パオロ・バチガルピのレビュー一覧

  • ねじまき少女(下)

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    近未来のバンコクを舞台にした物語の下巻。エミコたち「つくられた生き物」と、もとからいる人間とで構成される街では、あやうい均衡を保ちながら政治闘争が繰り広げられ、その均衡がついに崩れることに。生き残りを図る人々を描く下巻では、物語が進むにつれ、アンドロイドを開発した日本人の意図が明らかになります。上巻でエミコは、受けた教育と自分の中にあるものとの間にずれを感じていました。エミコの葛藤が何だったのか、読者はようやく知ることができます。真実が明らかになり、報いを受ける段になっても、顔色ひとつ変えない。こうした日本人の描き方からは、とらえどころのなさ、ある種の不気味ささえ、国際社会が抱いているように思

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    2015年03月20日
  • ねじまき少女(上)

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    (((o(*゚▽゚*)o)))
    化石燃料が枯渇し、カロリー(遺伝子操作で創られた動物たちの運動力)がエネルギー主体となった世界。
    遺伝子バンクと穀物の覇権を争い、しのぎを削る社会。
    新人類として創られながら、その能力の高さ故に恐れられ、科学者たちに生殖能力を奪われ様々な制約を与えられた奴隷「ねじまき」。
    世界観、ストーリー構成ともに秀逸!

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    2014年11月03日
  • 第六ポンプ

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    今注目している作家の一人。SF作家さんだけど、学生時代は東アジア学を専攻し、経営コンサル経て、環境専門雑誌の編集をしながら執筆を続けているそう。
    『ねじまき少女』から思っていたけど、場面の空気を描くのがすごくうまいと思う。『ポケットの中の法』や『イエローカードマン』なんかは読んでいると自分の周りすらジトジトしているような気になる。土地のにおいがしてきそう。
    環境問題にも造詣が深く、そのせいか物語もディストピアが多くて若干気が滅入るかも。でも目が離せない。
    SFをやっと数作読んできたけど、科学技術単品を軸に進む物語より、その技術で社会や人間がどう変わったか、みたいな部分の割合が多めの作品が好きみ

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    2014年04月18日
  • ねじまき少女(下)

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    昨年末のタイの洪水を思い出しました。水浸しの中で意外と普通に生活していて、逞しい人たちだなと思ったのでした。
    物語の後半に入り状況は増々悪化していきます。内乱が起き、町は水没...でもそれでも生き残るべく、生きていくのでしょう。
    見捨てられた町のなかで、仄かな希望の見える終わり方でした。

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    2013年09月23日
  • ねじまき少女(上)

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    アグリビジネス、遺伝子組み換え作物、外来生物による自然破壊、伝染病の蔓延、難民、官僚の腐敗、カルト宗教...。未来のタイを舞台に現実にある様々な問題が物語に内包され、凝縮されています。
    混沌とした世界でそれでも生きていく人たち。
    いままで知識でしかなかったことが登場人物に共感することで実感として理解できます。下巻が楽しみです。

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    2013年09月22日
  • ねじまき少女(下)

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    本書は著者の長編デビュー作。
    しかしデビュー作にも関わらずヒューゴー賞/ネビュラ賞/ローカス賞/キャンペル記念賞とSF界の様々な賞を受賞。
    そしてそれだけに留まらず、タイム誌の「今年の10冊」で9位にランク付けされる等、SFと言う比較的ニッチな世界にとどまらない作品となっています。

    簡単にストーリーをご紹介すると、

    本書の舞台は温暖化効果と遺伝子工学の暴走により環境が激変した500年後の地球・タイ王国。
    この舞台において、蘇りつつあるグローバル経済を主導しようとする多国籍企業とそれと敵対するタイ王国環境省及びその実働部隊、通称白シャツ隊。
    そして、白シャツ隊と敵対するタイ王国通産省の三

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    2013年06月21日
  • ねじまき少女(上)

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    本書は著者の長編デビュー作。
    しかしデビュー作にも関わらずヒューゴー賞/ネビュラ賞/ローカス賞/キャンペル記念賞とSF界の様々な賞を受賞。
    そしてそれだけに留まらず、タイム誌の「今年の10冊」で9位にランク付けされる等、SFと言う比較的ニッチな世界にとどまらない作品となっています。

