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Posted by ブクログ
ヴェンチェンゾ・ナタリの映画『Cipher』の邦題が『カンパニー・マン』だった。ナタリの映画がちょいと気が利いていたので、本書も気になった次第。本書は原題も同じ。しかし、ミステリ賞とSF賞を受賞しているというように、なかなかにジャンルを特定できない小説である。
まずはスチーム・パンクないし平行世界もの。
19世紀終わり、ワシントン州のイヴズデンという漁村で発明家クラヒーを見出した実業家マクノートンが、マクノートン西部機械工業社を興し、ついにはその技術力でヨーロッパを脅迫して、第一次世界大戦を回避してしまったという、1919年の、開発で膨れあがったイヴズデン市が舞台。
加えて、ちょっとハードボイルド。
マクノートン社に雇われているヘイズは、いわば社の「諜報員」。比較的自由な立場で会社に関わる様々な秘密を調べる。しかし、アル中でヤク中。仕事をへまって、干されているところ。それが上司エヴァンスに呼び出される。また仕事を任せるというのだ。ただしお目付役の助手、もと従軍看護師のサマンサを付けるという。
そして、超能力もの。
ヘイズは他人の心が読めるのだ。いや、心の声が聞こえるのだ。ただしそんなに精度のいいもんじゃない。隣の部屋のささやきを聴き取るようなもので、当該の人物の近くに寄り、ゆっくりと時間をかけることでだんだん聴き取れてくる。会社重役のブライトリーが心を読まれないようにヘイズと面談する様はおもしろい。
ただこの能力のため、ヘイズはアルコールやアヘンに手を出さずにいられないという意味で、これはギフト、すなわち能力/毒なのである。
ヘイズの任務は労働組合のサボタージュ行為と、その裏で暗躍する何者かを探ること。しかし会社は何か隠していると彼は思う。
そこに、組合員急進派を乗せた地下路面列車で11人が惨殺されるという事件が起こる。いったい誰の仕業か。しかも人間業とも思えない殺し方も謎。
他方、マクノートン社はいったんどんな秘密を隠してこの技術革新を成し遂げているのかも謎。
20世紀初頭の超科学都市を超能力探偵が駆けるということになるのだが、実際は泥臭い話。他の登場人物も存在感がある。ヘイズと親しく、協力関係にある刑事ガーヴィーと有能で正義感溢れるサマンサは主役級の扱いである。
そして、イヴズデン市自体も主人公といっていい存在感を示す。最新技術に駆動された未来都市でありながら、成功を求めて多数の労働者が流れ込み、劣悪な労働環境下にスラム街が多発している都市。超絶的に生き生きとしつつも死にかかっている都市、イヴズデン市もまた重要な登場人物なのだ。本書が探偵小説だとすれば、解かれるべき謎を湛えているのは、イヴズデン市なのである。
Posted by ブクログ
SFのようなミステリーのような物語。ハードボイルドSFと言ってもいいのかもしれない。物語の舞台は現代から見れば過去なのだが、設定はあくまでも架空の場所。ある1つの会社が世界を牛耳っている世界での物語である。そんな舞台で、特殊な能力を持った主人公の男が、不思議な事象に出会い、物語の舞台となっている物事の真実を暴いていく。そして自分自身への秘密にも迫る。
上巻は不思議なことがどんどん起こり、しかもテンポよく発生するため、あれよあれよと言う間に読み進められる。地味なんだけど、いや地味でもないか、淡々と物語が進行しているように思えて、結構激しく物語が進んでいく。面白いかと聞かれれば、地味なんだけど、いや地味ではないか、と迷いながら、「面白い」と答えることだろう。
下巻に向けてどのようなストーリーが展開するのかワクワクさせられる。
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