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Posted by ブクログ
東大史料編纂所教授だった(過去形)本郷先生。最近時々テレビでも見かけると思ったら、定年退官して藤田医科大学特命教授になったのね。(コロナの時にクルーズ船乗客を受け入れた大学だ)なるほど。
本書は2019年9月10日初版。
“日本社会を動かしてきたのは『地位よりも家』という、『世襲』を是とする大原則だった”という論理を、古代から明治維新までの事例を挙げて解説している。頷ける所が多い。大きな歴史の流れから社会構造の成り立ちを読み取る事は、現在を理解する上で大切だと思う。
NHK出版の新書だから、ジャンル的には“ビジネス書”なんだろうけど、さすがに専門家だけあって、中世に関する事例ではちょっとマニアックなレベルまで踏み込む所がある。全ての人が同レベルで理解するのには、ある程度の知識が求められる…かな。
色々と頷ける所が多くて面白かった。“バサラ者・カブキ者・ヤンキーなど、『自由』な存在に惹かれるのは、強固な階級意識の裏返しなのかもしれない”という指摘には大いに頷ける所がありました。
【余談】
本書の出版はコロナ禍より前。最終章にはマスクを配布した“あの方”の名前も出てきます(世襲が題材なんだから当然か)。
そう考えると、世の中、何が起きるか分からないものですね、ホント。
Posted by ブクログ
何かと批判的に扱われることの多い世襲制、中国の科挙や西洋的な能力主義を横目にどうして日本においては血筋や家系のような封建的価値観が重視されるのかを歴史家の視点から紐解いた本。
日本における究極の世襲とは天皇制であり、万世一系という神話の時代から連綿と続く皇室の永続性が国家統治の根幹とされた。しかし現在も含めて天皇が実際の権力を持った期間は短く、ほとんどは臣下の藤原氏や武家政権が意思決定をしていた。豊臣秀吉のように突出した能力によって下克上をなし得る人もいるが、「近衛家の養子」といった形で旧守の権威を活用する方がリーズナブルに支配権を獲得できる。
おおもとは土地など財産権の継承にこの世襲制度が活かされ、やがて経済的な繋がりを持つ共同体にとって階層構造を維持することは合理的となっていく。とくに荘園のような、遠隔地の利権を確保する上では皇室や貴族といった権威を用いて在京領主たちが支配権を維持するようになり、それに倣った鎌倉幕府が守護地頭という遠隔支配構造を守ったことで、日本の封建制度が確立していった。
現在においても、政治家は選挙区としての国許を秘書に任せ、国会議員は永田町で遠隔支配するのが当たり前となっている。そしてその下に紐づいた経済的な結びつきとしての後援会構造は、世襲による安定を好む。「和を以て貴しとなす」という闘争よりも根回しや妥協がコミュニケーションの主流である日本では、世襲という構造的安定性を示す状態こそが非言語的な説得力を持ち、ブランドとなるのだ。
Posted by ブクログ
人が動くのは、何によるのか、ということを時々考えるんだよね。上司からの命令だからか?その人が怖いからか?あるいは、その人に心服しているからだろうか。いろいろな要素があると思う。本書の主張によれば、組織で人が動くのは、役職とか階級以上に、その人個人の人間関係によるものであり、日本の社会システムとして考えるなら、個人よりもさらにはその血筋なのだという。他の本でも読んだことだけど、海外の軍隊であっても、士官学校出たての少尉よりも、古兵の軍曹の方が小隊をうごかせるということは現実にありそうな話。役職や階級よりもその人個人がものを言う、というのは今の社会でもあるのだろう。そこで、組織を連綿と動かすファクターとして、血筋、世襲があるのだよ、というのが本書の骨子と言っていいのかな。
時々マニアックに感じられるくらい、歴史的事実が出てきてちょっと挫けそうになったけどさ。全体的に、読みやすくて楽しかったと思う。まぁ、まどかマギカを出してきたあたり、著者がよほど好きなのか、読者に阿っているのか、と感じてしまったけど。俺、まどかマギカってアニメは見てないし、ピンとこなかったんだよねぇ。まぁいずれ、まどかマギカは見たいと思うけどさ。
Posted by ブクログ
昨年(2018)にこの本の著者が書かれている本に出会い、歴史の面白さを再認識させてもらいました。元々歴史は好きだったのですが、本郷氏の本に出合ってから益々、歴史を別の角度から楽しむことができるようになったと思います。
