パオロ・バチガルピのレビュー一覧

  • ねじまき少女(下)

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    非常に読み応えがあって面白かった。
    最初は「石油枯渇後の近未来でバンコクを舞台に、遺伝子操作された生物が主役となる話」という設定に惹きつけられて手にとったのだが、実際に読み進めてみると、設定と世界が深く作りこまれているだけでなく、人間同士のドラマが複雑に織り成されていて、こちらも見事だった。

    うん、バンコクか……。アメリカ人の作者があえてアジアの一国を物語の舞台として選び、欧米人を侵略者として描くやり方が興味深い。もちろんこれは、作者が大学で東アジアについて学び、実際に中国で暮らした経験もあるからこそ可能になったのだろうけど、でも仏教を中心とした文化の理解は相当なものだと思うし、アメリカ的資

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    2012年12月29日
  • ねじまき少女(下)

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    スピード感が出てきたと思ったら、物語が一気に流れて行く下巻。説明不足や伏線の投げっ放しがあるようにも感じますが、それを無視して十分に楽しむことのできる作品でした。決してきれいなストーリーではないですが、混沌とした社会の中で、それぞれの立場で精一杯に生きる人々の物語に圧倒される。

    外国バイオ企業の手先であるアンダーソンの行動原理や内面描写はもっと欲しかった。確実にいやなやつなんだけど、彼なりの正義がどこかにあったのかなぁと気になる。広い意味での作品世界の中では中心的勢力に属するはずのアンダーソンなのに、情勢に振り回されて寂しいかぎり。

    没落した華僑老人のホク・センはずっと応援してました。ほん

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    2012年11月26日
  • ねじまき少女(下)

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    上巻で起きた暴動が内乱につながり、政変が起こる。視点が目まぐるしく変わるので誰かに肩入れして読む、というのではなく全体的な雰囲気を味わう物語、という感じ。
    粘っこく、ドロドロした世界の中で精一杯生きる道を探す人を描くのが上手いなぁ、と『シップブレイカー』を読んだ時にも思ったけれど、今回もそう思った。
    エピローグの救いがあるんだか、ディストピア的な世界への足かけなのかわからない終わり方が良い。

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    2012年10月08日
  • ねじまき少女(下)

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    同じ背景で描かれた池上永一『シャングリ・ラ』はどこか遠い未来、遠い世界の話に思えたけれど、本書で描かれる近未来はそうではない。ちょっとした糸の掛け違えで、近い将来こんな未来が待っているのではと思わせるだけの怖さがある。

    正直言うとこの作品、ストーリーなんてあんまり覚えてない。覚えてないというか、もはやどうでもいい(笑)。とにかくこの世界観に圧倒され、打ちのめされ、最後にはもうへへ~っと土下座したわけですよ。それほどまでに本書はすごい。

    80点(100点満点)。

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    2012年09月18日
  • ねじまき少女(上)

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    そこかしこで散見される訳の拙さはさておき、散文的にばらまかれる現在形による描写にまず打ちのめされる。いわゆる普通の文体に慣れた身にはほんと辛かった。

    そんな読み手の困惑を無視してしょっぱなから話はぐいぐい進む。今我々が住む世界とは似ても似つかないとんでもない近未来世界へ何の前知識もなく放り込まれるものだから、もうたまったものではない。帯の惹句につられて軽い気持ちで本書を手に取った読み手の多くは下巻を手に取ることなく書を閉じているに違いない。
    かくいう私もこりゃ無理だわ。

    80点(100点満点)。

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    2012年09月18日
  • ねじまき少女(上)

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    石油の枯渇した近未来のバンコック、外国人の工場では遺伝子操作したゾウを動力として海草タンクを用いて新型エネルギーであるゼンマイを製造している。最初80ページ位はタイトルと小説の世界観が上手くなじまずちょっと読み進むのに抵抗があった。ちなみに昨年このあたりで一回挫折w

