青木千鶴のレビュー一覧
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『用心棒』というだけで怪しげな邦題のジョー・ブロディ・シリーズ第二作。『続・用心棒』とは、何だか昔の時代劇映画みたいだ。マカロニ・ウェスタンの『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』が「続」とか「新」とか、まるで別の作品なのに、タイトルで売れっ子俳優クリント・イーストウッドの二番煎じ三番煎じを狙ったという当時の映画界事情が思い浮かぶ。
いかがわしさ満載のこの作品は、あの毒々しい当時の映画看板を思い出させ、何だか汗臭く、昭和っぽく、やたらと懐かしい。ぼくは仕方なく、C・イーストウッドのイメージでジョーを思い描くことにしています。
著者デイヴィッド・ゴードンが、前作『用心棒』で、従来の純文学に -
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私の心はズタズタにされた。
家族を殺され、復讐をしてやると銃を手にすることから始まるであろう連鎖。
銃社会のアメリカが抱えている問題を子供の視点から、黒人のコミュニティの問題(貧しいあまりにドラッグの売人をやらざるを得ないことや、ドラッグに関わると芋づる式にギャングの問題に繋がること等)、それらを独特の詩の形式で炙り出す。
エレベーターに乗り込んでくる人たちが誰なのか。
一人一人の過去を辿っていくうちに視界が涙で滲む。
涙が止まらなくて、ページは濡れていった。
読んでいてなんとなく予想ができてしまうからこそ、心に重く響く悲劇の数々。
悲しかった。
大事な人を殺されたとしても、自分が怒りでどう -
Posted by ブクログ
おととい兄のショーンが銃殺された。「掟」に従ってぼく(ウィル)は復讐する。ショーンの引き出しから銃を見つけ、ジーンズの腰に押し込む。殺したのはきっとリッグスだ。
アパートメントの8階からエレベーターに乗ると、7階から男が乗ってきた。それはショーンの兄貴分の亡パックだった。6階からは幼馴染の亡ダニが、5階からは亡マーク伯父さんが……。
各階で止まるエレベーターに乗り込んでくる身近な故人たちとの関わりを通して、短絡的な復讐の愚かさに気づいていく少年の物語。
*******ここからはネタバレ*******
横書きで、詩の形で綴られるこの物語は、情報が断片的でパズルを解くように真実が明 -
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優れた自然描写と言えば、普通は優しく爽やかで癒される文章と考えてしまうところ、なんて汚くエゲツない風景が濃密に、しつこく殴りつけられていること…。
嫌われていることなどお構いなしの爬虫類や、捕食動物たち。
わをかけて不思議な行動の主人公。
暴力の匂いを惜しげもなく露わにする登場人物たち。
春を奏でる花々は、自己の遺伝子を残すために咲き、虫たちは生のために蜜を吸い、鳥たちは子育てのために、その虫を捕食し囀る。
身勝手で、不条理で非合理的な人間たちの理由は、そこでは通用しないようだ。
前半の遅々として進まない。でも非常に濃厚な舞台から、ラストシーンの殺し屋との対決まで、ギヤを上げ下げして走る -
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兄を射殺された主人公が生まれて初めて銃を握りしめ、復讐を遂げるためにエレベーターに乗りこむ。地上階に降りるまでの間に、主人公は思いもよらない人たちとの再会をしていく。著者は詩人でもあるそうで、詩と小説の中間みたいなスタイル。独特な文章の配置や改行で、深い余韻と意味のつまった余白がそこかしこにある。銃撃が身近にある環境で育ったと思われる主人公は、憎しみの連鎖を止められるのか。物凄くスタイリッシュな映像とアイディアがあれば映画化とかできるんじゃないかって気がする。
誰かを溺死させることを
水が面白がっていないだなんて
どうしたら言い切れる?
(P.161) -
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デイヴィッド・ゴードンと言えば、あの『二流小説家』で騒然たるデビューを果たした、あの作家。そう思っただけで、この本はポケミスであるにも関わらず、買い控えてしまっていた。当時はこの作家は、賛否両論で読者層を分断していたように思う。純文学への偏向が諸所に見られつつ、娯楽小説としても面白いということで、作品のミステリ部分だけが、何と日本で映画化された。ぼくはどちらも味わってみて、この手の小説は苦手なので、映画の方が面白かったかな、でもそちらも大したことはないか、などと正直うなされていたものだ。
それでも性懲りもなく、第二作『ミステリガール』も読んでしまったが、これまた苦行と言うべき読書体験であ -
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ポルノやSF、伝奇小説等ジャンルを問わずに小説を書いていた売れない作家ハリーの元に1通の手紙が届く。差出人は4人を殺して死刑判決を受けたダリアンだった。その内容は自分の告白本を書いてほしいと言うことであった。
その話にあまり乗り気ではなかったハリーだったが、マネージャを辞任する教え子の女子校生クレアに促され刑務所に向かう。待ち構えていたダリアンはハリーの小説のファンデ、そのために原稿を依頼したいと言うことだった。ただ、一つ条件がありそれは、ダリルにファンレターを送ってくる女性達に会い彼女らを元にしたポルノを書いて自分に読ませてほしいとのことだった。
仕方なしに話を受けたハリーが教えられた女性達 -
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ミステリへの愛に溢れた秀作で、ゴードンの才気溢れる筆致が堪能できる。売れない小説家ハリーを主人公に一攫千金のチャンスを掴みながらも、一筋縄ではいかない壁をどう乗り越えるかという展開がとにかく読ませる。メインプロットとは直接関係ないものの、ハリーが創作したホラーやハードボイルド、SF小説を抜粋して挿入する遊び心も楽しい。人物造型が巧く、特にハリーのビジネスパートナーとなる少女の多感な心の揺れの表現などが見事なのは、著者が普段から繊細な観察力を持つが故にだろう。さらに残忍/狂気性では突出する殺人鬼が登場する点でも忘れがたい印象を残す。時にオフビートな捻りを加えつつも、最後にはミステリとしてきちんと
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Posted by ブクログ
SFのようなミステリーのような物語。ハードボイルドSFと言ってもいいのかもしれない。物語の舞台は現代から見れば過去なのだが、設定はあくまでも架空の場所。ある1つの会社が世界を牛耳っている世界での物語である。そんな舞台で、特殊な能力を持った主人公の男が、不思議な事象に出会い、物語の舞台となっている物事の真実を暴いていく。そして自分自身への秘密にも迫る。
上巻は不思議なことがどんどん起こり、しかもテンポよく発生するため、あれよあれよと言う間に読み進められる。地味なんだけど、いや地味でもないか、淡々と物語が進行しているように思えて、結構激しく物語が進んでいく。面白いかと聞かれれば、地味なんだけど、 -