【感想・ネタバレ】なにかが首のまわりにのレビュー

あらすじ

異なる文化に育った男女の心の揺れを瑞々しく描く表題作のほか、文化、歴史、性差のギャップを絶妙な筆致で捉え、世界が注目する天性のストーリーテラーによる12の魅力的物語。

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Posted by ブクログ

それぞれの短編の読後は、スッキリしない。でも、実際、スッキリ物事が完結することなんてないなと気付く。

主人公である女性たちの、繊細な心の動き・機微がジワジワと侵食するように、スッと染み入るように入ってくる。

様々な人間関係、人が入り組む社会、身の回りの近い社会を、価値観の違い、アフリカに対するステレオタイプ、白人、男性、長男、男性、学歴、宗教、部族、教育。
対立させるわけではないけれど、女性の立場、母の立場、妻の立場が弱い。
ナイジェリアの文化、アメリカとナイジェリアを行き来する女性たちの心情を思う。

今のナイジェリアをもっと知ってみたい。
アディーチェの本をもっと読んでみたい。

すごく面白かった。

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2025年08月09日

Posted by ブクログ

久々の翻訳小説。
ナイジェリアの内情、大学時代に授業で聞いたことあったかもなあと思いながら、そのくらい薄ぼんやりした知識しか無いのに、何故か身近に感じる筆致で、この作者の方、天才だなあと思った。

あとがきを読んでみても、天才的にかっこいい方だなという印象。訳者の方も、同じ大学出身なのにこうも違う人生、キャリア、、、と思ってしまう、尊敬。
他の作品も読んでみたい。

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2024年06月20日

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チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ。
アフリカからアメリカに渡って、自己のアイデンティティを見つめる移民文学。アフリカの苦しみを伝えるストーリー。
僕自身が、そんなステレオタイプで彼女の作品を捉えようとしていないかと、自問する。
この短編集は、そんな簡単に括ることはできない。

これまで無知であったナイジェリアに関する出来事を知るきっかけになったが、それ以上に何よりも物語の力に持って行かれた。苦悩を抱えて生きる人の心の震えを描く繊細さと、ナイジェリアの同世代と世界の両方に意識の変容を迫る揺るぎない力強さが、十二の短編に満ちている。
心が苦しくなる幕切れも多いが、一冊読み終わった後にはポジティブな気持ちになってくる。頑固なまでに私らしくあること。彼女のメッセージに背中を押される。
次は長編小説を追いかけたい。

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2023年04月09日

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ネタバレ

彼女のTED Talksが好きで、〈The danger of a single story. 〉と〈We all should be feminists.〉を過去に何度も聴いていたのだけど、最近、友人がおすすめしていたこの本の筆者が彼女だと知って手に取った。

私もシングルストーリーしか知らずにアフリカを思い描いていたことを思い知らされる。

ナイジェリアの人の名前は「ン」から始まるものが多いのかな。そもそも日本語で「ン」から始まる単語はないし、その音を正しく捉えてはいないんだろうな。一体どんな響きなんだろう。

色んな短編があったけど、言葉にならない違和感の奥で、本当の私が死んでいくような感覚を覚えた。そこから個人個人がどう折り合いをつけていくか。



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個人的な話、

デンマークに留学しているとき、「世界一幸福な国の幸福」について散歩しながらペアで話し合う授業があったのだけど、その時に、南アフリカ出身の友人が私に言った言葉を思い出した。

「ここは世界一幸福な国かもしれないけど、私にとっての一番の幸福はこの国では無い。と思ったかな。」「他の国の文化や価値観も知らない現地の人が、色んな国から来たわたし達に、デンマークの幸せを考えさせてるのって、なんだか馬鹿らしくない?笑」「あ。これ秘密ね(笑)」


