チママンダ・ンゴズィ・アディーチェのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
上手く口には出せない思い。表に出ることのない感情。そうしたものを可視化して、たくさんの人に伝えることが出来るのが、小説や文学の強みかな、と思います。
そして、その強みを存分に発揮している作家の一人が、このチママンダ・ンゴズィ・アディーチェ。彼女の描く”ナイジェリア人”から見たアメリカの姿は、社会や文化、そして生活に埋め込めまれ、意識されることすらなくなっているかもしれない、偏見や差別、アメリカに住むアフリカ系の人々の苦悩を映し出します。
上巻で主に描かれるのは、イフェメルというナイジェリア出身の女性。主に彼女が留学するまで、そして留学後のアメリカでの生活が描かれます。
希望を抱いてアメリ -
Posted by ブクログ
とても短く、シンプルで読みやすい1冊
(もともとTEDでのスピーチ?トーク?であったものに
加筆したとのことで、本を読んでいるというより
講演会などで話を聞いているようなわかりやすさもある)
母ひとりに育てられ、
フルタイムで懸命に働いても
同等の仕事をしても
同じだけのお給料や肩書きを与えられることがなかった
女性を身近で見てきたし、
それが自身の学習環境にも影響した私にとって、
ジェンダーはとても大切な社会問題だし、
リアルにさまざまなことを感じている。
それでも私は男嫌いではないし、
友人には男性も女性も同じくらいいる。
性別では分けられない立場にある人も。
それは私が友人を選ぶこと -
Posted by ブクログ
赤、黒、緑の3色の真ん中に半分のぼった黄色い太陽の図柄。
これは、1967-70年に存在したビアフラ共和国の国旗である。
あるクーデターから端を発し、イボ人に対する虐殺などが度々起こった結果、イボ人は結束して、「ビアフラ」として、ナイジェリアからの独立を宣言した。
しかし、彼らの持つ石油を連邦政府が手放すわけはなく、戦争へと突入していく。
この1960年代前半〜後半にかけての物語が3人の視点で語られる。
田舎から、スッカという大学町にハウスボーイとしてやってきた少年、ウグウ。
彼のご主人、オデニボは若き数学者で、毎週末には同僚たちが彼の家に集まりサロンのようになる。
オデニボの恋人 -
Posted by ブクログ
1960年代のナイジェリア内乱を舞台にした作品。
恥ずかしながらナイジェリアのことをほとんど知らないまま読んだけど、主人公のひとり・ウグウはまさに何も知らない田舎育ちの少年で、彼の目を通して語られる描写ですんなりと作品に入っていける。
作中で白人は黒人を差別しているけど、黒人も白人を差別しており、黒人の中でもまた民族差別がある。民族差別こそが内乱の一因。
戦争が進むにつれ、リベラルなインテリだったはずのウグウの主人・オデニボでさえ差別的な発言をする場面があり、衝撃だったが、長引く戦争で登場人物たちの精神状態が少しずつ少しずつおかしくなっていくのがよくわかった。
日本の戦争文学を読んでもいつ -
Posted by ブクログ
冬休みに読むのを楽しみにしてた本。お腹の膨れた子どもたちのイメージを世界に流通させた1960年代のビアフラ戦争を背景に、2組のカップルとひとりの少年の、約10年にわたる関係を描く。
ウグウがやがて綴ることになる本のタイトル「私たちが死んだとき世界は沈黙していた」が示すように、作家は、戦争を引き起こし支えた、国際社会の植民地主義と人種主義、民族ナショナリズム、権力者の腐敗、虐殺の対象となったイボ人の側にもあった疑心や差別、暴力に対する鋭い批判と怒りを抱いているが、それは慎重に抑制されて、5人の間の愛憎に焦点をあてた繊細な物語を支える力強い基盤となっている。
5人の中でもっとも魅力的な人物は、皮肉 -
-
Posted by ブクログ
アディーチェのデビュー作。カトリック教徒の父親の厳しいしつけと懲罰。宗教的不寛容さは自身の父親にまで徹底している。家庭内の暴力には目を覆いたくなるほどだが、社会的貢献や寄付は成功者に相応しく義務を果たし、政治には改革的だ。ナイジェリアと西欧の宗教・文化が入り混じった複雑な社会が見えてくる。作者の故郷のエヌグにも一度行ってみたいが難しいだろうな。タイトルのパープルハイビスカスは新種で、自由な思想の象徴になっている。
