五十嵐佳子のレビュー一覧
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朝ドラ「エール」のモデル古関裕而、金子夫婦を描いた小説。福島と豊橋。文通から始まる二人の恋。音楽を通じた二人で歩いた幾春秋。
朝ドラがことのほか面白く、中公新書、文春文庫それぞれ読んだ勢いでこちらも挑戦。こちらは事実の羅列でなくノベライズ版。
イギリスの作曲の賞を若くして受賞した古関裕而。新聞記事をたまたま読んだ金子がファンレターを書くことから二人の恋は始まる。赤い糸というか運命の出会いというのが本当にあるのだ。正にドラマの原作向きな二人の歩んだ人生。
文通する二人の手紙のやり取りの部分が多いのが実に良い。
ドラマの方が本書よりも随分とデフォルメされていることが良く分かる。それでもドラ -
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「麻と鶴次郎」に続くシリーズ第二弾。
酒問屋・千石屋を営む夫婦の話だが、この2人は他人を思いやる心を持つ素敵な夫婦だ。
そんな2人には様々な相談事が持ち込まれる。
いつの時代も理不尽なことは起こる。親の借金のかたに吉原に売られたり、好きでもない人と祝言をあげさせられたり…
第三章の女中の菊の生い立ちの話は心打たれたし、
第四章の話に出てきた花魁が言った「運命に逆らうのはしんどい。けれど、それで新しい流れに出会うこともありんす。」
今の自分を受け入れて、一生懸命生きる。そうすれば、いつかいいことがあるかもしれない…
覚悟を決めたものが放った言葉には説得力があり、凛とした強さを感じた。
どんなに辛 -
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人の懐にするりと入り込む、ほんわかした雰囲気の慈恵尼(じけいに)は、千光寺という小さな尼寺の庵主(あんじゅ)。
お寺だけど、説教や説法はしない。
他人が示した道よりは、自分でどうしたいか決めるのが良い。そうでなければ結局、前には進めないから。
悩みの聞き方としてはこれ以上のものはないと思う。
実際に仏教には「心施(しんせ)」という教えがあるそう。心から相手に寄り添い、話に耳を傾け、痛みを分かち合うという行いのこと。
五のつく日には女たちが集まって悩みを打ち明けあう「お話し会」が行われる。
女の悩みというものは、今も江戸時代からそう変わっていない。
母親との関係、姑との関係、夫との関係、そし -
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江戸時代の産婆修行の女の子を描いたシリーズの作家。
今回は、武家奉公に出た先が美味しい食べ物が好きで、奉行を歴任した重臣でありながら、自分でも台所に立って料理もする家だった。
大きな商家の娘で自宅にいた時は包丁さえ握らなかったおさゆ。
だがお家の家風に馴染み、美味しいものへの探究心でみるみる料理上手に。
奥方様と相性が良かったこともあって、嫁に行かずに歳をとるまで働いた。奥方様が亡くなって実家に戻るも、何もしないことに気分が膿み、一念発起で茶屋を。
そのきっかけは街中で偶然再開した幼馴染。
茶屋で繰り広げられる人間模様や、元奉公していた武家のつながりなどで、ただの茶屋にとどまらない人間の -
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ネタバレTさんのお勧め。
日本橋横山町の荒山神社の神主は代々ぼんくら、と噂されている。
ぼんくら、とはちょっとひどいが、人が良くて、涙もろいのは確か。
神主の妻、咲耶は、元巫女だが、
実は京の陰陽師、一条家の娘で、式神遣い。
姑の目を盗んで、式神に掃除や洗濯をさせている。
嫁いびりをする姑と京都から念をとばしてくる母親に、
神社が大家の長屋に化け猫と三つ目小僧が住んでいると、
登場人物はそこそこそろっているが、
肝心の事件がちょっと盛り上がりに欠ける感じ。
あまりにも毒がなさすぎるのか、
解決が簡単すぎるのか。
ぼんくら亭主が同心、という話を
すでに読んでいるからかもしれない。