ジャック・ケッチャムのレビュー一覧
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ジャック・ケッチャム『残り火 ジャック・ケッチャム短篇傑作集2』扶桑社ミステリー。
2018年に亡くなったジャック・ケッチャムの短篇傑作集の第2弾。中短篇小説17篇を収録。表題作の『残り火』だけが中篇で、他は全て短篇である。
第1弾を読み、ケッチャムは短篇よりも長篇の方が面白いと思ったのだが、本作を読んでから考えが変わった。短篇もなかなか良いではないか。
世界は不条理という理屈に支配され、誰もが報われない人生をただ過ごすのみ。ケッチャムはいずれの短篇でも人間の幸福の一欠片も描いたいない。それこそが、嘘偽りの無い本当の人生なのかも知れない。
『エンドゲーム』。あの『オフシーズン』シリーズの最終作らしい。食人族の一家がついに最後を迎えるのだが、最後は本当に呆気ない。
『ライフル』。言いしれぬ恐怖を感じる短篇。最初の『エンドゲーム』では肩透かしを食らったが、この短篇は最初から最後までが本当に凄いと思った。母親が10歳の息子が隠し持っていたライフルを見付ける。ライフルには実弾が実装されていたのだが、母親は使われなくなった地下貯蔵室でさらにおぞましいものを目にする。
『幽霊ストリッパー』。ホラー短篇。元古本屋の店をバーにした男は青いオウムのサムを店の看板にしていたが、女子大生のストリッパーを雇い始めてから店は繁盛していく。そんな中、ストリッパーの1人が何か得体の知れないものの視線を感じると言い出す。
『父と息子』。迫り来る死への恐怖を描いた短篇。夜中にバスルームに入った年老いた父親は130キロもある息子がバスルームのドアの前で倒れ、バスルームに閉じ込められてしまう。
『商売』。なかなかブラックな短篇である。成功して大金持ちになった兄の商売を横取りするために殺し屋を雇った弟に待ち受けていたのは。
『教訓』。世の中は正と負のバランスの中にある。良いこともあれば、悪いこともあり、勝ち逃げは出来ないのだ。愛する妻と遅ればせながらハネムーンに出掛けた夫は旅先で財布を落として落胆するのだが、ホテルに戻るとメッセージが添えられ、財布が届いていた。奇跡はそれだけではなく、友人と飲みに出掛けて父親の形見の指輪を無くすのだが、それも誰かがメッセージを添えて届けてくれた。しかし、28年もの間、連れ添った妻が買物に行った酒屋で強盗に射殺される。酒屋のレジにはあの見慣れたメッセージがあった。
『日曜日』。人生に於いて人格や習慣がガラリと変わる時がある。読めば読むほどに残酷な物語である。リスをライフルで撃ち、シチューにして食べることを普通にしていた父親と子どもたち。ある日、父親は木から落ちて怪我をしたリスを手当てして、子どもに与える。リスに名前を付けて可愛がる子どもたち。
『ふたご』。偶然に父親の最後を目撃したことから双子の姉と弟は近親相姦という地獄に堕ち、母親は宗教に光を見出そうとする。どこまでも幸せというゴールには辿り着けない悲しい双子の姉と弟の人生の物語。
『ドジ女のサンディエゴ大虐殺』。タイトル通り、ドジな女がやはりドジな友人女性とあの手この手で夫を殺害しようとする話。ブラックなコメディのような展開が連続する。
『怪物』。ケッチャムはどんな怪物を描くのかと期待したのだが、怪物らしい怪物は登場しない。旅行ライターの主人公がニューヨークで出会った人懐っこい犬とギリシャで出会った盲目の攻撃的な黒犬と母親の飼っている年老いた犬の話。
『そのロックポートじゃ天国に行けない』。不穏なものを感じさせるラスト。ニューヨークの余り流行っていないバーに子供を連れた男が来店する。バーテンダーは男にワインを勧め、ひとしきり飲んだ後、男は子供と店を出る。バーテンダーは男の様子からその背後にある真実を知る。
『勇敢な女の子』。物事の全てには裏がある。二律背反は常に同居しているのだ。4歳の女の子が911に母親が風呂場で転倒して、大怪我をしたことを伝える。そればかりか、母親の命を救おうとバスタブの栓を抜き、溺死を未然に防いでいた。
『オールディーズ』。最初は一体何の話か解らなかったが、読み進むうちに施設に入っていた認知症の高齢女性を娘が自宅に連れて帰るのだが、高齢女性は様々なことが思い出せず、苦悩するというストーリーであることを知る。過去のこと、耳にした曲のタイトルが思い出せないという恐怖。
『西部の死者たち』。ゾンビ物のホラー。
