藪下史郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
本書はスティグリッツの弟子でもあり、スティグリッツの教科書の翻訳などを手掛けている著者が非対称情報の経済学について解説・論じた本である。
情報の非対称性(非対称情報)とは、売り手と買い手(売り手同士、買い手同士)の間で情報量に差があることをいう(p.81)。本書は主に3つの構成となっている。
まず第1章では、アダム・スミスの理論を中心とした伝統的な経済学の解説を行い、その問題点を主張している。次に第2章から第6章では、伝統的な経済学の問題を解決するために誕生した新しい経済学誕生の経緯とその理論の解説を行っている。特に非対称情報について取り扱っている。最後に第7章では、これまでの議論を踏まえ -
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経済を発展させるのはイノベーション。
イノベーションを起こす土壌はラーニングによる知識のインプット。
知識へのアクセスを向上させる社会の形成が必要。
ラーニングの重要性、ラーニングを促進する環境、ラーニング・ソサイエティの形成に必要な政策について。
政策部分について、他国との関係において、市場の開放・金融市場の自由化では比較優位を形成できない因果関係は、新しい観点だった。
(将来を考慮に入れた)動学的比較優位形成のためには、知識の展開が望める、ラーニングの大きな産業を保護する必要がある。(現在の)静学的比較優位に囚われない決定が必要とのこと。
国の話だから政策による決定。
一方、自分の話 -
Posted by ブクログ
非対称情報下での市場に関する研究でノーベル賞。
部分均衡分析=ひとつの市場に注目する
すべての市場の相互依存関係=一般均衡分析
限界費用曲線の右肩下がりは今は違うのでは?
市場均衡はパレード効率を実現する=厚生経済学の第一基本命題=新古典派経済学の根拠
資源配分は競争市場に任せることで、効率的資源配分が実現する=厚生経済学の第二命題(たとえ不平等な分配であっても)
外部性、情報の非対称性により第一命題が達成されない可能性
第二命題も現実的には難しい。
コースの定理=外部性も市場取引で解決できる。しかし市場がないか、取引コストが高い。
途上国の問題=所有権、取引制度が確立していないこ -
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[ 内容 ]
二〇〇一年「非対称情報下の市場経済」という経済分析の発展に対する貢献で、三人のアメリカの経済学者にノーベル経済学賞が与えられた。
その一人のジョセフ・スティグリッツ・コロンビア大学教授(クリントン政権下の経済諮問委員会委員長、世界銀行の上級副総裁・チーフエコノミストを歴任)の直弟子・藪下史郎早稲田大学教授がこの「新しい経済学」をやさしく解説し、また日本経済失速の原因を明らかにする。
[ 目次 ]
第1章 伝統的経済学の限界
第2章 新しい経済学の誕生
第3章 非対称情報下の市場
第4章 モラルハザードと経済活動
第5章 組織と制度
第6章 マクロ経済学と非対称情報
第7章 九〇 -
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簡単で物凄くわかりやすく書かれているのはいいんだけど、タイトルに「入門」とか一言入ってたらもっと良かったし星5だったと思う。
伝統的な新古典派ミクロ経済学の限界を提示して、スティグリッツと非対称情報の経済学の略歴、そして非対称情報の経済学の解説って感じ。
確かに今習ってるミクロ経済学の理論では現実を描き出すのに限界があるんだろなってのわかる。まぁ今は教科書で非対称情報下での動きもモデル化して載せてるけど。
非対称情報の経済学ではモラルハザードと逆選択がメインなものなのかな、この二つをさまざまな例を挙げて説明。保険や中古車市場ってのは有名な例さね。
また安定性や公平性と効率性を同時に達成するのは -
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副題の「エージェンシー理論の光と影」に惹かれて購入したものの、良い意味でも悪い意味でも裏切られた。
【本書の概要】
本書は、アメリカ経済の「組織化」の変遷を、主に3人の思想家(学者・事業家)の人生とともに読み解くノンフィクション。
1人目は、「所有と経営の分離」のバーリ。この時代は、大企業が力を持ち、雇用の安定など社会基盤の供給者として期待された「組織の時代」。
2人目は、「エージェンシー理論」の提唱者ジェンセン。金融界が力を持ち、金融市場が流動化が進み、株主をはじめとした市場が力を持つ取引の時代へと移る。
3人目が、リンクトインの共同創業者でもあるホフマン。リーマン・ショックで、金融界に対 -
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ネタバレこの本は、一人の人が書いているのかと思ったら、結構いろいろな論者が各章を書いていて、賛否いろいろ混ざっている感じ。でも、基本的に皆移民の受け入れにはポジティブで、その論拠として、主に経済効果の大きさ、財政への影響が小さいと思われること(+でも-でも。)を挙げる。一部、同化のあり方も分析しており、最近は同化度が下がっているため、財政への影響はもしかしたらもう少し上がる(負の方に)かも、という示唆はある。
基本原則は、高技能移民の受け入れ大推奨!というよく聞く論調なのだけれど、理論の話なので、その受け入れの拡大の仕方が、市場メカニズムに基づいたビザの発給(オークション的な)とか、全世界的な国境レス -
Posted by ブクログ
現在移民は世界の総人口の3%にすぎない。移民の開放で50~150兆ドルの利益がある。
生産要素の自由移動で比較優位の原理が活かされる。
移民で、流出国も人的投資の促進がある。所得の還流がある。
移民による賃金と雇用の減少効果は一時的。
移民の労働は補完的。部分均衡モデルでは、移民によって賃金と雇用が減少。一般均衡的効果を考えるとそうともいえない。
教育は混雑性供給財。
不法移民は失業で国に帰るので生活保護を受ける機会は少ない。
帰国すれば、公的年金に対しては純貢献になる。
移民の子孫は大きなプラスの財政純貢献をする。第一世代は教育などの費用のために貢献が少ない。
第二世代以降は同化し、文