【感想・ネタバレ】ブラックボックスのレビュー

あらすじ

第166回芥川賞受賞作。

ずっと遠くに行きたかった。
今も行きたいと思っている。

自分の中の怒りの暴発を、なぜ止められないのだろう。
自衛隊を辞め、いまは自転車メッセンジャーの仕事に就いているサクマは、都内を今日もひた走る。

昼間走る街並みやそこかしこにあるであろう倉庫やオフィス、夜の生活の営み、どれもこれもが明け透けに見えているようで見えない。張りぼての向こう側に広がっているかもしれない実相に触れることはできない。(本書より)

気鋭の実力派作家、新境地の傑作。

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Posted by ブクログ

久しぶりに良い意味で陰鬱で 心がザワザワする作品で良かった。

自分も 何かしらの軽い発達障害を持っているのではないかと
なんとなく思っている
この作者の 「自分の尺度では」頑張っている感じ
 物事が上手くいかない感じ

読みながら 上手く呼吸出来ない感じ(閉塞感)に
久しぶりに
良い意味で暗い気持ちで本を読んだ
よかった

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2025年03月10日

Posted by ブクログ

人が行動を起こす時、その内側では何が起きているのか?私達はみな一瞬ともいえないような時間で、言葉にも変換されないイメージのようなものが生じて、それから行動に移る。その一瞬(ブラックボックス)をよくここまで文字にしたなあ。

 その時その時、滴のように優しい人の気持ちが滴ることがあってもサクマには気付くことも、活かすこともできない。サクマはイメージを持てない。サクマは見通しを持てない。サクマのような人はいて、サクマのような人はブラックボックスのなかを、このようには語れない。けれどもし、それを表現してくれるなら、私はそれをききたい。

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2024年08月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

序盤で、一つひとつの場面からサクマの不安とか焦りをすごく感じた。ものごとが完全にクリアに見えなくて不安で、将来が見通せなくて、でも変わらなきゃいけない。でも心の中でちゃんとしなくちゃと思っていても自分ではどうにもできない。そういう悩みが一部自分にも通ずるものがあって、その苦しみとかがひしひしと伝わってきてちょっと辛かった。それだけ文章が良かった。
それでもラストでサクマがその分からなさや不確かさっていうのはそれだけじゃなくって、明日への可能性でもあるから大丈夫だよ(若干ニュアンスが違うかもしれない)という答えを見つけてくれて、なんだか安心した。
沢山の人に読んでほしい一冊。

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2024年08月05日

Posted by ブクログ

 Audibleにて。
 前半は、「ケーキの切れない非行少年たち」を連想させる内容であった。「推し、燃ゆ」の少女もそうだが、生まれ持った何らかの苦手さがありそうだ。

 しかしその特性に気づき、何らかの工夫を凝らせばこの特性を苦手さにしないことは可能なのだ。各種認知特性に対するユニバーサルデザイン、色覚に難を持つ人に対して作られた最近のゲーム(例えばぷよぷよ)のような合理的配慮が求められる。(倫理資本主義の観点から言っても、これは素晴らしい試みだと感じる)

 必要なのは、コグトレなのか環境整備の方なのか。おそらく両方だが、個人的にはコスパ&タイパ的に、後者重視で良いんじゃないか?と思う。

 明日はどうなるか分からない。この強烈な不安感から逃れるために、人は「黙過」を必要とする。
黙過は、どうしたらよいか分からない時に許された一人で生き抜くための防衛機制だ。「人間」ではなく、「人」である時の生きる手段、それが黙過ではないか。

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2024年05月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読楽コーナーに1冊表紙が真っ黒な本があり、吸い込まれるように本を手に取りました。本について検索してみたところ、第166回芥川賞受賞作でした。主人公は自転車配達の仕事をしており、毎日同じことの繰り返しに飽き飽きしていたがこの先どうすることも無い人生だと諦めていた。ある日、ちょっとした事で刑務所に入ることになるというお話です。タイトルにあるブラックボックスというのは「毎日同じことを繰り返す人生だとしても明日はどうか分からない。」また、人が心の内に秘めている善か悪かは分かりませんがそういったことを表しているのだと思いました。主人公の感情の変化や社会構造への苛立ちが感じ取れる作品でした。

