P・D・ジェイムズのレビュー一覧

  • 女には向かない職業

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    ネタバレ

    この世には人を愛せないかもしくはものすごく薄くでしか愛せない人間がいるのだということが、メッセージとしてすごく心に残った。エヴリンの父親やカレンダー卿のような人物。
    そしてコーデリアの父親も子どもを愛せなかったと仄めかしている。
    その上で
    208ページ
    「でもだからってその父親の罪ではありません。人間は誰かを好きになりたいからと言って好きになれるものではありませんもの。」
    それはコーデリアが自分を納得させてきた言葉なのだろう。
    自分に言い聞かせるように、放ったように思える。
    この本の中でコーデリアの両親の記述は少ない。
    けれど彼女が乗り越えてきたのだなとわかる。
    そこに励まされる。

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    2025年11月28日
  • 皮膚の下の頭蓋骨

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    ネタバレ

    20代で探偵事務所を背負って立つことになったコーデリアの、心の機微や葛藤が丁寧に描かれる。
    事件の謎よりそちらに重点が置かれているようにも思う。
    大きな事件を経験し、今後も悪との闘いが予期される終わり方の中、自分が価値と信じる良識を胸に、堅実に日々の仕事を積み上げていこうとする姿勢がいじらしく、「頑張ったね!ずーっと応援してるからね!」と抱きしめたくなる。

    作者は逝去しているようなので、こちらはコーデリア•グレイ2作目にして、最後の作品。
    これから30.40.50代と年齢を重ねたコーデリアはどう変化していくのだろう。いつか引退し、茶目っ気を身につけて幸せに暮らすおばあちゃんになっているといい

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    2024年10月07日
  • 高慢と偏見、そして殺人

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    母校が開催した公開講座「オースティンの世界」で紹介された本。
    原題[Death Comes to Pemberley(死がペンバリー館にやって来る)]よりも断然良い邦題だと思います。

    多少原作とは登場人物達の雰囲気が違うような気もしましたが、それは作者が違うからなのか、あれから六年経って彼らが成長したからなのか。
    まあ、些細な違和です。

    そしてミステリとしては…やられました。
    とりあえず「こいつが怪しい」と目をつけていた人物がいたのですが、違いました。

    貴族としての面子を保たなければならなかったり、家族を守らなければならなかったり、自分の都合を押し通したかったりといろいろな思惑が絡み合い

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    2023年07月01日
  • 皮膚の下の頭蓋骨

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    ネタバレ

     最後の解説で全てがしっくり来た。解説ってのは何かこう解釈の強要な気がしてよくないもののように感じがちだ。自分の感受性が解説を読んだ時点でどこかに行ってしまうような。でも僕は最後の解説って結構好き。コーデリア・グレイのシリーズの作風ってもんをきっちり形作ってくれる。これでこそ僕は「ここが好きだからこのシリーズが好き」も胸を張って言えるというもの。多分自分で考えてるだけだと「それってただの良いとこみっけだろ?」って水を差してくる嫌な自分がいるからだろう。解説はそんな嫌な僕に「そんなことないよ。胸を張って『ここが好き!』って言って良いんだよ!」って背中を押してくれるものなんだろうなぁ。
     殺人と顔

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    2023年06月13日
  • 女には向かない職業

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    ネタバレ

    初めてのP・D・ジェイムズ。とっつきづらいイメージに反してリーダビリティが高く、読みやすいじゃん!と思ったけれど、解説によればこの作品が例外的に読みやすいらしい。
    共同経営者を自殺でなくしたばかりの女主人公コーデリアが、自殺とみなされた青年の死の原因をひたむきに探る物語。年若い女探偵ものらしくスリリングなピンチもあり、真相を探るべくひたむきに頑張るいじらしさに胸打たれ、そして後半に至る怒涛の展開、最終盤のある意味でのどんでん返しには驚いた。本当に面白かった。ダルグリッシュ警視ものを他にも読んでみたいけれど、なかなか難易度が高そうだなぁ

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    2023年02月08日
  • 女には向かない職業

