藪下史郎のレビュー一覧
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本書はスティグリッツの弟子でもあり、スティグリッツの教科書の翻訳などを手掛けている著者が非対称情報の経済学について解説・論じた本である。
情報の非対称性(非対称情報)とは、売り手と買い手(売り手同士、買い手同士)の間で情報量に差があることをいう(p.81)。本書は主に3つの構成となっている。
まず第1章では、アダム・スミスの理論を中心とした伝統的な経済学の解説を行い、その問題点を主張している。次に第2章から第6章では、伝統的な経済学の問題を解決するために誕生した新しい経済学誕生の経緯とその理論の解説を行っている。特に非対称情報について取り扱っている。最後に第7章では、これまでの議論を踏まえて、1990年代以降の日本の金融不安の問題点と今後について著者の見解を述べている。
本書はかなりわかりやすい。著者は様々な教科書を書いているだけあり、その経験が生きているといえる。また著者の主張はアベノミクスに多く反映されている。
本書の問題点を一つ上げると、読み進めていくうちに内容が専門的になっていくことだ。特に第7章は金融理論を学んでいない人が読むのは容易ではないだろう。とはいえ、本書の要旨はわかるはずなので、経済学の知識が全く無くてもある程度理解することができると感じた。
経済学を学んでみたい人、経済学を改めて学び直したい人のみならず、現在経済学を学んでいる学生にぜひおすすめしたい作品である。 -
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経済を発展させるのはイノベーション。
イノベーションを起こす土壌はラーニングによる知識のインプット。
知識へのアクセスを向上させる社会の形成が必要。
ラーニングの重要性、ラーニングを促進する環境、ラーニング・ソサイエティの形成に必要な政策について。
政策部分について、他国との関係において、市場の開放・金融市場の自由化では比較優位を形成できない因果関係は、新しい観点だった。
(将来を考慮に入れた)動学的比較優位形成のためには、知識の展開が望める、ラーニングの大きな産業を保護する必要がある。(現在の)静学的比較優位に囚われない決定が必要とのこと。
国の話だから政策による決定。
一方、自分の話になると、ラーニングの大きな仕事ができてるんだろうか。将来のある仕事って何だろうか。 -
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非対称情報下での市場に関する研究でノーベル賞。
部分均衡分析=ひとつの市場に注目する
すべての市場の相互依存関係=一般均衡分析
限界費用曲線の右肩下がりは今は違うのでは?
市場均衡はパレード効率を実現する=厚生経済学の第一基本命題=新古典派経済学の根拠
資源配分は競争市場に任せることで、効率的資源配分が実現する=厚生経済学の第二命題(たとえ不平等な分配であっても)
外部性、情報の非対称性により第一命題が達成されない可能性
第二命題も現実的には難しい。
コースの定理=外部性も市場取引で解決できる。しかし市場がないか、取引コストが高い。
途上国の問題=所有権、取引制度が確立していないこと。
分配問題と効率性と公平のトレードオフ
市場の失敗
情報の非対称性=中古車市場、レモン市場、AIJ事件、
労働市場、保険市場の逆選択、モラルハザード、
プリンシパルエージェント問題、
それを防ぐ方法として、シグナリング、自己選択メカニズム
政界と財界の癒着=回転ドア。順に職に就く
貸付市場と信用割当。
貨幣量よりも信用量が重要。利子率は金融政策として機能しなくなった。従来の金融政策が功を奏さない理由。
資本の必要収益率、トービンのqが投資に影響を与える。
それに対し、利子率よりも信用のアベイラビリティが投資を決める
サミュエルソン=新古典派総合 古典派とケインズ経済学の融合。
IMF批判=緊縮財政と高金利政策
バグワティの「グローバリゼーションを擁護する」
情報の経済学=情報の公共財的性格
情報のネットワーク外部性=バンドワゴン効果=支配的な考え方がさらに支配する。
経済思想にもネットワーク外部性がある。政策提言が実現しやすい。
資本の自由化は、証券投資と直接投資と違う。
市場の失敗と所得格差の問題。
所得格差の拡大
金融システムの府の外部性、大きすぎて潰せない
発展途上国は収益率が高いはずなのに投資が回らず、人材が流出するのはなぜか。経済制度の違い、生産性の違い。信用割当が少なくて資金を集められない。
経済発展の政府の枠割、マクロ経済政策の成功。
移行経済も同様。 -
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[ 内容 ]
二〇〇一年「非対称情報下の市場経済」という経済分析の発展に対する貢献で、三人のアメリカの経済学者にノーベル経済学賞が与えられた。
その一人のジョセフ・スティグリッツ・コロンビア大学教授(クリントン政権下の経済諮問委員会委員長、世界銀行の上級副総裁・チーフエコノミストを歴任)の直弟子・藪下史郎早稲田大学教授がこの「新しい経済学」をやさしく解説し、また日本経済失速の原因を明らかにする。
[ 目次 ]
第1章 伝統的経済学の限界
第2章 新しい経済学の誕生
第3章 非対称情報下の市場
第4章 モラルハザードと経済活動
第5章 組織と制度
第6章 マクロ経済学と非対称情報
第7章 九〇年代の日本経済と金融不安
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
簡単で物凄くわかりやすく書かれているのはいいんだけど、タイトルに「入門」とか一言入ってたらもっと良かったし星5だったと思う。
伝統的な新古典派ミクロ経済学の限界を提示して、スティグリッツと非対称情報の経済学の略歴、そして非対称情報の経済学の解説って感じ。