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2025年05月02日

Posted by ブクログ

制度があったりルール強くある方が楽に生きる事ができそうだ。今風の会社で勤めることのトレンドとして自分の意思が会社の意思よりも反映されやすく、パワーバランスが昔と逆転している気がする。
(フレキシブルな働き方、週休3日、転職のハードルが低くなったり)
自由を求め、何にも縛られない生活が良いのかなぁと信じているのはムショに入る前のサクヤ。冒頭の
「信号なんかに足止めをくらいたくなかった。」
が分かりやすい。
自由であり、自分の意思で物事を決める事ができるようになった今の時代には、生活には溢れるように娯楽が転がっている(ネトフリ、YouTube、スマホゲーム等)。そのせいで、「このままじゃダメだ。」と思っていても、そんな思念を上書きするかのようにあらゆる娯楽が時間潰してくれる。そして、現実生活と向き合う事をおろそかにしてしまう。向き合わなくてもある程度満足出来てしまい、現実に起きた些細な事に対して無視できてしまう。だから、昨日と今日は全く違うのに今日を吸収しようとしなくなる。

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2024年10月30日

Posted by ブクログ

芥川賞私小説読むシリーズ。なかなか好き。生きづらい人間が沈んでいくなかに何かを見出す話は古今東西ハズレがない。

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2024年09月20日

Posted by ブクログ

主人公の「このままでいいのか」と焦りや不安がひしひしと伝わる作品でした。コロナがピークだった時は、給料が安定しない会社で働くことに不安を感じる人も多かったと思います。

前半後半で大きく場面が変わり、後半に入ったときは『なぜ、刑務所にいるのか』と困惑したけど、徐々にその経緯がわかっていきました。

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2024年07月03日

Posted by ブクログ

砂川文次『ブラックボックス』講談社文庫。

初読み作家と思っていたが、どうやら2作目のようだ。この作家の先に読んだ第164回芥川賞候補作『小隊』が面白くなかったことを思い出す。

元自衛官の作家による第166回芥川賞受賞作。

バブル崩壊後の失われた30年と言われる長い不景気、新型コロナによる社会に漂う閉塞感。いつの間にか不安定な非正規雇用が当たり前という時代になってしまった。そんな嫌な雰囲気の中で物語は展開する。

前半は読む限りでは、主人公のサクマが現代の非正規労働に苦しむ若者たちの姿と重なり、可哀想に思った。しかし、中盤過ぎの展開からサクマが何事にもだらしなく、直ぐにキレて暴力を振るうが故に仕事が長続きしなかったのだと知ると同情心は粉々に砕けてしまった。

物語の構成は少し変わっていて面白い。唐突に主人公のサクマの現在の置かれた状況を描いてから、何故そういう状況に陥ったのかが描かれるのだ。

特に唐突だなと思ったのが中盤過ぎの展開で、何故かサクマは刑務所に収監されているという場面だ。小さな山谷があるくらいで、眼を見張るような展開は無い。では、出所してからのサクマが描かれるのかと思えば、そうでもなく、結末が曖昧なままに小説は幕を閉じてしまう。


自衛隊の辞め、次に勤めた不動産会社も辞め、その後もアルバイトを主とした職業を点々とし、今は都内で自転車メッセンジャーの仕事に就いているサクマは焦りと苛立ちを感じ始める。

そんな中、同棲中の彼女が妊娠し、サクマはさらに焦りと苛立ちを募らせる。

場面は変わり、サクマは刑務所に居る。一体何が……

定価682円
★★★★

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2024年02月28日

Posted by ブクログ

物語だと終わりがあって、それが主人公又は読み手にとって収まりの良くないものであれば、バッドエンドと呼ばれる。しかし、現実はそうではない。多くの場合、突然人生が暗転したとて、まだ幕切れというわけには行かない。再び明かりがついたりつかなかったりする。そんな人生を生きていくために大切なことが何かを考えさせられたと感じた。

