青木千鶴のレビュー一覧
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『二流小説家』はちなみに面白かったのか? とあなたはぼくに問われるかもしれない。でもぼくはあなたにきっと答えることができない。あるいはぼくはこう答えるかもしれない。ミステリとしてはどうかと思う。謎解き部分はあるけれどもそう秀逸な流れでページを繰る手が止まらないというスピード感覚があるわけでは全くない。むしろ忍耐を強いられると思うので、よほど本の好きな人、活字中毒者たちに対してしかぼくは正直なところ薦めたくないんだ。
『ミステリガール』はどうだったのか? とあなたはぼくに問われるかもしれない。ぼくはきっとこう答えるしかないだろう。言葉は好きですか? あるいはあなたには本を読む時間を大切にできますか? 何故なら、この本は、スリリングでもスピーディでもなく、むしろ数々の無関係にすら覚える著者の博学エピソードによってブレーキがかかることのほうが多い小説なので、そういう博学エピソードを楽しめない口には、ぼくは全くお薦めできないんだ。
というわけでひどく多くの複雑な条件付きでなければお勧めできない作家としてデイヴィッド・ゴードンをぼくが見ていることだけは、了承してほしい。そのくらい難しい書物だ。この小説は言わば総合小説であり、ミステリ単体でシンプルに作られたものではないことだけは請けあう。それ以上にハヤカワ・ポケミスで出されてよかった本なのだろうか? とさえぼくの足元が揺らぐ。
本書は一作目の度をさらに超えて饒舌が疾走する。前作は作中作やら、小説家の持つ小説論、マルセル・プルーストを持って何を語ろうとしているのかわからない不明確さなどが、中途半端なきらいがあったが、本書はさらにそれらの無責任なプローブが世界をつつき回しては出来損ないみたいなフリークなキャラクターたちの哄笑という名の手術に晒される。よくもまあここまで何かに偏り専門化した変わり者たちをクリエイトしたものだ、と感心するくらいに、彼らの造形は見事なものなのだが。
この本はミステリなのだろうかと一千回くらい思い疑いを極限に増したあたりで、えええええ? というくらいの驚きに晒された自分が少し情けなかった。でも嬉しかった。この本はミステリだったのかもしれない、と確信には程遠いが、いくばくかの可能性に安堵のため息を付くことができたからだ。さらに、三本目のフィルムの登場により、この小説がミステリであったことがようやく証される。おいおい、もう巻末近いぜ、との感想は置いておくとしても。
そして離婚を言い渡して行方を絶った妻ジェインの物語が、主人公(そういえばこの人は小説家志望)の道筋に重なったときに、三度目の驚愕が訪れる。いずれも前作を上回るツイスト構造であることは間違いない。この瞬間を最高の快感とするためにこの小説が書かれたことは間違いないと思うくらいに。作者の小賢しい笑顔に降参した読者たちの悔しさ半分の苦笑が見えてくるくらいに。
というわけでこの作家は90%の人には薦めない。映画が好きであったり本が好きであったり、マニアックでフリークである人たちの魂を応援できるか賛同できるかする10%(もいるか?)の人たちのために存在する作家であると言い切っていいのかもしれない。ぼくは『ワイルド・バンチ』と、その映画でマパッチ将軍の役をやったエミリオ・フェルナンデスのその後のメキシコでの人気ぶりに関するトリビアが個人的な収穫であった。そういう魂の部分に触れる歓びみたいなところをつついてくるとてもいやらしい手口を持っているのである、このふざけた作家は。 -
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ネタバレすごく切ない気持ちになった
やるせない怒りと辛さと悲しみ
掟に従うことってその環境下ではその瞬間を生きるために大切なんだろうけど、でも本当は長い目で見たらもっと大切にすべきことがある。
泣いたっていいし悲しみを精一杯感じたっていい。
人間が人間的で自然な感情を精一杯感じて、ゆっくりと痛みを感じて、受け入れて、治癒していく。そんなことができるのは安全で守られているからこそであって、それが出来る環境に感謝したいと思った。
詩集×長編作品
物語ではあるけど、文章の配置の仕方だけでなく言葉の言い回しや表現があくまで詩集だった。特に感覚や感情を何かに例えているところ、歌詞のような表現が詩集らしくて繊細で、だからこそ生々しくて妙に心が痛かった。
