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新型コロナ感染拡大の前に書かれた、新鋭による問題作。
鳥の不審死から始まった新型感染症流行の噂。
その渦中に首都庁に勤めるKは巻き込まれていく……。
組織の論理と不条理、怖れと善意の暴走を生々しく描く傑作。
組織の内部を描くという点で、物凄い洞察力を持った作家だ。
――亀山郁夫
コロナがこうなる前に書かれているというのに凄みを感じる。
――安藤礼二
まったく、なんだってあんな根拠のないものにそうすぐ振り回されてしまうのだろう。
それとも本当に、ただ自分のあずかり知らぬところで未知の病気が広まりつつあるのではないか、とも考えてみたが、やはり実感は湧かない。
家々から漏れる灯りがそこここに生活が在ることを教えてくれる。言い知れぬ不安が、影のように自分のあとを追ってきている気がした。 ――本書より
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Posted by ブクログ
あるのかないのかはっきりしない「けり病」。専門家ははっきりと「ない」というが、中にはきちんとした肩書きを持つ人間が「ある」と言っているところもある。
過剰に反応した市民に合わせて、収束を求め「どうにかしなければ」という思いだけで作られた条例に首を絞められていく首都庁職員たち。
ここに書かれた構図は、コロナ禍を経験した私たちにとって、とても身近なものとして感じられるはずだが、これは実際に患者が出ている新型コロナとは少しだけ離れたところにある問題だ。
例えば、ステイホームを守るか否か、マスクをするか否か、ワクチンを接種するか否かーーこれらの二手に分かれる出来事において、自分とは異なる選択をする人に対してヒステリックな反応を示す人たちの話でもある。
(なるほど、その時の公人たちはこうやって蚊帳の外から見ていたわけか、などと思ってしまうのは余談である。)
ありもしない病のためにセンターまで作ってしまうのはいささか大袈裟だとしても、国民の顔色だけを窺う政治家や公務員と、何かあればすぐ国に対処を求め国に依存した国民という構図は薄らとした危機感と共にじわじわと心の中に侵入してくる。
難しい言葉で煙に巻こうとする国家公務員たちをうまく皮肉っている作品にもなっていて、なかなか面白かった。
Posted by ブクログ
『臆病な都市』は、新型感染症に対する集団ヒステリーと官僚組織の不条理を描いた小説だ。
『臆病な都市』の中で描かれている新型感染症に対する集団ヒステリーや、大衆の行き過ぎた正義感は、現実世界のコロナ禍でも起こった出来事だ。コロナ禍をモデルにした小説かと思いきや、この小説はコロナ禍が深刻になる前に群像に掲載されている(2020年4月号)。中編小説なので、書かれた時期自体は新型コロナが話題になり始める時期よりも前のことだろう。『臆病な都市』はコロナ禍を予見した小説でもあるのだ。
『臆病な都市』が描いたのは新型感染症に対する大衆のヒステリーだけではない。東京都庁を舞台に組織の不条理を描き、システムを無批判に受け入れることがどんな惨事をもたらすかについて警鐘を鳴らしている。
Posted by ブクログ
⚫︎受け取ったメッセージ
わからないものに対する畏怖が
人々のパニックを作り出す
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
新型コロナ感染拡大の前に書かれた、新鋭による問題作。
鳥の不審死から始まった新型感染症流行の噂。
その渦中に首都庁に勤めるKは巻き込まれていく……。
組織の論理と不条理、怖れと善意の暴走を生々しく描く傑作。
組織の内部を描くという点で、物凄い洞察力を持った作家だ。
――亀山郁夫
コロナがこうなる前に書かれているというのに凄みを感じる。
――安藤礼二
まったく、なんだってあんな根拠のないものにそうすぐ振り回されてしまうのだろう。
それとも本当に、ただ自分のあずかり知らぬところで未知の病気が広まりつつあるのではないか、とも考えてみたが、やはり実感は湧かない。
家々から漏れる灯りがそこここに生活が在ることを教えてくれる。言い知れぬ不安が、影のように自分のあとを追ってきている気がした。 ――本書より
⚫︎感想
コロナ禍を経験する前に書かれた本書。
コロナ禍を経験したから、あり得る、わかると思いながら読める。が、これがコロナを経験しないで読んでいたら、ここまで身にせまって考えることは難しかったのではないだろうか。砂川さんの先見の明に感銘した。今でこそコロナの実態を理解し落ち着いているが、コロナが流行り始めた頃、買い占めや、マスク不足、罹患した人への差別など、人はわからないものに対して過剰に反応するものだということはよく覚えている。それに対して、政府の対応はどうだったか?奇しくも、この物語を証明するのが、コロナ禍だ。
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