    そしてタイトルでもある日本製のアンドロイド、ねじ巻き少女が成人向けの描写とともに登場し、通産省と環境省の争いなどぐいぐい引きつけられ下巻に続きます。

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    2012年08月19日
  • ねじまき少女(上)

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    石油が枯渇し、エネルギー構造が激変した近未来のバンコク。遺伝子組替動物を使役させエネルギーを取り出す工場を経営するアンダースン・レイクは、ある日、市場で奇妙な外見と芳醇な味を持つ果物ンガウを手にする。ンガウの調査を始めたアンダースンは、ある夜、クラブで踊る少女型アンドロイドのエミコに出会う。彼とねじまき少女エミコとの出会いは、世界の運命を大きく変えていった。主要SF賞を総なめにした鮮烈作

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    2012年08月16日
  • ねじまき少女(下)

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    先に『第六ポンプ』を読んだせいか、衝撃度は少なかったけれど(オチとかもう少し大風呂敷かと思っていたので)、どんな世界でも幸せを求める生物…というところで希望が持てそうな終わり方でした。エミコすきすき。

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    2012年07月03日
  • ねじまき少女(上)

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    ネタバレ

    舞台は近未来のタイ、バンコク.石油は枯渇し、ねじまき(ぜんまい)が主な動力源となっている.温暖化のためか海面は上がりバンコクも水没の危機に瀕している.また新たな疫病もはびこっている.カロリー企業や通産省、環境省の役人、軍人はそれぞれの勢力を伸ばそうとして暗躍する.エミコは日本製のねじまき少女だがタイにつれてこられてそのまま不正滞在をし、裏社会のSMショーや売春をして生活していたがカロリー企業の経営者アンダーソンと出会う.

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    2012年06月26日
  • 第六ポンプ

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    全体的に読みやすくて、SF短編集だったけど「こういうのもアリだな」と思える内容だった。中でも表題作の「第六ポンプ」が一番面白くて印象に残った。
    どの話もSFらしい設定ながらも、読みやすい文章と考えさせられるテーマでぐっと引き込まれた。

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    2025年07月12日
  • 第六ポンプ

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    10話からなる短編集

    この中でより心に残っているは
    パショ
    イエローカードマン
    そして表題作の
    第六ポンプ

    パショは
    新しいものを取り入れて変わっていくことに抵抗感があり新しいものを取り入れない人の顛末
    知識が持つ絶大な力
    対立していて不穏な空気が漂う場面はあれど
    ガツガツしている雰囲気は一切なく
    穏やか過ぎていく日常を感じたお話

    イエローカードマンは
    これは個人的に凄いなと思ったのは
    昔大繁盛をしていた商売をしていたのに理不尽にすべてを奪われた一人の老人が
    身体の動きが鈍くなる中けがをしても仕事をもらおうとしている様が
    なんだか他人事とは思えなかった

    そして
    第六ポンプ
    やっぱり知識

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    2025年04月20日
  • 第六ポンプ

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    ネタバレ

    ・あらすじ
    近未来ディストピアSF短編集。

    ・感想
    面白かった……んだけどなんだか読み終わるのにすごく時間がかかってしまった。
    続きが気になって読む手が止まらない、とか読んでて高揚感がある作品じゃないしひたすら「こんな世界は絶対にやだ……」と思う世界観だったからかなw

    科学技術の影響により環境破壊された世界、痴呆化した人類、エネルギー供給が限定された世界などなど。
    倫理観、道徳感、死生観や哲学などの人文的素養が変質、退行あるいは消失して、根源的な欲望と快楽のみで動く人類もどきたちが彷徨いている世界。

