賞した、砂川文次氏のアクション&バイオレンス、エンタメ小説。
氏の著作「小隊」などを、特に「小隊」を文庫で読んだ人なら自衛隊モノ、北海道モノは、また来たか、と思うだろう。
元自衛官の経験を活かし描かれたその作品は、マンガ化もされている。
今までと異なる点は、物語自体が局地戦から、かなり壮大になっていること、最強の男が現れ、とにかく強い。強すぎる。1人でバッタバッタと平気で倒し、そして問題を解決していく一種のダークヒーローモノとも言える、など。
最強の男のバックボーンも描かれ、何故そこまで強くなったのかも明らかになる。
途中、映画「日本で一番悪い奴ら」を想起させるシーンもあったが、巻末の参考文献にそのモデルとなったと言われる稲葉圭昭氏の著作もあり、よく調べて書いているな、と思った。
とは言え、主人公と最強の男の出会いから、少し引っかかる所もあり、都市伝説レベルの話が物語に上手く組み込まれているものの、壮大すぎてこれをどう収集するのか、少しハラハラしながら読んだ。
砂川氏の他の作品や、今後の活躍に期待。 -
Posted by ブクログ
始終、陰鬱とした空気で物語は進む。
このままじゃいけないと頭の隅で思いながらも、日々生活する為のルーティンに追われることで、枯渇していく未来をふわっと遠くに押しやり、思考に蓋をする主人公に共感した。
恐らくADHDであろう主人公から見た社会は、ブラックボックスのように分かりにくい世界で、だから順応出来ずセーフティーネットからもこぼれてしまう。
そして、社会からみた彼自身も、ブラックボックスの中でもがいているから救われない。
自己中心的で人の気持ちに寄り添うことも出来ない彼だが、最後、自分の得意とすることで社会に通じるドアを開けることが出来たラストは、静かだが良かった。
どんな形であろうと、人間は人や社会と繋がることで自らの檻から脱出出来るのだと思う。 -
Posted by ブクログ
◼️ 砂川文次「小隊」
ロシア軍が北海道に上陸・交戦。凄惨な戦闘に訓練しか知らない自衛官たちは・・
著者は元自衛隊員。「ブラックボックス」で3年前に芥川賞を受賞している。
冒頭の表題作ではすでにロシア軍が上陸して攻めてくる前提で、釧路付近で迎え撃つ自衛隊、その大卒中隊長が主人公。敵は地形が変わるほどの圧倒的火力で自衛隊の陣を攻撃し、砲撃や撃ち合いで大勢の兵士が死ぬ。初めての、訓練ではない戦闘、命のやりとりにさらされた隊員たちの姿と、その前夜の、まだ訓練の名残りがあるかのような雰囲気とのギャップが生々しい。
次の作品はイラクでの傭兵たち。こちらは自爆攻撃はあるものの本格的な戦闘はない。
文学界新人賞を受賞したという3作めの「市街戦」。防衛大、一般大学卒の幹部候補生たちの最後の訓練、武装し30キロもの荷物を背負っての100キロの行軍。過去、学生時代の友人、恋人、自宅周辺、東京と夢幻とうつつが交差する作り。訓練。ちょっと昭和の古式ゆかしい構成かも、などと思った。
ふむふむ。専門用語が覚えきれず、この言葉は何やったかいな、などと考えながらそのまま読む。「小隊」はさすがにえぐい迫力があった。ディストピア的に終わり。続きはないの?と。
自衛隊や傭兵の活動を小説に生かしていることはひとつ興味を惹かれるポイントだが、どうにも自己主張が強くかつ他者否定的で、冗長さを巧みな技ではなく手段として使っている印象も受けたかな。