主人公ウィルにエレベーターの中で言葉や過去のエピソードや態度で教え諭そうとした先人たち。
「お前もくるか?」
復讐の道を辿るかどうかは置いておいて、自分だったら死んだ方が良いって思ってしまうかも。恋しい人たちと一緒にいきたいって思ってしまう。 -
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パッとしないゴーストライターの私(ハリー・ブロックという名前)のもとに、死刑囚が自身の犯した事件について告白する本を執筆してくれと依頼してきたが、いざ面会のために刑務所を訪問したところ、思わぬ事態に巻き込まれてしまったので、その一部始終を(関係者等の実名は変えて)サスペンスストーリーとして執筆してみました…という体裁のサスペンス。
事件の謎解きは、どんでん返しが複数回あって面白いが、ところどころにある猥雑なシーンは必要なのかな…と首を捻らざるを得ないが、主人公のハリー・ブロックが「ポルノ雑誌に雑文を書いていたゴーストライター」という設定で、本書はハリーが執筆したという体裁のため、仕方がないところ。
ややメタな表現が散見されるのも、それが理由かと考えられる。
章立ては細かく区切られていて読みやすいが、それでも全体として冗長な印象は受けた。 -
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ネタバレ今や売れっ子作家となった夫を持つミセスマーチ。
何もかも順風満帆の生活を送っていたが
いつも行く店の店員に夫の新刊が
奥さんをモデルにしてるんじゃないかという
たった一言で壊れ始める。
その新刊の主人公が醜い娼婦ということで
みんなが自分をそう思っているんじゃないか
夫は自分をそういう目でみてるんじゃないか
そこから本当に果てしてない猜疑心に囚われる。
原因は店員の一言だったが
合間合間にミセスマーチの幼少期が描かれていて
そこで母親の愛情を貰ってないのが窺える
そのことでマーチの自己肯定感が極めて低くなってしまってるんじゃないかと思う。猜疑心に繋がってる。
猜疑心は家の中にいるはずのないゴキブリがいたり、最終的には夫が女の子を殺したと思いはじめ
1人で現場に赴き、被害者の知人や祖母の家まで行っている。
最後は夫自ら自分は浮気をしていると離婚して欲しいと言われ、夫を殺すという結末。
幼少期に極端に親に認められずに育てられると
そのまま自分自身も自分を認めず大きくなってしまう気がする。
ミセスマーチの幼少期が悲しくて
全部の発端は母親が原因だと思ってしまった。 -
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ネタバレウィリアム・K・クルーガー、C・J・ボックスにも通ずるところのある”大自然と犯罪”もの。
異色なのは犯罪者と対峙する立場の主人公ライスがかつて麻薬の運び屋をしており、服役歴有。出所後はとある事情から自ら追われる身ともなっており、舞台であるヴァージニア州ターク山の財団所有地の管理人としての立場も本来の素性を隠しての生活を送っているいわくつきの男であること。
ある日ライスの居住区に迷い込んだ”キノコ摘みの男”が森で熊が密猟にあっていることを伝える。
その日から密猟者を捉えることに四苦八苦することになるのだが、追手からの追跡の恐怖や地元住民との不和、女性前任者に行われた暴行事件の犯人探しも相まって話は混沌としてくる。
ミステリ色は弱い。
ただ何といっても中盤、忘我の境地を共体験させられることとなる、密猟者を捉えようと自然に溶け込み、自然と向き合う過程が圧倒的。ライスの覚醒ぶりがすさまじく、”キノコ摘みの男”との再会、密猟者との対決へと至る幻想感はまさに超自然的世界観。
ただやっぱり自分はもっと現実的な意識で読める物語の方が好きかなということで星3つ。 -
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ネタバレ対テロリストの警戒強化の折、手厳しく手入れを受けたストリップクラブの用心棒ジョー・ブロディー。
手入れにより留置場で一晩を過ごした際、顔なじみから持ち掛けられたヤマに加わることに。
件の計画は、タレ込みにより悲劇的な失敗に陥るのだが、そこから挽回を狙っていく中でとんでもないどつぼにはまっていくジョー。