確かに今習ってるミクロ経済学の理論では現実を描き出すのに限界があるんだろなってのわかる。まぁ今は教科書で非対称情報下での動きもモデル化して載せてるけど。
非対称情報の経済学ではモラルハザードと逆選択がメインなものなのかな、この二つをさまざまな例を挙げて説明。保険や中古車市場ってのは有名な例さね。
また安定性や公平性と効率性を同時に達成するのは非常に困難で、どちらかを優先するならどちらかを犠牲にしなければならないって当たり前の話も深みを持って納得できた。
日本の雇用制度にもそれなりのメリットがあること、そして制度が「ナッシュ均衡」であるとゆうのも新しい視点。
そして非対称情報の経済学をマクロにも応用して、効率賃金理論や屈折需要曲線、金利と非対称情報についてなども勉強になったし。
またこの本を通して初めてバランスシート不況とゆうものをおおまかに理解できた。
日本に必要な改革は単なる規制の撤廃だけではなく、情報の非対称性をなんとかすることとインセンティブを高める租税制度などもっと考えなきゃならないことがあるんだとも実感。 -
Posted by ブクログ
副題の「エージェンシー理論の光と影」に惹かれて購入したものの、良い意味でも悪い意味でも裏切られた。
【本書の概要】
本書は、アメリカ経済の「組織化」の変遷を、主に3人の思想家(学者・事業家)の人生とともに読み解くノンフィクション。
1人目は、「所有と経営の分離」のバーリ。この時代は、大企業が力を持ち、雇用の安定など社会基盤の供給者として期待された「組織の時代」。
2人目は、「エージェンシー理論」の提唱者ジェンセン。金融界が力を持ち、金融市場が流動化が進み、株主をはじめとした市場が力を持つ取引の時代へと移る。
3人目が、リンクトインの共同創業者でもあるホフマン。リーマン・ショックで、金融界に対する不信感が高まると同時に、インターネットの流行により、シリコンバレーから誕生したビック・テックが力を持つネットワークの時代。
【面白かった点】
こういった時代区分は、アメリカ経済の変遷を捉えるうえで、とても有用だと思う。
終章では、再び権力が集中する巨大IT企業に対抗するには、市民が利益集団を作り、組織化していくことが「唯一の現実的な防衛策」であると主張する。また、それまでの章で語られていたストーリーは、多元主義という基本思想から捉え直すこともできることが述べられていて、興味深い指摘だった。
【イマイチだった点】
ただ、全体として、主題が分かりにくく、焦点がぼやけていて、少し読み進めるが退屈になってしまった。
また、日本語のタイトルでは、「中産階級」をキーワードとして焦点を当てているが(原題では副題の一部)、本文の内容とのズレを若干感じた。
いずれにせよ、いろいろな論点が詰め込まれているので、多様な問題意識から読み解ける本であることは間違いないと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこの本は、一人の人が書いているのかと思ったら、結構いろいろな論者が各章を書いていて、賛否いろいろ混ざっている感じ。でも、基本的に皆移民の受け入れにはポジティブで、その論拠として、主に経済効果の大きさ、財政への影響が小さいと思われること(+でも-でも。)を挙げる。一部、同化のあり方も分析しており、最近は同化度が下がっているため、財政への影響はもしかしたらもう少し上がる(負の方に)かも、という示唆はある。
基本原則は、高技能移民の受け入れ大推奨!というよく聞く論調なのだけれど、理論の話なので、その受け入れの拡大の仕方が、市場メカニズムに基づいたビザの発給(オークション的な)とか、全世界的な国境レス化でどうか、という話になっておりなかなか面白い。
研究の基本はすべてアメリカなので、日本のような特殊世界ではもう少し注意も必要だけれど。
ただし、政策のあるべき論と経済性を求める理論とはまた違う。
最後に代表的な研究者の名前・所属と立場概要を書いてくれてたのは良かったな。 -
Posted by ブクログ
現在移民は世界の総人口の3%にすぎない。移民の開放で50~150兆ドルの利益がある。
生産要素の自由移動で比較優位の原理が活かされる。
移民で、流出国も人的投資の促進がある。所得の還流がある。
移民による賃金と雇用の減少効果は一時的。
移民の労働は補完的。部分均衡モデルでは、移民によって賃金と雇用が減少。一般均衡的効果を考えるとそうともいえない。
教育は混雑性供給財。
不法移民は失業で国に帰るので生活保護を受ける機会は少ない。
帰国すれば、公的年金に対しては純貢献になる。
移民の子孫は大きなプラスの財政純貢献をする。第一世代は教育などの費用のために貢献が少ない。
第二世代以降は同化し、文化的にも見分けがつかない。
不況によって、メキシコからの流入は減っている。
H2A=農業労働者で人数の制約がない、H2Bはその他の労働者で割当がある。
移民の選抜は市場アプローチで=ビザを乳殺で売る。技能水準が高い人が入国する。
ビザの価格で世界の評価がわかる。
貧しい移民がっ差別されるという批判。
不法移民対策。1000万人以上の不法移民の存在。
既に人的資本の重要な一翼を担う。
子供がいる場合、その扱いにこまる。
不法移民を追放した場合、経済活動が需要側としても停滞する可能性がある。
入国税アプローチ=いくらと決めるのか。
カナダのポイント制度と同じ。行政が決めるのは効率が悪い。
高技能移民は一般に歓迎されるが、大学卒も就職難になっている。
同化は選択肢ではなく必要なことがら。生活の規範は同化すること。同化が進まないと社会が文化によって分断される。
日本にいる移民は日本人より法律を尊守している。
実証データが少ないため移民のプラスマイナスを図ることはできない。
完全な自由ができないとしても、上限は大きく引き上げて、人選は市場に任せるべき。
社会厚生関数のなかの何を重視するかによって、移民の賛否が決まる。
所得の総額をどのように分配するか。社会制度を壊さないか。