P・D・ジェイムズのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレこの世には人を愛せないかもしくはものすごく薄くでしか愛せない人間がいるのだということが、メッセージとしてすごく心に残った。エヴリンの父親やカレンダー卿のような人物。
そしてコーデリアの父親も子どもを愛せなかったと仄めかしている。
その上で
208ページ
「でもだからってその父親の罪ではありません。人間は誰かを好きになりたいからと言って好きになれるものではありませんもの。」
それはコーデリアが自分を納得させてきた言葉なのだろう。
自分に言い聞かせるように、放ったように思える。
この本の中でコーデリアの両親の記述は少ない。
けれど彼女が乗り越えてきたのだなとわかる。
そこに励まされる。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ20代で探偵事務所を背負って立つことになったコーデリアの、心の機微や葛藤が丁寧に描かれる。
事件の謎よりそちらに重点が置かれているようにも思う。
大きな事件を経験し、今後も悪との闘いが予期される終わり方の中、自分が価値と信じる良識を胸に、堅実に日々の仕事を積み上げていこうとする姿勢がいじらしく、「頑張ったね!ずーっと応援してるからね!」と抱きしめたくなる。
作者は逝去しているようなので、こちらはコーデリア•グレイ2作目にして、最後の作品。
これから30.40.50代と年齢を重ねたコーデリアはどう変化していくのだろう。いつか引退し、茶目っ気を身につけて幸せに暮らすおばあちゃんになっているといい -
Posted by ブクログ
母校が開催した公開講座「オースティンの世界」で紹介された本。
原題[Death Comes to Pemberley(死がペンバリー館にやって来る)]よりも断然良い邦題だと思います。
多少原作とは登場人物達の雰囲気が違うような気もしましたが、それは作者が違うからなのか、あれから六年経って彼らが成長したからなのか。
まあ、些細な違和です。
そしてミステリとしては…やられました。
とりあえず「こいつが怪しい」と目をつけていた人物がいたのですが、違いました。
貴族としての面子を保たなければならなかったり、家族を守らなければならなかったり、自分の都合を押し通したかったりといろいろな思惑が絡み合い -
Posted by ブクログ
ネタバレ最後の解説で全てがしっくり来た。解説ってのは何かこう解釈の強要な気がしてよくないもののように感じがちだ。自分の感受性が解説を読んだ時点でどこかに行ってしまうような。でも僕は最後の解説って結構好き。コーデリア・グレイのシリーズの作風ってもんをきっちり形作ってくれる。これでこそ僕は「ここが好きだからこのシリーズが好き」も胸を張って言えるというもの。多分自分で考えてるだけだと「それってただの良いとこみっけだろ?」って水を差してくる嫌な自分がいるからだろう。解説はそんな嫌な僕に「そんなことないよ。胸を張って『ここが好き!』って言って良いんだよ!」って背中を押してくれるものなんだろうなぁ。
殺人と顔 -
Posted by ブクログ
ネタバレ初めてのP・D・ジェイムズ。とっつきづらいイメージに反してリーダビリティが高く、読みやすいじゃん!と思ったけれど、解説によればこの作品が例外的に読みやすいらしい。
共同経営者を自殺でなくしたばかりの女主人公コーデリアが、自殺とみなされた青年の死の原因をひたむきに探る物語。年若い女探偵ものらしくスリリングなピンチもあり、真相を探るべくひたむきに頑張るいじらしさに胸打たれ、そして後半に至る怒涛の展開、最終盤のある意味でのどんでん返しには驚いた。本当に面白かった。ダルグリッシュ警視ものを他にも読んでみたいけれど、なかなか難易度が高そうだなぁ -
Posted by ブクログ
