本郷和人のレビュー一覧
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ネタバレ帯にあった「なぜ日本には独特の『死に方』が生まれたのか?」という一文に惹かれて。
言われてみれば、切腹という作法は日本独自である。
諸外国では死の苦しみを少しでも長引かせないためにギロチンが発明される一方、日本ではすぐには死ねない切腹が生まれた。
その切腹がいつ頃から行われ、どういう価値観でもって発展(と言っていいのか)したのか、その解説を読むだけでも興味深かった。
重くなりがちな内容だが、ですます口調の柔らかい文体で書かれているので読みやすかったのもいい。
武士が己の手柄としていた「首」について、他にも「疫病」「怨霊」「葬送」「臨終」など「最期」に関わることを歴史的な視野から見つめた一冊。
特に印象深かったのは。
・昔は頭を見せるのが恥ずかしいという文化があった?股間を出しても烏帽子は脱がずなことも。
・日本にペストが蔓延しなかったのは、ペストが入り込む外交がなかったから=鎖国は成立していた(最近は鎖国はなかったという説も根強い)
・昔は夫婦別姓だったため、お墓もそれぞれ別個だった。それが夫婦同姓になりお墓も一緒になった(お墓も一緒になったから夫婦同姓になったのか、その逆だったのかの議論はさておき)
あと、個人的不勉強で恐縮だが、天皇は今でも土葬だったことに非常に驚いた。
上皇陛下は様々な理由から火葬を望んでいらっしゃるとのことだが。
ともかく、親しみやすい文章かつ興味深い内容、驚かされることも多く、読んでいて波長の合う一冊だった。
勉強になったし、内容が内容なのに(不謹慎ながら)楽しい読書となった。
他の著作もこのような文体なら読んでみたいと思えた。 -
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北条時政から鎌倉幕府の滅亡まで辿るので、鎌倉時代の通史も知ることができる。大河ドラマは色々と研究の成果と史実に基づいていたんだな。鎌倉時代は日本史の大きな転換点で、それまで西高東低だった日本史だけど東に基礎を置いた。そして辺境の無名の北条氏が日本を動かすリーダーになった。
時政は当時の武士には珍しい文書が書ける人物だった。文書で行政が動いており、幕府の文官は貴重な存在だった。敵を殺し、実行犯も消すという北条氏の手口。承久の乱で戦争放棄した天皇。所領の分配で土地を保証する存在となった北条氏。義時の御家人中心主義と世論を納得させる力。六波羅探題として京から政治手法を学んだ泰時。他にも後代の北条氏と日蓮宗や禅宗、元寇、特政令等にも触れられている。 -
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本郷和人さんは「世界一受けたい授業」で初めて拝見した時にアイドルの高城亜樹さん推しという妙なキャラで軽く引いていた(アイドル推しに引いたのではなく番組見たらわかるよ)のだが、東大教授なのだから当たり前だがガチ中のガチの人だな
高校歴史教科書を変えようとしたり
引用
「非常勤残酷物語」とか言うが、私から言わせれば、学問の一定のレベルに達していない人間が大学に残ろうとしてもそれはうまくいくはずがないよ、ということであり
本来は、指導する先生が研究者として見込みがない人間に対してはリスクについて説明した上で「君は実社会で頑張ったほうがいい」などと引導を渡すべきなのだ。大学の方針だからといって、自分の可愛い教え子を貧困のどん底に落としてどうする。
引用終わり
言うねー帯にある「ぜんぶ、言っちゃうね。」って大抵こけおどしなのだけど本書は言っちゃってる。上記は序の口で歴史学の根本についても言っちゃってる。
目の離せない人だ。 -
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見城徹の「編集者という病」を想起させるタイトル。
日本の文系の学問というと師弟関係や学会の定説にがんじがらめ、というイメージだがその例にもれない歴史学について「そこまで言っていいのか」というところまで踏み込んだ一書。
皇国史観主義が敗戦により一挙にマルクス主義的な視点にふれた。著者は「どちらでもない、新たな分析主観が必要、もうその時期に差し掛かっている」とする。
著者は東大史料編纂所の本郷和人氏。
