西淑のレビュー一覧
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深い夜にそっと開きたくなる短編集。
千早茜らしい、静かでやわらかな言葉が夜の闇に溶け込み、眠れない時間を少しだけ特別なものにしてくれる。物語ごとに添えられた美しい挿絵も印象的で、文章の余韻をさらに深めていた。
とりわけ心に残ったのは第三夜「水のいきもの」と第四夜「あめ」の話。どちらも日常と幻想の境界をたゆたいながら、人の孤独や願いをすくい上げるような優しさがあった。水や雨というモチーフが持つ透明な寂しさと潤いが、夜に読むからこそより鮮やかに胸に染みる。
眠れない夜のための物語らしく、読後には心が静まり、少しだけ安らかな気持ちになれる一冊。 -
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なにかを書く(発表する)、また本を読むことが好きなひとびとに特にページを捲って欲しいエッセイ集。
どこからでも、ランダムに読めるし、わたしもそのような方法で読書した。
言葉の生命力と人が生きることの関係性について著名な作家や作品を交えて、作者若松英輔さんの真摯な視点から述べられている文章が多く、全体的にわたしは読んでいてホームのような安心感もあり師匠のような叱咤激励も感じられる稀有な本だった。
好きなエッセイ。(特に、共感と新しい知見を教えてくれた文章)
永瀬清子「第三の眼」 老いて増す能力
九鬼周造の思索 偶然と運命について
C・S・ルイス『悲しみをみつめて』 人生の問い
石垣りんの詩と随筆 本との出会い
中川一政『画にもかけない』 画家の原点
正岡子規から島木赤彦へ 写生について
ドストエフスキーをめぐって 読むことの深み
リルケと原民喜 深秘とは
マイスター・エックハルト もう一つの知性
この本自体はどのようなひとが手に取っても良いし、読めば心の底になんらかの光りを置き去ったような心地を覚えるのではないかと思う文章だ。
ただ、読書は対話である、というイメージを自然と持てるひとびとには特におすすめな本である。
読んでみてくださればと思う。
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眠れない夜は・・・で始まる十の短編集
千早茜さんらしい、静かで繊細で神秘的な描写が印象的だった。夜の闇にある静かな孤独が描かれているのに心が落ち着く不思議な物語。
西淑さんによる色彩をおさえた挿絵もピッタリで、丁寧で独特な雰囲気の美しいイラストにも魅せられた。
どのお話も、短い夜は必ず明けるから、孤独でも、
一人じゃないと教えてくれるような余韻に包まれる。
数ページしかない短編なのに、こんなに味わい深い余韻があるなんて凄い。
日中にも読んだが、やはり夜に読む方がスーッと頭に入ってくる気がした。ゆっくりと丁寧に、一話ずつ、静かな夜に読むのがオススメ。
第一夜 空洞
第二夜 森をさまよう
第三夜 水のいきもの
第四夜 あめ
第五夜 しじまの園
第六夜 木守柿
第七夜 夜の王
第八夜 繍しい夜
第九夜 寝息
第十夜 仕舞いの儀式
私は特に、第三夜「水のいきもの」と、第八夜「繍しい夜」が好き。頭を活性化させる要素がなく、優しい催眠術にかかったような気持ちになる。枕元において、眠れない夜のお供にしたい。
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日本経済新聞に2023年4月から2024年3月まで、「言葉のちから」として連載されたものから27篇を選び一冊の本にしたもの。
〝言葉〟の持つちから、面白さが詰まっていて、何度でも手に取りたくなる本でした。
一篇はどれも「誰かの言葉を引用した作品」になっており、例えば…
武者小路実篤『沈黙の世界』より引用
──言葉の世界に住んでいると、沈黙の世界がなつかしくなる
など、作家や哲学者の言葉が多く取り上げられている。
他に面白いと思ったのは、
『念い(おもい)を深める』
の一篇で「おもい」を表現する漢字が沢山あるということ。
思い、想い、意い、憶い、惟い、顧い、懐い、忖い、恋い…
それらを熟語にしてみると、意味が明らかになる。
意図、記憶、思惟、懐古、忖度、恋愛、念願…
なるほどね!
〝念とは「わたし」の原点であると同時に人間の原点でもある。そこに立ち戻ろうとする願いを念願と呼び、その場から発せられる助力を必要とするとき私たちは、正念場だというのだろう。〟
う~ん
私にはちょっと難しいな(;^ω^)
哲学的な一冊だけど、すごく分かりやすかったのは、
「頭」で考えただけの言葉はそれを聞く人の「頭」を刺激する。
「心」から出た言葉は「心」に届く。
「肚」から出た言葉は「肚」へと届く。
うんうん、納得⁽⁽ ( *ˊᵕˋ ) ⁾⁾
巻末にブックリストも掲載されており、気になる本も何冊か見つけられて、お得な一冊だった。
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今の自分に必要だと思うところから読み始めていいのだ、とはじめに断りがあった。そして、願うならば読み終わらないこと。私という読み手はそういうことができずに、順番に読み、あっという間に読み終えてしまった。
若松英輔さんの本を読んでいると、その時その時で気になる人が出てくる。今は神谷美恵子さんがその人のようだ。若松英輔さん月間と決めたが、神谷美恵子さんの本を、言葉を欲しているなぁと思いながら読み進める。来月は神谷美恵子さん月間かな。
私の読書は興味の趣くままに、なのであちらこちらに飛んでしまう。だから、じっくり読むということが苦手。それで1人の作家にじっくり向き合うことを目的に今月は若松英輔さんと決めた。ただ、後からまた読みたくなる、ふとしたときに読みたくなる。そんな本もある。この本もそんな本として、本棚に存在してくれるだろう。
おもう、という漢字。ねがう、という漢字が沢山あること。語源まで遡って、自身の感情にしっくりくる言葉を見つけること。そんな楽しみを教えてくれる。若松英輔さんの本を読むと、私の言葉の世界はどんどん広がっていく。だからこそ、じっくり時間をかけて読むことが求められているのだろうな。 -
Posted by ブクログ
優しい…自分の子育ての一瞬一瞬をこんなに優しく、温かい言葉で切り取れてすごいと思った。挿絵も良く、本として素晴らしい。理系の研究者ならではの、斬新な視点というか、私の知識としてないものが多いので、切り口としてすごく新しい。研究者だけど、科学や数学の切り口を絶対とするでなく、そこからはみ出るものを切り取っているのが特によい。例えば、
柔軟な分数があっても良い、という話。ピザ8枚を4人で分けると、もいちいち厳密に計測するでなく楽しく喜びを分かち合う方が大事ということ。
時間や数の概念をもたないこどもの、時間の流れの感覚の違いを優しく大切にしている姿。
同じように数量感覚をもたないこどもの、味見とはちょっとだけって一体なんなのか、その境界とはと考える優しい姿。身近にこういう大人がいたら面白いだろうな。また読みたい。