パオロ・バチガルピのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
非常に読み応えがあって面白かった。
最初は「石油枯渇後の近未来でバンコクを舞台に、遺伝子操作された生物が主役となる話」という設定に惹きつけられて手にとったのだが、実際に読み進めてみると、設定と世界が深く作りこまれているだけでなく、人間同士のドラマが複雑に織り成されていて、こちらも見事だった。
うん、バンコクか……。アメリカ人の作者があえてアジアの一国を物語の舞台として選び、欧米人を侵略者として描くやり方が興味深い。もちろんこれは、作者が大学で東アジアについて学び、実際に中国で暮らした経験もあるからこそ可能になったのだろうけど、でも仏教を中心とした文化の理解は相当なものだと思うし、アメリカ的資 -
Posted by ブクログ
スピード感が出てきたと思ったら、物語が一気に流れて行く下巻。説明不足や伏線の投げっ放しがあるようにも感じますが、それを無視して十分に楽しむことのできる作品でした。決してきれいなストーリーではないですが、混沌とした社会の中で、それぞれの立場で精一杯に生きる人々の物語に圧倒される。
外国バイオ企業の手先であるアンダーソンの行動原理や内面描写はもっと欲しかった。確実にいやなやつなんだけど、彼なりの正義がどこかにあったのかなぁと気になる。広い意味での作品世界の中では中心的勢力に属するはずのアンダーソンなのに、情勢に振り回されて寂しいかぎり。
没落した華僑老人のホク・センはずっと応援してました。ほん -
Posted by ブクログ
10話からなる短編集
この中でより心に残っているは
パショ
イエローカードマン
そして表題作の
第六ポンプ
パショは
新しいものを取り入れて変わっていくことに抵抗感があり新しいものを取り入れない人の顛末
知識が持つ絶大な力
対立していて不穏な空気が漂う場面はあれど
ガツガツしている雰囲気は一切なく
穏やか過ぎていく日常を感じたお話
イエローカードマンは
これは個人的に凄いなと思ったのは
昔大繁盛をしていた商売をしていたのに理不尽にすべてを奪われた一人の老人が
身体の動きが鈍くなる中けがをしても仕事をもらおうとしている様が
なんだか他人事とは思えなかった
そして
第六ポンプ
やっぱり知識 -
Posted by ブクログ
ネタバレ・あらすじ
近未来ディストピアSF短編集。
・感想
面白かった……んだけどなんだか読み終わるのにすごく時間がかかってしまった。
続きが気になって読む手が止まらない、とか読んでて高揚感がある作品じゃないしひたすら「こんな世界は絶対にやだ……」と思う世界観だったからかなw
科学技術の影響により環境破壊された世界、痴呆化した人類、エネルギー供給が限定された世界などなど。
倫理観、道徳感、死生観や哲学などの人文的素養が変質、退行あるいは消失して、根源的な欲望と快楽のみで動く人類もどきたちが彷徨いている世界。
特に印象的だったのがフルーテッド・ガールズと表題作の第6ポンプ。
痴呆化した人類(トログ -
Posted by ブクログ
中華の雰囲気漂うディストピアSFもの。
「カロリーマン」が一番印象に残った。
鉱物資源が枯渇した社会で、さらに植物がニッポン・ジーンハック・ゾウムシという害虫によって遺伝子に異変が起き、ソイプロというハイカロリー植物しか育たなくなった荒廃した世界。全てのエネルギー源をソイプロに依存し、またそのソイプロはアグリジェン社という企業に独占されているというディストピアな世界観がかなり良い。
遺伝子操作された動物のグロテスクな描写や、ゼンマイを回して動力を作ったりPCの操作が足踏み式だったりと、近未来感とアナログ感が上手く合わさり、資源が枯渇した後の荒廃した未来社会が暗く面白く描かれている。
また表題作 -
Posted by ブクログ
複数巻を平行に読破月間。
遺伝子改変とハックが当たり前になり、他国の作物をジーンハックゾウムシによって壊すことで、エネルギー機器に陥らせる時代。独自の種子バンクを持つタイでは西洋由来のカロリー(エネルギー)企業に負けない食文化を構築した。そこで藻類を研究するアンダーソン、通産省で闇カロリーを駆逐するジェイディー、日本製の遺伝子改変"ねじまき"少女のエミコの人生が交錯していく…。
クールなアンダーソン、自分がうまく制御できないエミコ、熱く衝動的なジェイディーに、得体のしれないホク・センと、サイバーパンクというか、アニメ的な登場人物の視点でそれぞれ進む序盤。状況の説明と、や