    簡単にストーリーをご紹介すると、

    本書の舞台は温暖化効果と遺伝子工学の暴走により環境が激変した500年後の地球・タイ王国。
    この舞台において、蘇りつつあるグローバル経済を主導しようとする多国籍企業とそれと敵対するタイ王国環境省及びその実働部隊、通称白シャツ隊。
    そして、白シャツ隊と敵対するタイ王国通産省の三

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    2013年06月21日
  • ねじまき少女(下)

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    設定された世界観が特殊だとなかなかその小説世界に入りにくいですが、一旦入ってしまうととてもワクワクしながら読めるのがSFの良いところです。その意味でもこの「ねじまき少女」は上巻の途中からはどっぷりとその世界に入り込み一気に読んだ。

    バンコックのとても暑い描写が今の東京の気候と被ることもあり臨場感もたっぷり、エンターテイメントとしてもとても楽しめましたが、エネルギーや食料の問題はあながちフィクションとも言えないような。。。

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    2012年08月19日
  • ねじまき少女(下)

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    ネタバレ

    まずジェィディーがあっさり処刑されてしまったのがすごく残念でした。
    しかし亡霊となってカニヤに付きまとってたせいであまり死んだ感じがしなかったんで少し嬉しかったです。
    あの後ジェイディーがちゃんと成仏してくれていることを願います。

    カーライルがナーガの鱗をなぞりながら階段をのぼる場面や、戦闘用メゴドントがホク・センを襲う場面など細かな場面まで書かれているので映画をみているようでした。
    特にエミコがソムデット・チャオプラヤを殺す場面ははっきりとは書かれていませんがスピーディーで爽快でした。

    正直世界観や種子バンクのことは半分分かったような気がするレベルでしたが、
    登場人物が個性的でギ・ブ・セ

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    2012年08月11日
  • ねじまき少女(上)

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    SFはまったく読んだことがなかったので、世界観についていけるか不安だったのですが無用の心配でした。
    最初はこの世界の用語が多すぎてなにがなんだか訳が分からない状態でしたが話が進むにつれ個性的な登場人物と結構エログロかつアクティブな展開のある話に引き込まれました。
    意味不明の用語も何度か使われるうちになんとなく意味が分かってきて、
    普段は現代日本作家しか読まないので目新しい読書体験でした。
    日本ではねじまき少女のあとに発売された第六ポンプの方が、執筆順は反対だったみたいなので、先に読んでおけばよかったかと思いました。
    下巻どうなるかすごく楽しみです。

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    2012年08月05日
  • ねじまき少女(上)

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    面白い!
    ニューロマンサー以来の衝撃!
    バンコクを舞台に、ブレードランナーに似た混沌とした行き場のない閉塞感がこれでもかと表現されていて、途中で止められない面白さ!

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    2012年06月17日
  • ねじまき少女(下)

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    あらゆる動植物への遺伝子操作が当たり前の世界。そんな世界で生き残れるのは、人類ではないんでしょうね
    ・遺伝子操作の弊害
    ・海面上昇による都市水没
    ・カロリー企業による経済支配
    この状況でかろうじて生き残っているタイ・バンコクを舞台に、章ごとに5人の視点から語られます。

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    2025年08月02日
  • ねじまき少女(上)

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    当時のタイム誌〈今年の十冊〉にも選ばれた名作。石油が枯渇し、チビスコシス(咳とともに肺の肉を吐く)や瘤病(皮膚が肥厚してひび割れていく)が蔓延し、エネルギー構造も農作物も激変した近未来のバンコクが描かれています。アジアンテイストのディストピアの魅力が溢れています。

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    2025年07月30日
  • 第六ポンプ

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    読みやすいSF
    でも想像力が必要かな
    細かい説明が無いところが
    スローペースで読ませる
    だからこそ頭に残る作品たち

    いろんな話が詰まってる
    読めば読むほど
    面白みの増す短編ばかり

    ひとつ読み終える度に
    その世界を その様子を想う

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    2025年07月07日
  • ねじまき少女(下)

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    上下巻まとめての感想。

    タイの首都バンコクを舞台にした近未来ディストピア小説。

    最初は少し世界に入り込むのに時間がかかったけど、この世界に慣れてくるとだんだん面白くなっていった。

    ディストピア小説でありながら、政治劇であり、尚且つ複数の登場人物を描いた群像劇でもある。

    国家規模の物語と、個人の物語が同時に描かれていて、はっきりした悪人や善人がいるわけでもなく、それぞれがそれぞれの目的のために行動しているのが面白い。

    最終的にそれらの人物が一つに集結する感じもワクワクした。

    そして、なんと言っても人工生命でタイトルにもなっているねじまき少女の存在が良いアクセントになっている。

    ブレ

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    2025年05月11日
  • ねじまき少女(下)