東大史料編纂所は国学者の塙保己一により設立された組織で日本の国試編纂を100年以上続けている。日本書紀など六国史以来編纂されていない、日本国史編纂を目的とし地道な作業を続けている。一部刊行されたものがあるがこのペースだと完成まであと800年かかる、という。こんな大事業が静かに進んでいたことに驚愕。
崩し字を読み、現代文に直すことが歴史学ではない、と明確に切り捨てる。埋もれていた古文書を読み解き、その時代に光を当てる、磯田道史氏のような活動も無意味とは思わないが、本郷氏から見れば、
「古文書を読み、読み解き、それらを再構成して歴史の本当の姿を浮かび上がらせる」ことこそが本来の、そしてこれからの歴史学。
歴史学の泰斗たちの短評が散りばめられ、本書は歴史学会に大きな影響を及ぼしたのではないか。 -
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ネタバレ個人的には大変面白い。
誰もが面白いと感じられるかは疑問符がつく。
興味を持って面白いと思う人は以下のような方であろうか。
・歴史に興味があり、これから歴史学を志す人
・大学で歴史をかじった人
・過去、歴史学を履修したことがある人
・蛸壺のような学会政治に興味がある人
まず、歴史学と歴史は全く別物と認識する必要がある。
歴史学科に入った時の違和感は以下に代表される。
三国志、戦国時代、幕末が好きなのに自分の好きな○○は研究対象にならないということである。
歴史は物語であり、歴史学は実証を元に構造化するということである。
とはいえ、歴史学も物語主義と実証主義かという2つの軸のバランスで学会は成り立っている。
学会は古文書などを元にした実証主義が大勢をしめ、実証主義もただ資料を現代語訳するだけ
となっているという実勢に批判が入っている。
現代までの歴史学の流れは以下になっているという。
1皇国史観の歴史学 (主な学者 平泉澄)
2マルクス主義、唯物史観の歴史学 (主な学者 石母田正)
3社会学史的アプローチの歴史学(主な学者 網野善彦 佐藤進 勝俣鎮夫 笠松宏至)
90年代の歴史学は唯物史観は影を潜め、網野史学を代表とするアナール学派が評判となっていた。
歴史学は抽象化、構造化が苦手な性質をもっており、社会学のフレームワークを持ってきて結論ありき
実証は後回しの状況には危惧をしていた。
網野史学への違和感は民衆は平和や自由を追い求めるという面をクローズアップするあまり、
結論に実証を紐づけるきらいがあった。
(極端な話 学会の趨勢がマルクス主義が社会学史に置き換わったような印象もあった)
歴史学は資料をもとにした実証的すぎる立場(物語性なし)、ある立場にしたがった物語的歴史学(実証少なめ)
どちらかに偏っていたように思う。
筆者は以下の手順を取って歴史学を論じるべきといっているように思う。
資料を元にした事実の確認→事実を元にした他の資料との整合性の確認→抽象化・帰納化→解釈
上記のような考えであれば統一理論的な解決はできないと思われる。
ボトムアップ的な考えで、「この条件であればこうという」「この考えは全体の一部」という
歯切れの悪い結論となると思われる。
しかし、ビジネス界隈では当然用いられる手法であり、歴史学でも取り入れられてしかるべきである。 -
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『日本史を疑え』という題は「如何いうこと?」と思ってしまう。そう思いながら紐解き始めると少し夢中になるような内容だ。
「疑え」とでも言われても、「日本史」というような「伝えられる過去の出来事等」というのは「既に変わらない、変えようのない過去」なので「疑う」という余地が少ないような気もしないではない。が、「これが“意味すること”は“如何いうことか?”」というように「熟考する余地」は十分に在る。その「熟考する余地」に想いを巡らせ、考え、論じてみるというようなことを「疑え」と称しているのだと思う。
本書はその「熟考する余地」を見出して行くという「疑え」を提起する総論の後、古代、平安時代、鎌倉時代、室町時代、戦国時代、江戸時代というように、「時期毎のテーマ」を取上げている。
「既に変わらない、変えようのない過去」なので「疑う」という余地が少ないような気もしないではない「日本史」ではあるが、それでも考えてみると「判っていない」という事柄の方が「判っている」という事柄よりも多い筈である。その「判っていない」を「判ろう」と研究が積上げられている。
