くっかのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
全五巻ということは、読者の支持を集め続けてきたのだろう。トランスジェンダーの女の子がヒロインの物語でそれだけ支持を集めたということが(そんなこと普通になればいいのにな、と、とても残念だけれど)すごい。で、普通に、物語として面白いのもすごい。そしてこのシリーズは巻ごとに明確にテーマが設定されているのだが、最終巻(本巻)のテーマは、ずばり、シス男性はトランス女性とセックスしたいという欲望を抱けるのか? だ。それを、登場人物が全員高校生およびその保護者と教員という設定で繰りひろげる。最終巻のこの本で一番気になったのは星原で、彼女は、うーん、生まれつきお互い男性の身体である二人がセックスできるの? だって、好きって、セックスしたいっていうことだよね? ということを、最初から直接的に、はっきり問いかけている。受け手側の二人がそれをとらえ切れてないだけ。
では、その答えはなにか。ヒロインの汐や、ヒーロー(似合わないな)の紙木の選択で正しいと思う。恋愛(あるいは愛)=セックス、というのは、あまりにセックスを過大評価しすぎだ。それは、あくまで一要素でしかなく、なんなら、なくても、愛は成立する。でも、好きな相手と、抱き合って眠りにつくのって、安らぐよね。ただ、それだけのことだ。 -
Posted by ブクログ
汐の妹・槻ノ木操の視点で、過去に槻ノ木家で起こった出来事と、咲馬の介入と別離を描く第4巻でした。最愛の母親の死、父親の再婚で迎えた新たな”母”、そしてずっと頼りにしていた「お兄ちゃん」の汐のカミングアウト。最も多感な時期にかくも大きな変化に曝されることになった操は、さぞ複雑な思いを抱えることになっただろうなと心が痛くなります。それだけに今回(というか彼女は一貫して同じスタイルなのだろうけど)、「母」である雪がみせた、「親」としての子供達との向き合い方には非常に感銘を受けました。さてラストシーンでの咲馬の告白は物語をどう動かすか気になるところ。
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Posted by ブクログ
ネタバレ函館に訪れた修学旅行中に時間が止まってしまうという冒頭に一気に引き込まれました。明日がやってくることの恐怖や、漠然とした不安が募る未来への拒否感――鬱屈した感情がこれでもかと描かれた小説でした。後ろ向きなことに真っ直ぐな麦野君の心情に共感しました。
東京にある暮彦おじさんの家にヒントがあるはずだと信じて、麦野君とヒロインである井熊ちゃんは二人で旅をする決意をする。
何もかもが停止した世界で、誰かの目を気にすることもなく、好きなように過ごす。時間が流れない世界は不便だけど、自由だった。その生活は「明日が来なければいい」と内心では思っている二人にとって天国にも等しい時間だった。
未来に希望を抱かなければ、いつまでも「このまま」でいられる。退廃的なのに甘美なその事実は、あまりにも魅力的で――。
最初はぎこちない会話を繰り広げていた麦野君と井熊ちゃんだったけど、旅を共にしているうちに心を開いていき、自分の抱えているトラウマや悩みまで話すようになる。そんな二人の関係性の変化を楽しんでみることができました。
私も会社に行くのが嫌で仕方がなかった時期があるので、とても深く心に刺さる物語でした。面白かったです。 -
Posted by ブクログ
コミカライズを数話読んで、原作が気になったので手に取った。
夏を舞台にしたボーイミーツガールのSFものということで、どこか時をかける少女を思い出す設定。
ただし、SFとはいうもののギミックの設定はファンタジーに近い。
夏のじっとりとした暑さ、すべてを諦めているがゆえの主人公の割り切りの良さ、それでもなお現れる葛藤など、情景と心理描写が非常に生々しくて引き込まれた。
現実を受け入れ、正面から選択し、選んだ道を正解にするために足掻く、そんな物語だった。
「何が正しいのかなんて誰にも分からない。だからこそ自分が選んだ道を、正しかったと思えるまで走り続けるしかないんだよ」
というセリフは、物語の根幹を1つのセリフで表していて、読んでいる自身にも刺さって、作中で一番気に入った部分かもしれない。