ナイジェリアの物語を読んでいるのに、南アフリカ出身の子を思い出すのも、これまたアフリカのシングルストーリーかもしれないけど。

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2021年07月28日

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ナイジェリア出身のグローバルレベルの超エリート著者が書いた短編小説集。たくさんの「違い」や「断絶」が多層的に展開される。それぞれの主人公は、染まる方が、もしくは染まっているふりをする方が社会的に有利で楽だろうと思われる価値観に馴染むことのできないがんこさを持っている。もしくはその価値観が自分たちのものと、どれだけどのように違うかを感じる繊細さを持っている。そこに共感するし、魅力を感じる。二項対立とかじゃなくて多様性(ダイバーシティ)の世界の文学。今はみな多様性の中に生きてるので、誰でも何かに引っかかりそう。ナイジェリアとアメリカ、男女とかだけじゃなく、「違い」は多層的。ナイジェリア国内の貧富、教育格差、民族、イボ語と英語、宗教。ナイジェリアと先進国の経済格差、米国と英国、男の子と女の子、世代間格差、本家と分家、帝国主義と植民地、アフリカの中での国と男女、、、etc.
時に居心地の悪さや、どうにもならないあきらめや乾いたせつなさを感じたり、時には快哉を叫んだりや滑稽さを感じることもある。
みんな良い作品で好きだけど、特に、ジャンピング・モンキー・ヒル、何かが首のまわりに、がんこな歴史家 が好きかなぁ。

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2021年03月16日

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ナイジェリアの女性たちを主題にした短編集。表題と同じ短編では、完璧なアメリカ人の恋人(すごくいい人)とのちょっとしたやりとりに、「オレは君と君のバックグラウンドを理解しているしそんな君をそのまま受け入れてるよ」が透けて見えてしまい、違和感とかすかな苛立ちを覚えるあたりにとても共感。どんなに素晴らしい人でも、「わかってる」感を出した途端にちょっとムッとくるよね。彼だってまだ若くて未熟だし、今現在の彼の背景を考えれば、十分過ぎるほど寄り添ってくれてるのに、どうしてもひっかかってしまうのが切ない。全編に渡って、言語化できない思いや感情を、そのままの空気を吸い込むように感じさせる話運びが素晴らしい。最後の一編、部族の女性と孫の物語がパワフルさと希望に溢れていてとても好き。

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2025年11月08日

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ナイジェリアの女性作家の短編集。様々な世代、立場のアフリカ人(イボ人)女性の心理、アメリカとアフリカの対比がわかりやすく描かれているので、現代アフリカ文学の入門としてオススメ。
ストーリーの作り方がうまい。アフリカの人名に慣れていないせいで、出だしは入りにくいけれど、最後は「この先が読みたい」(しかし短編なので終わってしまう)と思う作品が多い。

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2025年06月08日

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ナイジェリアで生まれ育った著者が、男女、民族、貧富、宗教など異なる世界を持つ人が交わるときに生まれるささやかな違和感を穏やかに描いた短編12編。


自分たちの国を民族を文化をまったく理解していない人に人生の舵を取られる屈辱。『象牙製品のようにエキゾチックな戦利品のように品定めされる』感覚。傲慢な西欧化の波にさらわれる戸惑い。

アフリカが辿ってきた歴史を思うととても同列に語ることなんてできないけれど、女性として、アジア人として、少し心当たりのある感覚でもあります。

自分の中にある無知と傲慢について考える機会になりました。出会えてよかった本。
「なにかが首のまわりに」
チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ

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2025年01月21日

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この感想を書いてるのは読んでから1年以上経ってからのことです。
12の短編全てを思い出すことは出来ないので12タイトルは他の方の読書感想からコピペしてきた。
おそらく多くの方のベストは「ジャンピングモンキーヒル」か表題の「なにかが首のまわりに」もしくは「震え」とかでしょうか。
私も読んだ直後はそうだったかも知れない。でも思い出せない。
今は「イミテーション」のあらすじだけが残ってる。
不思議。

セル・ワン
イミテーション
ひそかな経験
ゴースト
先週の月曜日に
ジャンピング・モンキー・ヒル
なにかが首のまわりに
アメリカ大使館
震え
結婚の世話人
明日は遠すぎて
がんこな歴史家

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2024年05月12日

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読んでて私は、異邦人の女の人の話が好きだと思った
国を出た、居場所がない、親しい男、家族になじめない等の、現在の自分のいる場所に違和感を持つ女たち。とても自立しているようで寂しい人。

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2023年11月13日

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アフリカ関係の本は、滝田明日香さん以来。(そうえいばキリマンジャロ登山の本とバッタの本は読んだ!)
滝田さんが繰り広げるエピソードは、私の知らない世界であり、わくわくしながら読んだことを覚えている。