犯罪仲間、商売敵であるFBI捜査官との微妙な距離感の色恋模様、傭兵集団内の裏切り、裏で手を引く絶対悪vsアンチヒローと、どこかで聞いたことのある話がてんこ盛りで、ザ・ハリウッド的な一冊。
さくさく読めるノンストップアクションノワールとしては良作ではある。
ではあるのだが、やっぱり『二流小説家』の印象が強過ぎるせいか、う~んこちの路線ですかという感じでした。 -
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一作目が面白かったので二作目も読んでみた。前作で結果的にテロリストの野望を打ち砕いたため闇の世界の保安官に任命された主人公…というところで既に本作もかなり荒唐無稽な設定な訳だが本作では中東のテロリストが合衆国にヘロインを持ち込もうとしておりニューヨークの主だった犯罪組織が主人公にその対応を一任する、という話。そのために主人公は 1) 取引に必要となったダイヤモンドを調達する 2) 取引を行いヘロインを入手する 3) その上でテロリスト組織からダイヤを奪回しテロリストに打撃を与える という一連の難題に挑まざるを得なくなる…という前作にも増しての荒唐無稽さというかほぼコミックの世界。あとがきで指摘があったけど確かにルパン三世というよりウェストレイクのドートマンダーシリーズに少し似ていてとても無理と思われる犯罪計画にいろんな才能を持ったメンバー達が取り組んでなんとか成功させるのだけど…みたいな展開だがこちらの方が少し真面目な感じではあるかな。主人公もそうだけどそのまんま漫画にできそうな登場人物達の造形も相変わらず上手い。荒唐無稽なのもここまで振り切っていると面白くて次作も楽しみ。
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ハーバードを中退し特殊部隊で活躍した後、ストリップクラブの用心棒をしているドストエフスキーを愛読する男が主人公、というおよそ現実味のない設定の作品。昔この作者の別の作品が面白かったこともあり大丈夫かと思いつつ手に取ってみた作品。結果的に非常に面白かった。ある晩、彼が勤めるクラブをFBIが急襲し豚箱に放り込まれた主人公。そこで旧知のチャイニーズ・マフィアの若者からある犯罪計画に誘われるのだがそこで予想外の事態となり…という話。FBIの捜査官が魅力的な女性で主人公とは敵対関係にある一方で互いに惹かれ合う、とか犯罪者仲間にはコンピュータやメカに強い黒人の青年とか、かなり魅力的なロシア女性がいたりとか、そもそも主人公が薬物で早く命を落とした両親に代わってペテンで世の中を渡ってきた祖母に育てられて今も同居しているとかとか…魅力的な登場人物と荒唐無稽な設定にルパン三世を彷彿させられた。かなりの強敵が最後はあっけなかったりとちょっと気になるところはあるけれどエンターテイメントとしてはかなり上出来の作品と思います。面白かった。
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ジェイソン・レナルズ『エレベーター』早川書房
『ベルリンは晴れているか』で大ファンになった深緑野分氏が推薦ということで全くの前知識無しに購入して読んでみました。てっきりクライムノベルかハードボイルドかと思っていましたが(おそらく翻訳の青木千鶴氏が『用心棒』も担当していたからそのイメージだと思いますが、なんなら『用心棒』を買ったつもりでいたかもしれない)、ページを繰ると良い意味で期待を裏切る驚き。
なんと全編ポエトリースタイル。
しかも下るエレベーターの中「だけ」という特殊設定。いるはずはない登場人物たち。非常にタイトな時間進行。
かといってトリッキーかというと全くそんなこともなく、ピンピンに研ぎ澄まされた言葉がタン、タン、タタンと銃弾みたいにこっちに飛んでくる。撃ち抜かれる。
だけども、これこそこの作品の最大の美徳で有り魅力なのでしょうがジェイソン・レナルズの言葉には愛が溢れている。その言葉で描かれる情景は残酷で許しがたいものであっても、私にはしっかりと「誰か」に向けられた作者の愛を感じられました。だからその言葉に撃ち抜かれても出るのは血じゃなくて涙。ヒリヒリとした切迫感よりも、どうしようもない怒りを優しくなだめられているような読書感が続きます。
過酷さの中にある愛情の表出で思い出すのが、深緑野分『ベルリンは晴れているか』のP.110にある主人公の父親が主人公に対して多様性の重要さを説くシーンです。ナチスが台頭するファシズム体制下においても、障がいを持つ隣人少女に対して優しくありなさいと教えるシーンでした。氏が推薦文を寄せているのも本作に作家として共感するメッセージがあったからなのでしょう。