『鼠の変身』。ケッチャムのデビュー前に書かれた未刊行の童話らしい。恐ろしくつまらない。
『残り火』。ケッチャム唯一の未訳の中篇らしい。セックス好きの女を主人公にした歪んだ恋愛小説みたいな感じでケッチャムらしくない。恋人に一方的に別れを告げられた女が、探偵事務所を使って高校時代の恋人と25年ぶりの再会を果たす。
『ヘンリー・ミラーとあのひと押し』。意外にもケッチャムはヘンリー・ミラーと交流があったようだ。ヘンリー・ミラーは『南回帰線』の、あの作家のヘンリー・ミラーである。しかも、この短篇はケッチャムにしては珍しいエッセイだった。
定価1,540円
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舞台は1981年、避暑地デッドリバーに一軒家を購入したカーラは親友を招いて過ごそうとしていた
そんなデッドリバーの海岸に大怪我の女性が打ち上がる
「いきなり野生児のような子供達に襲われて逃げる為に崖から飛び降りた」
警察は以前にも似た証言があったことを思い出し、最近起こっている行方不明事件と関係あるのではと捜索を始める
一方カーラを含めた男女6人が別荘に揃った
惨劇が始まる
Sキングが絶賛らしいグロホラー。何か映画のシナリオを読んでるのかと思うほど舞台や人物配置がソレっぽかった。あまりホラーを読んできていないのでこれがどの程度の完成度、ホラーとしての充実度なのかはわからないがとりあえず
こ わ か っ た
激痛シーン等も出てくるが何よりこの本のホラー要素が何なのか、に最大のポイントがある。それが何かわかってしまうとやや減点な気がするのでそこに触れられない。
ただ本としての話なのだけど訳が………
「ナイフがいったん下げられ、ふたたび振り上げられた」
↑の文章に耐えられるのなら面白いと思う
僕は若干イラッとしたが…山田さん程じゃないけれど笑
あと序文、読み飛ばしたほうがいいです。 -
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食人族の恐怖を描いた『オフ・シーズン』『襲撃者の夜』に続く続編的な内容。
ハンティングに出かけた弁護士のクリスが半裸の女(ザ・ウーマン=食人族)を見つけ、自宅の倉庫に手足を拘束して監禁。自分の家族も巻き込んで、ウーマンを家畜のように飼育し始める。レイプはするわ、暴力は振るうわ、やりたい放題だったが、もちろんウーマンの反撃を食らうことになり…。
3作目にして初めて、食人族に肩入れしてしまった。それほど、クリスと息子のゲスでクズっぶりが酷かった。
後日談を描いた「カウ」も収録。こちらの結末はおぞましいの一言。こんな状況になったら、男としての自信、いや人間としての尊厳を失いますね。 -
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ネタバレジャック・ケッチャム著、金子浩訳、『地下室の箱』のレビューです。
むかし読んだ『隣の家の少女』よりもマイルドな(といっても普通にエグい)内容でした。
被害者は40代前半の美しい女性、サラ・フォスター。不倫相手との子供を堕ろそうと病院に向かっている途中に拉致されます。
モデルというか着想を得た事件があるようで、「箱」が特徴的に使われます。
しかし、原題はRight To Lifeみたいですが、邦訳タイトルは何とかならなかったのでしょうかね。
―サラが徐々に壊れていくさまを想像した。時間がかかるのはわかっていたが、だからこそやりがいがあるのだった。なぜなら、いちばんおもしろいのは壊れるまでの過程だからだ。抵抗の意思がなくなれば、家畜と―牛と同然になってしまう。
―そして赤ちゃんが蹴ったのを感じた。 -
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家族や人間の繋がりを奇怪な世界観で描く! ホラーの巨匠、ジャック・ケッチャムの短篇集 #冬の子
■きっと読みたくなるレビュー
ホラー作家、ジャック・ケッチャムの短編集です。恐怖で震えあがるって作品というより、じわっと心に沁み広がっていくような作品ばかり。
奇怪な世界観を背景にはしているものの、描かれているのは家族や人間の繋がり。全部で19編、読みやすく日本人好みのお話でバラエティに富んでます。余韻深くジーンとする作品もあれば、切れ味が鋭くスパっと突き放される作品もある。きっと最後まで読み飽きずに楽しめると思いますよ!
