藤沢令夫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『我々を支配しみちびく二つの種類の力があり、一つは、生まれながらに備わっている快楽への欲望、もう一つは、最善のものを目指す後天的な分別の心で、分別の心が我々を理性の声によって最善のもののほうへとみちびいて、勝利を得るときには、この勝利に「節制」という名があたえられ、これに対して、欲望が我々を盲目的に快楽のほうへとひきよせて、我々の中において支配権をにぎるときは、この支配に「放縦」という名が与えられる。』
上に記した説はその後ソクラテスによって覆されることになるのだが、その覆すために用いたミュートス(物語)が、神という世界を前提に置き、その存在の根拠が語られえないことから、ご都合的な説にしか思えない。そして、そういったソクラテス(の名を借りたプラトン)の創出したミュートスがいかに優れたものだとて、そこから、恋がもっとも崇高なものであるという結論を導き出すのは納得できない。確かに、狂乱が総て忌避すべきものだとは僕も考えないが。
しかしながら、全体的には大変良い読み物だった。
ソクラテスが、なぜ自分の書き物を何も残していないのかということが良くわかった。