積上げられたモノが定説と化し、「学校で教えるような内容」になって行っている。が、この「定説」も変わり続けているという面が在る。端的に言えば、例えば現在50歳代の人達が学校で教えられた事柄と、現在20歳代の人達が学校で教えられた事柄とを比べる場合、「ディーテールの差異」が存外に多い。その「ディーテールの差異」が「定説の変遷」に他ならないのだ。
本書では、その「ディーテールの差異」である「定説の変遷」に通じるようなことに言及もしながら、歴史の諸相を「疑え」と「考える」ような内容を問い掛けている。実に興味深い! -
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2022/4/22
本郷さんの歴史解説の新書はとてもわかりやすくて、勉強になるなと思っていつも読んでいます。
合戦や戦いはこれまでの歴史の中で、戦術や、過度に美化された戦場でのエピソードなどばかりに注目が集まって、合戦の実際に着目してなされた研究が意外と少なかったことを指摘されていました。
思えば確かに…と思いつつ、なぜ今日までそうした面での研究が十分になされてこなかったのか、そもそも合戦は実際にはどうだったのかと、この本を通して、より深い合戦のことを知ることができるのではないかと思います。
大前提としてあるのは「合戦に参加しているのも人である」ということ。
命が惜しいやる気のない人だっていたり、戦術の得意な人もいれば、苦手な武将だっていた。戦略を誤ったり、的確に戦場の状況を見極められることが出来るものもいた。
戦争へと突き進んだ日本が、いつのまにか皇国史観へと走り、少数で多数を倒すことこそ素晴らしく、そこには素晴らしい他を驚かせるような戦術があった…という幻想を、この本ではある意味打ち砕いてくれると思います。
合戦のそもそもの目的は何なのか、何をどうすれば勝利又は敗北なのかというような、根本的な部分で歴史上の合戦について考えていくことができ、人間のよりリアルな同時の様相を感じることができる、考えることができるような一冊だと思います。
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ネタバレ中学校で社会科を教えていますけど、実は歴史が苦手なんですよね。汗。
世界地理・日本地理・歴史(日本史中心)・現代社会・政治・経済・国際社会。これだけ全て教えるので、どうしても広く浅い知識になる。全てについて、教員になってから、常に一生懸命勉強してきた。学生の時は、経済地理学専攻だったので、専門は政治経済、日本地理。一番苦手なのが歴史なのです。
歴史に対する苦手意識を克服し、生徒にも分かりやすく歴史を教えられるようになりたい、と思って手に取った一冊。この手の本は読んでみて、「あー。やっぱりダメだ、面白いと思えなかった…」という残念な結果になることも多々あるのだけど、これはけっこう面白かった!ちょうど今大河ドラマでやってる、鎌倉幕府成立の背景も出てくるし、教えていていつも迷う、日本の歴史における天皇の位置づけについても、新しい視点で考えることができた。
中学校ではざっくりと、古代が朝廷中心の律令国家・中世、近世が武士の世の中、近代になって大政奉還…と区切るが、武士が政権を執った時代にも、朝廷(天皇)は脈々と続き、武家の棟梁は天皇から征夷大将軍に任命される必要があった。それってどういうことなのか?本書では朝廷(公家)が国家のトップにあり、武家と寺家がそれを支えているという「権門体制論」と、いや、西に朝廷があり、東に鎌倉幕府があり、二つが並んでいたのだという「東国国家論」が紹介されており、そんな風に考えることもできるのかー!と面白く感じた。つまり、鎌倉幕府はどういう存在だったとするのか、捉え方が様々にあり、正解がないというか、それを考えるのが歴史の面白さであり、中学校の歴史の教科書を読んでいて「よくわからんぞ」と疑問が出てくるのは当然なのである。(ちょっと安心した(笑))。
最期の方はちょっと専門的すぎて、歴史学者の学閥の話とかになってたけど、それも興味深かったです。 -
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ネタバレ文藝春秋社の「本の話 メールマガジン」に応募したら、この本が当たりました。
日本中世史(鎌倉時代)を専門とする本郷教授の執筆なので、応募したのですが、たまたま今年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」とぶつかりラッキーでした。NHKとしてこの時代をテーマにした大河ドラマは2012年の「平清盛」以来です。この時は低視聴率にNHKも悩まされたようですが、今回は汚名返上すべく豪華キャストで臨むようです。
