パオロ・バチガルピのレビュー一覧
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近未来のバンコクを舞台にした物語の下巻。エミコたち「つくられた生き物」と、もとからいる人間とで構成される街では、あやうい均衡を保ちながら政治闘争が繰り広げられ、その均衡がついに崩れることに。生き残りを図る人々を描く下巻では、物語が進むにつれ、アンドロイドを開発した日本人の意図が明らかになります。上巻でエミコは、受けた教育と自分の中にあるものとの間にずれを感じていました。エミコの葛藤が何だったのか、読者はようやく知ることができます。真実が明らかになり、報いを受ける段になっても、顔色ひとつ変えない。こうした日本人の描き方からは、とらえどころのなさ、ある種の不気味ささえ、国際社会が抱いているように思
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今注目している作家の一人。SF作家さんだけど、学生時代は東アジア学を専攻し、経営コンサル経て、環境専門雑誌の編集をしながら執筆を続けているそう。
『ねじまき少女』から思っていたけど、場面の空気を描くのがすごくうまいと思う。『ポケットの中の法』や『イエローカードマン』なんかは読んでいると自分の周りすらジトジトしているような気になる。土地のにおいがしてきそう。
環境問題にも造詣が深く、そのせいか物語もディストピアが多くて若干気が滅入るかも。でも目が離せない。
SFをやっと数作読んできたけど、科学技術単品を軸に進む物語より、その技術で社会や人間がどう変わったか、みたいな部分の割合が多めの作品が好きみ -
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本書は著者の長編デビュー作。
しかしデビュー作にも関わらずヒューゴー賞/ネビュラ賞/ローカス賞/キャンペル記念賞とSF界の様々な賞を受賞。
そしてそれだけに留まらず、タイム誌の「今年の10冊」で9位にランク付けされる等、SFと言う比較的ニッチな世界にとどまらない作品となっています。
簡単にストーリーをご紹介すると、
本書の舞台は温暖化効果と遺伝子工学の暴走により環境が激変した500年後の地球・タイ王国。
この舞台において、蘇りつつあるグローバル経済を主導しようとする多国籍企業とそれと敵対するタイ王国環境省及びその実働部隊、通称白シャツ隊。
そして、白シャツ隊と敵対するタイ王国通産省の三 -
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本書は著者の長編デビュー作。
しかしデビュー作にも関わらずヒューゴー賞/ネビュラ賞/ローカス賞/キャンペル記念賞とSF界の様々な賞を受賞。
そしてそれだけに留まらず、タイム誌の「今年の10冊」で9位にランク付けされる等、SFと言う比較的ニッチな世界にとどまらない作品となっています。
簡単にストーリーをご紹介すると、
本書の舞台は温暖化効果と遺伝子工学の暴走により環境が激変した500年後の地球・タイ王国。
この舞台において、蘇りつつあるグローバル経済を主導しようとする多国籍企業とそれと敵対するタイ王国環境省及びその実働部隊、通称白シャツ隊。
そして、白シャツ隊と敵対するタイ王国通産省の三 -
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ネタバレまずジェィディーがあっさり処刑されてしまったのがすごく残念でした。
しかし亡霊となってカニヤに付きまとってたせいであまり死んだ感じがしなかったんで少し嬉しかったです。
あの後ジェイディーがちゃんと成仏してくれていることを願います。
カーライルがナーガの鱗をなぞりながら階段をのぼる場面や、戦闘用メゴドントがホク・センを襲う場面など細かな場面まで書かれているので映画をみているようでした。
特にエミコがソムデット・チャオプラヤを殺す場面ははっきりとは書かれていませんがスピーディーで爽快でした。
正直世界観や種子バンクのことは半分分かったような気がするレベルでしたが、
登場人物が個性的でギ・ブ・セ -
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SFはまったく読んだことがなかったので、世界観についていけるか不安だったのですが無用の心配でした。
最初はこの世界の用語が多すぎてなにがなんだか訳が分からない状態でしたが話が進むにつれ個性的な登場人物と結構エログロかつアクティブな展開のある話に引き込まれました。
意味不明の用語も何度か使われるうちになんとなく意味が分かってきて、
普段は現代日本作家しか読まないので目新しい読書体験でした。
日本ではねじまき少女のあとに発売された第六ポンプの方が、執筆順は反対だったみたいなので、先に読んでおけばよかったかと思いました。
下巻どうなるかすごく楽しみです。 -