本書の、チママンダさんは、世界的に活動されている。
本の評価が高いことは知っていたけれど、活動拠点はアフリカではなくアメリカ。来日もしていて、松たか子さんが朗読???
なんとも驚くものがある。

アフリカに私は行ったことなく、はっきり言って知らない世界である。
それをいいことにアフリカのイメージが作られてきた感がある。
それを証明するものが、FACTFULNESSのチンパンジーアンケートである。
にしても知らないことが多すぎる。
この本は、マスコミにつくられたものではなく、アフリカの暮しから出てきたもの。アメリカへの移住、査証取得に伴う面接に関する切実な対応・対策については、確かに驚いた。特別な心構えが必要なのである。
出張で同行していた人が(アフリカではありません)、イミグレーションで賄賂を要求されて払っていたけれど、まだまだどこもかしこも腐敗しているのかな。

今回滝田さん、チママンダさんに共通して感じたことは、治安の悪さと、腐敗した警察、根底にある宗教である。バッタの本にも(あまりにも有名な本なので、これだけでわかるひとはわかるとおもう)、信頼していたドライバーに盗まれた話がでてくる。
はやり怖いイメージはあるけれど、どうなんだろう。

ーーー
317頁

『闇の奥』的なイメージのアフリカは、アフリカを反人間としての「他者」と見なすことが可能な場です。つまり、西側諸国の人々がその人間らしさを試す場ということです。

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2023年10月02日

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アメリカーナが面白かったので、こちらも読んでみた。
一つ一つがとても短い話なのに、一話終わるたびに感じる余韻がすごい。本書で描かれている、ナイジェリアとアメリカの空気、それぞれの女性たちの感受性や生きる力などに触れ、視界が開けるように感じた。世界は広い。

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2023年04月02日

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読書の醍醐味、
知らない世界を知る、
そんな作品でした。

自分もアフリカやアメリカの地に居合わせたような
そんな感覚を抱かせるシーンが山ほど。

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2022年08月02日

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セル・ワン
イミテーション
ひそかな経験
ゴースト
先週の月曜日に
ジャンピング・モンキー・ヒル
なにかが首のまわりに
アメリカ大使館
震え
結婚の世話人
明日は遠すぎて
がんこな歴史家

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2022年05月24日

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アフリカ/ナイジェリアのさまざまステレオタイプにまつわる短編集。
人種、ジェンダー、植民地支配の歴史、内戦、宗教/文化、移民などさまざまな観点でストーリーが描かれていてこまめに読みやすい作品。
とても豊かな表現で海外著独特の表現があり、海外図書不慣れな私にとってはやや理解に時間がかかる部分もあったが、地域や時代、文化が異なるなかでも共感できる点があり、面白かった。

個人的には訳者あとがきで著者の背景や活動を知ることでさらに内容を深められた

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2022年03月03日

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アフリカ世界だけど(ナイジェリア)、フェミニズムな内容も含まれている。遠い世界だけど、この屈辱わかる、と共感を覚えることが多い。

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2021年12月26日

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まだ数本しか読んでいないけれどこれまでに読んだことのない感覚の本。
文体も独特だしそこはかとない不安を漂わせたまま終わる物語も。
この一冊だけでなく何冊か読んでみたい著者。

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2020年11月23日

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ナイジェリア出身の作家で、近年では『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』などのスピーチでオピニオンリーダーとしても注目されているチママンダ・ンゴズィ・アディーチェの短編集。

軽やかなユーモアとペーソスを交えながら、描かれているのは人種、歴史、ジェンダーをめぐる問題で、なかなか打ちのめされる迫力です

私のほとんど知らないアフリカの政治的混乱、植民地としての歴史。それゆえの貧困。アメリカに暮らすアフリカ人としての違和感。

「アフリカ」ってひとことで言ってしまってますが、ジャマイカ人だと思われたり、サファリに行ってみたいと言われた経験が作品の中に出てきて、それがひとつの人種差別であることも感じます。

アメリカが求めるアフリカを描くことを強要される『ジャンピング・モンキー・ヒル』の作家たち!