■おすすめ作品
○冬の子
山奥の村、父と二人暮らしの僕、ある日見知らぬ女の子を引き取ることになり…
これ最後はどうなるの? と思ってたら、しっかりと禍々しさを提示されます。少年と少女の距離感にソワソワしちゃうし、心情が綿密に描かれていて好き。
○箱
電車で隣に座った男が箱を持っていた、気になった少年は見せてくれとお願いする。しかし少年はその箱を覗いてから、まったく食事ができなくなってしまう…
なんとなくフランツカフカの断食芸人を思い出してしまった。意味が分からないうちに絶望の沼に引きずり込まれるという恐怖、こわっ
○オリヴィア独白
ある女性の体験、キャンプでの出来事。切れ味鋭い作品。
人間の本質をまざまざと見せつけられる作品。腹立たしいというより、虚しさしかない。
○聞いてくれ
男と娼婦らしき女性との会話。
つい興味深くなっちゃうシーンから、その後の変化の角度がエグイ。醜い人間の欲望がまっすぐに伝わってきます。
○暴虐
タイトル通りの話、家族ってなんだ…
読み進めるうちに絶望感が迫り来る、ラストの意味はよく考えたい。
○三十人の集い
スランプ中の作家の話、ファンと思しき人からイベントにお誘いの連絡があり…
現代っぽいホラー、なんかホントにありそうな話。後半の展開、むりやりな発想力に感服。いかに人間は自分勝手なのかがよくわかる。
○蛇
訴訟の争いになりそうで疲労困憊の女性、さらに苦手な蛇と対峙することになり…
明確な敵と相対することで覚醒した彼女、ちょっとカッコイイ。終盤の力強さが読みどころですね。
■ぜっさん推しポイント
私が一番刺さった作品は『母と娘』です。レストランを営む一家の物語で、冒頭ピアニストだった父が失踪してしまうシーンから始まる。父が居なくなることで残された家族が少しずつ歪み始めるのです。
家族愛とその裏側の描写を洞察力ある筆致で描いていて、すっかりと物語に引き込まれてしまいました。こんな短いお話にも関わらず、ある一家の悲劇をまるっと体験できるという恐ろしい作品でした。 -
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ゾクっとするホラーではない。
非現実的というわけではなく、日常の延長にありそうな、ちょっと嫌な感じ。
とくに好きだったのは、最後の「炎の舞」。
森の中でいろいろな動物たちが弱肉強食の摂理に反し、焚き火を囲んで輪になって踊っている。
恐怖を抱いた男たちが銃に弾を装填するけれど、子どもと女たちが輪に加わって踊り出す。
やがて、男たちも諦めたように輪に加わる。
原始の人間がそうしたように。
動物たちは、火を受け入れ、互いを受け入れ、踊る。
新たな自然の始まり。
人間が特別だった自然の終わり。
これが、平和な王国なんだと、はっきり言えない。
ここからどんな自然が始まるのか。
火の破壊性になぐさみを感じている、と表現されていることからも、少し不穏な予感もする。
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Posted by ブクログ
嫌悪感、不快感、胸くそ悪さ、吐き気を欲しければケッチャムを読むべし!
メグとスーザン姉妹は両親を交通事故で亡くし、三人の息子を女手ひとつで育てているルースに引き取られる
両親を亡くした姉妹はそこで心の傷を癒やし幸せな生活を送る、、、
はずがあるかーい!!!
だって、この物語を書いているのはケッチャムですよ!
ケッチャムがそんな心温まる話を書くはずがあるかい!
なぜ!?なぜ!?なぜーーーーっ!?
メグが一体何をしたの!?
なぜこうなるの!?
可哀そう、、、
耐えられない、、、
とかいうレベルの話でないです
監禁、虐待、暴行のオンパレード
少女の身も心もボロボロになっていく描写に私のピュアな心も崩壊
耐えられないけれど、このぞくぞくさせられる感覚にページをめくる手も止められない
オレやべぇーかも、、、
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Posted by ブクログ
ネタバレお勧めされて読んだ本。
非常に後味が悪く、生理的嫌悪と恐怖に顔を顰めつつも、一気に読んでしまった。
アメリカの片田舎の平和な日常の描写から始まった物語は徐々に不穏さが滲み出ていき、「誰にも言ってはならない」というキーワードをもとに際限なくエスカレートしていく。
暴走した列車のようにどこまでも行き着くところまで行ってしまった恐怖と、ヤンチャだが気のいい仲間だと信じていた仲間たちが止まらない怪物だったときの絶望、傍観者として一部始終を眺めたデイヴィッドに対する嫌悪と憐憫。
残虐で後味の悪い作品だが、臨場感がすごく非常に読ませる力のある作品だった。 -
Posted by ブクログ
一部で非常に有名な本作。文庫で400ページほどありますが、悪いことにすらすら読めてしまう。
語り手であるデイヴィッドが「いったいぜんたい、わたしはいつ堕落したのだろう?」と言った瞬間、最初っからだよ!と悪態をつきたくなるくらいには登場人物みんな嫌いになること請け合い。終盤あたりに「ママはこのごろ、ちょっとおかしいんだ」とドニーが言ったときなどどうしてやろうかと思いました。酷い描写は勿論、些細な会話も胸糞具合が秀逸です。
そして訳者あとがき。「読者が共感できる人物」としてメグ、スーザン、デイヴィッド!の名前を出し「善が悪に必死の対抗を試みる」と。
胸糞界隈では、あんなことをして最高にぞくぞくし、思わずにやけそうになった人間も善の分類なのでしょうか。