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    ネタバレ

    バチカルビという名前、舞台がタイ、ヒューゴー・ネビュラ受賞、バイオSFと聴いて、「ひょっとしてアド・バード的なSFか?」と思い手に取ってみた。半分正解といったところだった。

    水位上昇で沿岸核都市が水没している近未来、石炭石油は枯渇してゼンマイが主力のエネルギーとなっている。遺伝子操作の動植物や人造人間が闊歩している、魑魅魍魎なタイの都市の政変劇を複数視点で描く。

    主人公の一人、秘書型アンドロイドが表題の「ねじまき。少女」のエミコ。
    環境省直属のパトロール隊「白シャツ隊」の副隊長で笑わない女カニヤ。
    この二人の後半の活躍が、この物語の核心読ませ処。

    正直、前半は世界観を把握するのに時間がか

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    2025年05月07日
  • 第六ポンプ

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    ディストピアSF短編集。一話ごとに人体改造、食糧危機、資源枯渇、渇水、痴呆化など、さまざまな状況が設定されています。
    情景が目に浮かびそうな近未来世界観と、厳しい環境下でしぶとく生き伸びようとする庶民の姿が気に入りました。

    ■ポケットのなかの法
    四川省成都を舞台にしたサイバーパンクっぽい物語。路地裏の少年が偶然手に入れた外部記憶媒体の中身とは。

    ■フルーテッド・ガールズ
    フルートにされた少女たちが秘密のパーティーの舞台に立たされる妖しい物語。映像で見てみたい作品。

    ■砂と灰の人々
    食糧危機に陥った人類は、腹の中にゾウムシを飼って砂を喰らっている世界。そこに生身の犬があらわれる。

    ■カロ

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    2024年06月23日
  • 第六ポンプ

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    全体的に資源を際限なく使いまくり成長し切った世界の後、様々な物質や資源が枯渇した世界を描くお話が多く占めるSF短編集になります。

    全話通して救われないような展開が多いですが、そういうのが好みの方には刺さります。(僕は大好物です)

    中でも好きだった作品は以下
    ・「砂と灰の人々」 
    ・「カロリーマン」
    ・「ポップ隊」
    ・「イエローカードマン」
    ・「やわらかく」
    ・「第六ポンプ」

    第六ポンプは表題であることもあり、群を抜いて良かった気がします。ポップ隊も引けをとらないくらい好みでした。

    その他はサイバーパンクと雨が似合うような作品多数。映像化されたら間違いなく好きな作品ばかりでした。

    「ブ

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    2024年05月21日
  • 第六ポンプ

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    ディストピア物のSF短篇集(SF9篇+SFではない『やわらかく』の1篇を収録)。

    人口、民族対立、エネルギー、化学物質、水、食料や食品添加物など、貧富の差や環境問題を下敷きにした退廃的未来を描いています。しかし、最後は希望が持てる終わり方が多いので、想像していたよりかは読後感は悪くないです。
    とはいえ、代償は有りますが、民俗文化の対立をテーマとした『パショ』を除いて、未来世界を好転させるヒーローが不在なため、どの世界もその先の未来は、暗澹たる終局を迎えることは想像出来ますが。以下、個別に。

    『ポケットのなかの法』
    場所は未来の四川省成都。“活建築”という生物的に増殖する市街地の路地裏で、ス

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    2024年02月04日
  • 第六ポンプ

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    文明が衰退・滅亡した後のオルタナティブな文明を描いたお話がつまった短編集。
    荒廃した世界の過酷な境遇の中で主人公たちがそれぞれの矜恃、それぞれの希望を見出していくところに「SF的美しさ」が存在している。
    挿入される造語に初めは戸惑うが、読み進めるにつれて造語に馴染みそれと共にその世界にも馴染んでいく感覚があった。
    身体を所有され(改造され)支配される少女といったフェミニズム的テーマの「フルーテッド・ガールズ」、異なる種族(ポストヒューマンと犬)の間の残酷な友情が扱われる「砂と灰の人々」を筆頭に「パショ」「カロリーマン」「ポップ隊」「イエローカードマン」など脳の痺れるような傑作ばかりだった。

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    2023年11月24日