あらすじ
厳格な父に育てられた少女カンビリは、軍事クーデタに備えて預けられた叔母の家で、自由な価値観を知る。自己を肯定していく少女の鮮烈な物語。世界20か国以上で翻訳された傑作長篇。
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腐敗しきった政権のナイジェリアが舞台。
カトリックの正義、歪んだ愛、社会的には成功者の父が家族を抑圧する。カンビリと兄のジャジャが叔母の家で知った自由は父の元で息を詰めて暮らす生活に疑問を抱かせる。16歳のカンビリがいとことの友情や神父への愛に気付き成長していく。瑞々しい風景描写や気持ちの表現などこちらにぐいぐいとせまってきた。訳もわかりやすく原語そのままカタカナにしてあるところなど雰囲気が伝わってきて素晴らしい。
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主人公である15歳の少女カンビリ目線で書かれているからか、とても読みやすかったけれど、内容は容赦なかった。
社会的にはビジネスで成功し、寄付などで社会貢献もするお父さんなのに、凄まじい家庭内暴力者。でもそれもキリスト教の教えに倣っているだけで、罰を与えたあと本人は涙を流して、子供たちに愛してるという。とても複雑だ。
主人公が人間味を取り戻し、様々な感情を体験する姿は、こちらも心が晴れやかになった。お兄ちゃんはあの後どんな大人になるのだろう。少し心配になった。
Posted by ブクログ
「発掘王への道#5」はチママンダ・ンゴズィ・アディーチェの『パープル・ハイビスカス』です
海外作品も発掘します
王ってそういうことですから
苦手分野ないのが王ですから
まずは作者紹介から!
訳者あとがきから抜粋!(一部省略)
1977年生まれ。ナイジェリア南部のエヌグで、イボ人(ナイジェリアの民族の一つ)の両親の六人の子どもの五番目として生まれた。父親はナイジェリア初の統計学教授でナイジェリア大学の副学長を務めた人。
ナイジェリア大学で薬学と医学を学び始めたが、十九歳で米国にわたり、コミュニケーション学と政治学を学び、その頃から作品を書き始めました
本作は作者の第一長編で、ハーストン/ライト遺産賞やコモンウェルス初小説賞などを受賞
なんとナイジェリア文学発掘です!
舞台ももちろんナイジェリアですが、軍事クーデターが繰り返されていた1980年代あたりころのお話と思われます(間違ったらごめん!)
現在のナイジェリアは(他のアフリカ諸国に比べれば)比較的政治情勢は安定していて、アフリカ一の経済大国となっております
石油がでるのよね
GDPで言うたら世界第24位ですって
つまりG20なんて言って先進国づらしてる国々のすぐ次に位置してるってこと
急成長です
ラゴスなんてとんでもない大都会だし!もちろん写真でしか見たことないけど!
そしてナイジェリア文学です
なんか調べたらウォーレ・ショインカさんていうノーベル文学賞作家さんも輩出してるのよ
すげー!ナイジェリアすげー!
よし本編!
もうね、本を開いた瞬間ムワッとしました
これがナイジェリアか!と思いました
もう言葉数が凄いのよ!段落がほとんどなくて文字かみっしり詰まってるの
うわこりゃあしんどそうって思ったんよね正直
ただ読み始めたら作者の情熱みたいなんを感じたんよ
ナイジェリアを知ってもらいたい情熱みたいなんをすぐ感じられたんで嫌な感じはけっこう直ぐに無くなりました
わりと読みやすかったし
うーん、なんかね内容的にはちょっと難しかったかな〜
いわゆる白人文化と伝統文化が混ざって行く中で生まれた捻じれみたいなんが家族の中にも色んな歪みを発生させてみたいなお話だと思うんだけど
伝統を大切にしたいって気持ちと経済成長を遂げて豊かになるには白人の常識も受け入れないといけないみたいなね
無理に混ぜようとすると時に悲劇を生んでしまうというかね
そしてこの本の中でも、役人は賄賂をうけとるのが仕事みたいな感じですが、現在のナイジェリアでもまだまだ政治腐敗は続いているみたいです
ある年の石油収入150億ドルのうち100億ドルが使途不明とか恐すぎ
人身売買とかも普通に行われてるし
日本に生まれて良かった
なんかとりとめのないレビューになってしまった
まとめる力なしか!