学生の頃に自分で作ったランキングの上位にあるが内容を覚えてない本が意外と多い。これもその一冊だがまったくの初読のように楽しめた。まだ女性私立探偵が女性らしく描かれなかった時代に書かれた男社会の中で抗う22歳の私立探偵コーデリア。自殺した息子の動機を調べてくれと依頼される。この話は二重構造になっていて、事件を解決するコーデリアの推理譚の一方で、自殺した元パートナーの元上司でラスト数ページで現れたダルグリッシュ警視が倒叙ミステリのようにコーデリアの秘密を追い詰めていく。だが決して敵対的ではない。ダルグリッシュはコーデリアに目を細める。若いコーデリアの成長と今後を期待させる、PDジェイムスらしからぬ
-
Posted by ブクログ
題名からしてずるい。「女には向かない職業」はなにを想起させるだろう。二項対立で考えるなら、少なくともP.D.ジェイムズには「女に向く職業」が思い浮かぶということだ。ビジネスパートナーの突発的な死によって、コーデリア・グレイは22才の若さで私立探偵として自立を決意する。その直後、名士の息子が自殺した理由を調査するよう依頼される。コーデリアは地べたを這うように調査を進めるのだが、その様子を「可憐」と口走らせることがP.D.ジェイムズの狙いだろう。「こういう女の子が好きなんでしょ?」とほくそ笑むのが透けて見える。青春小説でもある。コーデリアは特殊な青年期を過ごす設定になっている。父親はヒッピーのごと
-
Posted by ブクログ
ネタバレコーデリア・グレイは駆け出しの私立探偵。共同経営者がある朝オフィスで自殺し、持ち込まれた事件を自分一人で対処することになる。はじめての依頼は高名な微生物学者からのもので、息子の自殺の動機を調べること。亡きパートナーの教えを頼りに調査を始めたが、不審な事実が次第に明らかになり…。登場人物表の2番目に書かれている人(おそらく重要人物)が、いきなり1ページ目から亡きものとなってるところに思わずうなった。うーん、つかみが巧い。ケンブリッジを舞台とした事細かな描写…キングズ・カレッジ・チャペル、書店、ポークパイ、ケム河でのパンティング、自転車向きの田舎道…なども個人的にツボ♪主人公コーデリアは若さあふれ
-
Posted by ブクログ
貸してくれた人はやたら期待値を下げようとしていて、どれほどつまんないんだろうと思って読んだら、ふつうに面白いじゃん。これが初なので今までの雰囲気とかわかんないけど、ダルグリッシュのキャラが相当いい感じ。面白いのは最後にアクションシーンがあるところ。観客を楽しませるためだけにアクションシーンで終わる映画みたいな妙なサービス精神が面白い。それまでオーソドックスなミステリで、距離感がずーっと保たれているところが上品。ただ、これ面白いって言われて読んでたら、たぶん多少評価下がっている。やっぱり前半が長いよ、これ。でも、ダルグリッシュのキャラは相当好き。でも最初に読むのが、彼に久しぶりの恋が始まりそうな
-
Posted by ブクログ
ネタバレコーデリア・グレイもの。全二作の二作目。『女には向かない職業』でひたむきな新米女探偵ぶりをドキドキしながら見守ったあとの二作目は孤島もの。
前作から今作までにコーデリアはパートタイムで人を雇ったり、迷い猫探しをしたり。経営は厳しく、それでも1人で探偵事務所をやりくりしている。
そんなところに持ち込まれた依頼が死を仄めかす脅迫状に怯える女優の身辺警護。コーデリアは古典劇が開かれる不気味な伝説のある孤島へ渡り、そこで女優は惨殺される…
80年代を舞台にしているとはとても思えないというか、舞台も事件もまさに黄金時代の趣。不気味な小道具、なにを考えてるかわからない使用人たち、聖書やシェイクスピアやら -
Posted by ブクログ
ネタバレ真ん中くらいまでコーデリアちゃんも登場人物の1人くらいの扱いでどうなるのかハラハラしていたら、後半は活躍してくれてよかった。今作もおしゃれでアンティークな雰囲気がよかった。シェイクスピアを始めとした古典や聖書を理解しているとより楽しめるんだろうなぁ。登場人物1人1人のキャラがしっかりしていたので途中までコーデリアちゃんが全然出てこなくても面白かった。
結末は全然想像できない展開で衝撃。ストレスがやばかった。今回もなんやかんや最後にはダルグリッシュさんが出てきて助けてくれたりするのかな、と思っていたら全然だったというのも残念というか悔しい。まあそんなに上手い話もないんだろうけど。
ミステリーだけ