東野さやかのレビュー一覧
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面白い小説として評価される一冊というよりは、映画化することでけっこう受けるかもしれない、という印象が強い作品。というのも、映画『Uターン』(1997年)を思い起こさせる作品であるからだ。
『Uターン』という映画は、オリバー・ストーン監督としては娯楽に徹した異色の作品で、ノワール作家ジョン・リドリーの『ネバダの犬たち』を原作とした映画であったが、ショーン・ペン、ジェニファー・ロペス、ニック・ノルティらの騙し合いと、彼らを蟻地獄のように捉える西部の片田舎の町が、見所なのである。
そして本書『パインズ』は、まさに『Uターン』を彷彿とさせる蟻地獄のような世界であるのだ。違うのは、『Uターン』 -
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Posted by ブクログ
最新刊『ラスト・チャイルド』で、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞、英国推理作家協会賞最優秀スリラー賞を受賞し、破竹の勢いのジョン・ハートのデビュー作。
う~ん、どうも、乗り切れない。
とても丁寧に描き込まれているとはいえ、自己嫌悪まみれの優柔不断な主人公には共感できず。
近所を徘徊している謎の老人、隣人の老医師、そして私立探偵のハンクとの関わりが出てくる後半からは、彼らの魅力に引かれて読み進められたという感じ。
ラストは新人らしい清涼感があるのだけれど。
登場人物が少ないとはいえ、主人公に、あるいは主人公が好意を抱いているか反感を抱いているか、の二通りの人間しか描かれないというのはどう -
Posted by ブクログ
アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長編賞(エドガー賞)受賞作。ふるさとの川のほとりの家。自分のすべてを形作った場所。数年前に殺人の濡れ衣を着せられて故郷を追われた主人公は、親友が助けを求める電話でまた戻ってくる。しかしそこに待っていたのは、家族との不協和音、警官となった昔の恋人との再開、新たな殺人事件だった。
筆者自身が、「自分の作品はミステリーに分類されるのだろうが、自分としては『家族』の物語を書いている」、と述べているとおり、これは謎解きのおもしろさを味わうというよりも、親と子・兄弟姉妹・恋人同士といった、人と人との関係、心の襞を描くことを主眼としている。ノースカロライナの自然と併せて叙情た