ジョージ秋山のレビュー一覧
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ネタバレ 購入済み
遂に完結
ジョージ秋山、天才、奇才漫画家!
人の心の中を抉り出し、見たくない欲望を曝け出してくれる。
最終巻ははぐれ雲とオカメさんの最後の物語。
醜いものを曝け出し老いていく。老いても人間は生きていく。
醜いままに老いていく。若い人達に是非読んで欲しい。
現在の漫画では描き切れない人間の欲望、醜さ、素晴らしさを表現した作品です。
読むのに辛くなる事もありますが。 -
購入済み
人間を知る良き機会
人間の業の中で「飢餓」が一番恐ろしいと感じた良い機会であった。古今東西、極限の飢えが人が人を食べるという史実を生み、またそれを防ぐために叡智を絞ってきたとも言えると思う。アシュラは言葉を知る前に本能的に人喰いを覚え、そのために人殺しを覚える。しかし母のぬくもりを求めるのもまた本能。つくづく深みのある作品だと思う。
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ネタバレ1970ー1971週刊少年マガジン掲載、同時期、週刊少年サンデーに連載された代表作『銭ゲバ』のアナザー・ストーリー、根源ともいえる鬼才・ジョージ秋山による衝撃作。
「人はなぜ生きるか」という極限下での思考実験。
歴史というフィルターを通して、あり得たかもしれない境遇の主人公を登場させ、徹底的に非・人道的な性質を与える。地獄絵図を見せながら、読み手に人生の選択を迫る。ジョージ秋山の真骨頂であり、高度経済成長〜一億総中流の意識が形成される時代にあって、こうした問題作を投げかけてきた意義は計り知れない。
まれに発見されて話題になるが、“動物として育った人間”が、ことばを獲得し、人間 -
Posted by ブクログ
良い話だ。
「何のために生きるのか」とかいう薄っぺらい問いが通用しなくなるくらいの妙な生々しさに満ちている。
母親に食われかけた主人公は、やがて食べるために人を襲うようになっていく。さすがに生命力が強すぎるような気もするが、それを突っ込むのは無粋というものか。
アシュラは人間にとっての禁忌であるところの人食をはじめとして、多くの常識や掟を越えて行く。だから、むしろ浮き彫りになるのはその他大勢の人々の常識であり掟だったりする。いっそ道徳の教科書にでも使えば良いのにな。
ところで、舞台は平安時代っぽいのに、登場人物が「労働条件」とかいうフレーズを用いていたのが笑えました。なんつうか、書 -
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ありとあらゆる手段で成り上がった『銭ゲバ』こと蒲郡風太郎。この本で彼は政界に進出するために金を使ってあらゆる手段を尽くすのですがその果てに彼を待っているものは…。壮絶なラストにはショックを受けました。
全てを手に入れたかに見えた『銭ゲバ』こと蒲郡風太郎。この下巻ではついに政界にも進出しています。しかし、栄華を極めながらもことあるごとに引用されているものがあります。それは、旧約聖書の『ヨブ記』の一節である
『なにゆえ、ひざが、わたしを受けたのか。なにゆえ、乳ぶさがあって、わたしはそれを吸ったのか。そうしなかったならば、わたしは伏して休み、眠ったであろう。そうすればわたしは安んじており、 自分 -
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ジョージ秋山による問題作。松山ケンイチにが主人公でドラマ化されましたが、マンガ版のほうが数段エグいです。上巻では貧困で母親を失った蒲郡風太郎があらゆる手段を駆使して成り上がっていくまでが描かれます。
僕がこの作品を知ったのは、今から5、6年くらい前だと思う。この本を初めて読んだときははっきり言って衝撃的だった。何年か前に松山ケンイチ主演でドラマ化もされたので(原作そのまんまではありませんが)内容はよくご存知なのかもしれませんが、原作となったこのマンガのほうが数段内容はエグいです。あらすじは貧困で母親を病気で失った蒲郡風太郎が『銭ズラ!!』と獣のように吼え狂いながら殺人を皮切りにありとあらゆる -
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風太郎が順調に昇りつめ、やがて政治家として売って出るプロセス、そして突然の破滅を描く後篇。
あらゆる人間を踏み台にし、殺しも厭わずにやってのけ、ついに金のみならず権力も名声も手にした風太郎。彼に訪れるあまりに唐突な、しかし完璧なラストには度肝を抜かれます。
多忙のせいか、かなり絵は荒れている部分もありますし、アバンギャルドな表現も多々見られて付いていくのがやっとという場面もありますが、この疾走感に引きずられ、一気に読ませます。
風太郎の顔のアシンメトリーというのは、見た目の醜さの分かりやすい表現なのですが、これがよく効いている。
右側を見ると不敵でワルそのものの顔、しかし左側を見ると、悲しさに