あらすじ
変わりゆく三角関係。いま舞台の幕が上がる。
衝撃的な一学期が終わり、咲馬たちは夏休みに突入する。
いつもと少し違う、だけど何気ない日常の最中に、ふと頭をよぎる『あの出来事』。ちゃんと向き合わなければならない、そう思う咲馬だが、今は目を逸らすことしかできなかった。
そんな夏休みのある日。咲馬は、汐と夏希の三人で水族館へ行くことになる。三人は暗黙の了解のように『あの出来事』には触れず、楽しい時間を過ごす。だがなんでもないように振る舞っていても、過去はなかったことにはならない。
「二人は、付き合ってるんだよね?」
夏休みが終われば、その先には文化祭が待ち受ける。三人はそれぞれの想いを胸に、文化祭の準備を始める。実行委員の仕事、そしてロミオとジュリエット。行き違い続けた感情が交わるとき、舞台の幕が上がる。
『夏へのトンネル、さよならの出口』のコンビ「八目迷 × くっか」が贈る、待望の青春小説第2弾。今日的な問題に切り込んだテーマ性と衝撃的な結末から、続刊を希望する声が相次いだ話題作。
※「ガ報」付き!
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
【たとえ、傷付き傷つけようと君と対話する事を諦めない】
ある出来事がきっかけで咲馬と汐がキスした所を目撃した夏希。関係がぎくしゃくしながらも文化祭で劇の準備に取り掛かる物語。
男であるのに女として生きる覚悟をした汐にとってこの世界は息苦しいだろう。
回遊魚のようにただ、流されるのでなく己の意志で、外の海を目指す。
自分にとっての居場所を探し求める。
人任せにすれば取り残されるのも分かっているから。
物の見え方が違っても、沈黙は金だとしても、君とちゃんと話したい。
咲馬は己の醜悪さに辟易しながらも、汐の心に歩み寄るのだ。
Posted by ブクログ
汐が性同一性障害であることを、周りが徐々に受け入れ始め、文化祭の場を始め、汐が少しずつではあるが確実に活躍を始めるお話。
こういう難しい問題は、言葉を十分に尽くすことももちろん重要だし、相互に理解できないとしても、まぁ良いかと思えるに至るという意味で、時間が解決することもあるよな、と。
Posted by ブクログ
咲馬のどっちつかずなムーブ、それまでの汐との関係性を差し置いてもちょっとどうなのー……。
これがただの三角関係ラブコメだったら「主人公が不快。無理」ってなってしまうけど、この作品は「主人公たちの精神的な成長」が重要な見所だと思うので静かに見守ります。
クラスのみんなが汐に対する接し方を覚えてくるにつれて西園さんの立場が悪くなるのが、リアルな田舎のクラスだなぁって感じで怖い。
なんでこんな「高校のクラスの嫌な感じ」をリアルに描写できるの怖いよ……。
それでもぶれない西園さんには西園さんなりの考えがあって、でも私は相容れないなぁ。
Posted by ブクログ
第一巻は夏休みの時期の物語だったが、第二巻はその続きから、秋の文化祭に向けての話。ヒロインである汐は本巻でも更に内面が掘り下げられていく。同時に周囲の咲馬や夏希も、好きということがどういうことなのか、自分達の汐に対する態度は汐にとってほんとうに望ましい態度なのか、自問自答を重ね、自己嫌悪に陥っていく。西園は相変わらず自身の価値観を汐や周囲に一方的にぶつけまくる未熟なキャラクターだが、その未熟さゆえの限界に突き当たっていて、その姿は痛々しい。世良は、たんなるチャラい男ではなく、本質をみる能力をちゃんと持っている。普通って、なにが普通なの? この問いは、第三巻へ持ち越しかな。