熊谷徹のレビュー一覧
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『読者の皆さんの中には、「そんなことを言っても、仕事が山積しているし、お客さんが待っているのだから、長時間働かざるを得ない。30日間の有給休暇や1日10時間以下の労働など、日本では夢物語だ」と思われる方が多いだろう。
しかし、世界にはドイツのように、人間的な労働条件を実際に導入しているにもかかわらず、成功を収めている国がある。いつまでも「日本は変わらない」と思い込んでいたら、日本は絶対に変わらない。限られた時間の中で自分の持てる想像力を最大限に発揮して、仕事に高い付加価値を生み出すことだ。』
これを読んで何かが変わるわけではないが、自分の働き方について、もう少し自分でコントロール出来るように工夫・努力しようと思った。 -
Posted by ブクログ
有給消化率100%、夏休みは2週間以上なのに、仕事の成果は日本の1.5倍。ドイツ流「効率のいい」働き方の秘密。(2015年刊)
・はじめに
・第1章 有給30日、消化率100%でも仕事が回るドイツの働き方
・第2章 休みが多いのにドイツ経済は絶好調のなぜ?
・第3章 日本の1.5倍ドイツの高い労働生産性の秘密
・第4章 アメリカ型資本主義は目指さないドイツの「社会的市場経済」
・第5章 短い労働時間、高い生産性の一方でドイツ流の問題点
・第6章 報われる働き方のために日独いいとこ取りのススメ
・おわりに
ありがちなタイトルであるが、内容は至って真面目。ドイツ在住25年の著者の観察は重みがある。しかし、我々日本人の参考となるのだろうか。
この本でも整理整頓の重要さを指摘しているのは面白い。長時間労働が能率を落とし、非効率的であるという指摘尾うなずけるが、残業なしで、成果をだ出さなければいけない世界というのも息苦しいものである。どちらが良いとか、ドイツ流を日本に持ってくるということではなしに、日本流を模索するヒントとなりそうな1冊である。 -
Posted by ブクログ
先の大戦の敗戦国。敗戦後は戦勝国による裁判で戦犯が裁かれた。
戦後は産業を基盤に復興を遂げ、アジアとヨーロッパで経済大国と
なった。
日本とドイツの共通点である。しかし、それぞれの国の在り方は
大きく異なる。ナチスという過去の汚点に今でも向き合い、歴史的に
犬猿の仲であったフランスはじめ周辺諸国と良好な関係を築き、
実質EUのリーダーとなったドイツ。
先の大戦中の罪を中国・韓国から攻め続けられているのに、国会
議員が積極的に戦犯を祀る靖国神社に参拝し、日本国首相である
安倍晋三は「未来志向の日韓関係」とか言っている。それは過去は
なかったことにしてこれからを考えましょうとってことなのか。
本書は歴史認識・エネルギー政策等、在ドイツ25年の著者が両国
の違いを解説している。国外から祖国を眺める視点は大切だとは
思う。だが、少々ドイツびいきになっているようにも感じるんだよね。
ただ、過去は過去、今は今とい日本の姿勢にも問題があることは
分かる。従軍慰安婦問題にしたって朝日新聞が長年誤報を放置
してきたからってまるっきりなかったことではないし、南京虐殺に
しても人数の問題ではなく戦闘員ではない一般市民を殺害した
ことに変わりはないんだよな。
まるっきりドイツの真似をしろとは思わないが、過去と対峙せずして
未来はないと思うんだけどどうなんだろうか。
尚、個人的に興味深かったのはドイツのメディアの在り方だ。公共
放送にしても政府の思惑を忖度しないっていいなぁ。要はドイツ版
NHKみたいな存在だよね。日本のNHKなんて自民党の御用メディア
になっちゃってるもんな。
尚、日本でも遅まきながら民間では過去に対峙する姿勢が出て
来た。今年、2015年に三菱マテリアルが中国人強制労働者に
対する賠償の意向を明らかにした。民間とは言え、一歩前進
なのだと思いたい。
「若者たちが過去のことについて無関心になるのは、当然のことだ。
彼らが、前の世代の犯罪について、重荷を背負わされることを拒否
するのは、ごく当然のことだ。若者たちには、父親や祖父がしたこと
について、責任はない。しかし彼らは同時に、自国の歴史の流れ
から外へ出ることは出来ないということも知るべきだ。そして若者
は、ドイツの歴史の美しい部分だけではなく、暗い部分についても
勉強しなくてはならない。それは、他の国の人々が、我々ドイツ人を
厳しく見る理由を知るためだ。そしてドイツ人は、過去の問題から
目をそむけるのはなく、たとえ不快で困難なものであっても、歴史
を自分自身につきつけていかなくてはならないのだ」
1989年に行われたヴィリー・ブラント元首相への著者のインタビュー
からの引用である。
安倍晋三にはまったく期待してないけど、将来、日本にもこんなこと
が言える政治家が出て来るだろうか。う~ん…。 -
Posted by ブクログ