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    学生の頃に自分で作ったランキングの上位にあるが内容を覚えてない本が意外と多い。これもその一冊だがまったくの初読のように楽しめた。まだ女性私立探偵が女性らしく描かれなかった時代に書かれた男社会の中で抗う22歳の私立探偵コーデリア。自殺した息子の動機を調べてくれと依頼される。この話は二重構造になっていて、事件を解決するコーデリアの推理譚の一方で、自殺した元パートナーの元上司でラスト数ページで現れたダルグリッシュ警視が倒叙ミステリのようにコーデリアの秘密を追い詰めていく。だが決して敵対的ではない。ダルグリッシュはコーデリアに目を細める。若いコーデリアの成長と今後を期待させる、PDジェイムスらしからぬ

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    2021年09月10日
  • 女には向かない職業

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    どんなに頑張っても報われないことがある。「負ける」ことはインナーチャイルドを癒していくためにすごく大事なこと。コテンパンに負ける小説を読んで、負けを認める疑似体験を。

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    2020年02月23日
  • 皮膚の下の頭蓋骨

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    私立探偵として自立する女性・コーデリア。自分と重ねて読んだ。

    「女には向かない職業」も大好きだけどこっちも大好き。コーデリアの潔癖、清純、無垢なイメージは、決して弱々しいものではなくて、凛として背筋を伸ばしながら悪に立ち向かう美しさを感じる。

    犬猫探しみたいな小さな仕事ばかりで、お金もそんなになくても、世間の評価に左右されず自分で下した決断を信じる美しさ。

    とても良かった。

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    2020年01月03日
  • 高慢と偏見、そして殺人

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    「高慢と偏見、そして殺人」は、Jオースティンの「高慢と偏見(Pride and Prejudice)」のその後を描いた作品。私は原作の「高慢と偏見」が大好き、「高慢と偏見」に出てくるキャラクターも大好き。「高慢と偏見」のファンにはとても楽しめる作品。「高慢と偏見」関連の作品といえば、「高慢と偏見とゾンビ」も楽しかったけれど、「高慢と偏見、そして殺人」はまた違った楽しさがあります。「高慢と偏見とゾンビ」は映画化されてヒットしたけれど、「高慢と偏見、そして殺人」も映像化・ドラマ化されているみたいで、そちらも見てみたい。

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    2017年11月23日
  • 女には向かない職業

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    題名からしてずるい。「女には向かない職業」はなにを想起させるだろう。二項対立で考えるなら、少なくともP.D.ジェイムズには「女に向く職業」が思い浮かぶということだ。ビジネスパートナーの突発的な死によって、コーデリア・グレイは22才の若さで私立探偵として自立を決意する。その直後、名士の息子が自殺した理由を調査するよう依頼される。コーデリアは地べたを這うように調査を進めるのだが、その様子を「可憐」と口走らせることがP.D.ジェイムズの狙いだろう。「こういう女の子が好きなんでしょ?」とほくそ笑むのが透けて見える。青春小説でもある。コーデリアは特殊な青年期を過ごす設定になっている。父親はヒッピーのごと

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    2012年07月04日
  • 皮膚の下の頭蓋骨

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    P・D・ジェイムズに決定的にハマったきっかけがこれ。前作「女には向かない職業」もいい作品だけど、これはさらに読み応えがあって読後の満足感もアップ。それにしてもすごいラストだよなぁ……。

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    2009年10月04日
  • 女には向かない職業

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    ネタバレ

    コーデリア・グレイは駆け出しの私立探偵。共同経営者がある朝オフィスで自殺し、持ち込まれた事件を自分一人で対処することになる。はじめての依頼は高名な微生物学者からのもので、息子の自殺の動機を調べること。亡きパートナーの教えを頼りに調査を始めたが、不審な事実が次第に明らかになり…。登場人物表の2番目に書かれている人(おそらく重要人物)が、いきなり1ページ目から亡きものとなってるところに思わずうなった。うーん、つかみが巧い。ケンブリッジを舞台とした事細かな描写…キングズ・カレッジ・チャペル、書店、ポークパイ、ケム河でのパンティング、自転車向きの田舎道…なども個人的にツボ♪主人公コーデリアは若さあふれ