Posted by ブクログ
ナイジェリア南部の町エヌグの大きな屋敷に住む、15歳の少女・カンビリ視点で描かれる物語。
物語、と読んでいいのか悩むほどに生々しい部分もある。
身一つで会社を起こし、世間では敬われているカンビリの父は、敬虔すぎるまでのカトリック教徒であり、腐敗したナイジェリア政権を批判し立て直すべく、政権批判の新聞社にも多大な協力をする人だ。
しかし尊敬される反面、過度に偏った思想と信仰心を持つ父親は、カンビリやカンビリの兄ジャジャには常に学校で一番でいることや、敬虔なカトリック教徒であることを強要し、家族が罪を犯したと認識した時には母親や子どもたちに酷い暴力と暴言を何度も何度も振るった。
異教徒である実の父親、パパ・ンクゥと子どもたちが同じ家の中で過ごすだけでも激怒した。
カンビリより下の兄弟がいないのは、おそらく度重なる身体的・精神的DVのせいだろう…
カンビリの母は何度も流産している。
強固な家父長制の一家には、お金はあっても自由はなかった。
カンビリが学校で一番の成績を取り続けるのも、取り続けたいからではなく、取らなければ恐ろしいことが起こるからであった。
自発的なものでも、自分の成長のためのものでもなかった。
抑圧された環境の中で、カンビリは誰にも自分の家の決まり事や事情、己の感情を何も語ることができず、学校ではお高くとまっていると誤解されていた。
そんな最中、父の妹…カンビリのおばさんといとこたちの住む家に一時的に滞在することになったカンビリとジャジャ。
この家ではお祈りも楽しそうにやっている。
議論も盛んに行われ、カンビリのように父親に決められたスケジュール通りにしか動けないようなことはなく、貧しくとも、そう、いい意味で自由な家であった。
自由な家の中で、カンビリ兄弟より年下のいとこたちは既に大人びており、自立していた。
そしておばさん宅に訪問してくるアマディ神父との出会い。
次第に変わっていくジャジャ。
遅れて自由というものを実感していくカンビリ。
同い年のいとこのアマカやおばさんに指摘され、自分の考えていることを怖がらず口に出すことができるようになっていくカンビリ。
ゆっくり生まれ気づき育まれる恋愛感情。
自由というものを知ってなお、自分のいた環境のおかしさに気づいてなお、父親に認めてもらいたい、愛してもらいたいと思ってしまうカンビリ。
物語は予想だにしない展開になっていく。
カンビリたち一家の変化や、その他の様々なことが多彩に描かれている作品だ。
ナイジェリアの文化(例えば現地語であるイボ語がカタカナ表記で読むことができ、パパ・ンクゥがカンビリやいとこたちにナイジェリアの口承伝承を語る場面を読める)や執筆当時の情勢を知ることができ、いろいろと新鮮であった。
本作は遅れて邦訳された、作者の処女作であるとのこと。
より洗練されているであろう作者の他の作品も読んでいきたい。
Posted by ブクログ
遥か遠いナイジェリア
少女が語る物語に悲壮感はない
家長であるパパ、敬虔な信者で、今の自分を確立した礎になっている大事な信仰が故、愛するが故の過ちへの断罪は容赦なく、言葉にならない
心を明らかにできず、苛立ちにうまく対処できない彼も悲しいけれど、それを差し引いても、どれだけ愛があったとしても
はやく大人になって
何も知らない子供たちには憐憫の念しかない
「パープルハイビスカス」
タイトルの意味は重い
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それがですね、しんどいんですよ。国の情勢も、父親の支配も、読んでいてつらい。従順に暮らしてきた15歳のカンビリが、イフェオマおばさんの家に行って初めて知る、賑やかな食事の時間やおしゃべり。圧倒されながらも、そりゃ引きつけられるだろうなあ。
しんどいながらも、最後のほうには力強さも感じる。それが何なのかを少し考えてみたいと思う。
Posted by ブクログ
アディーチェのデビュー作。カトリック教徒の父親の厳しいしつけと懲罰。宗教的不寛容さは自身の父親にまで徹底している。家庭内の暴力には目を覆いたくなるほどだが、社会的貢献や寄付は成功者に相応しく義務を果たし、政治には改革的だ。ナイジェリアと西欧の宗教・文化が入り混じった複雑な社会が見えてくる。作者の故郷のエヌグにも一度行ってみたいが難しいだろうな。タイトルのパープルハイビスカスは新種で、自由な思想の象徴になっている。
訳者あとがきを読み、アディーチェのTEDでのジェンダー・フェミニストについての講演をYouTubeでみた。誰もが居心地のいい話題ではないかもしれないテーマを、軽快に、わかりやすく話していく。文化のくだりはさすが。ナイジェリアで女性を無視して男性にだけ挨拶するウエイターや、女性らしい服を着たくても真剣に受け止めてほしくて女性らしさをおさえてしまうことなど、わかる。ジェンダーと階級とは抑圧が形を変えたもの、と。妥協、そんなもの、となる自分を省みた。