砂川文次のレビュー一覧
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『臆病な都市』は、新型感染症に対する集団ヒステリーと官僚組織の不条理を描いた小説だ。
『臆病な都市』の中で描かれている新型感染症に対する集団ヒステリーや、大衆の行き過ぎた正義感は、現実世界のコロナ禍でも起こった出来事だ。コロナ禍をモデルにした小説かと思いきや、この小説はコロナ禍が深刻になる前に群像に掲載されている(2020年4月号)。中編小説なので、書かれた時期自体は新型コロナが話題になり始める時期よりも前のことだろう。『臆病な都市』はコロナ禍を予見した小説でもあるのだ。
『臆病な都市』が描いたのは新型感染症に対する大衆のヒステリーだけではない。東京都庁を舞台に組織の不条理を描き、システムを無批判に受け入れることがどんな惨事をもたらすかについて警鐘を鳴らしている。 -
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前作は小説「小隊」を元にしたコミックであり、この「小隊2」はその続編となるが、ここからは小説で描かれていなかった、その後である。
前作の評価でも触れたが、小説では主人公である安達3尉が感じる湿度や不快感など様々な感情が、より戦場の不条理を感じさせるものであった。
本作では小説版の設定に基づいているが、より戦争アクションといった要素が強くなったように思われる。一言でいえば「ハリウッド映画」のようだ。
小説では元自衛官である原作者の知識や体験により、現実に起こり得るかも知れない戦闘の様相が描かれていた。前作はコミカライズによりどうしてもアクション漫画的になっていたが、本作はそういった緻密な心情などが書かれた原作がないため、よりハリウッド映画的なアクションコミックになった。
コミックからの「小隊」読者には受け入れられるだろうが、小説から「小隊」を読んだ読者は違和感を感じるかもしれない。
コミック版「小隊2」として割り切って読むのが適しているだろう。
コミックは映える?絵面になっているため、突っ込みどころは多数ある。通常は推奨しないが、本作に限っては、それはないw と突っ込みながら読むのも有りかもしれない。 -
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女性の書き手が綴る身体や性にまつわるエッセイ「私の身体を生きる」の、男性版。
女であり女であることに違和感なく生きてきた私にとっては、女性の書いたものの方が当然共感するところは多かったけれど、男性たちの綴る文章もとても興味深かった。
男女問わず、どんな属性の人だってそれぞれ尊重されるべきではあるけれど、同質である必要は全くないなと改めて思う。
女性と比べて、身体やジェンダー、性のことを直接的に書いている人がかなり少ない印象を受けた。
と同時に、男性が男性性を語ることの難しさとはこういうことかと納得させられる。社会において強い側とされる側が何をどう語るのか、語って良いのか、難しいのかもしれないけれど、もう少し踏み込んだ内容が読みたかったな、というのが正直な感想。
身体より社会、に意識が向いているように感じた。
その中でも田中慎弥さんの偏屈さが滲む文章がとても好きだった。好きだったとかも言われたくないのかなとか思っちゃう。なんだかいじらしい愛しさがある。
最後の最後で朝井リョウが‘やっている’。
両手を掴んでいたはずなのに、その手を掴んだまま大きく振り回されて、遠心力で吹っ飛ばされたような気持ちで本を閉じた。
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「ブラックボックス」で第166回芥川賞を受賞した、砂川文次氏のアクション&バイオレンス、エンタメ小説。
氏の著作「小隊」などを、特に「小隊」を文庫で読んだ人なら自衛隊モノ、北海道モノは、また来たか、と思うだろう。
元自衛官の経験を活かし描かれたその作品は、マンガ化もされている。
今までと異なる点は、物語自体が局地戦から、かなり壮大になっていること、最強の男が現れ、とにかく強い。強すぎる。1人でバッタバッタと平気で倒し、そして問題を解決していく一種のダークヒーローモノとも言える、など。
最強の男のバックボーンも描かれ、何故そこまで強くなったのかも明らかになる。
途中、映画「日本で一番悪い奴ら」を想起させるシーンもあったが、巻末の参考文献にそのモデルとなったと言われる稲葉圭昭氏の著作もあり、よく調べて書いているな、と思った。
とは言え、主人公と最強の男の出会いから、少し引っかかる所もあり、都市伝説レベルの話が物語に上手く組み込まれているものの、壮大すぎてこれをどう収集するのか、少しハラハラしながら読んだ。
砂川氏の他の作品や、今後の活躍に期待。 -
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始終、陰鬱とした空気で物語は進む。
このままじゃいけないと頭の隅で思いながらも、日々生活する為のルーティンに追われることで、枯渇していく未来をふわっと遠くに押しやり、思考に蓋をする主人公に共感した。
恐らくADHDであろう主人公から見た社会は、ブラックボックスのように分かりにくい世界で、だから順応出来ずセーフティーネットからもこぼれてしまう。
そして、社会からみた彼自身も、ブラックボックスの中でもがいているから救われない。
自己中心的で人の気持ちに寄り添うことも出来ない彼だが、最後、自分の得意とすることで社会に通じるドアを開けることが出来たラストは、静かだが良かった。
どんな形であろうと、人間は人や社会と繋がることで自らの檻から脱出出来るのだと思う。