五十嵐佳子のレビュー一覧
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慈恵尼(じけいに)が庵主(あんじゅ)を務める、目黒の尼寺・千光寺(せんこうじ)のシリーズ第2弾。
人の懐にするりと入り込む、ほんわかした雰囲気の慈恵尼。
そして、人を使うのがうまい(和清尼/談)
やってみる? やってみて、簡単だから。 それじゃお願いね。
誰も断れない(笑)懐に入り込まれてしまうから。
摘み草に誘い、一緒に料理を作り、手を動かしながらだと不思議と話が引き出しやすくなる。人前では話しづらい事もあるから。
五のつく日に女たちの話を聞く集まりがあり、終わった後にはみんなでお経をあげて、食事をする。
慈恵尼たちの素朴だが心尽くしの美味しい料理に、泣いていた女も、人の話に割り込んで憎まれ口を叩いていた女も、ホッと顔をゆるませる。
食が心を開くこともあるのだ。
きつい物言いをする女も、慈恵尼にかかれば、草を摘まされてしまう。そして、草など摘んだことのない武家の女は、うっかりミゾソバのとげに触れてしまう。
「その棘で自分の身を守ろうとしているんでしょうね」と言う慈恵尼。言葉のきつい女のことなのかな?
尼さんは怒らないのかと聞かれ、言葉にはしないけれど、そんな気持ちになる時もあると言う慈恵尼。
怒っているときはどうやら、自分が正しく、相手が間違っていると思うときらしい。
言っていることは正論でも、その言葉が人を傷つけることがあるというのは、今のSNS社会の大きな問題点でもあり。
女たちの悩みも、現代と通じる生きづらさで、何かと身につまされる。
・引きこもりになてしまった若い女性も、きっかけは些細なこと。
・旗本の家に還暦まで奉公し、お針子から女中頭まで務め上げて、奥方にも大層頼りにされていた女は、退職したら生きがいを失う。
男に頼らず自分自分を養ってきた、今で言う立派なキャリアウーマンであるが、誰もそこを褒めず、一度も嫁がなかったこと、子を持たなかったことを散々に責められるのだ。
さきと草太のきょうだいは、親に捨てられて寺で暮らしている。
この、さきが、自分よりも十も年上の女たちにかける言葉が、苦労しているせいか、かなり忖度がない。
いや、10歳の少女だから、素直、と言うべきか。
その一方で、寺での仕事のやり方をそっと教えたりする。
さきの言葉で自分の胸の内を考え直すことになる女もいる。
なかなかの人徳であると思う。末が楽しみだ。 -
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朝ドラ「エール」のモデル古関裕而、金子夫婦を描いた小説。福島と豊橋。文通から始まる二人の恋。音楽を通じた二人で歩いた幾春秋。
朝ドラがことのほか面白く、中公新書、文春文庫それぞれ読んだ勢いでこちらも挑戦。こちらは事実の羅列でなくノベライズ版。
イギリスの作曲の賞を若くして受賞した古関裕而。新聞記事をたまたま読んだ金子がファンレターを書くことから二人の恋は始まる。赤い糸というか運命の出会いというのが本当にあるのだ。正にドラマの原作向きな二人の歩んだ人生。
文通する二人の手紙のやり取りの部分が多いのが実に良い。
ドラマの方が本書よりも随分とデフォルメされていることが良く分かる。それでもドラマと並行して楽しめる本でした。 -
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「麻と鶴次郎」に続くシリーズ第二弾。
酒問屋・千石屋を営む夫婦の話だが、この2人は他人を思いやる心を持つ素敵な夫婦だ。
そんな2人には様々な相談事が持ち込まれる。
いつの時代も理不尽なことは起こる。親の借金のかたに吉原に売られたり、好きでもない人と祝言をあげさせられたり…
第三章の女中の菊の生い立ちの話は心打たれたし、
第四章の話に出てきた花魁が言った「運命に逆らうのはしんどい。けれど、それで新しい流れに出会うこともありんす。」
今の自分を受け入れて、一生懸命生きる。そうすれば、いつかいいことがあるかもしれない…
覚悟を決めたものが放った言葉には説得力があり、凛とした強さを感じた。
どんなに辛い環境の中にいても、心優しい人との出会いで救われる人がたくさんいる。辛い思いをしてきた全ての登場人物に幸せになって欲しいと思わせる一冊でした。
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人の懐にするりと入り込む、ほんわかした雰囲気の慈恵尼(じけいに)は、千光寺という小さな尼寺の庵主(あんじゅ)。
お寺だけど、説教や説法はしない。
他人が示した道よりは、自分でどうしたいか決めるのが良い。そうでなければ結局、前には進めないから。
悩みの聞き方としてはこれ以上のものはないと思う。
実際に仏教には「心施(しんせ)」という教えがあるそう。心から相手に寄り添い、話に耳を傾け、痛みを分かち合うという行いのこと。
五のつく日には女たちが集まって悩みを打ち明けあう「お話し会」が行われる。
女の悩みというものは、今も江戸時代からそう変わっていない。
母親との関係、姑との関係、夫との関係、そして第二の人生をどう生きるか。
「話を遮らないで聞く」というルールがあるのが良い。
お話の会が終わると、みんなでお経をあげて、料理を食べてお開きになる。その頃にはずいぶん気持ちがほぐれている。
ただ、「お話の会」で他人に話せるような悩みは大したことでは無いと思えてしまうほどの、壮絶な人生を味わう人もいる。
美味しいものが出てくる小説を探しては読んでいましたが、年齢を重ねて、渋いものやシンプルなものにも惹かれるようになりました。