    特に印象的だったのがフルーテッド・ガールズと表題作の第6ポンプ。
    痴呆化した人類(トログ

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    2024年12月03日
  • 第六ポンプ

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    中華の雰囲気漂うディストピアSFもの。
    「カロリーマン」が一番印象に残った。
    鉱物資源が枯渇した社会で、さらに植物がニッポン・ジーンハック・ゾウムシという害虫によって遺伝子に異変が起き、ソイプロというハイカロリー植物しか育たなくなった荒廃した世界。全てのエネルギー源をソイプロに依存し、またそのソイプロはアグリジェン社という企業に独占されているというディストピアな世界観がかなり良い。
    遺伝子操作された動物のグロテスクな描写や、ゼンマイを回して動力を作ったりPCの操作が足踏み式だったりと、近未来感とアナログ感が上手く合わさり、資源が枯渇した後の荒廃した未来社会が暗く面白く描かれている。
    また表題作

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    2024年09月20日
  • ねじまき少女(下)

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    初SF
    世界観、固有名詞を理解するのに時間がかかった
    下の半分くらいから盛り上がったがそれまでは割と淡々と進む

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    2024年06月11日
  • 第六ポンプ

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    表題作の第六ポンプは、化学物質の過剰摂取により痴呆化が進んでしまった未来という設定の短編。SF作品として非常に面白かったのはもちろんなんですが、テクノロジーが発展して利便性が増した結果、人間の知能が低下していくのではないか、なんてことが言われる現代にも通じるものがあるなと、少し怖さも感じました。

    その他、いずれの短編も環境分野に特化した他に類をみない作品が多く、とても楽しく読めました。復刊してくれて本当に良かったです。

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    2023年09月29日
  • ねじまき少女(下)

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    飛ばし読みしてたら、白シャツ隊とジェイディー、カニヤたちの立ち位置がイマイチわからなくなってしまって、この本に彼らがなぜ出てくるのか掴めないまま読み終わってしまった、、、
    アンダーソン、ねじまき少女、ホクセン、、弱肉と策略の小汚い世界で、最後の動乱の後に誰がどう生き残るのか、混沌とした感じがよかった。真夏に読んでよかった。

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    2022年09月26日
  • ねじまき少女(上)

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    「カロリー企業」「ねじまき」突然乱雑なタイの雑踏に落とし込まれたようで、物語の設定を理解するのに時間がかかった。ネットで誰かの用語解説サイトでやっと状況と対立軸を把握。
    誰もがカロリーを摂取してエネルギーを確保するのに必死な世界で、白シャツの暴力に怯えながら、どのように生き残るのか思考を巡らせる、泥に塗れた汚くも弱肉強食の世界観。

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    2022年08月19日
  • ねじまき少女(上)

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    複数巻を平行に読破月間。

    遺伝子改変とハックが当たり前になり、他国の作物をジーンハックゾウムシによって壊すことで、エネルギー機器に陥らせる時代。独自の種子バンクを持つタイでは西洋由来のカロリー(エネルギー)企業に負けない食文化を構築した。そこで藻類を研究するアンダーソン、通産省で闇カロリーを駆逐するジェイディー、日本製の遺伝子改変"ねじまき"少女のエミコの人生が交錯していく…。

    クールなアンダーソン、自分がうまく制御できないエミコ、熱く衝動的なジェイディーに、得体のしれないホク・センと、サイバーパンクというか、アニメ的な登場人物の視点でそれぞれ進む序盤。状況の説明と、や

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    2021年08月25日
  • ねじまき少女(下)

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    やっと読み終わった…。
    ヒューゴー・ネビュラで、石油が枯渇し遺伝子操作のあげく疫病と飢餓が蔓延するバンコクにて、日本製美少女アンドロイドが…って、なかなかのディストピアぶりで傑作なのだが、こう…共感できるキャラがいなくて…ちと置いていかれた私でした。

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    2019年09月12日
  • 神の水

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    SF文学としては自分は久しぶりに読めた。テーマは近未来になっているが、現実でも起こりそうな話だった。ちょっと暗かったので評価は3.

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    2019年04月27日