昨年(2011)3月の福島原発事故を受けて、日本を含めて多くの国で原発の推進を見直す動きがありましたが、日本の場合は原発を本格的にやめると困る人や部署があるようで、次第に復活していきそうな気がしています。この本の主題のドイツでは本当に脱原発を決めて、それに向かってエネルギー政策を策定しているようです。
ドイツの場合は、長らく太陽エネルギーが主力だと思っていましたが、事実上諦めて現在では「風力発電」に軸を移しているようです。更には日本と異なって陸続きの欧州では、簡単に電力(原発で発電したものも含む)の購入ができる点が、ドイツがこのような政策をとれるポイントのようです。
また、風力発電の弊害がドイツでも出てきているように、人の住んでいる陸地では難しいようで、文句の出ない海上風力発電がメインのようですね。海の無いバイエルン地方では今まで原発に頼ってきたようなので、代替エネルギーをどうするのかは難しい判断を迫られそうです。
一番気になったのは、最近の地球レベルでの寒冷化を受けて、私の感覚では、CO2による地球温暖化のトーンが下がってきている中で、この本の著者である熊谷氏は、「地球温暖化の脅威は、地球全体の平均気温が一律に上昇することだけではなく、気温上昇が気候システムを大きく変化させて異常気象を引き起こすこと、異常な寒波も間接的に地球温暖化の影響である」(p115)と気象学者のコメントを引用しています。誰かがいずれ言い出すと思っていましたが、すでにそれを言っている人がいたとは驚きでした。
数年後には、地球温暖化というフレーズから「地球異常気象」を防止するためにCO2削減運動が展開されるのでしょうか、それも罰則規定までつけて。なんだか複雑な気持ちです。
以下は気になったポイントです。
・福島事故を受けて、ドイツは前年に決めていた原子炉の稼働年数の延長を取りやめ、今後11年間で全ての原発を廃止することを決めた(2011.6.30に原子力法改正案を可決、2022.12.31までに全廃を連邦議会で決定)(p15)
・ドイツはナチス時代に中央集権制をとって失敗した経験があるので、戦後は地方政府の権限強化に力を入れた(p31)
・ドイツでは日本のように原発がある地方自治体に多額の補助金は降り注がない、営業税収入や雇用が増える程度(p32)
・ドイツと日本の電力市場の大きな違いの一つは、EU指令により1998年に法律上で自由化を開始し、地域独占を廃止したこと(p42)
・ミュンヘン市役所が有する地域電力SWMは、2015年までに家庭向け電力を100%再生可能エネルギーに、2025年までには企業向けも同様にする、ドイツ国内の都市では初めて(p64)
・自由化(1998)により最初の2年間に19%下がった個人世帯の電力料金は、2001年以降は上昇した、2010年には合計70%増加した(p88)
・ドイツで送発電分離が進んだ理由として、1)EUの圧力、2)脱原子力政策による大手電力の業績悪化にともない送電網の売却(p93)
・1000を超える電力販売会社を持つドイツの手法は、日本にはそのまま当てはめるのは難しい、日本の状況にあった自由化の道が探る必要がある(p110)
・ドイツは、2011年の再生可能エネルギーが発電量に占める割合は20%だが、2050年には80%を目指している(p117)
・ドイツは世界で初めて、送電網の運営者に対して、再生可能エネルギーを固定価格で「全量」買い取って送電網に受け入れることを法律で義務付けた、1990年可決、1991年施行(p135,138)
・2011年に需要家がエコ電力促進のために払った金額は、1.3兆円程度、2000-2012年までの助成金合計は、およそ9兆円(p141)
・風力発電は、開始料金というボーナスが12年間適用される(p143)
・曇天の多いドイツでの太陽光発電は効率が悪い、それでも太陽光発電装置による買取価格は 57.4セント@2004、28.7セント@2011である(p147)
・ドイツの太陽光モジュールメーカは2005年から2008年まで空前の好景気を経験したが、現在では最大手のQセルズは破産した、製造コストが中国に比べて高いため(p151)
・ドイツでは、売り手がお金を払わなければ電力を買ってもらえないという、商いの常識に反する「ネガティブ価格」が発生した(p183)
・CO2を排気から分離して地下に貯蔵する実験(CCSプロジェクト)は、連邦議会を通過したが、州政府の代表が構成する連邦参議院では、建設候補地である両政府が拒否権を行使した(p197)
・2011年のドイツのCO2排出量が前年比で2.3%減少したのは、冬の寒さが厳しくなかったこという効果を含む名目排出量、気温の影響を差し引けば、1.2%増加したというのが電力会社によるコメント(p202)
・原子力と化石燃料からの脱却を目指すエネルギー革命は、エコロジーというイデオロギーに基づくもので、経済的な理由によるものではない(p213)
・ドイツに出入りした電力量は、全て消費されたのではなく、すぐに他国へ出ていく「トランジット電力」が多い(p223)
・50ヘルツと60ヘルツを併用している国は、インド・アフガニスタン・パキスタン・スリナム・アフリカの一部など(p229)
2012年10月14日作成