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    2022年08月12日
  • 神学校の死

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    貸してくれた人はやたら期待値を下げようとしていて、どれほどつまんないんだろうと思って読んだら、ふつうに面白いじゃん。これが初なので今までの雰囲気とかわかんないけど、ダルグリッシュのキャラが相当いい感じ。面白いのは最後にアクションシーンがあるところ。観客を楽しませるためだけにアクションシーンで終わる映画みたいな妙なサービス精神が面白い。それまでオーソドックスなミステリで、距離感がずーっと保たれているところが上品。ただ、これ面白いって言われて読んでたら、たぶん多少評価下がっている。やっぱり前半が長いよ、これ。でも、ダルグリッシュのキャラは相当好き。でも最初に読むのが、彼に久しぶりの恋が始まりそうな

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    2009年10月04日
  • 神学校の死

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    警視にして詩人 ダルグリッシュシリーズのなかで最高だと思っています。「どんな男の人がタイプ?」ときかれたら これからは迷わず「ダルグリッシュ警視のような。」と言います。これからは。2002年発行。いきなりこれを読むのでなく「女に向かない職業」から楽しんでほしい。

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    2009年10月04日
  • 女には向かない職業

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    古典ミステリーを読むシリーズ。女探偵コーデリア・グレイが主人公。最後にグレイのピュアさ故に不合理な行動をしてしまうのが、彼女の魅力になってるのかなとは思いました。謎がどうというより、グレイの心の動きを楽しんで読みました。

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    2025年12月06日
  • 女には向かない職業

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    ネタバレ

    某名探偵漫画の主要キャラクターの由来と知り、ミーハー心で読み始めました。
    キャラクター造形にコーデリアの容貌、性格もかなり参考にされていると感じます。
    古典イギリスミステリーが好きなので、訳も特段古く感じず、時代背景含めてとても楽しめました。

    一度も生きて登場しない仕事上のパートナーから受け継いだもの(物質的•精神的に)が最後まで物語の基軸となっており、この事件を通じてコーデリアがひとつのステップを登ることができたと感じました。読み終えて、主人公の精神面での回復•成長を見守ったような感慨があります。
    続編も読んでみます。

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    2024年07月31日
  • 皮膚の下の頭蓋骨

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    ネタバレ

    コーデリア・グレイもの。全二作の二作目。『女には向かない職業』でひたむきな新米女探偵ぶりをドキドキしながら見守ったあとの二作目は孤島もの。
    前作から今作までにコーデリアはパートタイムで人を雇ったり、迷い猫探しをしたり。経営は厳しく、それでも1人で探偵事務所をやりくりしている。
    そんなところに持ち込まれた依頼が死を仄めかす脅迫状に怯える女優の身辺警護。コーデリアは古典劇が開かれる不気味な伝説のある孤島へ渡り、そこで女優は惨殺される…

    80年代を舞台にしているとはとても思えないというか、舞台も事件もまさに黄金時代の趣。不気味な小道具、なにを考えてるかわからない使用人たち、聖書やシェイクスピアやら

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    2024年03月21日
  • 皮膚の下の頭蓋骨

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    ネタバレ

    真ん中くらいまでコーデリアちゃんも登場人物の1人くらいの扱いでどうなるのかハラハラしていたら、後半は活躍してくれてよかった。今作もおしゃれでアンティークな雰囲気がよかった。シェイクスピアを始めとした古典や聖書を理解しているとより楽しめるんだろうなぁ。登場人物1人1人のキャラがしっかりしていたので途中までコーデリアちゃんが全然出てこなくても面白かった。
    結末は全然想像できない展開で衝撃。ストレスがやばかった。今回もなんやかんや最後にはダルグリッシュさんが出てきて助けてくれたりするのかな、と思っていたら全然だったというのも残念というか悔しい。まあそんなに上手い話もないんだろうけど。
    ミステリーだけ

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    2023年08月09日
  • 女には向かない職業

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    描写が細かくのめり込むように読めた。一昔前のイギリスの雰囲気がおしゃれでよかった。
    コーデリアちゃんの幸が薄いけど逞しいところが好き。
    もっと活躍が見たいので『皮膚の下の頭蓋骨』も読みたい。

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    2023年07月07日
  • 女には向かない職業

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    1972年、イギリスの女性作家による作品であることを知ってから読むとより面白いかも。重厚な表現と作品当時の時代感が楽しかった。

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    2023年06月06日