魚住孝至のレビュー一覧
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めちゃくちゃ面白かった。
西洋人であるオイデン・ヘイゲルが、禅や日本文化を理解しようとして書いた本を、逆に東洋人の自分が読んで禅を理解しようとしているというのは、なんだか少し皮肉な感じもする苦笑
ただ、そこが面白いところでもある。禅を体現しているような人ほど、言葉で説明するのが苦手なのだと思う。「それ」としか言えないような、かなり感覚的な世界。
弓道自体にはそこまで興味は湧かなかったが、この本と鈴木大拙の『禅と日本文化』を読んだことがきっかけで近所の座禅会に参加するようになり、気づけば半年以上経った。
……とはいえ、まだ全然よくわからない(笑)。
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実践に基づいた、理が示されており、形にとらわれることの誤りなど、汎ゆる道に通ずる道理が提示される。一道をゆくことで諸芸に通ずが、理解できるような説明が敷衍され、普遍的な理、万理一空が感じられる。
本書は、一次資料を中心に、各種資料を比較検証することで、実像を浮かび上がらせており、科学的研究アプローチが取られていることが特色。
更に、時代の変遷、当時の社会情勢として戦がなくなりつつあった時代で、外交上の芸としての指南役が求められていたこと等、武士の位置づけなど、武蔵を取り巻く環境との関係の中で武蔵の立ち位置や思想の成立の背景にまで触れているのは、秀逸だった。
さて、改めて学び、如何に自分の日々に活かすか。そして、我は如何なる道を進むのか。 -
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中学時代に読んだ、吉川英治の宮本武蔵は、愛読書で、その後何度も読み直している人生のバイブル。
その関係で、高校時代に講談社学術文庫の五輪書も読み、独行道を生徒手帳に書き写していた。
そんな自分ですが、改めてこの書を読み、自分の理解はこれっぽっちも進んでなかったことを思い知る。
そして、常に兵法の道を外れずなども、肩に力を常に入れると言う意識だけを得ていたように思える。
歳を重ね、吉岡流などない等の数多の俗説を読み、虚像とおもっていたが、稲葉稔のさらば武蔵を読んでまた、万理一空をしり、自分のなかで武蔵熱が再燃。そこから、この書に出会って、窮屈な力むだけではない、合理的かつ自在な道を行く武蔵像を知り、益々学び直したいと思った。 -
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『五輪書』はすごい本だった、ということが、ポイントが絞られてよく伝わってくる。『五輪書』の原文を読むかどうかはさておき、武道をやっている人間は、その内容について、一読の価値はあると思う。
大前提として、『五輪書』が、特に剣術での実践を中心とした武術書であることが、当たり前と言えば当たり前だけれども、意外だった。現代では、その精神論が強調されて、ビジネス書の文脈などで読まれることもあるが、この本を読むと、あくまで武蔵が実践で戦った剣術家であり、その中心は武術書であることがよく分かる。
「地・水・火・風・空」の五巻からなる『五輪書』は、その大部分「水・火・風」の三巻が、剣術の鍛錬法と兵法、各流派の欠点の指摘を中心として武術論になっている。「水の巻」では、一武士として戦ううえでの、剣術の基本を示している。続く「火の巻」では、一人による剣術を敷衍する形で、多勢対多勢の合戦における戦い方まで広げる。最後に、「風の巻」では、自身の実践経験から、当時の他流派それぞれに見られる考え方の欠陥を指摘する。
自分も武術をやっている身からして一番面白かったのは、やはり実技書である「水の巻」だった。様々な流派に、様々な型があれど、究極的には五種類に分類されるという「五方の構え」。とはいえ、実践においては、構えというのはあってないようなものだとする「有構無構」。「手」の「生き死に」。「目付」に関する「観」「見」の二種類の違い。
古流の武術をやったことがある人間なら、なんとなく聞いたことがある言葉や概念が、ここまで体系的にまとまっていたことを、そもそも知らなかった。それくらいに、わかりやすく、かつ、合理的に整理されている。
他にも、武道をやっていれば、感覚的には知っていることについて、もう名前がついていたんだ、という発見もある。「火の巻」で紹介される「三つの先」など、感覚的には知っていたけれど、改めて名前がつけられて、きちんと説明されていて、ものすごく納得感があった。
とにもかくにも、武士としての生き方や精神論以上に、武術の技術指南書としての『五輪書』の魅力が、この上なく伝わってくる一冊。ある程度の武道経験者で、本を読むことに抵抗のない人には、一見の価値があると思う。 -
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神秘体験に関心のあった一人のドイツ人哲学者が日本に来て弓道を学んだ体験記で、短い本なのだが、これほど強く感銘を受けたと感じたのは久しぶり。日本の武道とそれが志す精神性が、はっきりと浮かび上がってきてとても感動した。日本文化に馴染みのない外国人だったからこそ、ここまで丁寧に浮かび上がらせることができたのだと思う。ここに記されている伝統的な日本の精神は、現代では薄まりつつ確かに残ってもいて、そういう中途半端な時代を生きる日本人にとってはすごく読む価値のある本だと思う。
これを読むと、禅や武道の修行というのは「無我」を目指すものだということがよく分かる。そして、そういうものを目指して修練してきた人が尊敬に値することもよく納得できるし、ことば数は少なく背中で語るというようなタイプが規範的な日本人像とされてきたのも合点がいく。一方で、禅や武道の教えや慣習が、合理性を第一に重視する現代社会と合いにくいのも随分納得できる。禅の教えは、成熟を目指すときには有効だが、発展を目指すには効果的でないという感じだろうか。読後、個人的な生き方や、良い慣習と悪い慣習をどう分けるかみたいな社会的なことなどにもあれこれと考えが及んでいたので、それだけ刺激的な本だったのだと思う。 -
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ネタバレ[ 内容 ]
誰もが知る存在でありながら、じつは信用できる史料がきわめて少ない武蔵。
小説や伝説に隠されてきた実像はいかなるものだったか。
すべての勝負に勝ってなお生涯追求し続けた、「兵法の道」とは何か?
新史料も用いながら生涯を追うとともに、きわめて合理的かつ具体的に書かれたその思想を、『五輪書』を核に精細に読みとく。
[ 目次 ]
序章 「巌流島の決闘」の虚実
1 「宮本武蔵」の誕生―「天下一」の武芸者へ(武蔵の生い立ち 少年期の武蔵 関ヶ原の戦いと廻国武者修行―実践の中で生まれた感覚 『兵道鏡』を記す―円明流の樹立)
2 「ふかき道理」を求めて―幕藩体制確立期の社会で(大坂夏の陣とその後 姫路藩・明石藩の客分として―「遊寓の名士」 「兵法の道にあふ」―島原の乱の頃)
3 「兵法の直道」を伝えん―後世に遺したもの(二刀一流の展開―熊本細川藩にて 晩年の境地―水墨画と『五方之太刀道』 『五輪書』の成立―「天道と観世音を鏡として」 『独行道』と武蔵の終焉)
4 『五輪書』の思想(地の巻―剣術一通りにしては、まことの道を得がたし 水の巻―身も足も心のままにほどけたる 火の巻―兵法の智徳を以て、万人に勝つ所を極める 風の巻―他の事をよく知らずして、自らのわきまへ成りがたし 空の巻―おのれと実の道に入る)
終章 「道」の思想の中で―「常に兵法の道をはなれず」(「道」の思想 剣術の「道」の展開 武蔵の「兵法の道」)
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