吉田基已のレビュー一覧
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本家「蟲師」をモチーフに、5人の漫画家さんが短編書いてくれました。
どの話も、蟲と蟲師は脇役。人の営みの中で、不意に此岸と彼岸を行き来してしまった、まれな出来事として話は進んでいます。
本家でも同じですね。ギンコが存在しているので、彼が主導してるように感じますが。外譚でそこにきづいたりして。
登場人物としての関わり方が、蟲と蟲師と人々との関係に思えてとても好きです。
5本それぞれ面白いので、1番を挙げるのは難しいなぁ。読んだ時によって違ってきそうです。季節・年齢・感情それぞれに状況・状態でね。
読み返すたびに、好みが変わる作品というのは、新たな発見があるっていうこと。本好きにとって、幸せ -
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「親友の彼女」として登場した華海。華海に少なからぬ好意をもっていた哲生にとっては、遠ざけておきたい存在だった。しかし華海の髪に触れ、華海の名前を口にし、華海本人は哲生の心の壁をいともたやすく乗り越えてくる。終いには、哲生は華海の写真を入手してしまう。彼は華海を完全に「対象化」できてしまったのだ。
だから華海の絵が描けた。1巻で晶の顔を描けなかった哲生は、華海の顔を描けてしまった。
4巻は番外編(こちらもとてもよかった)が長く、本編はここで終わっている。この直接的ではない三角関係で、哲生は華海への気持ちをどうするのか。晶は哲生にどう接するのか。特に、派手な喧嘩でもできればいいものを、ああいう -
Posted by ブクログ
目次だけでも内容が読めてしまうかも、とスルーして読み進めてたけど、21話「華海」からの22話「華海 華海」で、もうそれだけで苦しくなる。
美しい物に惹かれてしまうのは絵を描く人間としてはしょうがないのかもしれないけど、哲生はそれだけじゃないだろうと思えるから、モヤモヤする。
華海もまさか哲生がそういう気持ちだとは知らないからあんな風に懐っこいんだろう。読んでる側からすれば「自重しろよ…!」なんだけど。
哲生のスケッチブックに描かれた華海を見た時の晶を見て「よし、哲生を責めろ」と思ったら別の意味で攻めて、そしてあの表情でこちらの涙腺が壊れた、唐突に。切なかった。最後寝る時の二人の距離も。
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晶の欲と哲生の変化が描かれた、いい巻だった。絵を描くことに集中し、それと向き合う、つまり孤独な哲生を求める晶。そのために与えるものは与え、甘やかしてはいけないところには線を引き、安易な好意の表現は許さない。「孤独」を「独占」したいという矛盾にもちゃんと自分で気づいているところがいい。
哲生のモチベーションの高さは、はなみからのインスピレーションでもあったし、気づかぬ恋心の行先でもあったように思う。自分の絵を描くという海で泳ぎ、恋に破れて震えて帰ってきたのは晶のもとだった。「だから俺は晶目指して戻ってくればよかった」という台詞は、決して海の話ではないと感じた。最後の話は、今までの哲生を描写した -
Posted by ブクログ
ネタバレこれはもう。なんと言ったらいいのか。
哲生の「はなみ」への執着にハラハライライラとさせられながら「こんにゃろう」と思っていたのに。
「想像の人だけでいい」と思っていた「はなみ」が華海として存在することになった時、「どうして…」と苦しそうにしている哲生を見て、何だろうこっちにまで伝わってくる重さは。
海に行く時に「(画材は)忘れた」と言った時の哲生の表情が、うまく笑えてないというか自嘲というか、もう何とも言えなかった。
うまくかけそうだと思っていたそれがこんな形になって、哲生は絵も描けなくなってしまうんじゃなかろうかと不安になる。
ここはもう晶に頑張ってほしい。(元々晶を応援してはいたけ