砂川文次のレビュー一覧
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実際に戦争状態になった際、戦場で自衛隊(陸自)がどのようになるのか、イメージを持つために購入。
原作の小説はウクライナ戦争前に書かれていることを注意する必要がありますが、例えば、トランシーバーでやりとりしてても、戦闘状態になりネットワークが混線し役立たなくなると、人が各陣地に直接行って状況確認せざるをえなくなるとか、リアルに描かれてます。陣地・塹壕も「こういう感じなのか」とイメージがつきます。
ウクライナ戦争において、各メディアで、Starlinkなど通信の重要性や私用スマホの危険性、ドローンの活躍などが報道されていることから、今後、戦闘の様子もマンガとは異なってくるかと思いますが、仮に「もし今、戦争が起こったらこんな状態になるのだろうか」と想像することができます。 -
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バイオレンス&アクション&復讐&ヤクザ&警察の闇──小説でした。
砂川さんといえば芥川賞作家のイメージなので、こんなアクション小説も書かれるんだ…と驚きました。
北海道のロシア(ソ連)領で行われる密漁…ベトナム戦争に極秘裏に参加させられる自衛隊員…等々、公にならない国家の犯罪が次々と明るみになる展開はスリリングでとても面白かったです。
国家間の政治の犠牲になる漁業、警察の腐敗など…巨大な組織の腐敗や身勝手さが描かれていて、その組織に使い捨てにされる「兵士」の悲惨さ虚しさが伝わってきます。その中で「戦士」として生きようとする男の苦難。
それにしても、ホントにここ日本?と思うほど、めちゃくちゃ主人公サイドが殺しまくるので、度肝を抜かれます。出版社の紹介文で『怪物級無敵男』と評される佐川という男がいるんですが、まさにその通りすぎる怪物ぶりで、めちゃくちゃ強いんですよね。最初はちょっと強すぎない?と戸惑いが大きかったのですが、次第に佐川の無双っぷりを楽しみながら読んでいました。 -
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ネタバレ少しずつ純文学から移行してきたが、前作、今作で明確に冒険小説の作家宣言をされたようだ。
もちろん冒険小説は大好きで原りょう、シミタツ、ディック•フランシスなどを今でも読んでいるのだが、砂川文次のいじけた主人公の内面描写が好きな者からすると筋立てを追うがためにその部分があっさりと通り過ぎてしまって物足りない思いがする。また、私が嫌いなスーパーマンが登場してくるのも気に入らない。不死身なヒーローが登場すると主人公のイジイジした描写ができなくなるじゃないか…
しかし芥川賞受賞作「ブラックボックス」で惚れこんだ砂川推しの私からは⭐️4を付けざるを得ない。 -
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元陸自幹部の著者がリアルな戦闘を描く。
1作目は表題作。
政治が混乱している合間を縫って、侵攻目的が不明なロシア軍旅団が北海道内に侵攻してくる。
長い待機の末に、主人公が所属する中隊も他部隊と共に防衛の戦線を開く。
主人公は自分の受け持つ小隊の小隊長として初めての戦闘指揮を執ることになるが。。
2作目は人生に倦んだ元自衛官が刺激を求めてPMCに参加し、バグダッドで対テロ警護任務に就く話。
3作目は幹部候補生時代の過酷な行軍中に白昼夢のように過去と現実が混じりあっていくある意味トランス状態のような話。
2作目と3作目は正直、微妙な印象だったが、1作目はよくここまでリアルに戦闘経過を描けたなと感心する出来だった。
まさにプライベートライアンを見ているよな気分になった。
実際の戦闘が始まった時、イデオロギーや感情の入り込む余地は無くなり、ひたすら虐殺の場が出来上がるだけである。
そこではすぐ隣にいた同僚が即死しても感情が動くことは無くなり、ただただ体が動くだけという世界。
一度、戦闘が始まってしまえばそこには命の大切さも輝きもなくなり、他者がモノような価値になってしまうのが心底恐ろしいと思った。 -
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台湾有事の可能性が高まった今、戦争が起きたら、自衛隊の方々はどういう事をするのか、リアルに想像できる。さすが元自衛隊の方が作家さんなだけある。
普段聞きなれない言葉がとても多いので、スマホで調べながら読んだ。掩体とか、交通壕とか。
小隊とか大隊とか、分隊の定義は書いてほしかったな。
中国じゃなくて、ロシアが北海道から攻めてくる、てとこが、またあり得るなー、と思う。ウクライナに侵攻した事を考えると、なおさら。北方領土の問題もあるしね。
戦闘中であってもコーラが飲みたいとか、めんどくさいとか、感情の描写が人間くささを醸し出してる部分と、戦闘で人が死んだり、「肉片が〜」のような緊迫感のあるアンバランスな描写が、うまく書かれて次々とページを捲らせる。
また、相手の兵士がほとんど出てこないことが、結構怖い。敢えてそういう書き方してるんだね。砲弾や砲撃が、次々と連続してくるとこが、何ともしようがなく、絶望的で、主人公が生き残っていることが、たまたまであるとこが恐ろしい。
相手の兵士が出てこれば、「ジョン・ウィックみたいにやっつけければいいじゃん」て思えるけど、そんな事一切お構いなしで、ドーン!てくるんやな、て思うと、ウクライナの戦争もこんな状態だったんだろうと思う。
読み進めていくうちに、ふと疑問に思った。
ここ日本なんだよね。
ホームだよね。
なんでここまで劣勢なの?