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上下巻まとめての感想。
タイの首都バンコクを舞台にした近未来ディストピア小説。
最初は少し世界に入り込むのに時間がかかったけど、この世界に慣れてくるとだんだん面白くなっていった。
ディストピア小説でありながら、政治劇であり、尚且つ複数の登場人物を描いた群像劇でもある。
国家規模の物語と、個人の物語が同時に描かれていて、はっきりした悪人や善人がいるわけでもなく、それぞれがそれぞれの目的のために行動しているのが面白い。
最終的にそれらの人物が一つに集結する感じもワクワクした。
そして、なんと言っても人工生命でタイトルにもなっているねじまき少女の存在が良いアクセントになっている。
ブレ -
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ネタバレバチカルビという名前、舞台がタイ、ヒューゴー・ネビュラ受賞、バイオSFと聴いて、「ひょっとしてアド・バード的なSFか?」と思い手に取ってみた。半分正解といったところだった。
水位上昇で沿岸核都市が水没している近未来、石炭石油は枯渇してゼンマイが主力のエネルギーとなっている。遺伝子操作の動植物や人造人間が闊歩している、魑魅魍魎なタイの都市の政変劇を複数視点で描く。
主人公の一人、秘書型アンドロイドが表題の「ねじまき。少女」のエミコ。
環境省直属のパトロール隊「白シャツ隊」の副隊長で笑わない女カニヤ。
この二人の後半の活躍が、この物語の核心読ませ処。
正直、前半は世界観を把握するのに時間がか -
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ディストピアSF短編集。一話ごとに人体改造、食糧危機、資源枯渇、渇水、痴呆化など、さまざまな状況が設定されています。
情景が目に浮かびそうな近未来世界観と、厳しい環境下でしぶとく生き伸びようとする庶民の姿が気に入りました。
■ポケットのなかの法
四川省成都を舞台にしたサイバーパンクっぽい物語。路地裏の少年が偶然手に入れた外部記憶媒体の中身とは。
■フルーテッド・ガールズ
フルートにされた少女たちが秘密のパーティーの舞台に立たされる妖しい物語。映像で見てみたい作品。
■砂と灰の人々
食糧危機に陥った人類は、腹の中にゾウムシを飼って砂を喰らっている世界。そこに生身の犬があらわれる。
■カロ -
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全体的に資源を際限なく使いまくり成長し切った世界の後、様々な物質や資源が枯渇した世界を描くお話が多く占めるSF短編集になります。
全話通して救われないような展開が多いですが、そういうのが好みの方には刺さります。(僕は大好物です)
中でも好きだった作品は以下
・「砂と灰の人々」
・「カロリーマン」
・「ポップ隊」
・「イエローカードマン」
・「やわらかく」
・「第六ポンプ」
第六ポンプは表題であることもあり、群を抜いて良かった気がします。ポップ隊も引けをとらないくらい好みでした。
その他はサイバーパンクと雨が似合うような作品多数。映像化されたら間違いなく好きな作品ばかりでした。
「ブ -
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ディストピア物のSF短篇集(SF9篇+SFではない『やわらかく』の1篇を収録)。
人口、民族対立、エネルギー、化学物質、水、食料や食品添加物など、貧富の差や環境問題を下敷きにした退廃的未来を描いています。しかし、最後は希望が持てる終わり方が多いので、想像していたよりかは読後感は悪くないです。
とはいえ、代償は有りますが、民俗文化の対立をテーマとした『パショ』を除いて、未来世界を好転させるヒーローが不在なため、どの世界もその先の未来は、暗澹たる終局を迎えることは想像出来ますが。以下、個別に。
『ポケットのなかの法』
場所は未来の四川省成都。“活建築”という生物的に増殖する市街地の路地裏で、ス -
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文明が衰退・滅亡した後のオルタナティブな文明を描いたお話がつまった短編集。
荒廃した世界の過酷な境遇の中で主人公たちがそれぞれの矜恃、それぞれの希望を見出していくところに「SF的美しさ」が存在している。
挿入される造語に初めは戸惑うが、読み進めるにつれて造語に馴染みそれと共にその世界にも馴染んでいく感覚があった。
身体を所有され(改造され)支配される少女といったフェミニズム的テーマの「フルーテッド・ガールズ」、異なる種族(ポストヒューマンと犬)の間の残酷な友情が扱われる「砂と灰の人々」を筆頭に「パショ」「カロリーマン」「ポップ隊」「イエローカードマン」など脳の痺れるような傑作ばかりだった。
同