くっかのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
全5巻完結。
サイズの合わない妹のセーラー服を着た、優秀過ぎて劣等感を思い知らされていた幼馴染が夜の公園で泣いていた。そのイラストから最後まで彼らについていった。
著者のインタビューで本作品の時代設定はガラケーの時代とのこと。つまりLGBTという言葉が出る前、ホモとかゲイが笑いのネタになっていた時代、性同一性障害という人がいるのも教えられていない時代。
作品の中で夏希が、子供の頃習い事を始めたけど周りが男の子ばかりで辛くなって辞めた、との事を言い、汐のカミングアウトするまでの辛さを思んばかった。ハッとした。
アリサのように良かれと思った行為が価値観の押し付けがこの作品に色々あるテーマのひとつ、と思った。その中で世羅は自由な価値観の持ち主に見えるけど、彼こそ相手の価値観を嘲笑し自分の価値観に相手を貶める心底ゲスだと思った。だからトリックスターになり得ているが。
咲馬はなんとか相手を理解しようと悩んで迷っている、主人公にふさわしい。ただ、彼が汐に向ける感情を思うと複雑。だって何でも自分より出来る幼馴染といるのが嫌で疎遠になっていたのに、カミングアウトで汐が弱ったら手を差しのべるんだもの。そう、手を「差しのべる」。5巻通して咲馬が自分の膿を出す作品でもある。
で汐。「女の子にはかなわないな」発言で彼の地獄が染みた。汐ちゃん、思うほど聖なる存在じゃない。その嫉妬深さが話をややこしくする。
BLとして読めるのかな?妄想深めるシーンもありますよ。5巻とか。
忘れられない作品になっていると思います。本作品を評して「ラノベでありながら重いテーマを描ききった」はもういいんじゃない。
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Posted by ブクログ
全五巻ということは、読者の支持を集め続けてきたのだろう。トランスジェンダーの女の子がヒロインの物語でそれだけ支持を集めたということが(そんなこと普通になればいいのにな、と、とても残念だけれど)すごい。で、普通に、物語として面白いのもすごい。そしてこのシリーズは巻ごとに明確にテーマが設定されているのだが、最終巻(本巻)のテーマは、ずばり、シス男性はトランス女性とセックスしたいという欲望を抱けるのか? だ。それを、登場人物が全員高校生およびその保護者と教員という設定で繰りひろげる。最終巻のこの本で一番気になったのは星原で、彼女は、うーん、生まれつきお互い男性の身体である二人がセックスできるの? だって、好きって、セックスしたいっていうことだよね? ということを、最初から直接的に、はっきり問いかけている。受け手側の二人がそれをとらえ切れてないだけ。
では、その答えはなにか。ヒロインの汐や、ヒーロー(似合わないな)の紙木の選択で正しいと思う。恋愛(あるいは愛)=セックス、というのは、あまりにセックスを過大評価しすぎだ。それは、あくまで一要素でしかなく、なんなら、なくても、愛は成立する。でも、好きな相手と、抱き合って眠りにつくのって、安らぐよね。ただ、それだけのことだ。 -
Posted by ブクログ
汐の妹・槻ノ木操の視点で、過去に槻ノ木家で起こった出来事と、咲馬の介入と別離を描く第4巻でした。最愛の母親の死、父親の再婚で迎えた新たな”母”、そしてずっと頼りにしていた「お兄ちゃん」の汐のカミングアウト。最も多感な時期にかくも大きな変化に曝されることになった操は、さぞ複雑な思いを抱えることになっただろうなと心が痛くなります。それだけに今回(というか彼女は一貫して同じスタイルなのだろうけど)、「母」である雪がみせた、「親」としての子供達との向き合い方には非常に感銘を受けました。さてラストシーンでの咲馬の告白は物語をどう動かすか気になるところ。
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Posted by ブクログ
ネタバレ函館に訪れた修学旅行中に時間が止まってしまうという冒頭に一気に引き込まれました。明日がやってくることの恐怖や、漠然とした不安が募る未来への拒否感――鬱屈した感情がこれでもかと描かれた小説でした。後ろ向きなことに真っ直ぐな麦野君の心情に共感しました。
東京にある暮彦おじさんの家にヒントがあるはずだと信じて、麦野君とヒロインである井熊ちゃんは二人で旅をする決意をする。
何もかもが停止した世界で、誰かの目を気にすることもなく、好きなように過ごす。時間が流れない世界は不便だけど、自由だった。その生活は「明日が来なければいい」と内心では思っている二人にとって天国にも等しい時間だった。
未来に希望を抱かなければ、いつまでも「このまま」でいられる。退廃的なのに甘美なその事実は、あまりにも魅力的で――。
最初はぎこちない会話を繰り広げていた麦野君と井熊ちゃんだったけど、旅を共にしているうちに心を開いていき、自分の抱えているトラウマや悩みまで話すようになる。そんな二人の関係性の変化を楽しんでみることができました。
私も会社に行くのが嫌で仕方がなかった時期があるので、とても深く心に刺さる物語でした。面白かったです。