文学を通して知る異国っておもしろい。

彼女の名前チママンダ・ンゴズィ・アディーチェを私は上手に発音できません。
私の名前もアメリカ人には発音しにくいらしく「チャキー」のようになってしまうのですが、少し前に流行った英語で通じる名前を子供につけるという風潮に私は微妙な違和感を感じていました。
英語で発音しやすいこともありますが、ヨーコとかイチローって本人が海外でも存在を確立したらちゃんと名前を覚えてもらえますよね。名前のほうを英語にあわせるのは逆じゃないかと。作品の中にもアメリカ人が発音しやすいようにアフリカ的な名前を変えることに対する奇妙さが書かれています。

名前を変えるのは些細な(!)ことですが、そんなふうに自分の国の料理や風習、言語や宗教を捨てていかなければアメリカで暮らしていけない移民としての視点がすごく新鮮でした。

以下、引用

兄がカルトに入るために必要なものーガッツとか自信のなさーを、もっているとは、どうしても思えなかった。

英国人は人を殺したり物を盗んだりすることを「遠征」とか「平定」という語を使って表現する。何千という仮面が「戦利品」として持ち去られて、世界中の博物館や美術館に展示されているんだ。

われわれはいつだって自分がもっているものをちゃんと評価しない。

BBCラジオから流れる声が、死者と暴動についてー「少数民族間の緊張の背景にある宗教的なもの」と述べるのをチカはあとから聞くことになる。それで彼女はラジオを壁に投げつけ、あれほど多くの死体のことを、わずかなことばに押し込めて、都合の悪い部分は削って無菌化してしまうやり方に、烈しく、燃えるような怒りが全身を駆け抜けるのを感じることになる。

自分の新生活のことはなにもいわずに電話を切った。話している相手に脚がないのに、自分には靴がないなんて不満はいえなかったのだ。

ダンブゾー・マレチェラはすごい、アラン・ペイトンは恩着せがましい、イサク・ディネセンは許せない、という点で意見が一致した。

ジンバブエ人がアチェベって退屈、文体のセンスがないもの、というと、ケニア人が、それは冒涜だ、といってジンバブエ人のワイングラスを取りあげた。すると彼女は笑いながら、もちろんアチェベはえらいえらい、と前言を撤回した。

「お父さんのことを書いてる?」とケニア人が訊ねたので、ウジュンワは断固たる「ノー」を返した。フィクションがセラピーだと考えたことはなかったからだ。タンザニア人がフィクションはすべてセラピーだよ、ある種のセラピーさ、だれがなんといおうと、といった。

アメリカを理解すること、アメリカはギブ・アンド・テイクだと知ること、それがこつだ。諦めることもたくさんあったが、得るものも多かった、と。

人が皿にたくさん食べ物を残し、しわくちゃのドル札を数枚、まるでお供えみたいに、無駄にした食べ物への罪滅ぼしみたいに置いていくことも書きたかった。

お金持ちのアメリカ人は痩せていて、貧しいアメリカ人は太っている

アフリカを過度に好きな白人とアフリカを全然好きじゃない白人はおなじー腰は低いが人を見下す態度をとるからだ。

白人の男女のなかには「すてきなペアだこと」と、いかにも明るく、大声でいう人もいた。まるで自分の偏見のなさを自分自身に納得させようとしてるみたいに。

彼らを見ていて、きみは感謝の気持ちでいっぱいになった。きみを象牙製品のように、エキゾチックな戦利品みたいに品定めしなかったからだ。

血とか縛るとか、信仰心をボクシングの練習みたいにしなくたっていいじゃないの、といってやりたかった。生きるってことは槍を振りかざすサタンとたたかうことじゃなくて自分とたたかうことなんだから、信仰ってのは良心をいつも研ぎ澄ましているかどうかってことなんだから。

一度、彼が不快に思っていることを、わたしが残念ねといったら、彼、叫び出したことがあってね。あなたがそう思っているのが残念だなんて言い方はよせ、独創性に欠けるって。

「どうして人は口では愛してるっていいながら、自分にだけ都合のいいことを人にやらせたがるんだろ?」

ここにはどこか屈辱的なほど、おおっぴらな感じ、どこか品位に欠ける感じがあった。やたらたくさんテーブルがあって、やたらたくさん食べ物がある、このオープンスペースには。