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2025年11月02日

Posted by ブクログ

始終、陰鬱とした空気で物語は進む。
このままじゃいけないと頭の隅で思いながらも、日々生活する為のルーティンに追われることで、枯渇していく未来をふわっと遠くに押しやり、思考に蓋をする主人公に共感した。
恐らくADHDであろう主人公から見た社会は、ブラックボックスのように分かりにくい世界で、だから順応出来ずセーフティーネットからもこぼれてしまう。
そして、社会からみた彼自身も、ブラックボックスの中でもがいているから救われない。
自己中心的で人の気持ちに寄り添うことも出来ない彼だが、最後、自分の得意とすることで社会に通じるドアを開けることが出来たラストは、静かだが良かった。
どんな形であろうと、人間は人や社会と繋がることで自らの檻から脱出出来るのだと思う。

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2025年09月09日

Posted by ブクログ

ある種俯瞰的な表現で語られるのが特徴的。タイトルは外形と中身の話と理解したが、中盤の展開はその点からも印象深い。

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2025年07月07日

Posted by ブクログ

 稍平凡に感じたが、純文系は最近読んでいなかったのでそれなりに楽しめた。

 コロナ禍真っ最中に芥川賞を受賞した作品。それを踏まえて読むと、成る程当時の気分とか風潮のようなものの手触りがそこはかとなく感じられる。

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2025年02月04日

Posted by ブクログ

主人公・サクマの向こう見ずで暴力的な行動に辟易するものの、彼の抱える鬱屈や虚無感、将来不安から目を逸らすための現実逃避など、否応なしに共感出来る部分もあり、彼を『自分とは程遠い存在』と思うか否かで没入度は違うはず。それまでの不穏さに比べ、ラストは些か素直過ぎる気もするが【自由=不安】と【不自由=安心】を天秤に掛けることで、自身と向き合う機会を得たのは怪我の功名と言えようか。アンコントローラブルなものに溢れた現代社会の中で、コントローラブルであろう己自身の感情の機微を注視せよ、というメッセージを感じ取った。

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2025年01月16日

Posted by ブクログ

ずっと前に買って積読してたもの。
前半はメッセンジャーについて詳細に書かれていて、ずっとその話なのかな?と思っていると、突然場面が変わりました。
うーん…サクマはけっこうメッセンジャーに向いている感じなのだけど、それで満足しているでもなく…
でも、キレて暴力に訴えるともうその時点で、やっぱりそれは駄目でしょう、と。
世の中は不公平で、お金持ち、成功者といっても運によるもの…もちろん個々の努力もあるでしょうが、それすら生まれ持った才能があったからこそで…
人は人!偉いも偉くないもないんだよ、と。好きなように生きれば良いんだよ、とサクマに誰か教えてあげればね、良かったよね、と思いました。
そういうこと言いたいんじゃない!って作者に怒られそうですけど…

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2024年07月23日

Posted by ブクログ

そういう気持ちで生きている人がいるのか?と不思議だったけど、賞をとったのだから共感を得ていると思う。自分には考えられない視点を学べて良かった。感動という感じはまったくない。

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2024年06月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

他人の人生はブラックボックスで、どんなに憧れていてもそうなるまでの過程がどうなっているのかわからない、というのはたしかにそうだなあと思いました。
サクマが自分の能力の中で人の役に立てること(本の中だと工具いじり)を感じ、希望を少し見出したところで本作は終わりですが、報われて欲しい思いました。

ゴールがあらかじめ用意されている環境は安心で楽だけど、どれをとっても全く同じ日がないように、毎日何かが変わっていくことの方で生きている実感を味わえるというメッセージを感じました。

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2024年05月10日

Posted by ブクログ

サクマの衝動的な言動の数々が、単調な日常から生じる将来への不安や、社会不信からくるものなのか、それとも先天的な性質なのか、、
とにかく、彼の極度に自制心を欠いた行動には驚かされた。

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2024年04月24日

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