装備も弾薬もたんまりあるんじゃないの?
本当に自衛隊は日本を守れるのか。
もし、守れないなら、それは自衛隊の人たちの
せいではなく、ここまで侵攻を
ゆるしてしまいかねない、
政治的な判断が、最も重要な問題だ、
という主張なんだろうか。 -
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ネタバレ読楽コーナーに1冊表紙が真っ黒な本があり、吸い込まれるように本を手に取りました。本について検索してみたところ、第166回芥川賞受賞作でした。主人公は自転車配達の仕事をしており、毎日同じことの繰り返しに飽き飽きしていたがこの先どうすることも無い人生だと諦めていた。ある日、ちょっとした事で刑務所に入ることになるというお話です。タイトルにあるブラックボックスというのは「毎日同じことを繰り返す人生だとしても明日はどうか分からない。」また、人が心の内に秘めている善か悪かは分かりませんがそういったことを表しているのだと思いました。主人公の感情の変化や社会構造への苛立ちが感じ取れる作品でした。
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ネタバレ『小隊』
文藝春秋の砂川さんと小泉悠さんの対談で兼ねてより読んでみたいと思っていた作品。
2022年にウクライナで戦争が始まったことはひどくショッキングでありセンセーショナルであったので、日々戦況や惨状を割とニュース等で追っていたが、そこで戦っている人の様子はなかなか想像がつかなかった。この作品を読んで、戦場での個人の目線を一つ与えてもらえたように感じた。
死が紙一重に隣接する戦闘の中で、頭中沸騰しながらも訓練で培われた戦闘所作はオートマティックに体を動かし、そして時々私生活のあれこれが思考に去来する。何日も風呂に入れず痒い全身、体を締め付ける重い装備、散らばった肉片のディティールや、集団内における個人の打算への怒りと葛藤。
戦場には多数の確かな個がいながら一度向かい合えばこれもまたオートマティックに味方と敵に別れてしまう。外にいれば分からない、これが戦争が絶えない理由の一つかもしれないと感じた。
『戦場のレビヤタン』
傭兵としてセキュリティー会社からイラクの施設に派遣される元自衛官の話。「イラクの砂漠に伸びる果てしない一本道と、十勝の雪原の風景とがオーバーラップした」
『市街戦』
自衛官の幹部候補生の演習中の話。舞台は九州は佐賀から長崎にかけて、行軍・戦闘演習が行われる。Kはリーマン・ショック時代の就職氷河期世代のようだが、就職難から自衛官になったのではない様に思われる。正直Kにドン引きしてしまうシーン(回想または白昼夢?の内容)もあったが、自分が生きる場所がここではない感という点では理解が出来る気はした。そして、一種エマージェンシーな状況のほうが生を感じられているのではないかという体験はわずかながらにも自分にもあった。(今となってはPTSDに近いものもあるので二度とごめんだが)
現在、高校世界史の勉強を今更ながらしている。(高校地理選択で歴史がさっぱりなのだが、歴史的文脈が分かれば日々目に留まる情報がもうちょっとは面白くなるかもと、今更ながら)安直だが、人間が幾多の戦いの末勝ち残ってきた生き物であるならば、緊急事態に生を見出すことは生物的にはあり得るのかもしれないとも感じた。
3作品を通じて…
専門用語が多いので都度検索しながら読み、大変勉強になった。2025年現在の世界の価値観は少し変化してきているように感じられる。力(軍事や経済)の論理を良しとする傾向を感じるが、戦争が良しとされる世の中にはなってほしくないと思う。 -