蛇ってのは「エチ・エテカ(明日は遠すぎて)」っていわれているんだ、ひと咬みで十分後にはお陀仏だからね

あの黒いアメリカ女はわたしの息子を縛って自分のポケットに入れてしまったんだ。

人が人を支配するのはよりすぐれているからではなく、より上等な銃をもっているからで、結局、自分の氏族がンワムバの氏族とおなじようにちゃんと軍備を整えていたなら、父親は奴隷人として連行されることなどなかったのだ


「私たちの歴史のなかでビアフラはとても重要な部分です。あの戦争をめぐる多くの問題がいまも未解決のままですから。でもいちばん心配なのは、そんな問題はなかったことにすれば消えてしまう、と私たちが考えているらしいということです」

「真のアフリカ」といった表現で語られがちなステレオタイプを強化する文学イメージを突き崩したい、とアディーチェは語ってきた。ステレオタイプの色眼鏡から解放されなければ、人はいつまでも対等に出会うことができないと。

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2020年07月19日

Posted by ブクログ

初めてのナイジェリア文学
1回ではまだまだしっかりと理解できていないことが多いけれど、全体的に切なくも力強い短篇集だった。

翻訳されたタイトルがさらに切なく、「明日が遠すぎて」は個人的にとても印象的なお話。

くっきりと描かれないけど、ぼんやりと情景が浮かんできて面白かった。

「明日が遠すぎて」
夏休みに祖母の家で過ごした期間を描いた作品。
祖母は兄ばかり尊重し、そんな兄に嫌悪感を抱く妹がある計画を立て、実行する。
真実を知るものは一体だれ?


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2024年11月30日

Posted by ブクログ

ナイジェリア出身の著者が、ステレオタイプの「アフリカ」とはほど遠い、実際の彼女たちの日常、心情、人間関係などが書き綴られた、短編集。

読み始めは、馴染みのない名前(「ン」から始まる名前の多いこと!)、地名、人種、宗教、文化に戸惑いを覚え、300ページほどの文庫読破に7日も要した。アフリカ、特にナイジェリアのことを勉強してから、再読しようと思う。

再読したら、恐らく星は増えると思われる。

ナイジェリアのことに詳しくないあなたは、訳者あとがきから読まれるのがいいかもしれない。少しは、著者や背景理解が深まるのではないだろうか。

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2024年01月07日

Posted by ブクログ

「パープル・ハイビスカス」の大きなうねりはないけれど、さざなみのように、人と人のあいだの差違や隔たり、ずれ、違和感を物語にして差し出してくる。

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2023年11月05日

Posted by ブクログ

凝り固まったステレオタイプな印象と、差別と意識していない差別こそが、多様性の時代に潜む本質的な問題なのではないかと考えさせられる短編集。

ナイジェリア出身の主人公たちが外国(主にアメリカ)との文化の差や、経済的な格差、ナイジェリア出身であるというアイデンティティに直面する物語を数話読んだだけで、豊かな国に生まれた人々の多くが自身でも知らないうちに、自分の中に「無意識の差別」を育んでいるのだと感じてしまいました。

差別というのは肌の色や宗教の違いを理由に人を迫害するような行為だけを指すのでなく、自分の中の常識に無い、相手にとっての常識に敬意を払わないことで生じる現象を指すのかもしれません。

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2023年05月09日

Posted by ブクログ

どなたかの本棚にあったので読み始めたのだと思います。最初はほんとに何気なくのつもりで。

ナイジェリアの作家さんなんてもちろん初めてです。
短編が12,3ほど収められているのですが、どれをとってもナイジェリアで生まれた女性たちがどういう一生を送るのかというのがテーマだと思います。ちなみにナイジェリアという国家は多民族で、よくでてくるスッカという大学街はアブジャ州内にあり日本政府の危険情報でもレベル3;渡航は止めてくださいレベルでした。私達が簡単に行ける国ではなさそうです。