訳者あとがきを読み、アディーチェのTEDでのジェンダー・フェミニストについての講演をYouTubeでみた。誰もが居心地のいい話題ではないかもしれないテーマを、軽快に、わかりやすく話 -
-
-
-
Posted by ブクログ
凝り固まったステレオタイプな印象と、差別と意識していない差別こそが、多様性の時代に潜む本質的な問題なのではないかと考えさせられる短編集。
ナイジェリア出身の主人公たちが外国(主にアメリカ)との文化の差や、経済的な格差、ナイジェリア出身であるというアイデンティティに直面する物語を数話読んだだけで、豊かな国に生まれた人々の多くが自身でも知らないうちに、自分の中に「無意識の差別」を育んでいるのだと感じてしまいました。
差別というのは肌の色や宗教の違いを理由に人を迫害するような行為だけを指すのでなく、自分の中の常識に無い、相手にとっての常識に敬意を払わないことで生じる現象を指すのかもしれません。 -
Posted by ブクログ
どなたかの本棚にあったので読み始めたのだと思います。最初はほんとに何気なくのつもりで。
ナイジェリアの作家さんなんてもちろん初めてです。
短編が12,3ほど収められているのですが、どれをとってもナイジェリアで生まれた女性たちがどういう一生を送るのかというのがテーマだと思います。ちなみにナイジェリアという国家は多民族で、よくでてくるスッカという大学街はアブジャ州内にあり日本政府の危険情報でもレベル3;渡航は止めてくださいレベルでした。私達が簡単に行ける国ではなさそうです。
ナイジェリアをでてアメリカへ渡る、キラキラした上位国アメリカに媚びるように生活するナイジェリア男性の3歩うしろで夫を敬い -
Posted by ブクログ
フェミニストをテロリストと同じようなニュアンスで扱う男性を何人か知っている。そしてその話題には触れまいとする女性が多くいるのも知っているし、私自身今でもそのように振る舞ってしまう場面がある。
自分のことはフェミニストだと思ってはいるし、未来の女性のために声を上げ行動したいという意思はあるのに、どうしても目の前の人によく思われたい、波風を立てたく無いという気持ちを優先してしまう。
男性へ無意識に押し付けている役割(男の子がなぜ親の財布からお金を盗むか、という問題には頭を向けたことすらなかった)も解消していくべきだと思う反面、
妊娠出産を担う女性が、男性と平等に扱われることは根本的に不可能では無 -
Posted by ブクログ
アフリカ(ナイジェリア)に生まれること、黒人であること、女性であること、アメリカに暮らすこと。向けられる眼差しや、違和感。
物語を読んでほんの一時わかったような気になって、実際、一生本当の意味ではわからないままなのだろうなぁ…。
ひりひりとした当事者感情がそこにはあった。
寝る前に『アメリカ大使館』を読んでしまったばっかりに、瞼の裏に鮮烈な赤いヤシ油の色が浮かんで、なかなか寝つけなかった。
表題作での、
「夜になるといつも、なにかが首のまわりに巻きついてきた。ほとんど窒息しそうになって眠りに落ちた。」
というところが印象的だった。初めて海外で暮らし始めた時、似たような気持ちを覚えて -
Posted by ブクログ
★3.5
フェミニストのとっかかりにはわかりやすく15分程で読める本。
ナイジェリア人でフェミニストである著者のTEDスピーチを翻訳したもの。
いかに歴史が(特に祖国ナイジェリア)我々に刷り込みをしてきたか、痛感する。
女性のほうが遺伝子的に料理をするのが得意なのかも?に対しては、ではどうして今トップにいる名だたるシェフは男性が多いの?
と返すし、
女性にまつわる問題提起ではなくむしろジェンダーや人権問題だと言うべきでは?に対しては、
それはその議論をしたくない人の逃げ道。ジェンダーの問題とした瞬間にぼんやりとしてしまう。女性ならではで起きてるおかしなことがたくさんあるのに!
と返す。
-
-