青木千鶴のレビュー一覧

  • 二流小説家
    おおいに楽しめる小説だった。まず『二流小説家』という邦題がなんともよろしい。原題では「The Serialist」(連載作家)となっている。主人公であり語り部である「ぼく」は、大衆雑誌にヴァンパイア系小説やポルノ小説を書いたり、バイトで家庭教師をしたりと気ままに暮らす「二流小説家」。その「二流小説家...続きを読む
  • 熊の皮
     圧倒的な自然描写力、とはこういう本のことを言うのだろう。作者はヴァージニア州の山の中で育ち、ヴァージニア大学で法学と美術額を修め、ネイチャー系のライターをしながらこの初の創作に取り組んだそうである。

     主人公は作者の想いを乗せたワイルドな主人公。メキシコ国境の砂漠での密売人の過去を振り捨てて偽名...続きを読む
  • 熊の皮
    ライス・ムーアはターク山自然保護区の管理人。資産家が周辺の土地を買い集めて私有地とし、みだりに原生林に立ち入ることができないようにしている。しかし、私有地となる以前から住民は森に出入りし、熊猟を行っていた経緯があり、密猟が絶えなかった。ライスの前にいた管理人である女性生物学者サラは、密猟者を摘発した...続きを読む
  • 二流小説家
    「ミステリが読みたい」「このミステリーがすごい」「週刊文春ミステリーベスト10」の海外部門1位との触れ込みも、本国ではあんまり評価が高くないと聞き、ちょっと手を出しにくかった本作。
    正月休みに思い切って手を出してみたら・・・大正解!
    面白い!
    ちょっと自虐的な、皮肉交じりの一人称スタイルは「女王陛下...続きを読む
  • カンパニー・マン(上)
     ヴェンチェンゾ・ナタリの映画『Cipher』の邦題が『カンパニー・マン』だった。ナタリの映画がちょいと気が利いていたので、本書も気になった次第。本書は原題も同じ。しかし、ミステリ賞とSF賞を受賞しているというように、なかなかにジャンルを特定できない小説である。

     まずはスチーム・パンクないし平行...続きを読む
  • カンパニー・マン(下)
     カンパニー・マンとはマクノートン社に雇われる「諜報員」であるヘイズのことであろうか。最後に上司ブライトリーに「組合もへったくれもない、企業もへったくれもない」と言い放つにせよ、彼はマクノートン社の命で組合員の調査に当たっているのだから。
     お目付役にサマンサを付けられ、社内の下級労働者のみを面接し...続きを読む
  • 二流小説家
    展開の予想が全くつかなかった。二転三転する物語に引き込まれること間違いなし。
    自分を偽ってばかりのハリーの成長の話でもあるし、ミステリーでもあるし、サスペンス、ロマンスでもある。
    様々なジャンルが絶妙に重なりあっていて、とても素敵だった。
  • ミセス・マーチの果てしない猜疑心
    信用できない語り手というのでしょうか?
    最初ミステリーなのかと思って読み出したけど早々に殺人云々は主題じゃないのだと気づいた。
    ミセスマーチは端的に言ってかなり嫌な性格なんだけど、嫌いにはなれなかったし(実際近くにいたら嫌だけど)最後はかわいそうだなと思いながら本を閉じた。時代に要請される属性の型に...続きを読む
  • カンパニー・マン(下)
    人間の知性が導き出すもの
    下巻、このSFミステリー小説は現代に起きるかのような予言にも思えた。それは「人間の知性が新たな欲を醸し出し、新たな文明が街を、国を、世界を作り出す。やがて人間が貪欲となるにつれ領土を増やそうと人間同士の戦争を引き起こす。それが敷いては人類を壊滅状態に導きだす。最終的には地球...続きを読む
  • カンパニー・マン(上)
    上巻、寂れた漁村を大都市に成長させたマクノートン社には隠された秘密が多数あった。経営者と労働者の紛争を組合と言う組織を作り、労使問題する火の粉を組合員が防ぐ役割を持たせた。それがある殺人事件につながる。さらに人の心が読めると言うの力を活かし秘密捜査員ヘイズを利用して経営者と労働者との関係から事件に発...続きを読む
  • 続・用心棒
    作品を無条件に楽しめる作家の一人です。仲間が皆一応無事で良かった。新しいキャラも登場して、また次の事件を楽しみに待ちたいと思います。
  • 続・用心棒
    前作に続いて読んだが主人公以外の登場人物も個性的で面白い。ストーリーの中に主人公と女性がすれ違うという日本のすれ違いドラマのような雰囲気もなかなか愉快。
  • エレベーター
    詩の面白さとテーマの重たさと、でも空白が大きいからこそもたらされるある種の軽さとが効果的に組み合わさった素晴らしい作品。ジェイソン・レノルズは『オール・アメリカン・ボーイズ』で初めて知ったけど、他の作品も読みたい。
  • 二流小説家
    知らずと2回目。
    タイトルでは思い出さなかったが、数ページ読んで思い出した。ということは覚えているということ。
  • 続・用心棒
    躍動感があふれる描写は健在であり生の映画を観ているようで楽しいけれど、ストーリーもありがちな映画のように展開しているせいで、一作目よりかはインパクトが弱かったかな、という印象。
  • 用心棒
    続編の方が面白いという寸評をどこかで目にしてからまずは一作目と読み始めた経緯があるのであまり期待していなかったのだけれど、なんだよ面白いじゃんこれ、っていう読後感。躍動感にあふれる描写に裏打ちされたストーリーは言わずもがな、なによりも登場人物一人一人のキャラクターが際立っているので俳優たちが生で演じ...続きを読む
  • 続・用心棒
     『用心棒』というだけで怪しげな邦題のジョー・ブロディ・シリーズ第二作。『続・用心棒』とは、何だか昔の時代劇映画みたいだ。マカロニ・ウェスタンの『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』が「続」とか「新」とか、まるで別の作品なのに、タイトルで売れっ子俳優クリント・イーストウッドの二番煎じ三番煎じを狙ったとい...続きを読む
  • 続・用心棒
    ニューヨークの暗黒街で一目置かれる存在となった異色の用心棒、ジョー。彼のもとに裏社会の顔役たちから新たな依頼が舞い込んだ。テロ計画の原資になっているという薬物の供給元を潰すことは出来るのか? 大反響を呼んだ『用心棒』に続く、シリーズ第二作。

    椿三十郎ではなく、続・用心棒というのはどうでもいい話。オ...続きを読む
  • エレベーター
    私の心はズタズタにされた。
    家族を殺され、復讐をしてやると銃を手にすることから始まるであろう連鎖。
    銃社会のアメリカが抱えている問題を子供の視点から、黒人のコミュニティの問題(貧しいあまりにドラッグの売人をやらざるを得ないことや、ドラッグに関わると芋づる式にギャングの問題に繋がること等)、それらを独...続きを読む
  • エレベーター
    おととい兄のショーンが銃殺された。「掟」に従ってぼく(ウィル)は復讐する。ショーンの引き出しから銃を見つけ、ジーンズの腰に押し込む。殺したのはきっとリッグスだ。
    アパートメントの8階からエレベーターに乗ると、7階から男が乗ってきた。それはショーンの兄貴分の亡パックだった。6階からは幼馴染の亡ダニが、...続きを読む