ナイジェリアをでてアメリカへ渡る、キラキラした上位国アメリカに媚びるように生活するナイジェリア男性の3歩うしろで夫を敬い生活する、自国でも男性社会で女性の地位は低い、白人社会に出るとステレオタイプの黒人というひとくくりでイメージされる、日々レイシズムにさらされる海外生活、、などなどハッとさせられるテーマがナイジェリア女性の目線で描かれているように思います。なかなか厳しい風が吹く環境だと思うのだけど、小説のタッチはサラッとしていて重いテーマをそう見せない感じが素敵。

ただ、表題作はかなりハッとさせられました。これはなんというか物凄く悲しい。自分の事をきちんと理解してくれる素敵な人に出会ったのに、出自の違いが過ぎて自分をうまく解放できない女性。切ない、、。

この本を読んで思ったのは、ナイジェリアの女性であっても、日本で暮らすBBAな私でも内なる気持ちには何も変わりはないのだと。

異国の本もいいなと思える小説でした。来年はいろんな風や匂いを感じられるのでもっと海外小説にも挑戦していきたいなと思います!

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2022年12月11日

Posted by ブクログ

アフリカ(ナイジェリア)に生まれること、黒人であること、女性であること、アメリカに暮らすこと。向けられる眼差しや、違和感。

物語を読んでほんの一時わかったような気になって、実際、一生本当の意味ではわからないままなのだろうなぁ…。

ひりひりとした当事者感情がそこにはあった。

寝る前に『アメリカ大使館』を読んでしまったばっかりに、瞼の裏に鮮烈な赤いヤシ油の色が浮かんで、なかなか寝つけなかった。

表題作での、

「夜になるといつも、なにかが首のまわりに巻きついてきた。ほとんど窒息しそうになって眠りに落ちた。」

というところが印象的だった。初めて海外で暮らし始めた時、似たような気持ちを覚えていた気がする。

どこにも居場所なんて見つけられなくて、24時間常にコンフォートゾーンの外側。自律神経なんかぐちゃぐちゃだっただろう。

もうすぐアメリカに引っ越すので、自分も彼女たちみたいな感覚を味わうのかな。答え合わせしたい。

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2022年10月16日

Posted by ブクログ

アフリカの小説、というだけで先入観があった。
読んでみたら、かわらない人間の悲喜こもごもの話だった。
明日には遠すぎて ってタイトルがいい。

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2022年07月05日

Posted by ブクログ

ナイジェリアの女性作家の短編集。原文がそうなのか端正な文章だなと感じた。アフリカ文学はほぼ読んだことがないので、新しい扉を開けたような気持ち。

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2022年06月02日

Posted by ブクログ

アフリカの作家による小説第2弾。今回は短編集で、一つ一つの話が長くなく、軽快でテンポもよく、読みやすい。どの小説にも共通しているのは、「人種差別」と「土着文化とアメリカ文化の大きな違い」。これは、なかなか無くならないもので、「なにかが首の周りにある」という不気味な表現(当事者には感覚なのだろう)は言い得て妙。自虐的でもあり、賞賛でもあり、戻りたいような、帰りたくないような、そんな複雑な感情に共感できることが多い一冊。

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2022年04月17日

Posted by ブクログ

あらゆる差別や偏見,戦争,階級闘争,断絶と断罪,信仰と信念…あらゆるものが混ざり合って出来上がっている世の中と言う「壺の底」から眺めた風景を擬似体験する様に読んだ.
無知と傲慢を,抉り出して曝け出されたような気分…
アフリカ系の名前の馴染みのなさについて行けず,没入しきれなかったか,また時間を置いて読み直したい.

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2022年03月01日

Posted by ブクログ

翻訳本だから、少し難しい日本語になっていて読みにくさはあった。
世界にはいろいろな夫婦形式や、状況があるんやなと、自分の「世界」の概念が少し変わった。

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2020年10月07日

Posted by ブクログ

舞台はアフリカだったりアメリカだったり、登場人物たちも様々な人種ですが、あっこの感覚は味わったことがある…と思うことしきりでした。
生きづらさはどこにでもある、でもそんな中でも強く生きる女性たちが眩しい。
「ひそかな経験」「なにかが首のまわりに」「明日は遠すぎて」が特に印象的でした。ひそかな経験、はここにいたらなかなか出くわさないけど緊張感が凄かったです。
これまで接する機会のなかった地域の文学…色々と読みたくなりました。まずは知るの大事。

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2020年08月25日

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