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制度があったりルール強くある方が楽に生きる事ができそうだ。今風の会社で勤めることのトレンドとして自分の意思が会社の意思よりも反映されやすく、パワーバランスが昔と逆転している気がする。
(フレキシブルな働き方、週休3日、転職のハードルが低くなったり)
自由を求め、何にも縛られない生活が良いのかなぁと信じているのはムショに入る前のサクヤ。冒頭の
「信号なんかに足止めをくらいたくなかった。」
が分かりやすい。
自由であり、自分の意思で物事を決める事ができるようになった今の時代には、生活には溢れるように娯楽が転がっている(ネトフリ、YouTube、スマホゲーム等)。そのせいで、「このままじゃダメだ。」と思っていても、そんな思念を上書きするかのようにあらゆる娯楽が時間潰してくれる。そして、現実生活と向き合う事をおろそかにしてしまう。向き合わなくてもある程度満足出来てしまい、現実に起きた些細な事に対して無視できてしまう。だから、昨日と今日は全く違うのに今日を吸収しようとしなくなる。
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砂川文次『ブラックボックス』講談社文庫。
初読み作家と思っていたが、どうやら2作目のようだ。この作家の先に読んだ第164回芥川賞候補作『小隊』が面白くなかったことを思い出す。
元自衛官の作家による第166回芥川賞受賞作。
バブル崩壊後の失われた30年と言われる長い不景気、新型コロナによる社会に漂う閉塞感。いつの間にか不安定な非正規雇用が当たり前という時代になってしまった。そんな嫌な雰囲気の中で物語は展開する。
前半は読む限りでは、主人公のサクマが現代の非正規労働に苦しむ若者たちの姿と重なり、可哀想に思った。しかし、中盤過ぎの展開からサクマが何事にもだらしなく、直ぐにキレて暴力を振るうが故に仕事が長続きしなかったのだと知ると同情心は粉々に砕けてしまった。
物語の構成は少し変わっていて面白い。唐突に主人公のサクマの現在の置かれた状況を描いてから、何故そういう状況に陥ったのかが描かれるのだ。
特に唐突だなと思ったのが中盤過ぎの展開で、何故かサクマは刑務所に収監されているという場面だ。小さな山谷があるくらいで、眼を見張るような展開は無い。では、出所してからのサクマが描かれるのかと思えば、そうでもなく、結末が曖昧なままに小説は幕を閉じてしまう。
自衛隊の辞め、次に勤めた不動産会社も辞め、その後もアルバイトを主とした職業を点々とし、今は都内で自転車メッセンジャーの仕事に就いているサクマは焦りと苛立ちを感じ始める。
そんな中、同棲中の彼女が妊娠し、サクマはさらに焦りと苛立ちを募らせる。
場面は変わり、サクマは刑務所に居る。一体何が……
定価682円
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『臆病な都市』は、新型感染症に対する集団ヒステリーと官僚組織の不条理を描いた小説だ。
『臆病な都市』の中で描かれている新型感染症に対する集団ヒステリーや、大衆の行き過ぎた正義感は、現実世界のコロナ禍でも起こった出来事だ。コロナ禍をモデルにした小説かと思いきや、この小説はコロナ禍が深刻になる前に群像に掲載されている(2020年4月号)。中編小説なので、書かれた時期自体は新型コロナが話題になり始める時期よりも前のことだろう。『臆病な都市』はコロナ禍を予見した小説でもあるのだ。
『臆病な都市』が描いたのは新型感染症に対する大衆のヒステリーだけではない。東京都庁を舞台に組織の不条理を描き、システムを無批判に受け入れることがどんな惨事をもたらすかについて警鐘を鳴らしている。