本書は、当時辺境であった伊豆の田方郡を拠点とする平氏の在地豪族であった北条氏が、如何にして鎌倉幕府の中心的な地位まで登り、その後百年以上に渡り日本を動かす政治集団のリーダーに成り得たのか、かつ滅亡する原因は何であったのか等をリーダーシップのあり方を通じて論じたものです。
この本を読んで興味を引いたのは、以下の3点です。
1.北条氏の幕府内での地位
頼朝を支えた御家人を分類すると、
① もっとも重んじられたのが、頼朝の親族にあたる「下野の足利氏」「信濃の平賀氏」。 この一族は将軍になれる可能性があります。後の室町幕府を作った足利尊氏は、この一員です。
② 次に「家の子」と呼ばれる頼朝の親衛隊。北条義時や結城朝光等
③ 最後は「侍」。これは普通の御家人だが、この中でも大きな意味を持っていたのは、伊豆、駿河、相模、武蔵の南関東四か国の御家人で、ここの出身者であれば、幕府の中枢に入ることができた。北条氏、安達氏、三浦氏、和田氏、梶原氏、畠山氏、比企氏がこれに当たります。
北条氏もこの有力メンバーの一員ではあるが、飛びぬけて大きな存在ではなく、むしろ頼朝の伊豆時代を経済的に支えた比企氏の方が優勢で、頼朝は二代将軍となる頼家の妻をこの一族から迎えています。
そしてこの御家人の中から如何にして北条氏が抜けだしてくるか・・・は、省略します。
2.元寇の時の北条時宗は「救国の英雄なのか」
結論を言ってしまえば、著者の見解は、「外交能力の欠如した幕府崩壊の遠因となった無力なリーダー」というものです。詳細は本書に譲ります。
3.幕府の変遷という視点
① 鎌倉幕府1.0:頼朝の開いた幕府
② 鎌倉幕府2.0:承久の乱で朝廷を打ち破り西国進出
③ 鎌倉幕府3.0:元寇以降・・・幕府は、元寇による外からの脅威に対応した挙国一致体制を目指す「(オールジャパン)統治派」と「御家人ファースト派」との争いが続く。この争いは「御家人ファースト派」が勝利するのですが、その後の変遷を経て、執権職を誰かに譲ったのちに、北条本家の当主が権力を掌握し続けるという「得宗家ファースト」というべき偏狭な幕府に変わってゆきます。
しかも時代の流れでもある貨幣経済に上手く対応できないこともあり、御家人の離反を招き、その中から新しいリーダーとして足利尊氏が登場し、幕府の滅亡へと繋がってゆきます。
著者は「北条家の成長と安定、それに衰退の歴史を知ることは実に興味深い。足利氏も徳川氏も、家の歴史として見たときに、ここまでのダイナミズムはありません・・(略)・・私たちの視点からすると、なんだか不思議な一族。北条氏の足跡を追いながら、日本という国がもつ特質に思いを馳せて下されれば、書き手としてはこれに過ぎる喜びはありません」と結んでいる。 -
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陰謀と暗殺と
組織 システム 建前ではなく、人 腕力 本音で勝負した時代だ ということがしみじみ理解できる良作である。腕力勝負だから、陰謀と暗殺を多用する権力闘争の連続となるのも納得できる。いい子ぶるのが得意なNHK大河ドラマがこの悪人だらけの時代をどのように繕ってみせるのかそれなりに興味がある。
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Posted by ブクログ
2021/10/16
古代の政治家から安土桃山時代、江戸時代の有名武将たちまで、幅広く彼らが地域や国の中心として政治を行なっていく上での「失敗」に着目して、その行動の何がいけなかったのかを考える本です。
著者も書いているとおり、歴史に「もしも」はないですが、現代まで名が残る時代を作り上げてきた成功者がいるということは、表に出てこないだけで、その礎となった多くの失敗したものたちがいたはずです。
国を動かす中心的存在であった人物たちには日々多くの決断が迫られていたことだろうと思いますが、成功と失敗の明暗を分けるものは一体どこにあったのだろうか、特に失敗した人物たちはどんなところがダメだったのだろうかという明確なダメ出しが史実を元にしつつそこから考察していくという形で時代ごとに検証されています。
実際にどうだったのかはわかりませんが、読んでいてなるほどなぁと思うところが沢山ありました。
色々と歴史について考えるきっかけにしたい一冊だと思います。