読書感で言うと一番似ているのと思ったのはフランク・パヴロフ『茶色の朝』でしょうか。とはいえ、やはりこの作品の読書体験は唯一無二と言っていいでしょう。本作の紹介には「サスペンス」という言葉も使われています。私が読んだ印象としてはサスペンス要素はあまり強く感じませんでしたが、時間空間の移動と主人公の決断、気持ちのゆらぎの描写には十分にそのジャンルとして楽しめる密度があります。
本作はそのスタイル故にページ数に比してテキスト量は多くありませんから、4~5時間くらいで読めてしまいます。
だけど私はこれを何度か読み返すでしょう。
次に読み返した時、最後のページのセリフが自分の脳内にどんなトーンで再生されるのか。
映画『アメリカンヒストリーX』『灼熱の魂』『ブルー・リベンジ』『ドゥ・ザ・ライト・シング』・・・色々な映画が思い出されます。自分はこの本を次に読み返すときに「暴力の連鎖は断ち切れる」と信じていられるのか、それとも冷笑しているのか、絶望しているのか。 -
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元陸軍特殊部隊のジョーは、友人でイタリア系マフィアのジオが経営するクラブの用心棒だ。今回は、ニューヨークに持ち込まれる400万ドル相当のヘロインをアルカイダのテロリスト売人と取引人を装い奪い取り、更に代金であるダイヤモンドも手に入れ、ニューヨークマフィアやギャング達のマーケットを守るのが仕事だ。
まずは、代金のダイヤモンドを強奪する仕事に掛かる。金庫破りのエレーナ、ハッカーのジュノ、リーアム、ジョシュアの5人で見事にダイヤモンドを強奪した。
いよいよ、ヘロインとの交換とダイヤモンドを奪い返す時が迫って来た。が、ジョーとエレーナに夫を殺された未亡人がこの取引を利用して復讐を画策していた。
一作目同様、テンポ良く飽きさせない。またマフィアの用心棒というダークなヒーローは正義感と愛に溢れた頼れる男です。ただ毎回ラストで分配される取り分のお金、少なくない? 命掛けて傷だらけで1万ドルとか…
その謙虚さも素敵です。 -
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ネタバレあらすじは下の内容なんだけど、
いまいち主人公のよって立つ処というか、なんでエイプリルなんかに惹かれたの?
その前は何やってたの?そういうのは次巻なの?長い割に主人公の姿が見えてこない感じ。
その割に結構なスーパーマンだったり無防備だったり、精神的な不安定さだったり、その落差の大きさに違和感を感じながら読んでいた。
かといって読み口は悪くなく、ズンズンとのめり込んでしまう。でも読後感がなあ。いまいちスッキリしないというか。え?これで終わり?みたいな。
内容(「BOOK」データベースより)
アパラチア山脈の麓で自然保護管理の職を得たライスは、故郷から遠く離れ、穏やかな日々を送っていた。ところが、管理区域で胆嚢を切り取られた熊の死体が発見される。熊の内臓は闇市場で高値で取り引きされている。ライスは密猟者を追うが、地元民は非協力的で、前管理人で生物学者のサラを暴行した犯人もまだ見つかっていない。味方はサラと動物たちだけという孤立無援の状況で、さらに疎ましい過去の因縁―麻薬カルテルの暗殺者も迫りくる…アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞に輝く冒険ノワール登場。 -
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ニューヨークマフィアが経営するストリップクラブで用心棒をしているジョーが、アルバイトで密輸銃器を横取りする企みに加わったが偶然にもFBIの女性捜査官との遭遇で失敗に終わる。
その企てた仲間から今度は、厳重な警備がされている弩級の香水を盗み100万ドルで売るという計画に乗る。
ジョーの経歴は、詳らかでは無いが軍関係者であった事は間違いない。マフィアに雇われてはいるが良識?ある悪人だ。
件の香水は、テロリストが100万ドルで強盗を依頼したウィルス兵器だった。
ジョーとその取り巻きがたどり着いた結末は、、
著者は、本作と同じポケミスで''二流小説家''を上梓してますがこちら同様にテンポ良い内容で読み易く楽しめる内容でした。