この本のテーマは、日本の階級社会はどのようにして生まれたか、について解説されています。日本では権力を握ったとしても、結局のところ、高貴の家の方が有利だということでしょうか。
日本の歴史を「家」という切り口で見ることで、今まで不思議に思ってきた歴史上の事件が紐解ける気がしました。
以下は気になったポイントです。
・地位より人、人というのは血、いや血より家」これが日本の大原則であった(p4)
・源頼朝は、征夷大将軍の宣下から2年ほどで将軍職を返上している、将軍職でなくても頼朝の力は低下しなかった。死去するまで、武家の第一人者として権威と権力を維持し続けた(p19)
・後三条天皇は170年振り(1068)に現れた、母親が藤原氏ではない、天皇であった。摂関政治(藤原氏の男性が、天皇に自分の娘を娶せる、その子供を次の天皇にする、子供の天皇をお祖父さんである男性が摂政となり政治を行う)が揺らぐことになった(p47)
・院政が始まったことで、古代が終わり中世が始まったとされる、院政期における上皇が「公地公民」という律令制の根本的建前を摂関家以上に踏みにじり、半ば公然と荘園を皇室の下に集めたことにある。その手法は、六勝寺(寺の名前に「勝」のつく寺、皇室が建てた)をトンネル会社のように使い、これらの寺が寄進を受ける形で皇室領を拡大するというもの、これにより律令制が終わり、荘園・公領制が始まる(p52)
・持統天皇は、天智8年(669)以来、32年振りに遣唐使を派遣している、この時、日本は中国に対して初めて「日本」という国号を使用している(p61)
・公家の頂点に位置するのが、近衛家、藤原本家から、近衛家・九条家、近衛家からの分家が、鷹司家、九条家からの分家が、二条家・一条家(p87)
・島津忠久は島津家の初代であるが、頼朝のご落胤であるということで、島津家は江戸時代を通して「源」を名乗っている(p92)
・日本の仏教界で高い地位に就くのは、俗界で身分の高い家の出身者に限られる、出身の「家」が大事なのであって、僧としての地位は二の次、つまり実力も二の次(p98)
・天台宗では、最澄がなくなった後、弟子が唐に渡って天台宗を完成させた、天台の密教ということで「台蜜」という、密教の先駆者である真言衆のほうは、京都の東寺の密教ということで「東蜜」と呼ばれる。真言宗の本山は高野山金剛峰寺だが、京都の貴族にとっては遠いので、東寺が真言宗の中心とされた(p103)
・鎌倉新仏教(時宗、日蓮宗、禅宗、浄土宗)が高く評価されてきた、しかしこれらは、天台・真言宗からの分派である。しかし、両者とも顕教よりは密教であった(p105)
・皇室などのやんごとなき世界の方々は、激しい修行はできないので、京都の町中に院家といわれるものがつくられ、そこで僧侶になる。そこの院主たちが日本仏教世界の上位に君臨する。院家で有力なものを「門跡」というが、比叡山延暦寺系の三門跡では、青蓮院・妙法院(三十三間堂を傘下)・梶井(三千院)がある(p107)
・北条家は、長時・時村、のような北条エリートを執権の座につけながら、得宗(本家の当主)であ北条時頼が実験を取る形を取り始める。つまり、執権という「地位」よりも得宗に権力が変更された(p115)
・ツリー構造のポイントは、一人の主人は複数の家来を持つけれど、一人の家来は必ず一人の主人しか持てない。これに対して「リゾーム」は、多対多の横の関係で結びついたネットワーク構造となる(p141)
・鎌倉幕府の勝利で終わった承久の乱の後、朝廷は態度を改めた、寺の僧レベル(一般人は対象外)の訴えは対応するというもの、そして人材を抜擢する、その代わりに税を払ってくれと要求する(p146)
・後続の下に、摂関系、大臣家、羽林家(大納言にまでなれる、大臣になれない、ここまでが上級貴族)、名家(中納言まで、中級貴族)(p147)
・地位を重視していない日本では、中国と異なり責任を取る必要がないので、トップが死ぬ必要はない。鎌倉幕府の最後の将軍である、守邦親王、室町幕府15代将軍の足利義昭、徳川幕府15代将軍の徳川慶喜、に共通する(p177)
・明治政府とは、日本史上では初めて、個人の才能に賭けた政権であった、そして明治の元勲は、自分の地位を子孫に世襲することは行わなかった、個人の財産のみ(p190)
・天候や風土が厳しい地域では、生き残っていくために厳しいリーダーの選抜が必要になる、だから世襲はなかなか起きない(p194)
2019年11月4日作成
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